「赤字決算だと銀行のビジネスローンで資金調達は無理だろう」
「消費者金融のビジネスローンなら赤字決算でも利用できるかも?」
赤字決算でも、いえ赤字決算だからこそ資金調達が必要になるときがあります。
赤字決算だと、どうしても融資の壁は厚くなりますが、ビジネスローンなら資金調達できる可能性があります。
それは、ビジネスローンなら赤字決算でも資金調達できる理由があるからです。
そこで今回は、ビジネスローンと赤字決算について、融資を審査する銀行員が解説します。
目次
ビジネスローンなら赤字決算でも資金調達できる理由1.「赤字融資」という考え方があるから
銀行や消費者金融等、ビジネスローンを扱う事業者はいくつもありますが、そこで共通するのは融資するときの考え方で、その中に「赤字融資」という概念があるので、ビジネスローンなら赤字決算でも資金調達できる可能性があるのです。
赤字融資は赤字補填融資、赤字救済融資のこと
そもそも赤字とは収入より支出が超過している状態、つまり「手元にお金がないマイナスの状態」という意味です。
コンピュータの普及以前は、企業の決算(一般家庭の家計簿も)は手書きで作っていた時代があり、このとき剰余(利益、つまりお金が残っている状態)は黒いインクで、そして欠損(損失、つまり赤字のこと)はマイナスを表現するため赤インクで記入したことが語源とされています。
赤字は手元にお金が残っていない状態なので、お金を貸しても返せるあてがないというのが、赤字で融資を受けられない理屈です。
ある意味で当たり前といえばそれまでですが、もしここで資金調達できて、経営状態が持ち直すことができれば会社は立ち直ることができるので、赤字でも融資をするのが赤字融資という考え方です。
こういった事情から、赤字融資はむしろ「赤字補填融資」「赤字救済融資」とも言えるのですが、補填や救済にはネガティブなイメージも伴うので、シンプルに赤字融資と呼んでいます。
そして、ビジネスローンも赤字企業が資金調達して立ち直るきっかけとして赤字融資という考え方があるので、赤字決算でもビジネスローンなら資金調達できる可能性があるのです。
ただし赤字融資の決定権は融資する側にある
会社を人間としてイメージしてみると、赤字決算はケガや病気の状態と言えます。
会社が元気いっぱい(黒字)なら問題ないのですが、ケガや病気になっているなら治療が必要になります。
ケガなどは、症状が比較的軽いなら自然回復も見込めますが、重症になったなら薬や手術などの処置が必要治療が必要になり、これが赤字融資なのです。
しかしながら、人間でも治療計画を立てるのは医師で、患者(本人)の意思はそれほど聞かれることがありません。
赤字融資もこれと似ていて治療しても手遅れ、つまり「さじを投げる」状況だと融資をする銀行や消費者金融が判断すれば、赤字融資は受けられません。
このように赤字融資の決定権は融資する側にある、という点が赤字決算でビジネスローンを利用する際の最大の注意点です。
赤字決算で融資を断っても貸し渋りではない
繰り返しになりますがまず、原則として赤字の会社に融資しないのが大原則で、赤字決算でビジネスローンを利用するなど赤字融資は特別な対応です。
ですから上記したように赤字融資を断られることもあります。ただしこれは貸し渋りではありません。
そもそも貸し渋りとは、通常なら融資を受けることが可能な会社なのに、銀行などの事情(銀行事態が経営不振など)から、不当に融資を行わないという意味です。
したがって、赤字で融資が受けられないのはむしろ当たり前のことで、その意味では赤字決算でビジネスローンの融資を断られたとしても、それは貸し渋りにはなりません。
ですから、もしもあなたがビジネスローン融資を断られた場合でも、「貸し渋りだ!」などとは言わないほうがいいでしょう。仮にそのように主張しても、事態は悪くなるばかりで、何も得るものはありませんので、この点は注意が必要です。
ビジネスローンなら赤字決算でも資金調達できる理由2.AI審査は赤字決算に「冷たくない」から
ビジネスローンは審査も機械化され、蓄積されたビッグデータをもとにAIが審査の大部分を対処するケースが増えつつあります。
こうした「AI審査(審査で顧客を採点しスコアを出すことから「スコアリング審査」とも)では、これまでの融資審査と視点が少し違います。
AI審査は「赤字決算だから即審査落ち」とはならない
これまでの融資では「赤字はダメ」という大原則がありましたが、多角的な視点で融資を判断するAI審査では、必ずしも赤字決算だからビジネスローンが審査落ちとはならないケースもあるのです。
たとえばビジネスローンを申し込んだ会社が属する業種の平均値(売上高の規模、倒産するリスク度合いなど数値は多岐多様)と比較しながら「この会社は赤字だが◯◯の点で業界水準以上なので融資OK」といった審査結果が出る場合もあります。
ちなみにAI審査と言っても、最終的に融資するか?判断するのは人間なのですが、実態はAI審査の結果をそのまま採用(機械のほうが客観的で公平だから)しているのが実態です。
赤字決算で審査通過できるか?は、赤字の種類による
AI審査でも赤字はその種類や状況など精緻に分析し融資を判断します。
ここでいう赤字の種類とは、決算においてどの段階で赤字になったか?という点です。
企業の決算では営業利益(営業赤字)、経常利益、当期利益と段階的に赤字・黒字を計上するタイミングがあります。
まず経常利益(売上から仕入れ、そして人件費などの経費を差し引いた残り)がいわゆる会社の赤字黒字を示す数値として使われます。
しかしここでは経費など柔軟に判断できる余地があるため、経常赤字なら審査落ちにならないケースもあります。
これは当期利益(経常利益から融資の支払い金利や税金を引いた、最終的に残る利益)も同様です。
しかし営業利益(売上から仕入れを差し引いた、いわゆる粗利)の段階で赤字になると、そもそも企業活動のスタート時点で儲けが出ないとも言えるので、営業赤字だと審査落ちとなる可能性が高まります。
もちろんこれらはあくまで理論的、あるいは原則論としての話であって、実際は利益面以外にも企業のいろいろな側面を見て判断します。
そして、このいろいろな側面で注意すべき点が「債務超過」です。
赤字より債務超過のほうが審査落ちの可能性あり
上記の説明は会社決算で利益面の説明で、決算書なら「損益計算書」に該当します。
そして決算書には他にも会社の資産と負債を表す「貸借対照表」もあります。
貸借対照表をカンタンに表現すると、決算期の時点で会社の財産と負債を左に財産、右に負債と対比して並べるものです。
左右は必ず一致することになっているので、バランスが取れているという意味で、貸借対照表を「バランスシート(略してB/S)」とも呼びます。
しかし、貸借対照表で決算時に財産より負債が多い状態を「債務超過」と呼び、債務超過は審査落ちの可能性が高まります。
たとえば資産で預金が1億円あっても、負債で借入が10億あれば、仮に決算時に会社が倒産したとき、預金と借金を差し引いてもマイナス9億の負債が残るわけです。
また今年は1億円の黒字になっても、去年まで10年赤字が続き、累積赤字(「時期繰越損失」略して「繰欠」とも)が30億円あったなら、これは30億の借金があるのと同じで、マイナスが残るだけです。(そのため累積赤字も貸借対照表では債務の部門に分類される)
このように、会社が破綻したときにマイナス状態である債務超過では、ビジネスローンの審査落ちになる可能性がありますので、ここも注意が必要です。
ビジネスローンなら赤字決算でも資金調達できる理由3.まとめ
今回は、赤字決算でもビジネスローンなら資金調達できることと、その理由や注意点を解説してきました。
実際のビジネスローンの審査は銀行や消費者金融により柔軟性など対応は異なりますので、利用を検討する場合は必ずご自身で確認してください。
この記事が参考になれば幸いです。