ファクタリングは売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、売掛金を入金期日前に現金化する資金調達法です。そのため、売掛債権を持つすべての企業が利用可能であり、どのような規模の企業でも、どのような業種の企業でも利用しやすい資金調達法と言えます。
取引先に商品やサービスを提供する企業はもちろん、こうした企業に原材料等を納品する仕入れ先企業も売掛債権を持っていればファクタリングの利用は可能です。
では、仕入れ先企業がファクタリングを利用した場合、売掛先となる会社にはどのような影響があるのか、どのような対応をすべきかという点に関して解説していきましょう。
目次
仕入れ先企業もファクタリングを利用可能
一般的な商取引の流れを考えると、商品やサービスを求める企業があり、その商品やサービスを納品する企業があります。また、商品やサービスを提供するために、必要な原材料等を仕入れる、仕入れ先企業も存在します。
商取引はこのように1つの商品やサービスにも多くの企業が関わり、最終的に消費者の手元に商品やサービスが届く形になっています。
商取引に関わるすべての企業は、ファクタリングの利用が可能です。もちろん原材料等を卸す仕入れ先企業も、ファクタリングの利用が可能です。仕入れ先企業は、先に原材料等を取引先に納品し、その代金を後日受け取ります。つまり仕入れ先企業も、掛け取引を行っており、売掛金を持っているということです。
ファクタリングは売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、売掛金を早期現金化する資金調達法ですので、売掛債権を持つ仕入れ先企業もファクタリングは利用できるということになります。
仕入れ先企業がファクタリングを利用するメリット
仕入れ先企業は、主に原材料等を取り扱い、取引先の求めに応じて納品を行っています。仕入れ先企業自体も生産者等から原材料となる資材を購入して取引先に納品するため、現金を確保していなければいけません。その現金確保のために、ファクタリングを利用するには多くのメリットが考えられます。
資金不足を回避し安定した供給が期待できる
仕入れ先企業が、常にしっかりと資金を確保できている状態であれば、安定して原材料を取引先に供給できる状態になります。仮に取引先の売上が急拡大し、より多くの原材料が必要になった場合でも、仕入れ先企業に資金的な余裕があれば、問題なく対応できるでしょう。
仕入れ先企業から原材料等を仕入れる会社にとっても、通常取引をしている仕入れ先企業の資金面や業務が安定していることは、大きなメリットとなります。
常に現金を確保できるため新たな取引先を見つけやすい
仕入れ先企業が常に現金を確保していれば、その仕入れ先企業から仕入れを行っている企業も、事業を広げていくことに不安がなくなります。仕入れ先企業に余裕があれば、新たな取引先が増え、より多くの原材料が必要になっても、対応してくれる可能性が高くなるからです。
また、仕入れ先企業自体の経営にも好影響があるでしょう。仕入れ先企業としても新たな納入先を見つけやすくなります。また、これまで取り扱っていなかった原材料を取り扱うといった事業拡大も可能となりますので、仕入れ先企業が安定して現金を手にしているというのは、取引をする企業にとっても、仕入れ先企業自身にとってもプラスの影響が考えられます。
仕入れ先企業が3社間ファクタリングを希望した場合には?
仮に取引先企業が3社間ファクタリングを希望し、その旨がファクタリング会社から届いた場合、売掛先となる自社はどのように対応すべきかを考えていきましょう。
3社間ファクタリングとは?
一般的にファクタリングと呼ぶ場合は、2社間ファクタリングを指します。申し込み企業とファクタリング会社の2社で契約をする形であり、売掛先に知られることなく利用できる契約方法です。
この2社間ファクタリングの2社に加え、売掛先も含めた3社で契約を結ぶのが3社間ファクタリングです。つまり、仕入れ先企業が3社間ファクタリングを希望した場合、売掛先となる自社もその契約に参加する必要があるということになります。
3社間ファクタリングは、売掛金を支払う売掛先企業も契約に参加するため、売掛金の未回収リスクが低くなります。そのため、ファクタリング契約における手数料の設定が安くなる傾向にある契約です。
2社間ファクタリングの手数料相場は10~30%程度と言われていますが、3社間ファクタリングの場合、1~9%程度まで手数料を抑えられるため、申し込み企業にとっては非常に有効な資金調達法となります。
仕入れ先企業の与信調査をしっかり行う
仕入れ先企業が3社間ファクタリングを希望し、その連絡が仕入れ先企業もしくはファクタリング会社から届いた場合の対応ですが、これはその会社の判断次第です。仕入れ先企業を信用しているのであれば、了承した上で今まで通り取引を続けるという判断でもいいでしょう。
ただし、それまでファクタリングを利用していなかった企業が、突然ファクタリングを利用しだしたという場合は、ある程度警戒する必要はあります。ファクタリングを利用するということは、何らかの事情で現金が必要になった可能性があるからです。
それが、事業拡大のための資金確保など、明確な理由があれば大きな問題ではありませんが、単に経営難で現金が必要になっている可能性も考えられます。
3社間ファクタリングのため、債権譲渡通知が届き、承認を求められた場合、承認するのは問題ありませんが、それに伴い仕入れ先企業の経営状況などに関して、改めて与信調査を行うなどの対応が必要と言えます。また、最悪の事態を想定し、ほかの仕入れ先企業を探しておくといった動きも必要でしょう。
万が一仕入れ先企業の経営が厳しくなり、原材料等の仕入れができなくなれば、自社の経営も大きなダメージを受けます。しっかりとリスク管理をした上で、今後の取引を検討する必要があります。
ちなみに売掛先として3社間ファクタリングに参加した場合、売掛先としては特別な対応は必要ありません。売掛金の入金先が、仕入れ企業の口座からファクタリング会社の口座に変更されますが、変更された口座に、期日までにきちんと売掛金を入金するようにしましょう。
自社がファクタリングを利用することで仕入れ先企業にもメリットがある
では、仕入れ先企業ではなく、自社がファクタリングを利用した場合、仕入れ先企業にどのような影響があるのかを考えてみましょう。
確実に仕入れ代金の支払いができるようになる
自社がファクタリングを利用すれば、売掛金を早期に現金化でき、資金面に余裕ができます。資金に余裕ができれば、仕入れ先企業への支払い等にも余裕を持って対応できるようになり、仕入れ先企業としても安心して取引ができるようになるでしょう。
仕入れ先企業・ファクタリングのまとめ
仕入れ先企業にも売掛債権がありますので、もちろんファクタリングの利用は可能です。仕入れ先企業がファクタリングによって、資金繰りを改善させることができれば、その後の取引も安心して行えますので、むしろメリットが大きいといえます。
仕入れ先企業が2社間ファクタリングをした場合、売掛先である自社には特に通知は来ません。売掛債権の契約内容も変更されませんので、原則ファクタリングを利用していること自体知らない状態で、通常通りの契約を履行する形になります。
仕入れ先企業が3社間ファクタリングを希望した場合、売掛先である自社にも通知が届き、契約に参加することになりますので、その時点でさまざまな点を考慮する必要があります。場合によっては仕入れ先企業の与信調査を強化したり、ほかの仕入れ先企業を探す必要が生じるかもしれません。
いずれにせよ、ファクタリングという資金調達法の仕組みや特徴、メリット・デメリットなどをきちんと把握し、その場に応じた対応ができるように準備しておくことが重要になります。