企業が資金繰りの見直しを図る際に取り組むべき施策のひとつといえば経費削減でしょう。

余分なコストをカットするなど、効果的に経費を削減できれば、資金の節約につながるだけでなく、経営や事業の安定化やさらなる展開にも期待できるものです。

しかしその一方で、目先の成果のみを求めて安易かつ闇雲に経費を削減すると、その後に思わぬ悪影響やトラブルをもたらすことも考えられます。

では、企業が経費削減を進めるにあたっては、どのような点に注意して進めるべきなのでしょうか。

経費削減を実行する上で考えられるリスク

経費削減を実行する上で考えられるリスク

まずは、企業が経費削減を実行することによって、業務や従業員にどのような影響を与える可能性があるのか考えてみましょう。

・従業員のモチベーション低下

ひとつめは従業員のモチベーションの低下です。

企業の多くは従業員を抱えており、企業が営業活動を通じて利益を生み出すためには、従業員の働きが不可欠です。

そして、従業員のモチベーションが高ければ高いほど、大きな成果を得られる可能性は高まることでしょう。

そういった点からも、企業としては、従業員のモチベーションを高められるような施策を積極的に実行していきたいところですが、それには当然ながら経費の捻出が求められるものが多くあります。

たとえば、基本給や賞与のアップ、さらには福利厚生や社内設備の充実など。

もちろん、お金をかければかけるほど、従業員の満足度が高まるというわけではありませんが、あまりにも極端な経費削減を実行すれば、従業員のモチベーションはたちまち低下し、結果的に利益の低下にまでつながる可能性は十分に考えられます。

・顧客からの信用度の低下

経費削減によって、低下が考えられるのは従業員のモチベーションだけではありません。

顧客に対して直接的に影響を与えるような経費削減。

たとえば、商品やサービスの品質低下を招きかねない原料面や内容面のコストカット、それに顧客対応にあたる従業員の技術や知識の向上を妨げてしまうような育成費のカットなどが行われれば、顧客からの信用度を落とす可能性があるでしょう。

・業務効率の低下

みっつめは業務効率の低下です。

それぞれの業種によって必要になる設備やツールは様々かと思いますが、業務に不可欠なモノのコストまでをカットしてしまうと、業務効率は大きく低下することが予想され、結果的に経費削減には成功しても利益の低下を招いてしまう恐れがあります。

避けたい経費削減策

避けたい経費削減策

さて、経費削減によって社内外へ与えかねない影響を確認できたところで、次は具体的にどのような経費削減は避けるべきなのかを、上記3つの視点から考えていきましょう。

・給与のカットやリストラを伴う人件費の削減

おそらく、多くの企業が経費削減を図る際に取り組もうとするのが人件費の削減かと思います。

確かに、人件費は企業の経費において大きなウェイトを占める項目です。

それだけに、従業員の基本給や賞与をできる限りカット、もしくはリストラを断行できれば、経費削減の効果は十分にあらわれることが期待できるでしょう。

しかし、上記でも触れたように、企業が営業活動を経て高い利益を上げるためには、従業員のモチベーションの維持と向上が不可欠です。

従業員にとって給与の価値は非常に高いものであり、“働く”目的のひとつであることは言うまでもありません。

経費削減が目的とはいえ、大切な給与をカットされる、もしくはリストラが行われるようなことがあれば、従業員のモチベーションが大きく低下するのは当然であり、企業としても優秀な人材の流出を招く可能性もあります。

ですので、まずは他の経費から削減可能な項目はないか徹底的に模索する。

それでも人件費の削減が必要であれば、残業代の削減や成果主義の導入が可能か検討するなど、安易に給与のカットやリストラを断行する経費削減策は控えたいところです。

・商品やサービスの質が低下する経費削減

人件費と同様に、大きなウェイトを占める経費が自社で手がける商品やサービスにかかる費用です。

材料費や研究開発費など、それぞれの商品やサービスによってかかる経費は様々かと思いますが、これらの経費を削減して一時的な利益率向上につながっても、中長期的には品質の低下を招いて顧客からの信用を失い、最終的には売り上げを落とす可能性が考えられます。

経費節減とは、そもそも資金の節約によって事業の維持と発展を図るのが目的のひとつです。

ですが、経費を削減して売上を落としてしまうようなことになれば、本末転倒のなにものでもありません。

したがって、経費削減を検討する際には、仕入れ先と粘り強く価格交渉を行うなど、事業の核となる商品やサービスの質をいかに維持できるかを考慮に入れて行う必要があります。

・設備やツールなどにかかる費用の削減

事業を遂行する、または効率的に業務を進めるにあたって、必要不可欠な設備やツールはどんな業種にも存在するものであり、それらの導入や維持には、もちろん費用が発生します。

たとえば、複合機を利用するにあたっては多くの企業がリース契約を交わしているため、定期的にリース代の支払いをしているかと思います。

また最近では、サブスクリプションによる契約によって利用できるソフトやシステムも多くあり、これらは設備などのリース代金と同じように、定期的な支払いが必要になります。

そういった設備やツールの費用も、経費削減の対象になりやすい項目ですが、あまりにも極端に削るようなことになると、事業の滞りや業務の効率性が失われるといった事態に陥りかねません。

例を挙げるとすれば、設備のメンテナンスを怠ることやスペックを下げたツールに変更するなどにより、故障が生じて生産がストップしてしまったり、業務の完了までに時間や労力がかかって従業員のフラストレーションが蓄積されるといったことも起こりうるでしょう。

そうした事態を避けるためにも、設備やツールの質を低下させるような経費削減は控えたいところです。