近年の、新型コロナウイルス蔓延によって影響を受けた業種は多くあり、やむを得ず黒字倒産してしまった企業も多くありました。
黒字倒産の原因のほとんどは、入金までに資金が足りず黒字であるにも関わらず倒産せざるを得ない状況に追い込まれてしまったケースです。
「黒字なのに倒産したくない」「資金さえあれば経営難を免れるのに」そういったことは会社を経営する人であれば誰もが思うことでしょう。
そういった人に向けて、つなぎ融資という融資方法が存在します。

今回は、つなぎ融資を会社が利用するメリットと押さえておくべき基礎的な知識について細かく解説していきます。
この記事を読めば、会社につなぎ融資が必要であるかの判断ができるようになるのでぜひ最後までお読みください。

会社経営している人が利用するつなぎ融資とは

つなぎ融資とは、資金が緊急で必要なときに主に運転資金を目的に銀行や日本政策金融公庫などの金融機関からお金を借りること(融資を受けること)を指します。
つなぎ融資は、住宅ローンや投資などさまざまな場面で扱われている融資方法の1つですが、今回は、会社を経営している人向けに解説します。

具体的には、黒字倒産間際や地震、火事、近年だと新型コロナウイルスなど防ぎようのない災害時に利用されることが多い融資となっています。
また、つなぎ融資の特徴は、融資期間が短い点です。

銀行融資など通常融資であれば長期間の貸付が多い傾向にありますが、つなぎ融資は経営が安定するまでの一定期間緊急で欲しいケースを想定しているため、期間は短いことがほとんどになります。

会社がつなぎ融資を利用するメリット3選

つなぎ融資は、正しいタイミングで利用すれば、リスク回避やさまざまなメリットがあります。
とくに、突発的な災害は誰にも防ぐことが不可能なため、リスクヘッジとしてつなぎ融資があることを頭の片隅に入れておくだけでも会社経営の幅は大きく広がります。

つなぎ融資の方法やデメリットについて解説する前にまずは、会社がつなぎ融資をするメリットについて3つピックアップして解説してきましょう。
そうすることで、つなぎ融資が会社にとってどれだけのメリットがあるかを想像しやすくなります。

1.会社経営が悪化している場合は立て直しができる

つなぎ融資で受けられる大きなメリットは、会社の経営が悪化している場合の立て直しができる点や黒字倒産を防げる点です。
例えば以下のような場面を想像してみてください。

• 仕入れ資金が増えれば売上を伸ばせる
• 人件費にかけられるお金を増やせば人員が増え売上を伸ばせる
• 集客に困っているとき、今すぐ広告費を出せられれば売上が伸びる

利益率によりますが、資金さえ集められれば売上が伸び、経営が良い状態になる(資金繰りがよくなる)ケースは数多くあります。
また、黒字倒産の場合であれば資金問題さえ解決してしまえば解決するのは容易であるため、つなぎ融資をおすすめします。(後継者問題は除く)
ほかにも、資金繰りが悪くなると返済に追われる焦りからビジネスに対するアイデアや視野が狭くなり負のループへと陥ってしまうケースも少なくありません。

つなぎ融資を受けられれば、それらの問題は改善していける可能性は高く、個人で経営している人や中小企業で資金繰りが悪い会社は利用してみるのも1つの手段でしょう。

2.自己資金を利用しなくてもいい

つなぎ融資を利用することで自己資金に手を出さずに経営ができます。
自己資金を使わずに経営ができるメリットは、事業展開するときや突発的にお金が必要になったときにすぐにお金を使える点です。
ビジネスという世界において競合他社との差別化は切っても切れない課題となっており、インターネットの発達によって近年はますます差別化が厳しくなってきています。

そんな中で事業展開のスピードが他社競合との差別化になり、やむを得ずお金を使用して事業展開する(スピードが必要になる)ために自己資金を使わざるを得ない状況があります。
そのため、自己資金を使用しないで経営を立て直せる、あるいは事業展開の資金に充てられるつなぎ融資は会社経営をする人から見るとメリットです。

3.資金繰りが改善され銀行などの金融機関関係が改善する

資金繰りが改善されると銀行など金融機関との関係は改善し、より多くの支援を得られる可能性が高まります。
銀行や貸付業している側からすると、より多くのお金を企業へ融資し、銀行が貰える利息額を増やすことで自社が儲かることを常に考えているからです。

そして、銀行としても経営状況が悪い会社ではなく、業績の良い会社へ融資して儲けたいと考えるのが一般的であるため、経営状況が悪い会社への融資は許可が下りにくいのが現状としてあります。
つまり、つなぎ融資を利用して資金繰りを改善する(経営状況を良くする)ことは、金融機関の評価を上げることにつながり、さらに融資したいと思う対象になります。
そのため、つなぎ融資を利用して資金繰りを良くすることはメリットといえます。

会社がつなぎ融資する3つの方法

つなぎ融資には3つの方法が存在しており、会社の規模や状態、目的によっては扱う融資はさまざまです。
また、利用する融資方法によって、返済期間はもちろんのこと金利や融資を受ける条件も異なってきます。

そこで融資方法それぞれの特徴にスポットを当てつつ、今回は会社がつなぎ融資する方法を3つピックアップして解説していきます。
3つのそれぞれの特徴はもちろんのこと利用をおすすめする人も同時に紹介していくため、つなぎ融資を受けたいがどのようなつなぎ融資を受けるか迷っている人はおすすめです。

1.銀行やノンバンクのビジネスローンを利用

過去に銀行やノンバンクから融資を受けた経験がある人は同じ場所から融資を受けることがおすすめです。
理由は、過去の取引実績があると銀行やノンバンクから信頼を得られやすく審査や貸付までがスムーズに進むからです。

ほかにも、銀行やノンバンクと良好な関係を築いていれば会社の過去の実績や内部事情、どんなビジネスモデルかを深く理解しているため、つなぎ融資の話がスムーズに進みます。

さらにノンバンクであれば、即日融資ができる金融機関が多く、すぐにお金を借りられる可能性が高いです。
注意点としては、銀行融資の金利は2%などが多く低金利なのに対して、ノンバンク融資は金利3%~18%と高金利になるケースが多い点です。
そして、会社がつなぎ融資を利用する目的は、今すぐお金を借りたいという緊急性のあるケースが多いため、金利面を除けばノンバンクはおすすめであるといえるでしょう。

その一方で銀行融資は先ほど紹介したように金利が2%など低金利な融資が多い点が魅了になります。
しかし即日融資はできないため、すぐにお金を借りたい人には不向きです。

ノンバンクとは…銀行融資や日本政策金融公庫以外の金融機関のこと。消費者金融やクレジットカード会社からの借入、ビジネスローン会社のこと指す。

2.起業間もない人におすすめ日本政策金融公庫の融資制度を利用

日本政策金融公庫は公的機関が関与しているため低金利でお金を借りられます。
日本政策金融公庫が出したデータによると、担保が不要の融資を希望するかしないかで金利は異なりますが1.08%~3.45%と銀行融資やファクタリングなど他のつなぎ融資の方法と比べても低金利であることが分かります。

また、借入希望金額にもよりますが無担保・無保証で借入できるのも魅力の1つです。(法人の場合は代表者名が必要)
注意点としては、書類提出と面談があるため、審査に時間がかかる点が挙げられます。
審査期間は、初めての利用で2~3週間、追加の融資は過去融資実績にもよりますが1~2週間程度です。そのため、すぐにお金を借りたい人には向いていません。

日本政策金融公庫は「国民生活事業(小規模企業向け)」「中小企事業(中小企業向け)」などさまざまな融資方法が用意されています。
中でも国民生活事業は起業して間もない人に特におすすめです。
国民生活事業の融資はさまざまで以下のようなものがあります。

• 取引企業倒産対応資金…取引企業などの倒産などにより経営に困っている人
• 金融環境変化資金…取引金融機関の経営破綻などで資金繰りに困っている人
• マル経融資(小規模事業者改善資金)…指定の場所から経営指導を受け商工会議所から推薦を受けた人
• 新型コロナウイルス感染症特別貸付…新型コロナウイルスの影響で売上減少した人向け

金利はもちろんのこと、融資限度額や融資の期間、対象者などが異なるため、自分にあったものを選択しましょう。

3.ファクタリングを利用

ファクタリングを利用すれば最短60分、中には最短30分でお金を準備できます。
そもそもファクタリングとは、会社で所有している売掛債権を売却して資金を得る手法のことを指しており、会社などを経営している事業者やフリーランスまで幅広く利用されているのが特徴的です。

メリットは、先ほど紹介した最短即日でお金が準備できる点と事前の書類準備の量が少なく、審査からお金を借りるまでの工程がオンラインで完結できるところも多い点が挙げられます。

その一方でデメリットは、会社の売掛債権を売却してお金を得るため規模の小さな会社だと大きなお金を準備できない点です。また、扱うファクタリングによっては手数料が約5%から30%ほどかかるため注意点が必要です。
請求書を売却してお金を得る方法であるため、中小企業規模の請求書が多い会社経営をしている人へおすすめします。

※売掛債権…取引先や顧客から受け取る予定の支払い権利のこと

会社がつなぎ融資をするうえで注意すべきこと3選

会社を経営していれば、経営の中でお金が必要になるケースは数々存在し、経営している事業によって必要な場面は異なるでしょう。
そこで会社がつなぎ融資をするうえで注意するべきポイントを3選ピックアップして具体的な場面も含めて解説していきます。

会社にとってつなぎ融資は、お金に関すること(借金)となるため、デメリットを把握したうえで行わないと、逆に経営を悪化させてしまうことも起こり得ます。
そのため、デメリットを把握し、つなぎ融資を選択するかを考えることは大切です。

1.つなぎ融資の用途を明確にする

つなぎ融資を受けたいと考えた時に銀行やノンバンクなどの金融機関を訪問して、必ず尋ねられる質問は「どういった目的で借りられるのですか?」ではないでしょうか。
そもそも銀行などの貸付業を営む機関は、以下のような企業にお金を貸したいと考えています。

• 経営状況(業績)が良い
• 過去に融資返済をした実績がある
• 資金繰りが良い
• 返済計画が立っている

そのため、目的が明確でないと貸付業をする側から返済してくれるかの疑問を抱き、怪しまれてしまうきっかけになるため、どのような目的でいつまでに返済するかを明確に提示しましょう。

具体的には「黒字倒産しそうで資金が足りない」「資金繰りを良くするために一時的な資金が欲しい」という理由が多くあります。
また、相談時には、つなぎ融資の用途と返済までの具体的な計画をしっかりと説明できるように説明資料を用意して持っていくと相手からの印象もよく、スムーズに話が進むためおすすめです。

2.つなぎ融資をする前にほかの方法はないか検討

経営が悪化したときやお金が必要になったときに利用されるつなぎ融資ですが、利用する前にほかに打開策はないか必ず検討しましょう。
というのも、つなぎ融資はもちろん経費計上はできず、借金になるからです。

つなぎ融資する理由にもよりますが、仮に商品のPR(集客)をするための広告費が目的だったとした場合に「SNSではダメなのか?」「チラシ配りでなんとかならないか」などを考えましょう。
TwitterやInstagram、YouTubeなどのSNSを利用すれば無料で集客できますし、その後も広告として利用できます。

さらに仮に失敗したとしても金銭的リスクは0です。
しかし、つなぎ融資で広告のためにお金をかけた場合、もし失敗したら借金として残り続けます。
そのため、つなぎ融資が本当に必要であるのかを考えることは大切になってきます。

3.つなぎ融資は高金利であるケースが多いため金利の確認は忘れずに

つなぎ融資は当たり前ですが、融資であるため金利が付き、利息額を含め完済まで払い続けなければいけません。
銀行や日本政策金融公庫は融資の形態によって異なりますが、金利1%~3%の商品がほとんどです。

しかし、ノンバンク(消費者金融やクレジットカード会社など)となると、金利は3%~18%と高金利での融資になってきます。
高金利であるのと引換えに即日融資の対応や申込がオンラインで可能などのメリットは存在しますが、やはりどれだけ低金利でお金を借りられるかどうかは融資を受けるうえで大切になってきます。
とくに起業して間もない人は、お金がすぐに欲しいが先行するあまりに、多くの金額を高金利で借りる人もいますが失敗したリスクもしっかりと考えるべきです。

また、借りたい金額が大きくなればなるほど金利の問題は返済額に大きな影響を与えます。

例 融資額1000万円の金利2%=20万円
融資額1000万円の金利18%=180万円など

そのため、金利の問題は何よりも先に考えることを強くおすすめします。

[まとめ]つなぎ融資は会社経営をしている人におすすめ

ここまで会社が利用するつなぎ融資についてメリットからデメリット、つなぎ融資の具体的な方法まで説明してきましたが、結論、資金があることで経営状況が回復するのであればつなぎ融資を利用することをおすすめします。

理由としては、お金が足りないことでの経営破綻を防げるからです。
黒字なのにお金が不足しているパターンだと、入金までのつなぎ資金さえ手に入れば根本的な解決にはならないかもしれませんが、一旦事業を立て直すことができます。

注意点としては、先ほど紹介したように「つなぎ融資は借金であると認識すること」「他に方法はないかを考えたうえで利用する」「金利の確認すること」が挙げられます。
その3つのデメリットを考慮したうえで起こり得るリスクも予測していれば、つなぎ融資は会社にとって危機的状況を脱却する1つの手段になるでしょう。