今回は貸金業務取扱主任者とビジネスローンの関係について、基本事項から解説していきます。
目次
1.貸金業務取扱主任者とは?
まず貸金業務取扱主任者の基本事項から解説します。
貸金業務取扱主任者の定義
貸金業務取扱主任者は、資格試験に合格した者に与えられる国家資格です。もともとは民間企業が創設したものですが、関係する法改正により、新たな国家資格となりました。
貸金業務取扱主任者が必要な業種
貸金業務取扱主任者は、貸金業法により設置が必要な業種が定められています。
貸金業法では「貸金業者には貸金業務取扱主任を設置する義務がある」と定められていて、貸金業者として消費者金融、融資の媒介業者(手形割引業者など)、不動産担保ローン事業者、信販会社、クレジットカード会社など、融資を業務として行う貸金業者には貸金業務取扱主任者の設置が義務付けられています。これらの貸金業者はビジネスローンを取り扱っていますので「ビジネスローンを扱う貸金業者には、貸金業務取扱主任者が必ず存在する」とも言えます。
必要な人数
2003年の関連法改正により、貸金業者は貸金業務取扱主任者を1名選任することが義務付けられました。また貸金業者の規模によって必要な人数も定められ、こちらは「始業書や事業所(支店など)ごとに、そこで貸金業務に従事する者のうち50人に1人以上の割合で、貸金業務取扱主任者を配置しなければならない」とされています。
2.貸金業務取扱主任者の仕事は?
貸金業務取扱主任者は、その所属する営業所などにおいて、業務に従事する職員に対し、業務を適正に実施するための助言や指導をおこなうという使命があり、具体的にいくつかの仕事があります。
法令等遵守(コンプライアンス)
いわゆる法令遵守(コンプライアンス)を周囲に浸透させるのが、貸金業務取扱主任者の仕事でも大きな1つです。法令や社内規則などを厳格に遵守することで、顧客保護にもつながり、つまりは顧客や社会からの信頼を確立できることになるのです。
顧客情報の管理
貸金業者も、日常の業務から様々な顧客情報(個人情報)を手に入れることになります。そのため、こうした顧客情報を厳格に管理する体制づくりを行うなど、貸金業務取扱主任者の大事な仕事と位置づけられています。
本人確認
融資の審査で必要なことは言うまでもなく、顧客の本人確認は「犯罪による収益の移転防止に関する法律」などで規制される、いわゆるマネー・ローンダリング(犯罪で手に入れた資金を、別の取引を迂回することで洗浄すること)を防止するために貸金業務取扱主任者の役割も重要となっています。
反社会的勢力との関係遮断
反社会的勢力との関係遮断も、貸金業務取扱主任者が行う重要な仕事の1つです。こちらも本人確認と同様に、反社会的勢力と疑われる顧客からの申込を遮断するだけでなく、そうした事例があった場合には、関係省庁への速やかな報告をすることも貸金業務取扱主任者の使命となっています。
3.貸金業務取扱主任者とビジネスローンのポイント
貸金業務取扱主任者とビジネスローンの関係について、いくつかのポイントに分けて解説します。
ポイント1.「ビジネスローンを取り扱うのが貸金業務取扱主任者」ではない
ここまでの説明でわかるように、貸金業務取扱主任者は、貸金業者において内部から自社の業務を監視し、適正な業務と顧客対応ができているか?などをチェックする存在です。したがって、ビジネスローンの取り扱いはしません。「貸金業務取扱主任者」という名前からは、なんとなく融資担当者の主任、チーフであるかのように感じてしまいがちですが、むしろそれとは逆で、ビジネスローンの取り扱いをする担当社員を監督・指導するのが貸金業務取扱主任者なのです。
ポイント2.金融機関には、貸金業務取扱主任者設置の義務はない
金融機関は貸金業者ではないので、貸金業法の規制対象ではありません。それと同じ理由で、貸金業務取扱主任者を設置する義務もないのです。なぜかと言えば「貸金業務取扱主任者は、貸金業者が設定しなければならない義務を貸金業法が定めている」ので、貸金業者ではない金融機関には関係のない話し、となるのです。
ただし、国家資格として融資業務のスペシャリストをアピールできるので、銀行員など金融機関の職員でも積極的に貸金業務取扱主任者の資格を取り、名刺などに肩書の1つとしてアピールしている人が増えています。
ポイント3.顧客と接触する機会は少ない
ポイント1でも述べた通り、一般職員のように顧客対応はしないのが原則なので、貸金業務取扱主任者と顧客が会う機会は少ないと言えます。もっとも、顧客の立場では融資対応をしてもらえれば相手の資格など気にならないわけで、むしろ貸金業務取扱主任者が登場するような事態(職員が重大な違反行為をしたとか、顧客から苦情があり大問題に発展したなど)に巻き込まれないほうがいいわけですから。
ビジネスローンと貸金業務取扱主任者〜まとめ
今回は、ビジネスローンと貸金業務取扱主任者の関係について解説してきました。みなさんが貸金業務取扱主任者に会ったり、業務を取り扱ったりする機会は少ないと思いますが、ビジネスローンという融資を介して、密接に関係しているのです。