ビジネスローンは融資の回答まで時間がかからないけれど、どんな審査をしているのだろう?
これはビジネスローンを利用したり、これから借入を検討したりしている経営者なら感じる疑問ではないでしょうか?
そこで今回は「ビジネスローンの審査基準とは?」をテーマに、事業資金融資を審査している銀行員の私が解説したいと思います。
ビジネスローンを扱っているのは金融機関、消費者金融、ノンバンクなど幅広い事業者ですが、それぞれ審査の基準は当然ながら部外秘です。
しかしお金を借りる、事業資金の融資という点では共通することがらがあるので、その点についてビジネスローンにリンクしながらわかりやすく解説したいと思います。
ビジネスローンの審査基準を知り、資金調達に役立てたい人はぜひ参考にしてください。
目次
ビジネスローン3つの審査基準
一般にビジネスローンは審査スピードが早いことが大きな特徴です。
これは審査をシステム的に簡素化し、あるいはコンピュータを駆使したAI審査の手法などから、普遍的かつスピーディーに融資回答できる仕組みを作っているからであって、決して審査をしていないとか審査が緩いというものではありません。
たとえば審査に必要な書類としてあげられるのは「写真入り身分証明書(個人または会社の代表者)」「確定申告書(個人の場合)」「決算書2期分」「商業登記簿謄本」(法人の場合)などです。
もちろん他にもケースによって必要な書類はありますが、最低限これだけの情報で大まかなビジネスローン審査の必要書類はそろっていることになります。
そして、これら必要書類からも、スピーディーな融資回答のためのビジネスローンの審査基準が見えてきます。
<ビジネスローン3つの審査基準>
会社の存在確認~居住地、会社所在地の裏付けと事故歴の洗い出し
会社の財務内容~AI審査と必要情報
会社の借金返済履歴~個人信用情報
ビジネスローンの審査基準1.会社の存在確認
事業所の所在地は許認可や届け出などでしっかり公表されているのが一般的です。
そのため俗に「マンションの一室や借り事務所だと信頼度が低い」と言われるのですが、もちろん全てが疑われるわけではありません。
しかしながら「ペーパーカンパニー」「幽霊会社」と呼ばれるような実態のない(存在していない)会社ではこうした賃貸物件を所在地にしているケースが多いのも事実です。
もちろんすべてが疑われるわけではありませんが、マンションをわざわざ借りて疑われるくらいなら、自宅や実家を会社所在地にして「今は経費節減で実家を事務所にしています。」と説明したほうがかえって好印象な場合もあります。
また金融機関などでは約束手形や小切手の不渡りなどで銀行取引停止処分(【参考①】)を受けた会社などの情報が蓄積されており、会社所在地が同じであれば、事故を起こした会社が名前を変えただけ(実際にこれはよくあるケースで、もちろん融資を受けることはまず不可能です)ではないか?などについても所在地でチェックをします。
(いわゆる反社会的勢力に関係していないか?という点のチェックも)
不渡りなどの事故情報は、会社の所在地(法人登記された住所)や個人の氏名生年月日で確認をします。
そして個人の場合、住民票の住所は原則として免許証記載の住所と同一なのが普通で、たとえばビジネスローンの契約や口座作成などは住民票住所で免許証を本人確認書類にしますが、ここで免許証と住民票の住所が違っていると疑われる原因です。
たとえば引っ越しをしたあと、役所には転入の手続きをしたが警察に免許の住所変更手続きが面倒だからしていなかったケースなどが想定されますが、あらぬ疑いであっても一度怪しまれるとその疑念を払うのは大変ですし、仮に警察への手続きをしていなかったと認められれば「社会人として転居時に最低限必要な手続きもできない、いい加減な人物」と判断されかねず、やはり審査ではマイナスになってしまいますので、注意が必要です。
【参考①】取引停止処分
不渡りや取引停止処分を受けた事業者に関して記録が残るのは、主に以下のような情報です。
氏名(屋号を含む)、会社名称・代表者名や代表者の肩書(法人)
生年月日(個人)、会社設立年月日(法人)
住所(法人は会社所在地)
職業(個人) 業種(法人)
資本金(法人)
支払銀行(手形や小切手の口座があった取引銀行のこと)
ビジネスローンの審査基準2.会社の財務内容
住所や氏名などで取引停止処分などの事故、反社会的勢力のチェックをしたあとは会社の財務内容の審査になります。
とはいっても、ここもAI化が進み決算書などから必要項目を入力すればあとはコンピュータが財務分析から融資すべきか?の一時的な判定(最終的な融資判断は人間が行う)までします。
こうした融資のAI化を「AI審査、スコアリング審査」などと呼び、スピーディーな融資回答が求められる融資で利用されています。
ちなみにこのAI審査はカードローンや住宅ローン審査でも金融機関や消費者金融で利用されているところがありますが、特に公表はされていません。
AI審査では一般的に法人なら2期から3期分の決算書、個人なら3年分の確定申告書の情報を必要としますので、ビジネスローンの申し込みに必要な書類も同じになっているのです。
AI審査では決算書や確定申告書から必要項目をインプットしたり、場合によってはスキャンしたりすることで必要な情報を読み取って審査できるので、融資回答までの時間短縮が実現できているのです。
たとえばネット経由の申し込みで「必要書類をPDFやスキャンしたファイルを添付してください」などのケースでは更に情報入力の手間と時間が短縮されるので回答も早くなります。
逆にページが抜けていたりすると問い合わせの連絡が来るなどで時間を食ってしまうことがあるので、必要な資料はしっかりそろえておくことが大事です。
ビジネスローンの審査基準3.会社の借金返済履歴
一般に会社(法人)の借金返済記録などは共通して記録される情報はないとされています。
個人信用情報は「個人」と名前がついているとおり、個人が利用した借金やクレジットの返済履歴から、返済が滞納したなどの「異動情報(いわゆるブラックリスト)」が登録されますが、法人ではそうした登録場所がないからです。
とはいえ多くの会社が個人から法人に転換するケースが多いので、会社代表者の個人信用情報(ビジネスローンの審査ではチェックします)を調べて返済の事故歴があれば審査落ちになってしまいます。
もちろん個人のビジネスローン申し込みならそのまま本人の個人信用情報をチェックするのは言うまでもありません。
ビジネスローンの審査基準とは?~3つのポイントを融資審査する銀行員が解説のまとめ
ビジネスローンの審査基準について解説してきましたが、その基準は「会社の存在確認」「会社の財務内容」「会社の借金返済履歴」と以外に少ないと感じられたかも知れません。
しかし少ないからといって審査がゆるいわけではなく、最低限必要な情報に限った審査基準があるということであり、その審査基準もシンプルなだけに、基準に満たないと即審査落ちになる可能性もあります。
ビジネスローンの融資回答は迅速ですが、ダメという回答も早いのでここは注意が必要です。