資金調達に悩む建設業者は多いのではないでしょうか。建設業は工事を請け負ってから代金が支払われるまでの期間が長く、それまでの先行支出も多くなります。受注した案件の規模によっては、高額な支払いが一気に押し寄せることもあるでしょう。
このように建設業には特有の事情があります。そのなかで、建設業を営む人はどのように資金調達をすべきでしょうか。この記事では、建設業を営む方々に最適な資金調達方法を解説します。適切な資金調達で経営を安定させましょう。
目次
建設業特有の経営事情
建設業は資金繰りが難しいと言われています。それは建設業という職種が、スピーディーな資金調達に向かない職種であるからです。資金調達のサイクルが安定していれば問題はないのですが、一度狂い始めてしまうと、とたんに資金調達が難しくなります。
その理由を詳しく見てみましょう。
受注から支払いまでの期間が長いうえに先行支出も多い
どのような業界であっても、商品やサービスを提供したあとに代金を受け取ることが一般的です。飲食店であれば受注から商品の提供、支払い完了までに1時間ほどで済むかもしれませんが、建設業ではそうはいきません。
建設業の世界では、受注から代金を受け取るまでに平均3か月半かかると言われています。工事の規模にもよりますが、工事完了後の支払いとなると納得できる期間でしょう。契約によっては工事費の一部を前払いしてもらうことや、工事の進捗に合わせて都度払いされることもあります。しかし経費を賄えるだけの金額を受け取れるとは限りません。
さらに、先行支出が高額になることも建設業特有の事情です。
材料費や外注費、人件費など、工事を進めるためにかかる費用は高額になります。建設業の工事は規模も大きく、自社だけですべてを完了させるものではありません。足場屋さんに足場を組んでもらったり、重機をレンタルしたりと、さまざまな費用がかかります。
工期が伸びる可能性があるのも建設業の特徴でしょう。天候や地質などの影響により、予定よりも工期が伸びることもあります。そのぶん経費が増えることや、支払いまでの期間が延びることがあります。
手形取引が多く、すぐに現金化できない
手形取引が多いことも建設業の特徴です。
建設業では高額な取引が多いため、手形による取引も多くなっています。長い工期を経てようやく代金が支払われても、手形ではすぐに現金化できません。結局、すぐに資金調達ができないのです。
手形取引は廃止の方向に進んでいますが、今後も電子債権は継続していきます。建設業においても今までの慣例通り、売上金が即時に現金で支払われる可能性は低いと言えるでしょう。そのため、今後も資金調達について気を使っていかなければなりません。
融資によって資金調達をする
建設業を営む人が資金調達するためには、融資を受けたり売掛債権を利用したりという方法が考えられます。
ここでは、融資による資金調達について詳しく解説していきます。
建設業を営む人が融資を受ける際に必要となる資料
融資を受ける際には審査を受けなければなりません。審査を受ける時に必要となる書類は以下のようなものがあります。
・決算書
・試算表
・資金繰り表
さらに建設業の場合では、受注工事明細表を求められることがあります。受注工事明細表とは、次のような内容を記載したものです。
・発注者名
・発注工事名
・工事場所
・契約工期期間
・請負金額
さらに、次のような内容が記載された資料を求められることもあります。
・工事代金入金済・入金予定
・支払済・支払予定
・進捗計画や進捗度合
資金調達は建設業を営む上で非常に大切です。信頼できる資料を提出し資金調達をしていきましょう。
日本政策金融公庫を利用した融資
日本政策金融公庫は政府が出資している政府系金融機関です。
中小企業、小規模事業者などに幅広く融資をおこなっており、実績の少ない創業期であっても利用することができます。資金繰りが難しい建築業者にとっても非常に利用しやすい融資と言えるでしょう。企業を支援する側面が強いため、無担保無保証による貸し付けの種類が豊富です。地域経済の活性化を目指し、地域産業を伸ばしたり雇用を増やしたりという目的で、企業にとって良い条件の融資を提供しているのです。
信用保証協会の保証付き融資
銀行や信用金庫などで資金調達しようとしたときに、保証付き融資を勧められることもあるでしょう。
信用保証協会は中小企業、小規模事業者が銀行などから資金調達をする際に保証人となってくれる機関です。信用保証協会が保証人になることで、実績や信用が少ない建築業者の場合でも融資を受けやすくなります。信用保証協会へ所定の保証料を支払うことで、万が一返済が滞った時の保証を受けられる仕組みです。
建設業の場合、信用保証協会を利用できるのは次のどちらかに当てはまる企業規模に限ります。
・資本金3億円以下
・従業員数300人以下(小規模事業者の場合は20人以下)
保証される融資は、運転資金や設備投資などの事業資金融資のみです。保証にはさまざまな種類がありますので、状況に応じて活用しましょう。
融資を受けることが難しい場合はビジネスローンで資金調達も
融資には審査があります。もしも審査に通ることができず倒産危機に陥りそうな場合には、ビジネスローンを利用する方法もあります。
たとえば都道府県などに貸金業として登録しているノンバンク(銀行以外の貸金業者)であれば、無担保無保証で即日ビジネスローン融資を受けられる可能性があります。
建設業は仕事がなかなか現金化されない業界です。今後代金の支払われる当てがあるにも関わらず、一時的に資金が足りないことで倒産してしまっては元も子もありません。つなぎ融資としてビジネスローンを利用した資金調達をし、資金のサイクルを正常化させると良いでしょう。
売掛債権を利用して資金調達する方法
建設業を営む人が利用できる資金調達方法には、融資のほかに売掛債権を利用する方法があります。具体的には次の通りです。
手形割引
建設業を営む人が利用しやすい資金調達方法として手形割引があります。
手形割引は、満期前の手形を所定の手数料を支払うことで換金する方法です。手形による支払いが多い建設業の世界では、手形割引を利用することも多いのではないでしょうか。手形の支払期日まで待っていては資金が足りなくなるという場合に非常に有効です。
融資による資金調達の場合、利息を払い続けなければなりません。借入期間が長くなればなるほど、トータルの支払利息は増えていきます。しかし手形割引であれば、支払期日までの日数に応じて手数料が決まるため、融資よりも手数料を抑えられる可能性があります。
注意しなければならないのは、受け取れる金額が手形の額面よりも少なくなるということです。そのため、必要な金額の資金調達が難しいこともあります。
手形割引にも審査があり、審査は手形を振り出した企業の信用力が影響します。振り出した企業の信用力が低く不渡りの恐れがある場合には、手形割引をおこなえない可能性もあります。手形割引を利用する場合には、比較的大きな企業の手形を利用すると良いでしょう。
ファクタリング
手形割引と似たような仕組みにファクタリングがあります。
手形割引では、受け取った手形しか現金化することができませんでした。しかしファクタリングであれば、今後受け取る予定の代金(売掛債権)すべてを現金化できるようになります。代金の支払いまでに時間がかかる建設業の世界では、非常に有益な方法です。
ファクタリングに利用できる売掛債権は、主に入金日・入金額が確定している売掛金です。そのため請求書を発行しなければファクタリングを利用できません。
支払期日前に現金化できることがメリットのファクタリングですが、仕事を受けてから請求書の発行までに時間がかかってしまうと、結局は現金を受け取るまでに時間がかかってしまいます。
しかし近年では、将来的に発生する売掛債権に対してもファクタリングをおこなえるようになりました。
それにともない、仕事を受注した時点(注文書が発行された時点)で現金化をおこなえるファクタリング業者も出てきました。工事の完了までに時間がかかる建設業界において、このような方法は非常に有益となるでしょう。
売掛債権担保融資
手形割引やファクタリングでは額面以上の資金調達ができません。しかし売掛債権担保融資を利用することで、売掛債権の額面を超える資金調達ができる可能性があります。大きな金額が動く建設業の世界において、額面以上の資金調達ができることは大きなメリットです。
売掛債権担保融資のひとつとして、中小企業庁が実施している流動資産担保融資保証制度というものがあります。売掛債権を含む流動資産を担保にすることで、融資の際に保証を受けられるというものです。
流動資産担保融資保証制度は中小企業者が利用でき、担保として使用できる債権には次のようなものがあります。
・売掛金債権
・割賦販売代金債権
・工事請負代金債権
工事の請負代金債権が利用できるため、建設業でも使いやすい制度です。
また日本政策金融公庫では、流動資産を担保にすることで、無担保時よりも低い金利で融資を受けられる可能性があります。融資を考えている場合にも売掛債権を上手に利用し、効率よく資金調達してください。
建設業の世界で資金調達する方法のまとめ
建設業はその仕事の特性上、仕事を受けてから現金を受け取るまでに長い時間がかかります。現金を受け取る前に支払わなければならい費用も多いため、資金繰りが上手くいかなくなることもあるでしょう。
そのような時には融資を受けたり、売掛債権を利用したりといった資金調達がおすすめです。とくに建設業の世界では売掛債権を豊富に抱えていることが多いため、ファクタリングや売掛債権担保融資が有効です。適切な資金調達で資金繰りを安定させましょう。