ビジネスローンや事業ローンは銀行とノンバンク(消費者金融や信販会社など、預金を扱わない金融業者の総称)のどちらで利用すべきか?
それぞれに特徴やメリット・デメリットがあり、一言ではなかなか結論は出しにくいテーマです。
そこで今回は、ビジネスローンや事業ローンについて、銀行員が基本事項から解説します。
現場で融資審査する銀行員の説明なので、事業資金調達を検討している人は、ぜひ参考にしてください。

ビジネスローンや事業ローンは銀行とノンバンクのどちらで利用するべきか?〜1.ビジネスローン・事業ローンの基本事項

はじめに、ビジネスローン・事業ローン(事業者ローン)の基本事項を説明しますので、知識のブラッシュアップをしてください。

ビジネスローン・事業ローンとは?

「ビジネスローン」「事業ローン」とは事業資金融資の一種で、実は両者に明確な違いはありません。
一般には個人事業主や法人向けの比較的小口の融資(融資額で百万円単位から最大でも1千万円程度まで・金融業界では1千万円未満を小口と表現する)で、カードローンやマイカーローンのように手軽さもあることから「ローン」と呼び名がついていますが、事業資金融資の一種です。
呼び方も「ビジネスローン」「事業ローン」「事業者ローン」など様々ですが、この記事では同じものとイメージして読み進めてください。
続いて、ビジネスローン・事業ローンの特徴を解説します。

ビジネスローン・事業ローンのポイント1.早い〜審査と融資利用が早い

ビジネスローン・事業ローンはスピードが売りです。
銀行でも「即日回答!」(即日融資までは無理なようですが)をアピールし、ノンバンクでは「即日融資」(こちらは実現可能)を全面にアピールしています。

ビジネスローン・事業ローンのポイント2.手軽~保証人不要・無担保で手軽

原則として無担保、保証人不要といった手軽さも特徴の一つです。
申込者の負担を少なくして、積極的に推進したいからです。(*法人では代表者が保証人になるケースもありますし、審査結果で担保を求められる場合もあります)

ビジネスローン・事業ローンのポイント3.高め~金利は高め

金利が高めなのがビジネスローン・事業ローンの特徴の一つですが、これは融資までの早さや手軽さの代償とも言えます。
たとえば銀行ビジネスローンは最大年14%と、銀行の事業資金融資(申込者にもよるが年1%未満から年3%台が多い)と比べるとかなり高めです。
またノンバンクでは最大年18%台で、銀行よりも高めになっています。
ちなみにここで金利は最大金利(そのローンで最も高い金利水準)を紹介しています。
ビジネスローンの商品ページでは「年0.9%〜!」など最低金利を大きくアピールしているものですが、実際に最低金利が適用される保証はないので、検討する場合は一番高い金利で考える姿勢も必要です。

ビジネスローンや事業ローンは銀行とノンバンクのどちらで利用するべきか?〜2.銀行とノンバンクを比較

ではここから、ビジネスローン・事業ローンを銀行とノンバンクのどちらで利用すべきか?
いくつかの側面から比較・考察していきます。

比較1.早さ〜融資実行までのスピード

早さではノンバンクです。

銀行:融資回答は最短当日、融資利用は数日から1週間以上
ノンバンク:融資回答は最短1時間以内、融資利用は即日も可能

このように、双方スピードをウリにしていますが、スピードの面で銀行はノンバンクに太刀打ちできません。

比較2.手軽さ〜必要書類や契約手続きは?

手軽さは同レベルです。
銀行:申し込みから融資契約までネット完結が原則(一部郵送も)
ノンバンク:申し込みから融資契約までネット完結が原則

手続きの手軽さでは、両方とも大差なく同レベルです。
銀行のほうが特別に書類が多いということもなく、ほとんど変わらないでしょう。

比較3.柔軟さ〜赤字でも融資可能か?

審査はノンバンクのほうが、より柔軟です。

銀行:赤字でも融資は可能だが、その実現性は低い
ノンバンク:多角的に審査するので赤字でも融資可能なことも多い

ビジネスローン・事業ローンでは、銀行も他の事業資金融資よりは柔軟な姿勢があります。
ただし赤字決算でも融資してもらえるか?という点になると、無理ではなくても可能性はあまり高くないので、審査落ちも覚悟しておく必要があります。
いっぽうノンバンクは、銀行で融資を断られた顧客まで受け入れる柔軟性を持っているので、赤字だから即審査落ちとは決まっていません。

比較4.安さ〜借入金利は?

銀行:借入金利は年1%台〜
ノンバンク:借入金利は年3%台〜

前述した通り、実際に何%で借入利用できるか?は申込者にもよります。
しかし最低金利を見て分かる通り、やはり金利の安さでは銀行のほうが勝っていることがわかります。
ちなみに最大金利として紹介した金利は「利息制限法」による上限金利と関係しています。
利息制限法で借入の上限金利(それより高い金利で貸すと罰則を受けるなど、法律で制限されている金利のこと)が決められており、具体的には以下のとおりです。
 
<利息制限法の上限金利> 
● 元本(融資利用額のこと)10万円未満: 年20%
● 元本10万円以上100万円未満: 年18%
● 元本100万円以上: 年15%

比較5.きびしさ〜返済できなくなったときは?

返済できなくなったときの対応は、銀行・ノンバンクとも変わりません。
どちらかが甘いとか、どちらかがきびしいとかの差はなく、同様に契約事項に沿った対応です。
以下に、返済ができなくなったときの具体的な対応についてまとめてみました。
ビジネスローンに限らず事業資金融資全般や、住宅ローンあるいはカードローンも含め、融資で借りたお金は契約で決めた期限まで、分割返済できるものです。
たとえば住宅ローンなら長期間・35年後の期限までゆっくり返済できるわけですが、それは毎回の返済(約束で定めた返済という意味で「約定返済・やくじょうへんさい」と呼びます)が滞納しないことや、他にも約束事を守っていれば可能という意味です。
このように、ルールを守れば期限までゆっくり返済できるのも一つの利益として、融資の返済では「期限の利益」と呼んでいますが、逆にルールを守ればこの利益を失うことになるので「期限の利益を喪失する」と表現します。
これはビジネスローン以外にもいわゆる借金に共通する次項なので、ぜひ覚えてください。
前置きが長くなりましたが、ここからビジネスローンで期限の利益を喪失・つまり一括で即時に全額返済を請求されるケースについて解説します。

<ビジネスローンのきびしさ〜期限の利益喪失で全額返済を請求される事態>
● 約定返済が遅延し、督促されても3ヶ月以上、遅延の元利金額および遅延損害金を払わなかったとき 
*遅延の期間や返済回数などは事業者により基準が異なる
● 手形や小切手の不渡り、破産、差し押さえ、所有不動産の競売、あるいは税金の滞納などがあった場合
*差し押さえがあったり、破産などの場合は融資している事業者は「債権者」の立場となり、債権者あてに破産や差し押さえなどの通知があるので事実が判明する
● 住所変更の届出をしないなど、顧客側の都合で所在が不明になったとき
*失踪やいわゆる夜逃げなどで、転居先が不明になって督促状などの文書が郵送されなかった場合でも、通知が届いたとして手続きは進む
● 申し込みや審査で虚偽が発覚した場合
*申込時や契約時に入力・申告した内容がウソだったり、書類を偽造していたりすると、あとからそれが発覚した場合でも全額返済を求められることがある
● 口座凍結
銀行など金融機関の場合、上記したような期限の利益喪失状態になると、利用している預金は凍結されて、強制解約のうえ借入金の返済に充当されることがある
ちなみに利用口座に給料の振込があった場合も、原則として引き出しできないことになる。そのため金融機関に出向いて、返済の話し合いをしないと給料も融資残金に充当される可能性がある

ビジネスローンや事業ローンは銀行とノンバンクのどちらで利用するべきか?〜4.まとめ

今回はビジネスローンや事業ローンは銀行とノンバンクのどちらで利用するべきか?を解説してきました。
銀行員としては、資金調達を急ぐ場合や、赤字など審査に不安な場合はノンバンクを、そして長期的に資金調達したいなら銀行ビジネスローンを最初のきっかけに選ぶのがいいと考えます。
この記事が参考になれば幸いです。