事業者にとって、金融機関から融資をきちんと受けられるかどうかは、資金繰りを安定させ、事業を継続していくうえで非常に重要なポイントです。もし審査の結果、融資が否認されてしまった場合、仕入れ代金や人件費、外注費など支払いに必要な資金を確保できず、赤字経営が続いた末に深刻な経営危機へと発展する恐れもあります。そのため、資金調達の選択肢を事前に一覧で把握し、自社に合った方法を検討することが欠かせません。 大企業であれば、不動産を担保にすることで信用力を高め、低金利かつ長期間の契約で有利な条件の融資を受けられるケースも多いでしょう。しかし中小企業や個人事業主の場合、不動産を保有していない、もしくは担保にできる資産が不十分であることも少なくありません。その結果、不動産担保融資以外の方法を探さなければならない状況に直面します。 そこで近年注目を集めている資金調達手段が、動産を担保にしたABL(売掛債権担保融資)です。ABLは、売掛債権や在庫などを担保として活用できるサービスであり、不動産を持たない事業者でも融資を受けられる可能性がある点が特徴です。特に、取引先との継続的な売上があり、一定の信用力を持つ企業であれば、売掛金を担保にすることで資金調達力を高められるケースもあります。 ABLでは、契約内容によって融資期間や借入可能額、債権譲渡の有無などが異なり、金融機関ごとに条件もさまざまです。そのため、単に「借りられるかどうか」だけでなく、手続きにかかる手間や費用、返済条件、経営への影響まで含めて内容を確認する必要があります。実際の事例を見ると、ABLを活用することで資金繰りを改善し、事業拡大につなげた企業がある一方、条件を十分に理解せずに契約し、経営を圧迫してしまったケースも存在します。 こうした背景から、ABLを検討する際には、金融機関や専門家による支援を受けながら、自社の財務状況や事業計画に適した調達方法かどうかを慎重に判断することが重要です。以下では、ABL(売掛債権担保融資)とは具体的にどのような仕組みなのか、どんな資産を担保にできるのか、その主な特徴や注意点について詳しく解説していきます。

ABL(売掛債権担保融資)の基礎知識

ABL(売掛債権担保融資)という言葉をそもそもきちんと理解できていないという法人の代表者もいるでしょう。 ABL(売掛債権担保融資)とは、自社に担保にできるものがないという事業者でも資金調達可能な新しい手法のことです。 従来よりも借入元の金融機関と密にコミュニケーションが取れるので、注目を集めています。 ABL(売掛債権担保融資)による融資とはどのようなものかについて、まずはしっかり把握しましょう。

ABL(売掛債権担保融資)とは?

ABL(売掛債権担保融資)とは正式名称を「Asset Based Lending」といいます。 通常担保融資とは、土地や建物などの不動産が対象です。 しかし中にはそもそも不動産を所有していない、不動産は持っているけれどもすでに抵当権が設定されているので余力がないという企業もあるでしょう。 ABL(売掛債権担保融資)の場合、企業で保有している機械設備や商品在庫、さらには売掛債権などを担保にして融資を受ける方法のことです。 設備や在庫、売掛債権は不動産を持たない会社でも保有しているところは多いでしょう。 こちらを担保にして借入ができれば、資金繰りも円滑になるはずです。

担保の取り扱いについて

ABL(売掛債権担保融資)の場合、企業が保有する動産を担保にして借入れます。 この動産ですが、一般的に譲渡担保という形で処理します。 つまり担保設定した後でも、動産を企業はそのまま利用し続けることも可能です。 ですから機械設備を担保にしても、引き続きその設備を使って生産活動を行うこともできます。 さらに在庫を担保にしても注文があれば、自由に納品も可能です。 ですから機械設備を多く所有していたり、在庫の品揃えが充実していて大量にストックを抱えていたりする場合にはおすすめの資金調達方法になるでしょう。

従来の融資とは何が違う?

ABL(売掛債権担保融資)による融資は従来の融資とは異なる側面があります。 従来の融資の場合、担保にできるのは不動産資産だけでした。 そのほかには法人の代表者による個人保証が主体です。 しかしABL(売掛債権担保融資)の場合、何度も紹介しているように在庫や売掛債権、機械設備なども担保にできます。 これらに価値があると判断されれば、低金利でより多くの融資を金融機関から引き出せる可能性があります。 また従来の融資の場合、金融機関と債務者である法人とのコミュニケーション不足に陥りがちです。 審査するときに法人の決算書や試算表などの限定された資料だけをみる形になるからです。 資料の数字のみで評価されてしまうので、事業の性格そのものや将来性などはなかなか把握しにくい側面があります。 しかしABL(売掛債権担保融資)の場合、売掛金や在庫、機械設備も担保になりえます。 そしてABL(売掛債権担保融資)によって融資を受けた企業は、定期的に担保の状況を金融機関側に報告する義務があります。 コミュニケーションの頻度が増え、企業の手掛けている事業そのものや業績の推移について貸し手側も正確に把握できます。 結果的に貸し手側と借り手側との信頼関係が構築できるというメリットもあります。 このため、新たな資金調達手段として、ABL(売掛債権担保融資)による融資が注目を集めているわけです。

ABL(売掛債権担保融資)を活用すべき企業とは?

動産を担保にできるABL(売掛債権担保融資)の場合、従来の融資よりも多くの企業が利用できます。 特にその中でもおすすめなのが、在庫や売掛債権などの流動資産を多く保有している企業は大きな担保価値を持っているので融資を受けやすいです。 担保価値が高いと判断されれば多額の融資にも対応してもらえる可能性が高く、今後の成長資金を確保しやすくなります。 また売上高が急激に成長したベンチャー企業なども、ABL(売掛債権担保融資)による資金調達向けといえます。 売上高が増加すれば、在庫や売掛債権も多く保有している可能性が高いからです。 また急速に成長すると、運転資金や設備資金も必要になるでしょう。 在庫や売掛債権を担保にまとまった額の融資を受けることで、ビジネスを大きくすることもできるわけです。 また製造業など、機械設備を多く抱えている企業もおすすめといえます。 ABL(売掛債権担保融資)では機械設備も担保の対象になるため、融資が受けやすくなるからです。 ABL(売掛債権担保融資)では担保対象になるものの範囲は広いです。 製品から原材料、農作物から機械といったように多種多様な商品が担保になりえます。 資金繰りに困っているのであれば、ABL(売掛債権担保融資)を使った融資を金融機関に一度相談する価値はあります。

ABL(売掛債権担保融資)の流れについて紹介

ABL(売掛債権担保融資)はどのような手続きで資金調達を行うのでしょうか? 多少金融機関によって手順は異なるかもしれませんが、例えば売掛金を担保にする場合以下のような流れになります。 1.融資の申し込み 2.審査 3.契約書の締結 4.融資実行 5.定期報告 それぞれどのようなことをやるのかについて、以下で解説します。

融資の申し込み

他の借入同様、まずは融資の申し込みを行います。 売掛金を担保にする場合、複数売掛債権を持っているのであればどれを担保として差し出すかを検討する必要があります。 申し込みをする際には売掛先に関する情報を提供しなければなりません。 売掛先との取引履歴なども提示する必要があると思ってください。 そのほかに従来の融資申し込みと同様で、決算書などの必要書類を準備しなければなりません。 ここでおすすめなのが、売掛金の入金口座とABL(売掛債権担保融資)申し込みの口座が同じ金融機関であることです。 そうすれば、金融機関としてもお金の流れが把握しやすいからです。 ABL(売掛債権担保融資)を融資している金融機関の中には、入金がない売掛先の場合申し込み金融機関を入金口座として指定しなければならないとしているところもあります。

審査

申し込みが受理されると、審査が実施されます。 もちろん申し込み人である法人の信用力などについて調査されます。 決算状況はどうなっているのか、過去に金融事故を起こしたことがないのかなどについて調査されます。 加えて売掛先企業に関する調査も実施します。 もし債務者が返済できなかった場合、売掛債権を担保としてとって現金化する必要があります。 ところが売掛先企業の経営状況が安定していないと、売掛金を回収できない恐れがあります。 そのようなことにならないために、売掛金の信用力についても調査するわけです。

契約書の締結

申し込みした法人や売掛先企業の調査を行って、最終的に融資の可否の判断を出します。 審査承認するにあたって、条件の付く可能性もあります。 例えば信用保証協会の保証を付けることなどの条件付き融資の場合もあります。 信用保証協会の保証を付けるにあたって、保証料を負担しなければなりません。 審査にかかる期間ですが、金融機関によってまちまちです。 3週間程度かかる場合もあれば、最短即日融資などスピーディさを売りにしているところも見られます。

融資実行

審査承認されれば、金銭消費貸借契約書をはじめとした契約を金融機関とかわします。 金融機関の方でどのような書類を提出すればいいか案内がありますので、その指示に従ってください。 またこの契約手続きの際に、譲渡担保である売掛債権の差し入れ手続きも進めていきます。 それを受けて金融機関では、債権譲渡登記手続きを法務局にて行います。 ここまでの事務手続きが完了したところで、融資は実行されます。

定期報告

融資実行後も金融機関とのコンタクトは必要です。 返済や売掛債権がどうなっているのかなど、定期的に情報を提供しなければならないからです。 具体的には、売掛先の債権の残高に関する情報などを提供する形になります。

債権譲渡登記と動産譲渡登記

ABL(売掛債権担保融資)では売掛債権もしくは在庫商品を担保にして、融資を受ける資金調達方法です。 ABL(売掛債権担保融資)の場合、譲渡登記を法務局で行わないといけません。 この時何を担保にして融資を受けるかによって、登記手続きの方法が変わってきます。 売掛金の場合には債権譲渡登記、在庫商品であれば動産譲渡登記を行います。 それぞれどのような登記手続きかについて、ここで詳しく見ていきます。

債権譲渡登記

売掛金をはじめとした金銭債権を担保にABL(売掛債権担保融資)による融資を受ける際には、債権譲渡登記と呼ばれる手続きを行います。 今では、現在すでに発生している売掛金以外にも、将来発生するであろう売掛金も担保として差し出せるようになりました。 このため、売掛債権を用いたABL(売掛債権担保融資)の利用も広く普及しつつあります。 ちなみに売掛先が複数ある場合でも、一括して手続きを取ることが可能です。 しかも事前通知なしでかまわないので、比較的端的に手続きできるところも債権譲渡登記を用いたABL(売掛債権担保融資)は人気です。 もし売掛債権を担保にして借入するとなると取引先が不安に感じる可能性もあります。 取引を見直してくるところも出てくるかもしれません。 しかしABL(売掛債権担保融資)の場合、債権譲渡登記を行ったことは基本的に取引先に知られることはありません。 取引先に内緒で手続きできるのは魅力です。 ただし債権譲渡登記の管轄法務局は東京法務局のみになっているのは、デメリットといえます。 東京法務局の債権登録課が受付窓口になるので、地方によっては手続きが面倒になりかねません。

動産譲渡登記

ABL(売掛債権担保融資)の担保として代表的なものとして、在庫商品をはじめとした動産も考えられます。 もし在庫商品を担保として差し出してABL(売掛債権担保融資)による借入をするなら、動産譲渡登記と呼ばれる手続きが必要です。 動産譲渡登記ではその時点で倉庫もしくは店舗に存在している在庫商品はもちろんのこと、場所と商品を特定できれば後々納品される在庫商品を対象に担保にできます。 在庫になっている商品がお客さんに売れたとします。 お客さんの手に渡った在庫商品は、金融機関の担保の効力は及びません。 ですからお客さんがせっかく購入した商品が、担保として金融機関を差し押さえられる心配はありません。 ただし動産譲渡登記についても、管轄法務局は東京法務局のみとなっています。 ですから首都圏以外の地方で利用する場合には、手続きに少し時間がかかる恐れがあります。

債権譲渡登記における注意点

債権譲渡登記の制度は比較的新しいものです。 スタートしたのは平成10年10月1日です。 しかし登記申請件数は年間4万件に上るほど、ポピュラーな手続きになっています。 第三債務者が不特定だったり、債権譲渡の事実を知られたりすることなく登記手続きができるからです。 しかし債権譲渡登記を行うにあたって、注意しなければならないポイントがあります。 どのようなことに注意すべきか、どう対処すればいいかについてまとめましたのでABL(売掛債権担保融資)を利用する際の参考にしてください。

誤字があってもそのまま登記される

債権譲渡登記について、誤りがあるかどうか法務局では調査ができません。 というのも債権譲渡担保契約書をはじめ、債権が譲渡されたことを立証する書面を添付せずに手続きできるからです。 法務局でも審査は行うものの、添付書類に不備がないか、法務局の定めるプログラム通りに作成されているかだけをチェックします。 このため、例えば債権譲渡担保契約書に書かれている内容と異なる情報を申請データに記載してもスルーされてしまいます。 ですからもしかすると誤った情報が登記されてしまう恐れがあるので注意してください。 しかものちに登記上に何かしらの不備がある場合でも、その登記を変更もしくは更正手続きができません。 もし一度不備や誤りのある登記手続きをしてしまったら、いったんその登記を抹消申請しなければなりません。 そのうえで、再度新規で正しい情報の記された債権譲渡登記申請手続きをする形になります。 このように不備があった状態で登記手続きを完了させると、二度手間になってしまうので注意が必要です。 契約書の中でも債権額や譲渡日、第三債務者の記載などには誤りがないか確認しておく必要があるわけです。

債権譲渡登記の確認方法

債権譲渡登記は、不動産登記や商業登記のようなポピュラーなものとは制度そのものが異なります。 債権譲渡登記の内容は、債権譲渡登記概要記録事項証明書で確認することができます。 登記情報なので、債権譲渡登記に関しては基本誰でも確認できます。 ちなみに登記事項証明書にも債権譲渡登記を行った旨は記載されます。 どのようなことが登記されるかですが、以下のようなことが登録されているはずです。 ・譲渡人と譲受人の本店や商号 ・債権の総額 ・登記年月日 ・登記番号 ・登記原因並びにその日付 ・登記の存続期間の満了年月日 他の登録手続きと同様で、登録免許税を支払わないといけません。 この登録免許税の取り扱いがどうなるのか金融機関と十分話し合っておきましょう。

債権譲渡手続きを取引先に知られるリスクについて

ABL(売掛債権担保融資)の手続きをするにあたって、売掛先に通知することはありません。 このため、売掛先に債権譲渡について知られることなくABL(売掛債権担保融資)による借入れが可能です。 しかし債権譲渡登記を行った場合、登記事項証明書に記載されます。 登記されれば、基本誰でもその情報を目にできます。 ということは通知がなくても、取引先に債権譲渡した事実を知られるリスクは残ります。 取引先に知られるのはまずいと思っているのであれば、金融機関に相談してみるといいでしょう。 つまり債権譲渡登記しない形での取引はできないか、確認してみてください。

ABL(売掛債権担保融資)の融資を受けるポイント

ABL(売掛債権担保融資)による融資を受けるにあたって、従来の融資とはスキームが異なる点に注意しましょう。 このため、従来の融資とは手続きや流れに関して異なる部分が出てきます。 特に融資申し込み前の相談や融資実行後に異なる部分がありますので、詳しく見ていきます。

どんな書類を準備すればいいか?

ABL(売掛債権担保融資)の申し込みをする前にまずは金融機関に相談して、ABL(売掛債権担保融資)の仕組みについて深く理解したほうがいいです。 相談する際には自社の状況を把握してもらうために、準備すべき書類がいくつかあります。 まずは自社の概要に関してわかる資料のことです。 具体的には組織図や所在地、お店を構えている場合には店舗の数に関する資料をまとめたものを準備しましょう。 また財務状況を理解できるような書類も準備しておくと、話はスムーズです。 貸借対照表や損益通算所など、決算書関連の書類を用意してください。 ここまでは従来の融資でも準備するはずです。 しかしABL(売掛債権担保融資)の場合、担保になる動産の状態について説明する書類も用意しなければなりません。 売掛債権や在庫に関する詳細の書かれた資料などを提出してください。 具体的に売掛金に関する書類は売掛先や債券の金額について記されたものが該当します。 在庫を担保にする場合には、在庫の種類や数量、代金、どこに保管しているかなどの情報です。 また商取引のスキームについてわかる資料も用意しておくといいです。 仕入れ先や取引先がどこで、どんな取引をしているか書かれているような概略図があるといいでしょう。 また商取引する場合の契約書のテンプレも用意しておくと、自社がどんなビジネスを行っているか金融機関も把握しやすくなります。 これだけの書類があれば、自社の状況についてしっかり説明できるはずです。 プラスいくら融資を希望するのか、どのような用途で活用するかも合わせて説明してください。

融資後は資産状況や業績に関する説明を

金融機関からの融資が実行された後、従来であれば債務者側の方が返済に努めるだけです。 しかしABL(売掛債権担保融資)の場合、融資実行した後でも定期的に貸し手の金融機関側とコンタクトを取ってコミュニケーションをとる必要があります。 資産状況や業績の推移に関する情報を定期的に報告する義務が発生します。 債務者側の企業は、担保にしている資産の残高がどうなっているか定期的に金融機関側に情報提供します。 また業績がどうなっているかについても、金融機関に報告してください。 貸し手側である金融機関も、借り手である法人の事務所に定期的に訪問することが多いです。 そして在庫の管理状況などを現場で確認します。 金融機関の関係者が来る場合もあれば、外部の会社に委託している金融機関もあります。 後者の場合、委託料の一部もしくは全部を借り手側が負担することもありうるので融資を受ける前に説明を受けましょう。 こうして債務者側の経営状況を逐一把握できるのが、従来の融資との大きな違いです。 経営状況を詳細に把握できるので、金融機関側は適宜アドバイスができるようにもなります。

経営悪化したら?

融資を受けた後、想定外のことが起こり経営が悪化することもあり得ます。 この場合、借り手側は速やかに貸し手側にその旨を報告してください。 経営悪化の状況を両者で共有することで、より早期に対策が打てます。 経営悪化の情報をあげると金融機関が融資を渋るかもと思うかもしれませんが、むしろ早めに報告したほうがいろいろな手が打ちやすいです。 また業績悪化すると、金融機関が担保として押さえている動産を処分するのではないかと懸念する経営者もいるでしょう。 しかし業績悪化したからと言って、直ちに在庫を処分するようなことはありません。 通常であれば、経営面のアドバイスや融資条件の見直しの方が優先されます。 また担保を処分するといっても、過剰在庫の処分など経営に直接影響しない部分から手を付ける形になるでしょう。

ABL(売掛債権担保融資)で担保になりうるものとは?

ABL(売掛債権担保融資)ではさまざまな企業の有する動産を担保にできます。 そこでここでは具体的にどのような動産が担保対象になるのかについてみていきます。 また最近注目を集めているABL(売掛債権担保融資)の手法がありますので、その点についても紹介しましょう。

従来の担保対象

ABL(売掛債権担保融資)で担保になる動産ですが、大きく分けて売掛債権と棚卸資産です。 売掛債権は一般的に国内事業者に対する債権が対象になります。 また物品だけでなく、サービス提供に対する売掛債権も対象です。 具体的には運送料債権や工事請負代金債権などが該当します。 また医療機関の抱えている診療報酬債権も対象になりえます。 棚卸資産とは、決算書に計上できるものが対象です。 製造業であれば、出来上がった商品の在庫はもちろん、商品仕入れのための在庫商品、原材料なども対象です。 製造途中で未完成の状態の仕掛品も在庫として担保にできます。 ただしどこまでを担保にできるかどうかは、ABL(売掛債権担保融資)で融資している金融機関によって基準が異なります。 何に担保価値があるのか、貸し手側の金融機関の担当者に一度査定してもらうといいでしょう。

太陽光発電とABL(売掛債権担保融資)のスキームに注目

近年、太陽光発電事業に進出する企業も増えてきています。 東日本大震災による福島原発の事故によって、原子力発電が難しくなりつつあります。 またウクライナ情勢をはじめとした海外の事情で、燃料代のアップで火力発電主体の日本のエネルギー政策の見直しが迫られています。 そこで自然エネルギー、特に太陽光発電がここにきてクローズアップされています。 ABL(売掛債権担保融資)を行っている金融機関の中には、太陽光発電事業者に対する融資が活発になってきています。 具体的には太陽光発電設備や電力会社への売電債権などを担保にして、融資する手法です。 メガソーラーと呼ばれる大規模太陽光発電の事業の場合、数億円単位の融資が必要になります。 しかし従来の融資の場合、不動産を担保にしますが融資額に見合う土地を保有する事業者はなかなかいません。 そもそも郊外の工業用地などがメガソーラーの対象なので、土地にそこまでの価値もありません。 しかしABL(売掛債権担保融資)による融資の場合、太陽光発電事業に関わるすべての資産を担保にできます。 たとえ事業者が倒産しても売電事業を金融機関が引き継ぎ、事業による売り上げで債権回収することが可能です。 このように資金回収が可能なので、ABL(売掛債権担保融資)を使った太陽光事業に進出する企業も増えてくるとみられています。

POファイナンスの活用も検討しよう

法人の資金調達方法はいろいろと出てきています。 近年注目されている資金調達方法の一つとして、POファイナンスがあります。 POファイナンスにはABL(売掛債権担保融資)と異なるポイントがありますので、どのような特徴を有した資金調達方法かについてここで解説します。

POファイナンスとは

POファイナンスとは、企業間の注文情報を電子記録債権化するのが特徴です。 電子記録債権化されたものを譲渡担保として金融機関に差し出します。 そして金融機関は融資を行うわけです。 フィンテックが発達したことによって、誕生した新たな資金調達手段です。

ABL(売掛債権担保融資)との違いについて

ABL(売掛債権担保融資)もファクタリングも共通しているのは、担保として差し出すのは売掛債権です。 ということは業務が終了したり、商品を販売したりして売掛金が発生しないと活用できません。 しかし大掛かりな案件で、完成するまでに長時間を要するような場合には完成するまで売掛債権は発生しません。 POファイナンスが従来のABL(売掛債権担保融資)やファクタリングと異なるのは、納品ではなく受発注の段階で融資が受けられる点です。 つまり将来受け取れる予定の代金を担保にできるわけです。 早い段階で将来の売り上げを現金化できるので、資金繰りに余裕が持てます。 過去に資金不足によって大型案件を断ったことはありませんか? また短期の借入を銀行にお願いしたところ、融資を否認されたことはありませんか? POファイナンスは、これらの代替として活用できるポテンシャルを持っています。 ただしPOファイナンスはまだ登場して間もない資金調達方法です。 よって対応している金融機関は決して多くないので、選択肢が限定される点にも留意しましょう。

まとめ:資産がない企業におすすめのABL(売掛債権担保融資)

ABL(売掛債権担保融資)は、日本政策金融公庫などの公的金融機関による貸付と比較されることも多い資金調達手法ですが、それぞれ特徴や向いているケースは異なります。日本政策金融公庫の融資は原則として低金利で安定した資金供給が期待できる一方、申込から折り返し連絡、実際の入金までに一定の期間がかかり、財務内容や事業計画の審査も慎重に行われます。そのため、急ぎの資金需要には対応しづらい場合もあります。 一方、ABLは売掛債権や在庫を担保にする型の金融サービスであり、担保評価次第では比較的上限金額が明確に設定され、万単位から本格的な金額まで幅広く対応できる点が人気の理由です。基本的に不要な不動産担保や保証人を求められないケースもあり、社の規模を問わず活用しやすいのが特徴といえるでしょう。ただし、契約に伴う手数料や管理費用がかかり、債権管理や請求フローの変更など、実務面での対応が必要になる点は理解しておく必要があります。 また、ABLは継続的な利用を前提とした金融手法であるため、短期的な資金繰り改善だけでなく、中長期的な経営方針との整合性が重要です。担保となる債権化や管理体制の整備を行い、取引先との関係性や入金サイクルを安定させることで、リスクを抑えた運用が可能になります。税金面についても、融資である以上は原則として課税対象とはなりませんが、手数料や関連費用の処理については事前に確認しておくべきでしょう。 売掛債権を担保にABL(売掛債権担保融資)の借入をした場合、債権譲渡登記の手続きが必要になります。 しかしこの債権譲渡登記、申請時点で情報が誤っていてもそのまま登記されてしまう危険性があります。 債権譲渡登記が正しい内容で記載されているかどうかは、きちんと確認しておいた方がいいでしょう。 もし誤っている場合には、いったんその登記を抹消して、もう一度新しく登記手続きをしなければなりません。 また不備のある登記だと、第三者に対する対抗力が認められないなどのリスクも起こりえます。 登記情報については、できるだけ早い段階で自分の目で確認するのがおすすめです。 資金調達方法にはそれぞれメリット・デメリットがあり、結果としてどの方法が適しているかは事業内容や財務状況、必要な金額や期間によって異なります。公式サイトや案内資料を参考にしつつ、自社にとって無理のない方法を比較・検討し、状況に応じて柔軟に応じる姿勢が、安定した経営と事業拡大につながるといえるでしょう。

 

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