法人名義で住宅ローンを組んだ場合の審査について解説します。実は住宅ローンを法人名義で申し込むことはできません。ただし法人名義で住宅ローンを組んで審査を受ける代わりの手段として不動産担保ローンを利用する方法があります。不動産担保ローンを使って法人が住居兼事務所を購入する場合のメリットや注意点について解説しましょう。

法人名義で住宅ローンは審査に落ちる以前に不可能

マイホームを購入する際に住宅ローンを利用する際に、例えば法人の事務所を兼ねた家を考えた際に、法人名義として住宅ローンを組みたいと考えるかもしれません。しかし、結論を言えば法人名義で住宅ローンは組めません。住宅ローンはどちらかといえば安定した企業に勤めている会社員向けの商品だからです。

法人名義の場合は事務所としての住宅を不動産担保ローンで購入する

法人名義で住宅ローンのようにローンを組む方法に不動産担保ローンがあります。実は住宅ローンも購入したマイホームを担保として融資を受けるもののため、広い意味での住宅担保ローンです。自営業者や法人代表者の場合は、会社員ではないので住宅ローンは組みにくいですが、不動産担保ローンであれば組むことができます。

1.地方銀行などの銀行融資
2.信用金庫・信用組合など
3.ノンバンクのビジネスローン

法人が住宅のための不動産担保ローンを利用する際には主に上記3つの金融機関があります。詳しくみていきましょう。

1.地方銀行などの銀行融資

法人の場合は事業性が認められれば銀行融資という手があります。家を事務所と兼任して融資を申し込む方法ですが、よほど企業の実績がないと大手銀行は厳しい場合があるので、地域に密着した地方銀行のほうが申し込みやすいです。不動産担保ローンの場合、所有している不動産の資産価値が高いと融資の審査に通りやすいです。

2.信用金庫・信用組合など

地方銀行よりも審査に通りやすいのは信用金庫や信用組合です。信用金庫や信用組合の場合の不動産担保ローンの場合は信用金庫や信用組合の会員や会員となる資格を有する場合といった制限があるので注意しましょう。入会には職務経歴書やビジネスプランなどの書類が必要ですが、会員になっておけば地元のビジネスで大いに役立ちます。

3.ノンバンク

もっとも審査に通りやすい可能性があるのがノンバンクです。ノンバンクは無担保無保証のビジネスローンの他、不動産担保ローンも取り扱っているところが多いです。ノンバンクは銀行系よりも審査に柔軟に対応してくれることが多いです。ただし銀行よりも金利が高めだったり利用目的に制限をかけている場合があるので申し込む際にしっかりと確認しておきましょう。

法人名義で住宅を購入する際の審査について

法人名義で住宅兼事務所を購入する際に不動産担保ローンを申し込んだ際の審査のポイントには次のようなものがあります。

1.不動産の担保価値が審査される
2.返済負担率がクリアできる信用審査がある
3.安定性をアピールするため財務状況は見せ方を工夫する

以下、詳しくみていきましょう。

1.不動産の担保価値が審査される

不動産担保ローンの場合は最初に不動産の担保価値が審査されます。担保として拠出される資産の価値がどのくらいのものかは、法人の信用力や法人代表の信用力よりも重視されます。たとえ開業間もないような法人でも、都会の一等地にあるような不動産を担保として拠出すれば審査に通りやすくなります。

2.返済負担率がクリアできる信用審査がある

ローンは融資、借入金なので、返済しなければなりません。そのさい返済の負担率が余り高いと、毎月きっちりと返してもらえないと判断される恐れがあり、審査に悪影響を及ぼします。そのため返済負担率が金融機関が定める基準をクリアできるかどうかが大きなポイントになります。

3.安定性をアピールするため財務状況は見せ方を工夫する

法人の場合はその信頼性を示すための指標として財務状況があります。貸借対照表や損益計算書をはじめとする決算資料を提出するわけですが、その見せ方を意識しましょう。法人の財務上安定していることを金融機関にうまくアピールできれば審査に有利に働きます。

法人名義で住宅をローンで購入するメリット

個人で住宅ローンを申し込むのと法人名義の住宅を不動産担保ローンを利用して購入するのか迷うかもしれません。参考までに法人名義で住宅をローンで購入するメリットを紹介します。

1.高額な物件を購入が可能
2.経営にかかわる経費計上ができるので節税効果が高い
3.経常利益が800万以下の場合は税率が低い
4.住宅を減価償却すると法人税や住宅税が軽減される
5.手元に個人名義の資金を残せる
6.団体信用生命保険への加入不要な場合がある

上記、6項目について詳しくみていきましょう。

1.高額な物件を購入が可能

一般的に法人名義で不動産担保ローンを選んだほうが高額物件の購入が可能です。あくまで法人としての本社事務所という位置づけで融資の申し込みができるからです。

2.経営にかかわる経費計上ができるので節税効果が高い

住宅を事務所と兼任すると経費計上を増やすことができます。事務所にかかる光熱費や電話などの通信費も企業の経費として落としやすく節税効果が期待できます。

3.経常利益が800万以下の場合は税率が低い

法人で利益がでれば法人税を払いますが、資本金が1億円以下で経常利益が800万以下であれば税率が低いです。経常利益が800万円以下の場合通常の法人税率は15%(適用除外事業所は19%)で、800万円を超えると23.2%になります。

4.住宅を減価償却すると法人税や住宅税が軽減される

購入した住宅は法人の資産となります。法人の資産は毎年減価償却することにより年々資産の価値を会計上減らしていけるので、法人税や住宅税の軽減につながります。

5.手元に個人名義の資金を残せる

法人名義での住宅兼事務所の購入で必要な資金は法人から出ます。そのため法人代表としての個人名義の資産とは無関係なので、個人名義の資産が残せることもメリットのひとつです。

6.団体信用生命保険への加入不要な場合がある

一般的な住宅ローンでは団体信用生命保険(団信)への加入が半ば強制的に行われる場合があり、団信に落ちて住宅ローンが組めないという可能性があります。しかし、不動産担保ローンの場合は団信という制度そのものがないため、加入する必要はありません。

法人名義で住宅をローンで購入するデメリット

法人名義で住宅を購入する際、デメリットもいくつかあるので注意しましょう。

1.不動産取得税や固定資産税がかかる

2.不動産所有の維持費用が掛かる

3.売却時に税金を支払う必要がある

4.法人としての信用度で融資の是非が決まる

5.法人代表者の個人の信用度によっては融資が断られる恐れがある

6.不動産としての担保価値が低いと融資の額が低くなる恐れがある

上記、6項目について詳しくみていきます。

1.不動産取得税や固定資産税がかかる

不動産担保ローンを使って法人が自宅兼事務所を購入した場合、不動産取得税や固定資産税がかかります。

2.不動産所有の維持費用が掛かる

不動産を所有すると、特有の維持費用が掛かります。例えば事務所を賃貸の場合、ビルのオーナーが負担するような修繕費などもすべて自分で行わなければなりません。

3.売却時に税金を支払う必要がある

不要となった所有していた不動産を売却する際に税金を支払う必要があります。具体的には「登録免許税」「印紙税」「住民税・復興特別所得税」「譲渡所得税」の4つがかかります。

4.法人としての信用度で融資の是非が決まる

不動産担保ローンを使って住宅兼事務所を購入する場合、担保としての不動産の資産価値も大事ですが、法人としての信用度も審査に影響する場合があります。例えば赤字続きの法人であればいくら資産価値の良い不動産を担保として拠出しても返済能力に疑問を持たれる恐れがあります。

5.法人代表者の個人の信用度によっては融資が断られる恐れがある

法人代表者個人の信用度も融資の審査に影響を及ぼす可能性があります。無担保無保証よりは影響は薄いとはいえ、法人代表者がいわゆるブラック(信用情報)に金融事故の記録があると審査は厳しいでしょう。

6.不動産としての担保価値が低いと融資の額が低くなる恐れがある

不動産担保ローンの場合は不動産の資産価値が審査に大きく影響します。不動産であればなんでも良いわけではありません。過疎地で行くのも困難な山の中の土地を担保に拠出しても審査は厳しくなるでしょう。

まとめ

法人名義で住宅ローンは審査以前に申し込めません。代わりに不動産担保ローンを利用します。不動産担保ローンを使って法人名義で住居兼事務所を購入するとメリットも多くありますが、半面デメリットもあるのでしっかりと良し悪しを見比べてから判断しましょう。