事業を始めたいという人や中小企業を経営していて資金調達を考えている人が、1億円の資金調達をする方法はネット上などでも気になるという声が多くあります。1億円の融資を受けるというのは、よほどの信用がなければ厳しいと考えられます。しかし、様々な制度を利用すれば、決して不可能ではないのです。ここからは、1億円の資金調達を成功させる方法を紹介していきます。

1億円の資金調達を成功させる方法

何の実績もない法人が1億円もの資金を調達するのは、普通の銀行ではほぼ無理です。そこで利用するのが、中小企業向けに制度設計されている金融機関を使うという事です。ただし、こうした制度を利用して、そう簡単には1億円の資金調達を達成できません。
1億円の資金調達を可能にするために考えられるのは、以下の3つの方法です。

 日本政策金融公庫を使用する
 信用保証協会融資を使用する
 不動産担保ローンを使用する

これらは中小企業やスタートアップ企業が資金調達するためには知っておいた方がいい制度です。これらの制度を利用すれば、資金調達1億円という目標を達成できる可能性があります。それぞれの制度には特徴と条件があり、自分や会社が適用条件をクリアしているのかはしっかりと確認しておく必要があるでしょう。上記の3つの方法に関して、その特徴や条件などを解説していきます。

日本政策金融公庫を使用する場合

日本政策金融公庫は1億円の資金調達するために、最も現実的な方法です。この制度は公的な融資であるために、安心して利用できます。ただ、この制度を単純に使用しただけでは1億円の融資は不可能です。日本政策金融公庫を利用した方法の中でも、特殊な制度をいくつか利用する事で億単位の資金調達が可能になってきます。資金調達のために利用するのは、以下の制度です。

 女性、若者、シニア起業家支援資金
 取引企業倒産対応資金(セーフティネット貸付)
 新型コロナウイルス感染症特別貸付

「女性、若者、シニア起業家支援資金」は、女性、35歳未満、55歳以上のいずれかの条件を満たした時に、融資してもらえる制度です。直接貸付として7億2000万円となっていて、1億円の融資が十分に可能です。返済期間は7年以内となっていて、通常の融資よりも短い期間に設定されています。
また、事業内容も技術やノウハウに新規性がある事業であることや一定の利率が見込める製品に関わる資金であることなどの条件も満たす必要がある事に注意しなければなりません。こうした条件をクリアしていれば、1億円の資金調達も現実的なモノになります。

「取引企業倒産対応資金(セーフティネット貸付)」は、取引していた企業の倒産によって自社の経営が困難になった時に申し込めます。倒産企業に対して、売掛金債権がある業者などは申請を考えるといいでしょう。融資の上限は1億5000万円で、十分大きな金額を借りることができます。返済年数は8年となっていて、セーフティネット貸付という名称でも知られています。
この制度の注意点としては、申告に際しての条件が厳しい事です。取引先との関係性が重要で、倒産した企業に対してどういった関係があるのかによって融資を受けることができるのかが決まります。50万円以上の売掛金債権がある、取引依存度が20%以上である、貸付金や差入保証金などの債権があるなどの厳しい条件があるため、申請する際にはしっかりと確認をしなければなりません。

「新型コロナウイルス感染症特別貸付」はコロナの影響により、こうした制度を利用する事業者も増えています。売上が過去に比べ落ち込んでいる事業者が対象になっていて、将来的な業況の回復が見込める会社でないと受ける事ができません。給付金ではなく融資という事で、返済のめどがないと対象にはならない事に注意が必要です。
金額は6億円以内となっていて、事業内容によっては1億円を軽く超える金額を調達する事ができます。返済期間は20年以内とかなり長く設定されていて、長期の返済計画で事業を再び軌道に乗せることができます。

信用保証協会融資を使用する場合

信用保証協会融資は、あまり知られていない制度です。これは信用保証協会が保証する事で、高額の融資が可能になるという制度となっています。信用保証協会とは公的な機関であり、この協会が保証人になる事によって大きな額の融資が可能になるという仕組みです。この制度は中小企業が資金を調達するために、有用な制度です。

信用保証協会融資には様々な方法があります。1億円という高額な資金調達を達成するには、しっかりとそれぞれの融資方法の特性を知っていなければいけません。1億円もの資金調達が可能な融資方法は以下のものが考えられます。

 普通保証
 経営安定関連保証

「普通保証」は中小企業の事業者を対象にした制度です。注目すべきは、融資限度です。この制度の上限は2億8000万円以内となっていて、条件さえそろえば1億円の資金調達も十分に可能になります。返済期間は10年以内となっていて、1億円の融資としては一般的な機関です。信用保証料は融資額に対して、年で0.45%~1.90%とされていて、比較的借りやすいことでも注目されています。

「経営安定関連保証」は、売上が前年と比べて減っている事を申請する事によって、申請条件が揃う融資制度です。申請するには市区町村長の認定を受ける必要があり、セーフティネット保証とも呼ばれる制度となっています。融資限度額は普通保証と同じ、2億8000万円で、返済期間も同じく10年です。特筆すべきは融資額の年0.6%~0.7%となっていて、申請の際には費用を抑えることもできます。

気を付けるべきポイントは、1号認定から8号認定まである条件のいずれかに当てはまる必要がある事です。その項目は大型倒産やリストラによる事業者不足、借り入れによる資金繰りの悪化など多岐にわたります。いずれかに該当すると認定された時のみ、融資可能となるので、条件の確認は欠かせません。その適用条件は多岐にわたっているので、自身の会社がどこに適用できるのかを担当者などと確認すると安心して手続きを進めることができます。

不動産担保ローンを使用する場合

不動産担保ローンは、億単位の融資を受ける場合には非常に有効な方法です。不動産担保ローンとは文字通り、動産ではなく不動産を担保にすることで融資を受ける事を指します。不動産は非常に信頼性が高いために、融資金額も高くなります。
この方法の利点は、事業内容などに限らずに融資を受けられるという事です。不動産は仮に事業が失敗に終わっても、本人がいなくなっても回収する事ができる担保と見なされています。そのため、不動産価値の高い土地などを担保にすることができれば、1億円どころか、数億円の融資すらも可能になることもあるのです。

1億円の資金調達をする際に気を付けるポイント

1億円の資金調達をするのは、かなり労力がかかります。そして調達が成功したとしても、気を付けるべきポイントを押さえていないと、思いもよらないトラブルになってしまう事もあるのです。ここでは、気を付けるポイントを3つ挙げていきましょう。

費用

1億円の資金調達をするには、実は費用が掛かるという事を頭に入れていかなければいけません。様々な手続きで費用が掛かり、契約書類に貼る収入印紙だけでも6万円かかります。保証協会融資の信用保証料に関しては、1億円を10年間で返済する設定で計算すると550万円程度が必要になると考えられます。
1億円という大きな金額の融資を受けるためには、数百万単位の費用が掛かるという事です。しっかりと手続きの際には、こうした費用を確認しておく必要があります。

利息

1億円もの融資を受けると利息もかなりの負担になってきます。ここでは、金利が1%を考えていきましょう。借入期間を10年間とすると、単純計算では利息だけで500万円となります。借り入れ期間を考えて、しっかりとした返済計画を立てておく必要があります。

担保

担保は高額の融資を受ける際には、最も気を付けなければいけません。1億円の資金調達をするためには、担保になるものも高額になってしまいます。今回紹介した資金調達方法の3つは、1億円の融資を受ける際には担保が必要になる可能性が極めて高くなっています。

特に不動産担保は、担保にするかどうかをよく考える必要があります。1億円の融資の審査が通るほどの担保であれば、担保にするのではなく売却を検討すべき場合もあります。返済が滞ると強制売却という流れになってしまいます。強制売却では、相場よりもかなり安い価格でしか売れません。そのために、あらかじめ自分で売却して、その売却金を資金として使った方がいいという場合も多いので、検討する必要があります。

1億円の資金調達のまとめ

資金調達は中小企業などを経営する人にとっても、起業したいと考えている人にとっても重要です。特に1億円という資金調達を考える場合には情報収集は欠かせません。高額の資金調達をするためには煩雑な手続きも多く、様々な事を考慮する必要があります。
1億円以上の資金調達を成功させるためには、様々な制度を使用する事になります。自身や自身の会社がその制度の要件を満たしているかをしっかりと確認して、時には会計士や税理士などとの相談も必要でしょう。これほどの高額な資金調達には注意するポイントなども多いため、しっかりと情報を整理したうえで資金調達を検討してみてください。