法人が資金調達する方法として、結構銀行融資を思い浮かべる方も多いでしょう。
しかし「銀行融資を申し込んだけれども審査に通らない…」という話もしばしば聞かれます。
銀行融資の審査に通らない理由はいくつか考えられます。
そこでここでは銀行融資の審査に通らない主な原因について紹介します。
銀行融資の審査通過の難易度は決して低くありません。
そんな通らないことも多い銀行融資の審査をパスして借り入れるために押さえておきたいポイントも解説します。
銀行から融資が受けられれば資金繰りもだいぶ楽になるはずなので、経営者は覚えておいて損はないはずです。
目次
銀行融資の審査は厳しい?
そもそも銀行融資の審査の難易度がどのくらいあるのかご存じでしょうか?
法人が資金調達するにあたっての借入方法はいろいろとあります。
結論から言うと、法人が利用できる借入の中でも銀行融資の審査難易度は高く、通らないことも多いと思ってください。
金利が低い
審査難易度を考えるにあたって、金利がどのくらいかをチェックしましょう。
一般的に金利が低いと、審査難易度は高くなります。
銀行融資の場合、金利は1~4%が相場といわれています。
ちなみに事業者向けローンの一種であるビジネスローンを見てみると、銀行系が1~15%、ノンバンクは5~18%が相場です。
一般的に初めて借入する際には上限金利かそれに近い利率の適用される可能性が高いです。
4%の銀行融資は、15~18%のビジネスローンと比較するとかなり低いです。
つまりビジネスローンと比較すると、審査難易度は高いものと思ってください。
融資額の違い
銀行融資の場合、融資限度額がかなり高くなります。
中小企業の場合でも数千万円から数億円単位の融資をしてくれます。
大企業になれば、数十億円や数百億円の融資も信用力によってはあり得ます。
これだけの大きな額を貸し出すので、もし債権回収できなければ銀行の受けるダメージは甚大です。
ですから本当にまとまったお金を貸し出しても返済してもらえるのか、慎重に審査を行いがちです。
一方ビジネスローンを見てみると、数十万円から数百万円と銀行融資と比較すればかなり少額です。
たまに銀行系ビジネスローンで他よりもまとまった額の融資を行っているところもあります。
それでもせいぜい融資可能なのは1,000万円程度です。
このようにビジネスローンと比較して、銀行融資の場合貸し手側もそれなりのリスクを取ります。
ですから審査に通らないことも多くなるわけです。
銀行融資の審査に通らない理由について解説
法人が銀行融資の申し込みをしたところ、審査落ちの憂き目にあったという話は結構聞かれます。
審査に通らない原因を見てみると、主な要因として以下のような項目が考えられます。
1.信用力に難あり
2.赤字決算の状況にある
3.税金を滞納している
4.手持ち資金が少ない
5.ノンバンクからの借入があった
6.返済のリスケの履歴がある
7.資金使途の根拠が不明
8.事業計画書の信ぴょう性が低い
9.返済原資が確認できなかった
10.面談で問題があった
11.過去に違反行為があった
もし審査に落ちたのであれば、ここで紹介する項目の中で思い当たるものがないか考えてみましょう。
問題点を改善すれば、今度は審査通過する可能性が出てきます。
信用力に難あり
信用情報に何か問題のある事項が記載されている場合、審査に通らなくなる可能性が高いです。
特にブラック情報が記載されていると、まず審査には通らないと思ったほうがいいです。
債務整理をした、2~3か月の長期延滞がある、クレジットカードを強制退会されたなどはブラック情報になりがちです。
またそこまでの悪質なものではなくても、滞納が何度もあると問題視されます。
クレジットカードやローンの支払いに滞納がある場合などです。
さすがに1回くらいの滞納ではそんなに問題視されません。
しかし2~3回滞納があると、支払いに関してルーズであると評価されかねません。
またブラック情報は当面消えることはないです。
5~10年は掲載され続けるので、注意してください。
特に個人事業主が銀行融資を受ける際には、信用情報は重視されがちです。
自分の信用情報は手続きすれば閲覧できるので、もし心配であれば信用情報機関に照会してみるといいでしょう。
赤字決算の状況にある
銀行融資に申し込むにあたって、貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書のような財務に関する資料を提出するように求められます。
財務状況を見て、会社がどの程度の利益を有しているのかチェックするためです。
もし赤字決算であれば、銀行融資を受けるのは難しくなると思ってください。
利益を出せていない以上、どうやって返済資金を捻出するのかという問題になるからです。
ただし1~2年のように一時的に赤字決算になっている場合、法人が進めている事業に将来性があると判断されれば審査通過する可能性はあります。
しかしここ数年慢性的に赤字決算が続いているのであれば、審査に通らない公算大といわざるを得ません。
税金を滞納している
もし税金を滞納している法人であれば、まず審査には通らないと思ってください。
国民の義務の一つである納税が正しくできていないところは、やはり信頼できないとなってしまうからです。
公的融資の中に日本政策金融公庫という政府系の金融機関の行っている貸し出しサービスがあります。
銀行融資では審査が厳しいとされるこれから起業する会社や業歴の浅い企業にも積極的に融資しています。
そのような日本政策金融公庫でも、税金の滞納が確認された場合には融資を断ります。
税金など支払うべきお金はきちんと期日通りに支払って、会社の信用力を上げてください。
手持ち資金が少ない
特に創業融資の際に重視される項目です。
自己資金がどのくらいあるのかをベースにして、「この程度なら貸し出せる」と判断する金融機関が多いからです。
一般的に自己資金の2~3倍程度が創業融資の貸出可能な上限額といわれています。
中には家族や知り合いから一時的にお金を借りて、自己資金を大きく見せようとする人もいるでしょう。
しかしプロ相手にそのような小手先のテクニックで融資を引き出すのはまず無理と思ってください。
銀行融資の審査の際には、約6カ月分の預金通帳を提出するように言われます。
ですから過去どのようなお金の動きがあったか、相手に把握されるので一時的にお金を借りていることもすぐにばれてしまいます。
ノンバンクからの借入があった
ノンバンクの借入がある場合、審査に通らない恐れが出てきます。
一般的に銀行よりもノンバンクの方が金利が高めで、審査も緩めとされます。
ということは「銀行からの借入を断られてノンバンクで借りているのでは?」と思われかねません。
ただしノンバンクからの借入が認められただけで即審査否決ということにならないでしょう。
しかし額が大きい、借入先がたくさんある場合には審査ではネガティブな印象を与えるでしょう。
もし他に借入があって返済できるものがあれば、申し込み前に返済することです。
借入額や借り入れ件数が少しでも減らせれば、それだけ相手にポジティブな印象を与えるからです。
返済のリスケの履歴がある
返済のリスケ、すなわちリスケジュールが過去にあった場合には審査に通らないかもしれません。
リスケとは返済条件を緩くして、滞納が起こりにくくするための措置です。
リスケをしたのは従来の条件では返済を続けるのが難しい、言い換えれば財務状況が悪化していたと解釈できます。
となれば信用力も下がってくるので、融資を行うのはリスキーとなるわけです。
過去だけでなく、現在借り入れているものもリスケしている場合には審査は厳しくなります。
もしリスケ中の借入があって追加融資を希望するのであれば、現在の借入を完済してから申し込み手続きするのがおすすめです。
そうすれば、銀行側の印象も多少改善される可能性があります。
資金使途の根拠が不明
銀行融資の審査では貸し出した資金がどのように使われるのかももちろんチェックされます。
もし資金使途の根拠が提出された資料では判別つきかねる場合には、審査に通らない可能性が出てきます。
銀行融資では基本的に運転資金もしくは設備資金を対象にしています。
これ以外に融資したお金がつぎ込まれる可能性があれば、貸し出しに慎重になります。
運転資金や設備資金でも「なぜ借入する必要があるのか?」その理由が明確でないと、審査に落ちてしまいます。
例えば設備資金のために融資申し込みをしたと仮定しましょう。
その場合、何にいくらかかるのか見積書などを提出しなければ、根拠不明と判断されかねません。
ですから融資申し込みする際には、先方に見積書などいくらかかるのかわかるような書類を作成してもらうように依頼しておきましょう。
事業計画書の信ぴょう性が低い
銀行融資の申し込み時の必要書類に事業計画書があります。
事業計画書の内容は審査の際にはかなり重視されます。
今後どのような事業を行って、どの程度の利益が見込まれるかについて記載されている資料だからです。
この事業計画書、見た人が「これなら収益が十分期待できる」と思わせるような説得力のあるものでなければ審査通過しません。
またなぜ今回融資が必要かについて、その根拠も事業計画書で説明する必要があります。
融資を受けられた場合どこに使うのか、なぜそれだけの金額が必要なのか、客観的に見て納得できるような内容にしましょう。
この事業計画書がずさんである、内容に乏しいものであると担当者の心象も悪くなりかねません。
事業内容がはっきりしない、売上額の根拠がはっきりしない、資金繰り計画の内容がずさんだと融資は難しくなります。
ですから事業計画書を作成する際には、慎重に何度か試行錯誤しながら作り上げていくといいでしょう。
返済原資が確認できなかった
返済原資が確認できなければ、債権回収の見込みが立たないので銀行融資を断られてしまう恐れが出てきます。
返済原資は決算書の内容から確認できます。
返済原資とは当期純利益と減価償却費の合算で算出可能です。
これらの情報は損益計算書から確認できます。
もし銀行融資の審査に通らなかった場合には、直近の決算書をチェックしてみてください。
借入希望額と返済原資との間にギャップはありませんか?
面談で問題があった
通常銀行融資では法人の代表者と銀行の担当者が直接面談して話をします。
ここで先方にマイナスの印象を与えてしまうと、融資を受けるのが厳しくなるかもしれません。
特に相手から聞かれたことに対して的外れな返答してしまう、きちんと説明できないとどうしても心象が悪くなってしまいます。
面談をうまく乗り切れるかどうか自信がなければ、前もって練習しておくのがおすすめです。
面談でどのようなことを聞かれるのかシミュレーションして、あらかじめ答えを用意しておけば、当日スムーズな受け答えができるようになるでしょう。
過去に違反行為があった
融資を受けるにあたって、借入申込書に資金使途について記載しなければなりません。
ところが申込書に書かれている内容と異なる用途で融資を受けたお金を使った場合、条件違反になります。
例えば申込書には設備資金のためと記載されていたのに、運転資金にお金を使ってしまった場合には銀行としても相手は信用できないとなってしまいます。
ちなみに条件違反が発覚すれば、残金は全額一括返済するように求められます。
お金の貸し借りは当事者同士の信頼関係が必須です。
その信頼関係を自ら損ねるような行為は厳に慎むべきです。
銀行融資は再チャレンジが可能・審査に落ちないための対策
たとえ過去に銀行融資に申し込んで審査に通らない場合でも、再チャレンジすれば今度は融資を受けられる可能性もあります。
ただし前と同じように申し込んだところで、結果はほぼ変わらないでしょう。
ですから以前の申し込みを見直して、改善できる点は改善して再申し込みしてみましょう。
そのためには、以下のポイントを押さえることが大事です。
1.税理士に決算書を作ってもらう
2.事業計画書を作成しなおす
3.必要な金額を見直す
4.堅実な返済計画を立てる
5.担保や保証人を用意する
それぞれどのようなことに注意すればいいかについて、以下で解説します。
税理士に決算書を作ってもらう
決算書を自分で作っているのであれば、税理士のようなプロに作成をお願いするといいでしょう。
今では会計ソフトもいろいろと出ていて、数字を入力すれば決算書や確定申告書など自動的に作成できます。
ですから簿記に詳しくない人でも決算書を作成しようと思えば十分できるものです。
しかし税理士のような税務や財務に精通しているプロに決算書は作成してもらうべきです。
まずプロの作成した決算書ということで、銀行もそこに書かれている内容を信用してくれます。
また税理士のようなプロが決算書を作成することで、自身の企業の経営状態を正確に把握できるメリットもあります。
正確に経営状況を把握できれば、今後の経営計画も現状を踏まえた実効性のあるものになります。
さらに税理士から収支状況を改善するようなアドバイスをもらえる可能性があります。
実は補助金制度の申し込み対象だった、税制面で優遇措置を受けられるものが見つかる可能性もあります。
事業計画書を作成しなおす
事業計画書がいい加減だったことで審査に通らないのであれば、事業計画書を見直すことです。
事業計画書を作成するにあたって、営業成績をいかに上げるか、返済計画を見直してください。
客観的に見て納得できる、説得力のある内容になっているかチェックしましょう。
自分たちで他人が見て納得できるような事業計画書を作成できない、作っては見たもののこれでいいのかわからないという経営者もいるでしょう。
その場合には専門家に見せて、アドバイスを受けるのも一考です。
税理士や中小企業診断士の中には、事業計画書作成サポートを行っているところもあります。
このようなところと協力して、現実的な事業計画書を作ってみてください。
必要な金額を見直す
銀行融資を受けるにあたって、必要最小限の額だけ借り入れるのがセオリーです。
余計にお金を借りれば、それだけ余計に利息を支払う羽目になって結局返済負担が増すからです。
そこで本当にいくら借り入れる必要があるのか、具体的に計算してみましょう。
例えば設備資金を借りようと思っているのであれば、機械や設備を購入するのにいくらかかるか、工場や倉庫の改築の場合総額いくらになるかを算出してください。
また運転資金であれば、原材料の仕入れにいくらかかるのかアバウトではなく具体的に金額を出しておきましょう。
きちんと計算しておけば、なぜ今回融資が必要なのかも具体的にアピールできます。
銀行も納得してもらいやすくなるわけです。
堅実な返済計画を立てる
銀行が審査を行うのは突き詰めていえば、「貸したお金が本当に返ってくるのか?」という点です。
銀行としてみれば、お金を返してもらえば問題はないわけです。
そこで確実性の高い返済計画を立てて、それで説得すれば融資を受けられる可能性も高くなります。
銀行が納得できる返済計画とは、月々いくら返済できるのか具体的に提示できているものです。
そのためには決算書や事業計画書を作成して、精査することが求められます。
これらをチェックすれば実情に対応した経営状態が把握でき、現実的な返済額を示せます。
担保や保証人を用意する
もし担保や保証人を用意できるのであれば、担保や保証人を設定してください。
そうすれば前に審査落ちしたときとあまり状況が変わっていなくても、審査通過の可能性が高まるからです。
担保や保証人がいれば、銀行的には貸し倒れのリスクが低減するからです。
債務者である法人が返済不能の状態になれば、担保を処分したり保証人に返済を求めたりできるからです。
担保は不動産、特に価値のある物件を持っていれば銀行の評価も高まります。
また保証人も経済力と信用力ともに持っている人物であれば、融資を受けられる可能性も出てきます。
最近では銀行融資で連帯保証人を設定しなくても融資の行われるケースも増えています。
中小企業ガイドラインでもそのように求められているのも理由の一つです。
しかしもし担保や保証人を準備できれば、その方が融資の交渉もスムーズに進みます。
まとめ:銀行融資の審査が通らないのは理由がある
ここまで見てきたように銀行融資の審査に通らないのにはお金を貸し出すのに十分な信用がなかったからです。
もしどうしても銀行融資を受けたければ、審査に通らない際に何が問題だったのか見直しましょう。
そして問題点がわかれば、問題解決するための方策を検討しましょう。
問題をクリアできれば、再度申し込んだ時に融資を受けられる可能性が出てきます。
以上で紹介した要因をチェックして、どう改善すればいいか検討しましょう。