事業者向けの資金調達手段として誕生し、一般的にも広く知られているビジネスローン。
ビジネスローンの提供元は、主にノンバンクと呼ばれる「預金機能を持たない金融事業者」です。
ノンバンクのビジネスローンは銀行や信用金庫などの金融機関が提供する事業者向けの融資よりも審査基準がゆるく入金までのスピードが早いため、資金難や迅速な資金調達が必要となった中小零細企業の経営者さまや個人事業主さまからの利用率が高いことが特徴です。
一方でノンバンクのビジネスローンには「銀行や信用金庫などの融資に比べて金利が割高」「知名度が乏しい融資事業者は信用性に欠ける」といったマイナスポイントが存在するのも確かです。それでも、他の金融機関が提供する融資商品と比べて圧倒的に“借りやすい”といえるため、多くの事業主の方々から高い支持を得ています。
当ブログをご覧になられている方の中には、すでにビジネスローンを利用したことがあるという事業主さまもいらっしゃるかもしれませんが、では、そもそもビジネスローンという金融商品がどのように誕生したのかを考えられた経験はありませんか?
そこで今回は「ビジネスローンの歴史」について解説していきたいと思います。
これまでに利用経験がある方も、ビジネスローンの誕生の経緯を知ってさらに理解を深めていただけると幸いです。
今では事業資金融資事業を展開するノンバンクの商品として知られる「ビジネスローン」ですが、もともとは銀行によって開発され提供が始められた金融商品でした。
もちろん、ビジネスローンが開発される以前から、銀行による企業への資金融資は行なわれていました。現在では、「信用保証協会が介入する保証付融資」の提供も実施されていますが、当時の銀行融資の融資方法は基本的に貸付けによって生じる貸し倒れリスクのすべてを銀行側が背負うことになる「プロパー融資」のみであったため、銀行は貸付に対して慎重にならざるをえませんでした。
「プロパー融資」と「信用保証協会の保証付融資」
プロパー融資とは、銀行が直接融資を行う仕組みを指す。具体的には「信用保証協会」を介さず、銀行に直接融資を申し込むことを「プロパー融資」と言い、信用保証協会を通じて融資を受けるものを「保証付き融資」と呼んで区別しているのだ。
・ プロパー融資・・・銀行から直接融資を受ける方法
・ 保証付き融資・・・信用保証協会を通じて融資を受ける方法
引用元 資金調達プロ
貸付によるリスクが大きいプロパー融資の審査基準は非常に高く、いかに業績の高い企業であっても審査通過はスムーズにいきません。
倒産の可能性が高い中小零細企業であればなおさらです。そのような理由から銀行は、資金繰りが不安定、もしくは将来性が見込めないと判断した中小零細企業に対する融資の断念を次々に決断。
結果として、銀行からの融資を断られたことにより、資金難にあえぐ中小零細企業はさらに倒産の可能性が高まることになりました。
そのような状況を打開するために開発が進められたのがビジネスローンです。
銀行が開発したビジネスローンは、プロパー融資と同じように貸し倒れリスクのすべてを背負うことになるものの、金利を高くすることによってそのリスクを軽減。審査基準も大きく緩和された銀行のビジネスローンは、中小零細企業をメインターゲットに据えて次第に普及し、社会的な認知度が上昇していきました。
多くの銀行が導入を開始し、中小零細企業に重宝されていたビジネスローンでしたが、1998年に中小企業金融安定化特別保証制度が創設されると、銀行は信用保証協会によって貸倒れ損失の8割が軽減される「信用保証協会による保証付き融資」の提供を積極的に推進。
これは、ビジネスローンに比べても金利が低くなるほか、貸し倒れリスクの軽減という観点からプロパー融資よりも審査のハードルが下がるというメリットがあったため、結果として中小零細企業側も「信用保証協会による保証付き融資」の利用を希望するようになっていきました。
こうしてメガバンクを中心に、金利が高く審査基準が低いビジネスローンから撤退する傾向が顕著となり、様々な理由によって「信用保証協会による保証付き融資」を受けられない中小零細企業は、厳しい資金繰りを避けられない状況に陥る可能性が高まってしまうことになりました。
そのような状況のなかで、銀行が開発したビジネスローンのスキームを積極的に活用しだしたのがノンバンクです。
銀行の融資審査に通過できなかった企業の受け皿的存在となったノンバンクのビジネスローンは、「最短即日での対応」や「「銀行よりも緩い審査基準」、決算書の審査コストを軽減できる「スコアリングシステムの導入」などを実施することによって、利用者の拡大につなげ、提供を開始する事業者も爆発的に増加。
現在では、ノンバンクが提供する融資商品をビジネスローンと呼ぶことが当たり前となっています。
スコアリングシステム
利用者から提出された決算書の数値や利用者情報などの各情報を入力するだけで、審査結果がわかるシステム。
以上のような経緯を経て、現在も中小零細企業を中心に多くの事業主の方々からの利用が続いているビジネスローン。
もともとは銀行が開発した金融商品でありながら、多くの銀行が撤退したことによって提供元の中心がノンバンクへと移行し、現在では開発元である銀行の融資よりも“借りやすい”金融商品となっていることには不思議な因果関係を感じずにいられません。
とはいえ、「審査基準が緩い」「即日で資金を取得できる」といったメリットこそあるものの、ノンバンクのビジネスローンは銀行の融資に比べれば、金利が高いことは事実であり、借り入れ元としての信用度も大きく劣ってしまうのが実情です。
ですので、「審査に通過しやすいから」という理由だけで安易にノンバンクのビジネスローンを選択してしまうのはおすすめできません。
事業資金の融資を検討する際には、自社にとってメリットをより多く得られ、いかに負担やデメリットを軽減できるかといった点を考慮に入れた上で、銀行の融資とノンバンクのビジネスローンを賢く使い分ける必要があるといえるでしょう。