創業期の方の中には、これから創業融資を受けることを検討している人も多いと思います。
事業の実績がほとんどない創業期は、金利をなるべく低く抑えて融資が受けられると資金繰りがしやすいでしょう。
そこで今回は、創業融資の金利の相場と低金利で利用するためのポイントについて解説していきます。
創業融資について迷っている方は、この記事の内容をぜひ参考にしてください。
創業融資の種類
創業融資の種類として以下が挙げられます。
• 日本政策金融公庫による融資
• 地方自治体による制度融資
• 信用金庫や信用組合による融資
一つずつ解説していきます。
日本政策金融公庫による融資
日本政策金融公庫の創業融資には、さまざまな種類が存在します。
要件を満たすことで、基準利率の2.35〜3.80%よりも低い金利で融資を受けられる可能性もあります。(令和6年7月時点)
内容を比較し、自分に合った制度に申し込みましょう。
新規開業資金
新創業融資制度は、主に新たに創業する方向けの融資で、創業期の多くの方が利用できます。
金利の基準が細かく設けられていますが、基本的には基準利率の2.35〜3.80%の範囲で金利が適用されます。(令和6年7月時点)
本制度の特徴は以下です。
• 保証人や担保が不要
• 原則として利率を一律0.65%引き下げ
• 返済期間が長め
• 自己資金を用意する必要がない
本制度は一番ベーシックな創業融資となりますが、利用者によっては以降に紹介する制度の方が金利を抑えて利用できる場合があります。
新規開業資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)
本制度は、以下の要件にあてはまる場合に、通常よりも有利な条件で融資を受けられます。
• 女性
• 35歳未満
• 55歳以上
基本的に1.45〜3.40%の範囲で金利が適用されます。(令和6年7月時点)
新規開業資金(再挑戦支援関連)
廃業を経験したのちに再度創業へ挑戦する方を対象にするのが本制度です。
• 廃業した経験がある
• 廃業時の負債がある程度整理される見込みがある
• やむを得ない理由により廃業した
基本的に1.45〜3.40%の範囲で金利が適用されます。(令和6年7月時点)
新規開業資金(中小企業経営力強化関連)
本制度は、中小会計を適用する方を創業支援する制度です。
経理体制を整えることを目的として「中小企業の会計に関する基本要領」などを適用する場合に利用できます。
こちらは、基本的に1.95〜3.40%の範囲で金利が適用されます。(令和6年7月時点)
新事業活動促進資金
本制度では、以下の内容で承認・認定を受けた方などを対象に支援を行っています。
• 経営革新計画
• 基盤確立事業実施計画
• 経営力向上計画
新事業の活動に取り組む方を対象とし、基本的に1.45〜3.40%の範囲で金利が適用されます。(令和6年7月時点)
地方自治体による制度融資
制度融資は、「地方自治体」と「金融機関」と「信用保証協会」が連携することで実施されるものを指します。
融資の審査が通りにくい創業者でも、公的機関から保証を受けることで金融機関の信用を補うことが可能です。
制度融資は、以下の流れで行われます。
• 自治体が窓口となる
• 保証協会が借主の返済を保証をする
• 金融機関が融資を行う
自治体によって内容が異なりますが、創業融資の金利は大体2%ほどに設定されているケースが多い印象です。
詳しく知りたい方は、各自治体に確認してみると良いでしょう。
ただし、制度融資は金利のほかに手数料もかかる点に注意してください。
信用金庫や信用組合による融資
信用金庫・組合による融資はその他の金融機関に比べて、実績が少ない創業者でも利用しやすい傾向があります。
こちらも店舗によって違いはあるものの、創業融資の金利は大体2〜3%前後であることが多いようです。
ほかの金融機関で創業融資が受けられなかった場合でも、信用金庫・組合は地域密着型のため親身に相談に乗ってもらえる可能性があります。
金利も高くない場合が多いため、創業資金で悩んだら一度相談してみるのも良いかもしれません。
創業融資の金利の相場
紹介した内容を加味すると、創業融資の金利は大体2%前後であることが多いようです。
この数値は、通常の事業用融資の金利相場と比べてもかなり低い水準と言えます。
• 銀行のビジネスローン:3.0〜15.0%
• ノンバンクのビジネスローン:5.0〜18.0%
創業融資を金利で選ぶ場合は、2%前後を目安として検討してみてください。
創業融資の金利にかかわる要素
では、創業融資の金利はどんな要素で左右されるのでしょうか。
詳しくみていきましょう。
保証人や担保の有無
保証人や担保の有無は、金利が変動する大きな要因です。
保証人や担保を用意することで、金融機関は貸し倒れのリスクに備えることができ、金利を高くする必要がなくなります。
日本政策金融公庫の基準利率 で比較してみると、0.6〜1.0%ほど差があることがわかります。(令和6年7月時点)
• 無担保:2.35〜3.80%
• 有担保:1.35〜3.15%
なるべく金利を抑えたい場合は、担保を用意することも検討しましょう。
金額や返済期間
借入したい金額や返済期間によって金利が変化する場合もあります。
一般的に、金利に与える影響は以下です。
• 借入したい金額が高いほど金利が高い
• 返済期間が長いほど金利が高い
これは担保があると金利が下がる理由と同じで、金融機関の資金の未回収リスクに比例しています。
金利を低くしたい場合は、借入する金額や返済期間を見直すのも効果的です。
法人の信用度
創業融資の金利には、法人の信用度もかかわっています。
信用度が高いほど金利を抑えられる傾向がありますが、創業期は事業としての実績がほとんどない状態なので、いきなり金融機関に信用してもらうのは難しいでしょう。
経営者自身が以下にあてはまる場合も要注意です。
• ブラックリスト入りしている
• 延滞の過去がある
• 税金の未納がある
金融機関とは長く付き合っていくことになるので、これから少しずつ信頼を築いていけるようにしましょう。
創業融資を低金利で受けるためのポイント
創業融資をできるだけ低金利で受けるためのポイントについて解説します。
担保を用意する
先ほど説明した通り、無担保に比べて有担保の方が低金利で借入できる傾向があります。
担保にできる財産にはさまざまありますが、不動産を設定できると評価されやすいでしょう。
所有している不動産がある場合は、担保にすることも検討してみてください。
業績が良好な状態で申し込む
業績が良いタイミングで創業融資を申し込むのも一つの手です。
たとえば、日本政策金融公庫の創業融資は開業してから2期を終えるまで利用可能です。
融資可能期間に良い業績が見込める時期があれば、そのタイミングで申し込むとより低い金利で利用できる可能性があります。
創業計画書を作り込む
創業融資を申し込む際に必要になる「創業計画書」の内容も、低金利で融資を受けるために重要です。
創業計画書は、まだ実績の少ない創業期の事業者の返済能力を見極める貴重な判断材料になります。
具体的なデータや予測などを数値を使って表すことで、説得力が増して金融機関の信用度を上げることが可能です。
なるべく低金利で融資を受けたいなら、創業計画書を丁寧に作成しましょう。
融資の担当者と積極的にコミュニケーションをとる
低い金利で融資を受けるには、金融機関との関係性も重要になってきます。
融資の内容は担当者の主観による評価も反映される場合があるため、円滑に取引するには客観的なデータ以外に信用できる人柄も大事です。
金利の交渉だけでなく融資の認否にもかかわる場合があるため、普段から丁寧なコミュニケーションを心がけましょう。
キャンペーンを利用する
金融機関のキャンペーンを利用するのも、金利を抑えるために有効な手段です。
たとえば、新規顧客を獲得するために期間限定でより低金利で創業融資を申し込めるようなキャンペーンもあるかもしれません。
こういった機会を逃さないために、金融機関の情報をこまめにチェックしましょう。
「マル経融資」を利用する
低金利の創業融資を探している場合は「マル経融資」がおすすめです。
マル経融資は日本政策金融公庫の制度の一つで、かなり低水準の1.45%という金利で利用できます。(令和6年7月時点)
商工会などから経営指導されることで推薦を受けることができるので、興味がある方はマル経融資の利用も検討してみてください。
「創業後目標達成金利」の要件をクリアする
日本政策金融公庫を利用している場合は「創業後目標達成金利」の要件をクリアすることによって、金利を引き下げることができます。
以下の項目などを達成することで金利を0.2%下げられるため、一度確認してみてください。(令和6年7月時点)
• 融資開始から2期目の経常利益率が5%超(売上高の減価償却前)
• 事業計画書の作成時から従業員が1名以上増加
低金利で融資を受ける効果的な手段なので、ぜひ活用しましょう。
特別な要件を満たしているか確認する
日本政策金融公庫を利用する場合は、一定の要件を満たすことによって適用される金利が変わる制度もあるので要チェックです。
たとえば、以下の要件をクリアすると特別利率が適用される場合があります。
• 創業セミナーなどを受けて事業を始める
• Uターンなどで事業を始める
• 技術などに新規性がある
要件は利用する制度によって異なるので、確認してみてください。
創業融資の金利の相場のまとめ
創業融資にはさまざまな種類がありますが、金利の相場は2%前後が平均と言えるでしょう。
できるだけ低金利で融資を受けたい方は、今回紹介した方法を試してみてください。
また、創業融資が受けられるか不安な方は、ある程度の手元資金を用意しておくと安心です。
創業融資を上手に活用して、創業期の資金調達を円滑に行いましょう。