今も昔も、起業家にとって大きな壁となるのは資金調達です。どれだけ自信に満ちた事業計画や成長戦略を描いたとしても、実行に必要な「カネ」という資産を確保できなければ、事業は机上の空論に終わってしまいます。実際、多くの起業家が資金不足を理由に、新たな挑戦を断念したり、途中で撤退を余儀なくされたりしています。

また、すでに事業を運営している経営者であっても、金融機関からの追加融資や株式による資金調達が認められず、事業拡大の好機を逃してしまったという事例は決して珍しくありません。資金調達に関する情報を十分に調査せず、制度や方針を正しく理解していないことが、失敗の原因になるケースも多いのです。

事業を行ううえで重要なのは「ヒト・モノ・カネ」だとよくいわれますが、「カネ」がなければ人材を雇うことも育成することもできず、設備投資や商品開発といった「モノ」への投資も難しくなります。つまり、資金調達はすべての土台であり、経営の成否を左右する最重要要素だといえるでしょう。

そのため、起業家や経営者は、投資家向けのセミナーに参加したり、専門書やレポートを読んだり、信頼できるサイトやトップページに掲載されている一覧情報を参考にしながら、資金調達の方法を学ぶ必要があります。実際のデータや成功事例、専門家の意見に触れ、疑問点があれば質問しながら理解を深めていくことが重要です。

このように、「カネ」は最重要な経営資源である一方、ヒトやモノと比べて確保の難易度が非常に高く、対象となる制度や条件も複雑です。だからこそ、正確な情報収集と継続的な学びを通じて、自社に合った資金調達の道を見つけていく姿勢が、これからの起業家には強く求められているのです。

資金調達の選択肢は金融機関からの融資に限らない
資金調達の選択肢は金融機関からの融資に限らない

ところで、多くの起業家や経営者は資金調達を考えた際に真っ先に出向くのが、銀行や信用金庫、それに日本政策金融公庫といった各金融機関かと思います。

それは、こういった金融機関からの融資はノンバンクのビジネスローンに比べても金利が低い上に、融資を受けられたという事実が信用スコアとなり、企業の社会的価値の向上や、取引先からの信頼を高める要因にもなるからといえるでしょう。

しかし、金融機関の融資審査の基準が高く設定されており、通過が難しいことは周知の事実。

追加融資となればなおさらです。

そういったハードルの高い金融機関の融資審査に通過できなったかった時点で、「資金調達は失敗」だと頭を抱えてしまう起業家や経営者も数多くいますが、幸いにも現在では資金調達の選択肢は幅広く存在しています。

そのひとつが個人投資家からの出資です。

個人投資家とのコンタクトは難しくない
個人投資家とのコンタクトは難しくない

個人投資家からの出資など、そもそもそういった人物に出会うことすら難しく、金融機関からの融資よりもハードルが高いと考える人も多いようですが、手元にあるPCやスマホのみで出資を受けられる可能性もあるのです。

たとえば、ツイッターやfacebookといったSNSの活用。

実際に若手起業家の中にはSNSで個人投資家と積極的にコンタクトを取り、自身の事業計画やその価値をアピールすることによって創業資金や運転資金の獲得に成功したという事例が多々あります。

ただし、SNSには個人投資家を騙りながら、「保証金」などの名目で金銭をだまし取るような悪質な人物が潜んでいるのも事実。

SNSを活用した個人投資家とのコンタクトを不安に思われるようであれば、マッチングサービスの利用も選択肢のひとつとなります。

利用にあたって手数料の発生がややネックとはなるものの、個人投資家と起業家を結びつけるマッチングサービスは、サービスを展開する企業によって個人投資家が精査されることもあり、SNSよりも安心したコンタクトが可能になるのが特徴だといえます。

個人投資家に出資を求める際の注意点
個人投資家に出資を求める際の注意点

このように、今や個人投資家からの出資は決して難しい選択肢ではなく、金融機関からの融資に比べれば「カジュアルな資金調達手段」といえなくもないくらいにハードルが下がりそうなイメージがありますが、注意すべき点もいくつあります。

ひとつは個人投資家がどういった目的で投資を実施しようと考えているかを把握することです。

個人投資家による出資は融資ではないため、利息を伴う返済を求められることはありませんが、事業の成長に応じたリターンを求められることは十分に考えられます。

もちろん中には、事業や人間性に大きな魅力を感じ、リターンを求めない慈善活動的な出資を申し出る人もいるかと思います。

どういった目的であれ、出資側と出資を受ける側の認識に齟齬が生じることによって後々大きなトラブルに発展するケースも実際に発生していることもあり、それを回避するためにもしっかりと互いの意思疎通を図る必要があります。

もうひとつは、事業の価値を明確に提示しそれを共有できるかという点。

個人投資の場合、金融機関の融資審査のように組織の判断ではなく、あくまでも個人の価値観に委ねられます。

したがって個人投資家から出資を受ける際に大きなポイントとなるのは、互いの価値観の合致ともいえ、仮に将来的な収益見込みなどといった数値に確実性を欠いていたとしても、出資を受けられるチャンスは拡がるといえます。

逆を言えば、どれだけ高い収益の見込みを提示できたとしても、事業に対する価値観の共有ができなければ、出資の可能性は下がると考えられます。

融資を受けたいと金融機関へ交渉する際には、ついつい数値にばかり意識が向き、実際に金融機関側もその数値を重視するわけですが、個人投資からの出資の交渉時には、どこまで価値を提示でき、またそれを共有できる個人投資家とコンタクトを取れるかにかかっているといっても過言ではありません。

まとめ
まとめ

事業を展開するにあたって、資金調達はいつの時代も高い壁となるものですが、現代ではその選択肢は幅広く、たとえ金融機関から融資を断られても諦める必要はありません。一度立ち止まって状況を整理し、別の選択肢へと視点を戻ることで、新たな可能性が見えてくることも少なくありません。

特に近年は、個人投資家からの出資を活用する起業者や事業者が増えており、法人だけでなく個人事業主であっても対象となるケースが多く見られます。事業の管理体制や運用方針、将来の展望などをしっかり説明し、必要な確認事項を丁寧に整理することで、年収や過去の実績だけに左右されず資金提供を受けられる可能性があります。実際、喫茶店の開業資金を個人投資家から調達し、事業を軌道に乗せた後に法人化へ進んだ事例も存在します。

現在では、個人投資家に関する情報をまとめたランキングサイトや総合案内ページも多く、投資家ごとの提供スタイルや取引条件、過去の勝率や予想データなどを一覧で確認できるようになっています。テスタ氏のように知名度の高い投資家が登壇するサミットやセミナーでは、直接質問を行い、考え方や投資方針を知る機会も得られます。

資金調達に失敗したからといって、そこで立ち止まる必要はありません。税金面や経営への関与範囲なども含めて慎重に検討しつつ、まずは個人投資家とのコンタクトから検討してみてはいかがでしょうか。新たな出会いが、事業成長の大きな転機となる可能性も十分にあるのです。