ビジネスをしていると、借入が欠かせない場合もあるでしょう。
借入をしないと資金繰りが悪化して、経営が立ち行かなくなることもありうるからです。

ところで「借りる」という行為ですが、いくつかのアプローチが考えられます。
その中でも今回ご紹介するビジネスローンやリースは、商売していると利用することの多いサービスです。
ところで、ビジネスローンとリース、「借りる」という行為は共通していますが、違いもいくつかあるのでここで詳しく解説します。

ローンとリースの違いを理解しよう

そもそも、ローンとリースには共通点がある半面、相違点がいくつもあります。
共通点はまとまった資金が必要ないところです。

たとえば、マイホームを考えてみましょう。
住宅を購入するには、数千万円単位の資金が必要です。
これだけのまとまったお金を一括で用意できる人は、少数派でしょう。

しかし、住宅ローンであれば、そこまでまとまった金額は必要ありません。
リースについてもカーリースが有名ですが、車を購入する場合でも中古車で数十万円、新車になれば数百万円単位と、まとまったお金が必要です。
リース契約にすれば、月々数万円程度のお金で利用でき、これまた、まとまったお金が必要なくなります。

ただし、このほかでは、ローンとリースは相違点がいくつも見られます。
主な違いとして、以下のようなポイントがあります。
1.所有権の有無
2.税金の取り扱い
3.頭金の有無
4.支払期限
5.メンテナンスの有無
6.最終処分
7.返済金額
8.借りる対象
それぞれどのような違いがあるかについてみていきましょう。

また、リースと似た言葉として「レンタル」があります。
リースとレンタルも似ていますが、違いがありますので、この点についても併せてご紹介します。

所有権の有無

リースとローンの大きな違いとして、所有権の有無が挙げられます。
ローンはいずれ自分の所有物にできるのに対し、リースはどんなに長期間契約しても所有権は発生しません。

自動車を例に考えましょう。
自動車は一括払いのほかに、自動車ローンを組んで購入する方法があります。
ローン購入したらすぐに、自由に車を運転できます。

しかし、車検証の所有欄を見てみると、ディーラーもしくはローン会社の名義になっていて、購入者の名前にはなっていないはずです。
ただ、ローンを完済すれば、名義が変わって購入者に変更できます。

一方、車を借りるサービスとして、カーリースがあります。
カーリースの場合、年単位で長期間車を自由に使用できます。
しかし、何年もずっとその車を運転していても、リース契約中はその車の所有権は得られきません。

税金の取り扱い

税金が発生するかどうかも、ローンとリースの大きな違いです。
ローンは、税金が発生するのに対し、リースの場合、税金は発生しません。
こちらも同じく自動車を例にしてみていきます。

もし、自動車をローンで購入した場合、ローン完済できればその自動車を所有できます。
車の所有者を対象に、毎年自動車税が発生します。
ローンで購入した場合、自動車税の課税対象になるのです。
そのほかにも車検のたびに課税される自動車重量税も納税しなければなりません。

一方、カーリースの場合、自動車税を請求されることはありません。
厳密にいうと自動車税などの各種税金は、月額料金の中に含まれています。
しかし、毎月少しずつ支払って行けるので、ローンの時のようにまとまった額を一括で支払う必要はないのです。

頭金の有無

住宅ローンをイメージして頂きたいのですが、ローンを組む際には、頭金を用意しなければならないケースが多いでしょう。
中には頭金ゼロでも借り入れできるような商品も見られますが、月々の返済が大きくなったり返済期間が長引いたりします。
ローンを組む際には、ある程度の頭金を準備しておいた方が、その後の返済負担を軽減できるのです。

一方、リースの場合、基本、頭金を用意する必要はありません。
そのため、リース契約したときから、あらかじめ決められた月額料金を支払うだけでサービス利用できます。
ある程度のまとまった初期投資のための資金ができなければ、リース契約で物品を利用するのも一考です。

支払期限

支払期限の有無もローンとリースの違いの一つです。
ローンの場合、あらかじめ返済期間が設定されます。
返済期間によって、月々の支払金額も変わってくるでしょう。

返済期間を長くすれば、月々の返済金額を少なくできます。
しかし、期間中ずっと金利が発生するので、利息の支払いが多くなり、結局返済総額は高くなるでしょう。
返済期間を短くすれば、月々の返済金額は大きくなる半面、利息払いを少なくできるので返済総額は安く抑えられます。

一方リースの場合、リースしている物品を利用している間は、月額料金をずっと支払い続けなければなりません。
賃貸物件で暮らしている場合、部屋を借りているので、ずっとその物件で暮らし続けている間は、賃料を支払わないといけないのと同じです。
リースは、あくまでも借りものなので、リース料の支払い義務から免れられないのです。
そのため。もし長期間リース契約をした場合、ローンを組んで購入したときよりも多くの費用を負担しなければならない恐れがあります。

メンテナンスの有無

メンテナンスの費用を別途で負担するかどうかも、ローンとリースの違いです。
こちらも自動車を例にして比較してみましょう。

自動車ローンを組んでマイカーを購入した場合、車検は自分で手配して受けなければなりません。
もちろん車検にかかる費用も自分で用意する必要があります。
どこで車検を受けるかによって変わってきますが、場合によっては10万円近く発生する場合もあるでしょう。

一方、カーリースの場合、メンテナンスや車検などは、リース会社の方で手配してくれる場合も少なくありません。
メンテナンスコストは、利用者負担だったとしても、月額料金に含まれている場合が多いのです。
よって、別途で支払い請求されることは少ないでしょう。

最終処分

最終的に対象の物品をどう処分するかについても、ローンとリースとでは違ってきます。
先にご紹介したように、ローンの場合、完済すれば最終的にその物品は自分のものになります。

つまり、完済後にその物品をどう処分しようと、その人の勝手です。
売却しても、譲渡しても構いません。
この先ずっとその物品を利用し続けても問題ありません。

一方、リースの場合は、あくまでも借りものです。
これは、契約期間がどんなに長くても変わりません。

つまり、リースの場合、期間の違いはありますが、いずれは返却するのが基本方針です。
ただし、リースサービスによっては、返却のほかにもいくつか選択肢があります。

たとえば、再リースといって、再契約して引き続き対象の物品を使用し続けることも可能です。
再リースの場合、物品の価値が最初の契約時から下がっている可能性もあるので、リース料金は安くなるかもしれません。
条件次第では、最初のリース料金よりも再リース料金は1/10以下になる場合もあるのです。
しかし、リースであることに違いはないので、リース料金の負担は続きます。

また、もし気に入ったら、その物品を買い取る方法もあります。
しかし、この場合、買い取り代金を準備しなければなりません。
返却と再リース・買い取りなど、いくつか選択肢がある場合には、慎重にどれにするか検討してください。

返済金額

月々の返済金額ですが、リースの場合、基本的にずっと同じ金額を支払います。
一方、ローンの場合、月々の返済金額が、将来変動する可能性があるのも違いの一つです。

リース契約の場合、返却時の物品の価値を契約時に設定するのです。
元々の物品の価格から返却時の価値を差し引き、契約期間で支払い回数を頭割りして、月額料金を決めます。
そのため、リース契約期間中は、月々の料金は変動しません。

一方、ローンの場合、月々の返済額にプラスして、利息を支払わないといけません。
利息の金額は、金利によって決められます。

ところでこの金利、ローン契約の中には変動金利を採用しているものもあります。
住宅ローンが有名でしょう。

変動金利は、その時々の市場相場をベースにして、利率を見直すのが特徴です。
もし、金利が上昇局面に入っている場合、変動金利だと見直され、利率の上がる可能性があります。
すると、その分余計に利息の支払いが発生し、月々の返済金額が上がってしまう恐れもあるのです。

リースの場合、返却時の物品の価値を前もって設定して、月額料金を決める方式だとご紹介しました。
しかし、モノを壊したり摩耗がひどかったりなど、あらかじめ設定していた価値よりも事物の価値が低かった場合、その差額は利用者に請求されますので注意してください。

借りる対象

こちらは、ビジネスローンとリースの違いです。
リースの場合、ビジネスの世界だと車やOA機器など何かしら物を借りるサービスのことです。

一方、ビジネスローンはお金を借りるサービスです。
お金か物品かは、ビジネスローンとリースの大きな違いといえます。
ビジネスローンの場合、必要な資金を借りて、その資金を元手にして原材料や備品を購入する形です。
一方、リースの場合、直接物品を借りる形なのでビジネスローンのように融資を受ける過程を飛ばせるのです。

レンタルとリースの違い

物品を借りるサービスとして、レンタルもしばしば聞かれる言葉ではないでしょうか。
レンタカーやレンタルビデオなど、身近にあるサービスともいえます。
何かを借りる行為という点では、レンタカーとレンタルは同じ意味合いです。
しかし、リースとレンタルの違いとして、借りている期間が挙げられます。

リースは長期契約、レンタルは短期契約が一般的です。
レンタルの場合、早ければ数日から数週間の期間で借りる場合が多く、どんなに長くても数か月単位でしょう。

一方、リースの場合、少なくとも数年単位で借りる契約が一般的です。
数カ月間だけ借りる短期リースのサービスもありますが、少数派でしょう。

もし、1年以上の長期にわたって何か利用したいものがあれば、リース契約で借りると良いでしょう。
レンタルでも年単位で借りることは可能ですが、リースと比較して支払総額が大きくなってしまいます。

また、新品か中古かという点でも、リースとレンタルとでは異なります。
レンタルは、基本中古品を借りる形です。
レンタル会社の保有しているストックの中から、お客様が商品を選び、借りるのが基本的な仕組みです。

一方、リースの場合、基本的に新品を取り寄せて利用する形をとります。
お客様が、まず利用したい商品を選びます。
その注文を受けて、リース会社が新品を調達して、お客さんに貸し出す仕組みです。

レンタルの場合、希望する物品がすでにほかの誰かが借りている場合もあります。
また、レンタル会社のストックの中から選ぶので、選択肢は限られるのです。

一方、リースの場合、発注を受けてからその商品を取り寄せるスタイルなので、選択肢の幅も広くレンタルのように先客がいて借りられないといった事態も回避できるでしょう。

ビジネスローンとリースの使い道とは?

ビジネスローンとリースとでは、「借りる」という行為は共通していますが、ここまでご紹介したように細かく見ればさまざまな違いがあります。
また、用途に関しても異なる部分があるのです。
具体的にどのような使い道が考えられるかについて、以下で詳しく見ていきます。
ビジネスローンからの融資を受けるか、リースで借りるか迷ったときの参考にしてください。

ビジネスローンの用途

ビジネスローンは、事業性資金を提供している金融商品のことです。
事業で利用する目的であれば、細かな用途に関する指定はありません。

たとえば、開業や新規事業を立ち上げるための資金として、活用しても構いません。
さらに、機械や工場などの設備投資資金としても利用できます。
また、取引先の仕入資金や従業員への給与など、運転資金として活用するのも問題ありません。

ただし、たとえば、自宅のローン返済や家賃の支払いなど、個人的な支払いには対応していません。
また、事業を営んでいる人でなければ、ビジネスローンの借入はできないので注意してください。
法人代表者や個人事業主が対象で、会社員や公務員のような事業を営んでいない人は、申し込みできません。
ただし、ビジネスローンによっては、個人事業主をサービス対象外にしている場合もあるので自分が対象になっているかどうか、申し込む前に確認しましょう。

リースの用途

リースは、あくまでも物品自体を借りるサービスです。
どのような物品を借りられるか、リース会社によってさまざまですが対象は幅広いのが特徴です。

ビジネスで使用する備品の多くは、リース可能です。
オフィス家具など業種関係なく必要なアイテムを借りることも、もちろんできます。

そのほか、コピー機や複合機などのOA機器のリースサービスを行っているところも少なくありません。
さらに、工場で使用するような製造機械や工作機械も、建設現場で使用する重機などを借りることも可能です。
機械や重機の場合、自前で購入するとなると多額の設備投資資金を確保しなければなりません。
これをリース契約にすれば、月々のリーズナブルなリース料で利用できるので、コストカットしたい法人代表者にはおすすめといえます。

これからの時代、DXがますます発展すると考えられます。
そこでIT機器は、業種関係なく必要になってくるでしょう。
IT機器に関しても、リース契約で用意する方法もあります。

パソコンやプリンタのようなものはもちろんのこと、サーバやクラウドのリースサービスを行っているところもあります。
ITを本格的に導入するとなると、まとまった金額が必要になるかもしれません。
しかし、リースにしてしまえば、初期費用を安く抑えられるので、資金力が潤沢ではない中小企業や零細企業でも導入しやすくなるでしょう。

ビジネスローンのメリット・デメリット

ビジネスローンとリース、どちらが良いのかはケースバイケースです。
両方ともメリットとデメリットの両面があるからです。
まずは、ビジネスローンのメリットとデメリットについてみていきます。

ビジネスローンのメリット

ビジネスローンのメリットとして見逃せないのは、審査スピードの速さです。
事業者が資金調達する方法として、銀行融資や日本政策金融公庫などの公的融資を連想する人もいらっしゃるでしょう。
しかし、これらの借り入れ方法は、時間がかかります。
融資実行まで早くても2週間程度~1カ月前後、時間がかかるケースも珍しくありません。

しかし、ビジネスローンの場合、どんなにかかっても1週間~10日もすれば融資実行してもらえるのです。
ノンバンク中心として、最短即日融資に対応しているところも見られます。
急な出費や売掛金の入金が期日通りにいかないなど、突発的な事態で現金が必要な時には重宝するでしょう。

銀行融資の場合、融資の条件として、保証人や担保を用意するように求められる場合も少なくありません。
しかし、ビジネスローンでは基本、担保も保証人もなしで利用できる商品が多いのです。
不動産など担保として差し出せる資産を持たない法人でも、気軽に申し込めます。

ビジネスローンのデメリット

ビジネスローンのデメリットとして想定しておかないといけないのは、金利の高さです。
事業目的の資金調達法として、銀行融資や日本政策金融公庫の公的融資なども候補として考えられます。
銀行融資の場合2%台、日本政策金融公庫でも0.3~2%台が相場です。

一方、ビジネスローンを見てみると上限金利が10%前後から18%が相場です。
そのため、借り入れるのであれば、できるだけ短期で完済しないと、利息の支払い額が大きくなってしまうでしょう。

また、将来銀行融資を受けるにあたって、ビジネスローンからの借入があると、審査に悪影響を及ぼす可能性があります。
ビジネスローンからの借入は、帳簿に記載しなければなりません。
ビジネスローンの借入があると、「お金に困っていて融資しても債権回収できない恐れがある」と評価されかねないからです。

リースのメリット・デメリット

リースに関してもメリットのある半面、デメリットもあります。
どのようなメリット・デメリットがあるか理解した上で、利用を慎重に検討してください。

リースのメリット

リースのメリットは、少額で設備の導入が可能な点にあります。
初期費用として、まとまった金額を用意する必要はありません。
月額定額で利用し放題です。

しかもリースは、基本、新品を調達できるのもメリットの一つでしょう。
OA機器やIT機器の場合、最新鋭の機種を導入できます。
OA機器もIT機器もどんどん進化しているので、最新鋭のモデルを導入できれば新機能を活用でき、作業効率の向上も期待できるでしょう。

リースのデメリット

リースの場合、長年使い続けても、その物品の所有権が得られるわけではありません。
所詮借り物のため、設備を自由に処分できないのはデメリットといえます。

また、原則中途解約できない点も、場合によってはデメリットになりかねません。
中途解約できたとしても、キャンセル料や違約金という名目で料金請求される可能性が高く、
一般的には、残りのリース期間の利用料を一括で支払うように求められることが多いでしょう。

ビジネスローンとリース、どちらの方がおすすめ?

ビジネスローンとリースの違いや特徴について、これまで見てきました。
どちらがおすすめかは、ケースバイケースです。
そこでどんな時にビジネスローンとリース、どちらが向いているのかについて、ご紹介しますので、参考にしてください。

ビジネスローン向きの場合

もし、設備導入するにあたって、所有権を確保したい場合は、ビジネスローンで借り入れるのがおすすめです。
ビジネスローンで借り入れて購入すれば、所有権を得られます。
今後、どのように処分しても問題ありません。

また、物品を購入するのではなく、各種支払いや給与資金・納税資金を確保したい場合も、ビジネスローンがおすすめです。
ただし、ビジネスローンは、ほかの資金調達法と比較して金利が高めです。
売上など入金があれば、優先的にビジネスローンの返済に充て、できるだけ早く完済すると良いでしょう。

リース向きの場合

設備を導入したい、できるだけ初期費用を少なく抑えたい場合は、リースがおすすめです。
リース契約の場合、毎月定額の利用料を支払うだけで良いので、初期費用のコスト圧縮が可能です。

また、月々定額を支払えば、設備を自由に使用できます。
月間で支払い額の変動をあまり大きくしたくない場合でも、リース契約がおすすめです。
ちなみに、リース料は、月々の経費として計上できるので、毎年の節税効果も期待できるでしょう。
できるだけ無駄な税金を支払いたくない法人代表者も、リースによる設備調達がおすすめといえます。

まとめ:両者の違いを理解してうまく使いこなそう

「借りる」という行為は一緒ですが、ここでご紹介したように、ビジネスローンとリースにはさまざまな違いがあります。
ビジネスローンは金銭に対して、リースは金銭以外の設備や備品などの物品を借りる行為である点が、一番の大きな違いといえます。
違いはあるものの、ビジネスローンとリースのどちらがおすすめかは、一概にはいえません。
特徴に違いがあり、一長一短なのです。

ビジネスローンもリースも使いようによっては、事業の資金繰りを円滑にしてくれる効果が期待できます。
必要な場面に応じて、ビジネスローンとリースをうまく使い分けて、キャッシュフローの改善を目指してみましょう。