精算の手間が省けたりポイント還元が受けられたりするなど、経費の支払いには法人カードが便利です。
個人向けのクレジットカードと異なり、保証人を必要とする法人カードも多く存在します。
これから法人カードを発行したい人の中には、保証人をどうするか悩んでいる方もいるでしょう。
そこで今回は、法人カードはどんな人物を保証人にすべきか、また保証人に責任が生じるケースについて解説していきます。
目次
法人カードの保証人は「連帯保証人」であることが多い
法人カードの保証人は「連帯保証人」であることがほとんどで、通常の保証人よりも支払いに対する責任が非常に重いです。
クレジットカードの契約における「連帯保証人」とは、カード会社に対して契約者と同等の支払い義務を負う方のことを指します。
会社の経費は高額である場合が多く、カード会社としても確実に資金回収したいと考えるのは当然です。
そのため、より責任の重い連帯保証人を設定する必要があるのはやむを得ません。
連帯保証人には次に紹介する「保証人の権利」が認められていない点も要注意です。
したがって、法人カードの契約者と連帯保証人になる人物との信頼性は最重要と言えるでしょう。
法人カードの契約時に「連帯保証人」には認められない「保証人」の権利
「連帯保証人」は「保証人」に認められている以下の権利をもちません。
強制的に未払金の支払い義務を負うリスクがあることを事前に理解しておきましょう。
催告の抗弁権
カード会社から保証人に督促が来た場合に「まずは契約者に請求してください」と主張する権利のことです。
契約者と連絡が取れないなどの事情から、保証人に法人カードの支払いが要求されるケースも考えられます。
通常は催告の抗弁権を主張することで支払いを拒否できますが、この権利がない連帯保証人はカード会社からの請求を拒めません。
検索の抗弁権
契約者が返済拒否したことで保証人に請求が来た場合に「まずは契約者の財産を差し押さえてください」と主張する権利のことです。
たとえ契約者本人に返済能力があったとしても、先に保証人の資産を差し押さえるよう求められる場合があります。
連帯保証人はこの権利をもたないため、カード会社の要求に従うしかありません。
分別の利益
保証人が複数いる場合、その人数で分け合った金額を支払えば良いとされる権利のことです。
たとえば500万円を返済する場合、保証人が5人なら1人100万円ずつ負担すれば問題ありません。
しかし、連帯保証人の場合は人数に関係なくそれぞれが未払金全額を負担するため、500万円を1人で返済することを強いられます。
法人カードの保証人は契約者によって扱いが異なる
法人カードは「個人契約」か「法人契約」かによって保証人の要否が異なります。
法人の場合
法人の代表者が個人契約する場合は保証人が必要ありません。
しかし、契約者が「法人自体」となる場合は連帯保証人が必要になるケースがほとんどです。
この場合は、法人代表者を連帯保証人として法人契約することがおすすめです。
そうすると法人代表者の信用情報が加味されるため、カードの審査が通りやすい傾向があります。
ただし、法人代表者を退く際は必ず法人カードの契約情報を変更してから引き継ぎましょう。
変更手続きを忘れてしまうと、退社した後もカード会社から請求が来るため注意が必要です。
個人事業主の場合
通常のクレジットカードと同じく個人契約となるため、基本的に保証人は不要です。
中には契約に連帯保証人が必要なカードもありますが、その場合は契約者以外の第三者を保証人として立てる必要があります。
身近な第三者として、両親や兄弟のほか仕事上の関係者に頼むのが無難でしょう。
ただし、公的年金は差し押さえができないため、それしか収入がない場合は親族であっても連帯保証人にできないので要注意です。
当然ながら、本人の承諾が得られないまま勝手に連帯保証人にするのは原則無効となります。
リスクの説明をしっかりした上で承諾してもらうことで、無用なトラブルを避けましょう。
連帯保証人になれるケース
・契約者の親族や仕事上の知人
・安定した所得がある
・日本国内に住んでいる(連絡がすぐ取れる)
連帯保証人になれないケース
・所得が少ない
・収入が公的年金のみの高齢者
・未成年
保証人が法人カードの支払いを要求されるケース
法人カードの保証人が契約者のかわりに返済しなければならない状況として、以下が挙げられます。
契約者が支払いを滞納・拒否した
契約者が支払いを滞納または拒否した場合、契約者の財政状況に関係なく連帯保証人が支払いに応じなければなりません。
法人カードの連帯保証人は、カード会社に対して契約者と同等の返済義務を負うことを理解しておきましょう。
契約者と連絡が取れなくなった
契約者と連絡が取れない場合も保証人が責任を負います。
カード会社は契約時に連帯保証人の連絡先も把握するため、契約者が音信不通になった場合に連帯保証人に連絡が来るのは当然のことです。
連帯保証人になる際は、契約者と突然連絡がつかなくなるリスクも理解しておきましょう。
契約者の死亡や債務整理の申し立て
死亡などの理由から契約者に支払える見込みがなくなった場合も、連帯保証人が未払金を返済しなければなりません。
契約者が法人の場合は、法人破産がこれにあたります。
連帯保証人が法人代表者であれば、代表者個人も破産の申し立てをすれば支払いを免責してもらうことが可能です。
法人カードを滞納したら保証人や契約者はどうなる?
次に、法人カードの支払いを滞納することで契約者や保証人にはどのような影響があるか解説していきます。
督促の連絡が届く
契約者が期日までに法人カードの支払いをしなかった場合、連帯保証人にも督促の連絡が届きます。
法人代表者を連帯保証人として法人契約している場合は、法人代表者の個人資産から滞納金を支払うことになるので注意しましょう。
信用情報に傷がつく
契約者・連帯保証人のどちらも支払いに応じなかった場合、両者の信用情報に傷がつく可能性が高いです。
最悪の場合、信用情報機関のブラックリストに載ってしまうことも考えられます。
これにより、新たなクレジットカードやローンの審査に通りにくくなってしまうのです。
カードの利用停止
法人カードを滞納してしまうと、一時的にカードが利用できなくなってしまいます。
早い段階で滞納金を支払うことができれば利用停止が解除される可能性が高いです。
しかし、そのまま滞納が続いたら強制解約は免れません。
先ほど説明したとおり信用情報に傷がついた状態となるため、再度カードの申し込みを行っても審査は通らないと考えたほうが良いです。
延滞金が発生する
督促の連絡に応じないと、滞納金に加えて延滞金の支払い義務が発生します。
これを「遅延損害金」と言い、消費者契約法による利率上限は14.6%です。
遅延損害金は「滞納額(元金)×利率÷365日×延滞日数」で求められます。
仮に100万円を10日間滞納していた場合、100万円×14.6%÷365日×10日=4000円を支払わなければなりません。
滞納する期間が延びるほど延滞金が増えていくので注意してください。
カード会社に訴訟される
それでも滞納し続けた場合、カード会社に訴訟を起こされる可能性があります。
契約者や連帯保証人に対して滞納金の一括払いや財産の差し押さえを要求することになるので、そうなる前に支払いに応じるようにしましょう。
法人カードの契約者や保証人がトラブルを避けるためにできること
カード会社から支払いの督促が来る前に、以下のような対策をしておくことがおすすめです。
・毎月決まった日に引き落とし口座の残高を確認する
・大きな支出がある場合は分割払いを検討する
・カードの利用範囲を制限する
このような社内ルールを設定することで、残高不足や支払い忘れを防げます。
キャッシュフローの明確化にもつながるため、業務の効率化を図ることもできるでしょう。
法人カードを滞納してしまったら契約者や保証人はどう対処する?
支払う見込みがある場合は、なるべく早い段階でカード会社に相談すると理解を得られるかもしれません。
滞納の理由によっては、支払期日の延長や分割払いに対応してもらえる可能性があります。
支払いを忘れていて督促の連絡が届いた場合も、気づいた時点で事情を説明すると良いでしょう。
今後も支払いが難しいと考えられる場合は、弁護士への相談を検討したほうが良いです。
弁護士にサポートしてもらうことで、カード会社との交渉や債務整理を円滑に進められます。
法人カードの支払いができない場合に行う債務整理の種類は次の3つです。
任意整理
任意整理は、カード会社に滞納金の減額を直接交渉する手続きを指します。
3〜5年の間に分割払いで元本のみ返済するため、利息を払わなくて良いのが主なメリットです。
ただし、対象となる金額が大きい場合はカード会社が交渉に応じない可能性もあるので注意しましょう。
個人再生
個人再生は、支払金額を5分の1程度に減らしてもらい残りを3年分割で返済する手続きを指します。
住宅や車、生命保険などの資産を所持したまま手続きができる場合もあり、任意整理では支払えないほど多額の返済が生じたときに有効です。
返済額の大幅な軽減が見込めるので、安定した収入があり住宅や車を手放さずに手続きしたい場合は個人再生を選択しましょう。
自己破産
個人再生でも返済できる見込みがない場合は、自己破産を検討しなくてはなりません。
自己破産とは、所有している財産を手放す代わりに滞納金の返済義務が免除される手続きです。
自己破産すると職業・資格を一定期間制限されるほか、クレジットカードやローンを最低5年は利用できません。
デメリットを考慮すると自己破産は最終手段と考えるべきですが、収入や資産が少ない方に向いています。
法人カードの保証人のまとめ
法人カードの保証人は「連帯保証人」であることがほとんどです。
債務者本人への請求や差し押さえを要求できる「保証人」と違い、責任の重い「連帯保証人」は支払いを拒否できません。
今回紹介した内容をよく理解し、法人カードの保証人は慎重に選びましょう。
もしも法人カードの滞納金で悩んでいる場合は、速やかに弁護士へ相談することをおすすめします。
専門家から助言を受けることで自身の心理的負担も軽減されるため、一人で抱え込む前に相談してみましょう。