今回はビジネスローンと2つの上限利息について銀行員が解説します。
目次
1.ビジネスローンと上限利息・基本事項
まず、ビジネスローンと2つの法律で決められている上限利息の基本事項から解説します。
ビジネスローンとは?
ビジネスローンとは、銀行などの金融機関や、消費者金融・信販会社中小の事業ローン会社などのいわゆるノンバンクが取り扱う、事業資金融資の名称です。ビジネスと名がついている通り、事業資金にしか使えませんので、個人が旅行に行くために借りることもできません。ビジネスローンのポイントは以下のとおりです
<ビジネスローンとは>
● 融資限度額は数万円から1千万円程度まで
● 限度が1億円など大きいものは、不動産担保ローン(不動産を担保にした融資)の場合がある 厳密には不動産担保ローンとビジネスローンは別の融資
● 返済期間は5年から10年までが多い
● 原則として無担保、保証人不要
上限利息とは?
上限金利は「法律で定められた融資利率の上限」と言う意味です。融資を取り巻く関係法律はいくつもありますが、その中で上限利息に関しては「利息制限法」「出資法」という2つの法律で決められ、規制されています。
2.利息制限法と出資法・2つの法律で規制される上限利息
上限利息は利息制限法、出資法という2つの法律で規制されています。
現在の上限利息としては、利息制限法の上限利息は年15〜20%、出資法の上限利息は年20%となっています。
利息制限法とは?
利息制限法とは、明治期に制定された法律から続く、お金の貸し借り(金銭貸借と呼ぶ)における利息の最高利率を規制した法律です。経済的に弱者と考えられる債務者(お金を借りる人)の保護が主な目的になっています。
利息制限法で、借入の上限利息はその元本(融資で借りたお金・融資残高のこと)の大小に応じて以下のように細分化されています。
<利息制限法における上限利息>
● 元本が10万円未満⇒上限利息は年20%
● 元本が10万円以上100万円未満⇒上限利息は年18%
● 元本が100万円以上⇒ 年15%
出資法とは?
出資法、正式な法律名は「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」で、略して出資法あるいは「出資取締法」とも呼ばれています。法律の主な目的は出資金の受入れに付いての規制や浮貸し(金融業の社員が会社を通さず個人的に融資して利息を受け取る違反行為)などを規制するものですが、そうした規制対象の行為の1つとして、金利に関する規制もあるのです。
<出資法における上限利息>
● 金融業者(金融機関、貸金業者双方が該当)が扱う貸付の上限利息は年20%まで
● 金融業者以外の場合は年109.5%まで
【解説】グレーゾーン金利
ここまで2つの法律と、それぞれの上限利息について解説してきましたが、それと関連する「グレーゾーン金利」についても少し解説を加えておきます。
以前は、利息制限法の上限利息と出資法の上限利息の間の金利帯(これが「グレーゾーン金利」と呼ばれた)でも有効とされていました。しかしその結果、法人や個人で借入利息負担に苦しむ人が増えたため、利息の制限を明確化するため法改正が実施されたのです。その結果、グレーゾーン金利も撤廃されることになりました。
3.上限利息と貸金業法・貸金業者の関係
ここまで、ビジネスローンの上限利息を規制する利息制限法・出資法について解説してきましたが、続いてこれらの上限金利と貸金業法・貸金業者の関係についても解説します。
貸金業法とは?
貸金業法は、借り過ぎや貸し過ぎを防ぐために貸金業者を規制するため1983年に起源となる方が生まれ、その後改正により2007年に「貸金業法」となりました。1980年代ごろから問題が顕在化していた多重債務の増加により、貸金業者は利息制限法と出資法に基づく上限利息を遵守することを義務付けられたのです。
貸金業法と上限利息の関係は?
ビジネスローンを扱う貸金業者は、貸金業法で規制されています。そして貸金業法には「利息制限法と出資法の上限利息を超えた融資をしてはいけない」という上限利息のルールがあります。つまり、貸金業法で上限利息を制定しているわけではないが、利息制限法と出資法の上限利息を守らなければいけないというルールがあるといった関係になっています。
ビジネスローンの上限利息〜法律との関係性
ビジネスローンも貸金業者が扱うのが主流なので、これら貸金業者によるビジネスローンも貸金業法で規制される上限利息の範囲内でなければいけない、そして、その上限利息は利息制限法・出資法という2つの法律が根拠法となっているという関係性です。
したがって、ビジネスローンでは貸金業法による上限利息がルール化され、その上限利息を超えた融資をした場合は、貸金業者は貸金業法だけでなく、利息制限法と出資法についても法律違反、ということになります。またこうした法律違反は刑事罰の対象になります。
4.銀行や消費者金融ビジネスローン・実際の利息は?
ここで実際にビジネスローンの利息が、法律で定められた上限利息を守っているのか?を見てみましょう。
(再確認)
出資法の上限利息:金融業者の融資は年20%まで
利息制限法:10万円未満・年20%、10万円〜100万円・年18%、100万円以上・ 年15%
金融機関(銀行・信金)ビジネスローンの借入利息
筆者調べ・( )内は融資額または融資限度
● 銀行A 年1.8%〜13.8%(10万円〜1千万円)
● 銀行B 年3.0%〜年14.0%(10万円〜1千万円)
● 信用金庫C 年4.8%〜9.8%(50万円〜1千万円)
消費者金融大手ビジネスローンの借入利息
筆者調べ・( )内は融資額または融資限度
● 消費者金融大手A 年3.1%〜年18.0%(50万円〜1千万円)
● 消費者金融大手B 年6.3%〜年17.8%(1万円〜300万円)
● 消費者金融大手C 年12.0%〜年18.0%(1万円〜300万円)
事業ローン会社(中小貸金業者)ビジネスローンの借入利息
筆者調べ・( )内は融資額または融資限度
● 事業ローン会社A 年3.1%〜年18.0%(50万円〜1千万円)
● 事業ローン会社B 年2.5%〜年18.0%(30万円〜500万円)
● 事業ローン会社C 年7.5%〜年15.0%(300万円〜1億円)
それぞれ利息に幅があるのは、融資を申し込んだ会社の決算内容など審査によって金利が決まるからですが、どれも出資法の上限利息である年20%を超えているところはありません。また実際の利息は、それぞれ融資額(元本)に対する上限利息を超えない金利設定になっているはずなので、やはり金融機関も正規の貸金業者も、それぞれ上限利息は守っていることがわかります。
【解説】ヤミ金や個人融資掲示板の借入利息
違法な金融業者である「ヤミ金・街金」や個人間で法外な利息の融資をする「個人融資掲示板」などは、文字通り違法な存在なので、当然というべきか各種法律の上限利息を超えて融資をしています。
法外な利息としては俗に言う「トイチ」(10日で1割・年10%の利息)が有名ですが、他にも「トニ」(10日で2割)「トサン」(10日で3割)「トヨン」(10日で4割)「トゴ」(10日で5割)あるいは「カラス金」( 1日1割・朝借りても、夕方にカラスが鳴く頃には1割の利息で借金が増えるという意味)などがあります。言うまでもなく、すべて違法・法外な利息なので、利用してはいけませんし、またそういった違法業者や違法な掲示板には注意してください。
ビジネスローンと「2つの上限利息」のまとめ
今回はビジネスローンと上限利息について、銀行員がわかりやすく解説してきました。
もちろん自社が資金調達するときには少しでも低金利であることが理想なのですが、金融機関でもノンバンクでも、事業資金でビジネスローンを利用する場合には、それを規制する法律と上限利息について、最低限の知識を持つことが大事だと銀行員の私は考えています。ですからこの記事が、みなさんの事業資金調達の参考になれば幸いです。