事業資金調達に、九州でビジネスローンを検討するには、まず九州経済が置かれている現在の状況を知り、そこを踏まえ九州で利用できるビジネスローンの内容を見極めて検討する必要があります。
そこでこの記事ではビジネスローンの商品内容の説明に加え、現在の九州経済が置かれている状況まで銀行員が解説していきます。

現場で事業資金調達の審査をしている銀行員の説明なので、九州でビジネスローンを検討している経営者の方は、ぜひ参考にしてください。

ビジネスローンを九州で事業資金調達に活用するには?〜九州経済の置かれている状況

まず、現在の九州経済がどうなっているか?を考えるところから始めましょう。

九州経済の現在

九州経済の状況を、公的統計資料などを参考にまとめました。

<九州経済位の現在>
● 九州は福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島の7県で構成
● 九州の面積は全国の約11%、就業人口は全国の約10%を占め、輸出額(約10%)域内総生産額(約9%)など、いずれも全国の10%前後を占めていることより九州の経済規模は「1割経済」と呼ばれている。
● 九州の製造品出荷額は、年間20兆円を超え、全国シェアは7%以上
● 九州の商業販売額は40兆円以上、全国シェア7%以上
● 九州の農業産出額は約1.5兆円以上、全国シェア19.%以上
● 工業の構造は「加工組立型」40%超で主流
その中でも輸送用の機械や電子部品、電子回路などのウエイトが高い
● 九州の製造品出荷額における構成では電子機器、精密機械、半導体などのシェアが拡大するのに対し、木製品、窯業などのシェアは減少している
● 九州域内の製造品出荷は、北部九州地域(福岡県、長崎県、熊本県、大分県北部)への集中化傾向がある
● 世界規模の国内有名企業が北部九州に集中化しており、韓国や中国を筆頭としたアジア地域に近い利点を活かしている
(政府統計資料等より・筆者調べ)

コロナ禍による経済不況からの脱却を地域全体で目指している最中なのですが、いっぽうで自動車関連などは海外需要が冷えつつある状況です。
全体としては依然として経済の力強さに欠け、横ばいが継続している状況とも言えます。

ビジネスローンを九州で事業資金調達に活用するには?〜九州ビジネスローンを金融事業者や融資商品ごとに解説

次に、九州のビジネスローンを金融機関やノンバンクといった金融事業者や、融資商品ごとに説明していきます。

九州のビジネスローン【銀行】

九州を拠点にする金融機関(本店・支店のある金融機関)は以下の通りです。

<九州の地元金融機関>
● 地方銀行 10行
● 第二地方銀行 7行
● 信用金庫 29金庫
(除くメガバンク、JA、労金及び信用組合 筆者調べ)

続いて銀行系ビジネスローンの内容は次のようになっています。

<銀行ビジネスローンの例>(筆者調べ)
● 利用者:個人事業主、法人
● 借入金額:最大1千万円まで
● 金利:最大年14%台
● 返済年数(回数):36回(3年)まで
● 融資利用までの時間:審査回答は最短即日 来店や郵送で契約してから融資利用までは数日
● 担保・連帯保証人:原則不要

銀行ビジネスローンはノンバンクより低い金利で、最低3%台となっています。
ただし金利は審査により個別に決められるので、すべての人が低金利を利用できるわけではありません。またこの点はノンバンクビジネスローンも同様です。

また契約は来店が必要といった金融機関もあり、融資利用までには数日から数週間の時間がかかるので、スピード面ではノンバンクのほうが早いというのが実態です。

九州のビジネスローン【ノンバンク】

九州でビジネスローンを扱っている、全国典型の消費者金融大手では、ビジネスローンの内容は次のとおりです。

<ノンバンクビジネスローンの例>
● 利用者:個人事業主、法人
● 借入金額:最大1千万円まで
● 金利:最大年18%台
● 返済年数(回数):60回(5年)まで
● 融資利用までの時間:審査回答は最短即日 融資利用も即日可能な場合もあり
● 担保・連帯保証人:原則不要

基本的にネット完結なので、九州でも全国共通の内容で利用が可能です。
特にノンバンクのビジネスローンはスピード重視で、申し込み即日の融資利用が可能なところもあります。

九州のビジネスローン【中小・地元金融業者】

九州の中小・地元金融業者は20社あります。(金融庁資料より、九州地方財務局に貸金業登録のある計25社より銀行系カード会社などを除いた件数・筆者調べ)
九州における中小・地元金融業者ビジネスローンの内容は主に以下の通りです。

<中小・地元金融業者ビジネスローンの例>
● 利用者:個人事業主、法人
● 借入金額:最大1千万円まで
● 金利:最大年18%台
● 返済年数(回数):60回(5年)まで
● 融資利用までの時間:審査回答は最短即日 融資利用も即日可能な場合もあり
● 担保・連帯保証人:原則不要

九州の中小・地元金融業者では、ビジネスローンの内容はノンバンク・消費者金融大手とほぼ同じです。
ただしネットなどで検索してもヒットしない場合が多く、情報量は限られますので、実際に検討する際はご自身で内容などを必ず確認してください。

九州のビジネスローン【不動産担保ローン】

個人や会社で保有している不動産を担保にした事業資金融資が不動産担保ローンです。
不動産担保ローンを扱うのも貸金業者なので、広告宣伝しているHPでも「ビジネスローン」と銘打っていますので、ここではビジネスローンの一種として説明します。
九州における不動産担保ローンの内容は主に以下の通りです。

<不動産担保ローンの例>
● 利用者:個人事業主、法人
● 借入金額:3億円まで上限はあるが、担保によってそれ以上融資可能な場合も
● 金利:最大年15%台
● 返済年数(回数):420回(35年)まで
● 融資利用までの時間:最速でも1週間(申込後に担保の評価などがあるため)
● 担保・連帯保証人:担保は必須、保証人も担保物件所有者以外は原則不要

事業資金にも対応可能なのですが、もともと不動産を担保に使いみちが自由なローン(住宅ローンに近い)といった性質なので返済年数はかなり長い期間で可能です。
ただし長期間借り入れすれば支払う利息は増えてくるので注意が必要です。

九州のビジネスローン【ファクタリング】

こちらも「ビジネスローン」でヒットするようなHP構成なので一緒に説明します。
個人や会社の売掛金を、専門業者(貸金業者)に買い取ってもらうのがファクタリングです。
売掛金が入金されるまでは、売掛金を担保にお金を借りているのと同じ状態なので、このようにビジネスローンとアピールしていると思われます。
九州におけるファクタリングの内容は主に以下の通りです。

<ファクタリングの例>
● 利用者:個人事業主、法人
● 借入金額:5千万円まで(*売掛金の買取金額)
● 金利:最大15%台(買取時の手数料)
● 返済年数(回数):(*ファクタリングなので返済なし)
● 融資利用までの時間:最速で即日、売掛金の現金化が可能
● 担保・連帯保証人:担保、保証人は不要

ファクタリングは売掛金の相手の信用度などが重視される(売掛金が約束通り支払われる可能性を審査)ので、買取の手数料も異なります。
また手数料率とは買取時に必要な手数料が売掛金の何%か?(売掛金が100万円の手数料15%は1万5千円)という表示で、年利に換算すると60%以上になる場合もありますので、コストを考えて検討する必要があります。

九州のビジネスローン【制度融資】

制度融資とは国や県、市町村などの管轄で、低金利かつ長期返済できる事業資金融資です。
申し込みや融資の取り扱いは銀行など金融機関で、別途信用保証料が必要になります。
九州各県、市町村によりさまざまな制度融資がありますので、ここで3つほどご紹介します。

<熊本県制度融資「小規模事業者おうえん資金」>
● 利用者:熊本県内で事業を営む個人事業主、法人
(従業員20人(商業・サービス業は5人)以下であるなど条件付き)
● 借入金額:最大2千万円まで
● 金利:すべて固定金利で3年以内・年1.30%、5年以内・年1.45%、7年以内・年1.60%というように、借入期間により金利が段階的に決まっている
● 返済年数(回数):運転資金60回(5年)、設備資金84回(7年)まで
● 融資利用までの時間:審査回答は数日〜数週間 融資利用は銀行で契約後の日数
● 担保・連帯保証人:原則不要
● 融資の保証:信用保証協会の保証が必須 別途、融資額に対し年0.50〜1.35%の信用保証料が必要になる(*補助により保証料が減額される場合も)

<佐賀県佐賀市制度融資「佐賀市中小企業振興資金融資制度」>
● 利用者:佐賀市内で事業を営む個人事業主、法人
(税金の滞納がないなど条件付き)
● 借入金額:最大1千万円まで
● 金利:固定金利・年1.30%
● 返済年数(回数):運転資金84回(7年)、設備資金120回(10年)まで
● 融資利用までの時間:審査回答は数日〜数週間 融資利用は銀行で契約後の日数
● 担保・連帯保証人:原則不要
● 融資の保証:信用保証協会の保証が必須だが市が信用保証料(年0.45%〜1.9%)を全額補助してくれる

<鹿児島県鹿児島市制度融資「特別小口資金」>
● 利用者:鹿児島県内で事業を営む個人事業主、法人
(従業員20人(商業・サービス業は5人)以下であるなど条件付き)
● 借入金額:最大2千万円まで
● 金利:すべて固定金利で1年以内年1.7%、1年超3年以内年1.9%、3年超5年以内年2.0%、5年超年2.2%というように、借入期間により金利が段階的に決まっている
● 返済年数(回数):84回(7年)まで
● 融資利用までの時間:審査回答は数日〜数週間 融資利用は銀行で契約後の日数
● 担保・連帯保証人:原則不要
● 融資の保証:信用保証協会の保証が必須 別途、融資額に対し年0.65%の信用保証料が必要になる(*補助により保証料が減額される場合も)

制度融資は一般的な信用保証協会保証付き融資(略称「マル保融資」)や、銀行のプロパー事業融資と同様、申し込みから審査回答、そして融資利用まで最短でも1週間、長い場合は1ヶ月以上かかることもあります。

ビジネスローンを九州で事業資金調達に活用するには?〜メリットとデメリット

九州でビジネスローン利用する際のメリットと、デメリットをそれぞれ解説します。

メリット

制度融資以外にビジネスローンなら、審査に通れば、無担保・保証人不要など有利な条件で資金調達ができます。
また、たとえばノンバンクのビジネスローンでは決算が赤字でも多角的かつ柔軟に審査して、融資利用できる場合もあります。

デメリット

基本的にスピードが早い、融資審査が柔軟など自分にとって有利な点はメリットであり、そのメリットと引き換えの形で、早ければ早いほど、簡単なら簡単なほど、審査が柔軟なほど金利や手数料が高めになるのは原則です。
したがってコストをしっかりと確認しないと思わぬ出費になり、事業資金として調達できるお金が目減りしてしまう可能性もあります。

ビジネスローンを九州で事業資金調達に活用するには?〜まとめ

九州経済もコロナ禍から脱却し、景気回復の兆しもありますが、それでもまだ他地域と同様に、好転とまではいい切れない状況です。
そうした現状で企業の資金調達や経営改善のサポートとして、ここで紹介した融資商品がいくつも出揃っています。
そこで大事なのは、内容を見極め、自社にとって最も適した資金調達の方法を探すことでしょう。この記事が参考になれば幸いです。