銀行融資の審査には様々な保証が必要です。不動産の担保などが必要な場合もありますが、最も多いのが保証人です。特に、銀行融資においては保証人とは「連帯保証人」を指す場合がほとんどです。連帯保証人の存在が審査に与える影響も、融資を受ける際には考えなければいけません。今回は銀行融資における連帯保証人の役割や審査に与える影響をまとめていきます。

銀行融資における連帯保証人とは

連帯保証人という言葉は広く知られています。一般的には、連帯保証人になってしまうリスクが周知されていて、慎重な姿勢を持つ事が推奨されています。その一方で、銀行融資では保証人という存在も重要で、審査にも影響を与えます。ここでは、連帯保証人についての基本的な情報などを紹介していきましょう。

連帯保証人と保証人の違い

保証人と連帯保証人の違いを解説していきましょう。銀行の融資の際には、銀行側から保証人を立てる事を求められる場合があります。そして、保証人には「保証人」と「連帯保証人」の2種類があります。保証人は、融資を受けた人物が返済できない時に、返済を求められる人の事です。銀行側にとっては融資金の回収をする上では、安心材料の一つとなります。

まずは、保証人の解説をしましょう。保証人とは、返済を迫られても融資を受けた人を優先に返済義務があると主張できる権利を持ちます。つまり、保証人になったとしても、必ずしも支払いの義務が発生するわけではありません。仮に融資を受けた者が行方をくらましたとしても、すぐに返済義務はありません。保証人は融資を受けた者の資産などからの支払いを優先させるように主張でき、それでも支払えない分を支払えばいいのです。

一方の連帯保証人を見ていきましょう。連帯保証人には、融資を受けた者と同等の返済義務が発生します。つまり、銀行側は融資を受けている人を優先させる必要はないのです。融資を受けた人が資産価値の高い不動産を持っていたにも関わらず、連帯保証人が支払を求められたという例もあります。そのため、「連帯保証人にはならないように」という教訓が広く知られているのです。

これらの違いを簡単にまとめましょう。保証人と連帯保証人の違いは主に3つです。

・催告の抗弁権がない
・検索の抗弁権がない
・分配の利益がない

催告の抗弁権とは、連帯保証人が保証の履行を求められた時に、債権者から先に返済を求めるように主張できる権利の事です。通常の保証人とは違って、連帯保証人にこうした主張をする権利はなく、債権者と同じように支払い義務が生じてしまいます。

検索の抗弁権とは、まず債権者の財産から返済をするように求める権利です。この権利を主張すれば、債権者の財産から返済していき、保証人が支払うのはその後になります。しかし、先にも言った通り、連帯保証人にはこれらの権利がなく、債権者と保証人の財産は平等に扱われてしまいます。

分配の利益とは複数の保証人が要る場合に、支払い金額を保証人の数で割り、平等な額にする事です。しかし、連帯保証人の場合は、全員に全額の返済義務が発生します。返済金額の総額が融資額を超える事はもちろんありませんが、それぞれが融資額全額の返済が終わるまで、返済を求められてしまいます。
例えば、融資額が3000万円、保証人が3人の場合を考えます。ただの保証人であれば、1人1000万の返済にすることができます。しかし、連帯保証人になると1人3000万円の返済を求められ、この額の返済が終わるまで、保証は終わらないのです。

そして、銀行の融資などで使用される保証人というのは、連帯保証人を意味しています。つまり、銀行での融資において、保証人を務めるという事は連帯保証人になるという事と同義なのです。
次は連帯保証人を立てると審査にはどのような影響を与えるのかを見ていきましょう。

連帯保証人の審査への影響

連帯保証人を立てることは銀行側から打診される事もあります。しかし、連帯保証人を立てたからと言って、必ず審査に通るというわけではありません。確かに、審査に当たって担保や保証人を立てる事は、融資金額などを上げるためにも有効な手段です。しかし、連帯保証人の状況次第では、審査が通らない可能性も出てくるからです。

連帯保証人がいるという事は、本人の信用を上げる効果があります。法人として融資を受ける場合には、経営者が連帯保証人になる事が多いです。また、連帯保証人が立てられない場合には、信用保証協会が連帯保証人の役割を果たす事もあります。信用保証協会とは公的な機関であり、連帯保証人が立てられない零細企業などの資金調達のサポートをしてくれます。

連帯保証人への審査

連帯保証人を申請する際に、銀行側が連帯保証人になる予定の人を審査をする場合が多いです。そして、その結果次第では返済能力なしとして、審査が通らなくなるというパターンも想定しておく必要があります。連帯保証人が審査に落ちる例とは以下の通りです。

・融資を受けていて与信が無い
・信用情報に情報が記載されている
・安定した収入がない

1つ目は、連帯保証人に与信がない時です。連帯保証人となった人物がすでに融資を受けていて、与信がない状態だと断られる場合があります。与信がないとは「信用がない」という意味で、銀行が重視しているポイントです。融資を受けている事で、もしもの時に支払能力があるのかを疑われてしまいます。

2つ目は、信用情報に連帯保証人の情報が記載されている時です。信用情報に事故情報がある場合には、この理由で連帯保証人になれません。かつて返済などが滞った事があるなどの理由で、信用情報に傷があるときには銀行側も調べればわかります。そうなると連帯保証人には適さない人物と見なされて、銀行側に断られてしまいます。

3つ目は、連帯保証人が安定した収入がない時です。連帯保証人が無職であったり、低収入であったり、アルバイトやパートタイムで働いていたりする場合には、連帯保証人になれません。さらに、年金受給者などでも断られる場合があり、返済能力に問題ありと見なされる事になります。無職であっても相当な資産を持っていれば、銀行側が承認する可能性もあります。

信用保証協会の審査

信用保証協会に連帯保証人を頼む場合には、債権者は信用保証協会の審査を受けることになります。信用保証協会も返済能力のない人の連帯保証人になる事はしません。しっかりと審査したうえで、連帯保証人を引き受けてくれるのです。

信用保証協会の審査は以下の3つの点が重視されます。

・3期連続での営業赤字
・債務超過
・税金の滞納

信用保証協会に保証人を依頼する場合には、3期分の確定申告書を提出します。3期連続で赤字であると、信用保証協会の審査に落ちてしまう可能性が極めて高くなってしまいます。返済能力がないとみなされてしまうからです。

債務超過も審査を落とされる理由となります。返済能力を重視しているので、債務超過は著しく返済の可能性を低くします。しかし、もしも債務超過の割合が減少傾向にあれば、対応が変わってくる場合もあります。融資によって経営の健全化が見込めると判断されて、審査を通過する可能性が出てきます。

税金の滞納も審査に影響を与えてしまいます。税金を滞納している事業者が審査を通過する事はないと
されています。信用保証協会は税金で運営されているので、税金の滞納者の保証人になる事はまずありません。税金の滞納は本人自身も見逃している場合も多く、税金の滞納や支払いの遅延は、かなり不利な条件となってしまいます。

このように信用保証協会に連帯保証人を頼む場合には、銀行の審査と平行して、信用保証協会の審査も受ける必要があります。

連帯保証人は必要?

連帯保証人は必要なのかも見ていきましょう。銀行融資では、保証人が要ると安心して融資を受けることができます。銀行側としても保証人がいた方が、融資のハードルが下がるために、連帯保証人は審査の結果にも影響してくるのです。

法改正により連帯保証人の責任が減少

従来では保証人の存在が融資の中でも大きな役割を持ってきました。しかし、近年ではこの考えが変わっています。実際に平成17年には法律が改正されて、連帯保証人であっても「限定額根保障」という制度が適用されることになりました。これは保証限度額や保証期間が定められている保証契約を指していて、際限なく返済義務がある状態だったのが大きく変わりました。
そのため、銀行の融資を受ける際にでも、連帯保証人を立てる事が年々少なくなってきているのです。実際に、経営者保証に関するガイドラインが平成25年に発表され、法人融資の際に経営者が保証人になる義務はないと明記されました。これによって破産や差し押さえというリスクを軽減して、新規事業やスタートアップ事業などの活発化を促しました。バブル期やその後の不況において、連帯保証人という制度が問題視されるようになったのが法改正の一因になっています。そのため、今後は連帯保証人に関する制度はさらに変わっていく可能性もあるので、注視しておく必要があります。

銀行融資における連帯保証人の審査のまとめ

銀行投資にする際に、審査を通すために連帯保証人を立てるというのは有効な方法です。また連帯保証人になる場合にも審査をされるという事は知っておいた方がいいでしょう。近年では銀行融資と連帯保証人の関係性が変わりつつあります。保証なしでの融資も増えてきていて、「連帯保証人」は従来のイメージから変化しました。
とはいえ、審査を受ける際には連帯保証人を立てることを求められる場合もあるので、制度としては知っておいた方が損はないはずです。