経営が軌道に乗り、売り上げも安定したようで一安心。特に起業したばかりの方ならホッと一息つくとともに、事業のさらなる成長を目指した戦略の立案を図りたいところでしょう。

でもちょっと待ってください。企業の経営にあたっては、利益の確保と同じくらい大切な業務があることを忘れてはいけません。

そう、決算です。

法人の設立時期によって決算期に違いはあれど、決算は会社法によって1年に1度、必ず行わななければならないと定められている義務のひとつです。また、法人税法においては、事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内に、決算に基づいて算出される税金を申告・納付しなければならないことも定められています。当然ながら、これらを怠るようなことがあれば企業の社会的責任を問われ、法的な罰則を受けることにもなりかねません。

もしかすると、法人成り以前に個人事業主として事業を行っていた方の中には、「確定申告の経験があるから慣れている」などと高をくくっておられる方もいるかもしれませんが、法人決算は個人事業主の確定申告よりも複雑であり、数日の追い込み作業で片付けられるほど、簡単なものではありません。

さらに、顧問税理士や経理担当者がおらず、事業主が日々の経理業務も担っている場合は、通常の業務もこなしながら決算の準備も行わなければならず、文字通り、目が回るような多忙をきわめることにもなるでしょう。

ただ、決算期を見据えながら前もって準備を進めていけば、法人の決算業務も慌てることなく効率よく進めることが可能です。

そこで今回は、決算書作成前に必要な準備や、それにともなう日々の心がけについて解説していきます。

■法人決算で必要な書類

まずは、決算において作成が必要となる書類をみていきましょう。各書類についての詳細は本記事では省略しますが、法人決算では株主総会や税務署等に開示・提出する以下の9種類の書類の作成が必要になります。

・決算報告書
・総勘定元帳
・領収書綴
・法人税申告書
・法人事情概況説明書
・消費税申告書
・税務代理権限証書
・地方税申告書
・勘定科目明細書

このうち、いわゆる決算書と呼ばれるのが「決算報告書」です。決算報告書は、下記の7種の書類の総称であり、法人税の申告時はもちろん、銀行の融資審査時に提出を求められるため特に重要な書類となります。

・賃借対照表
・損益計算書
・キャッシュ・フロー計算書
・株主資本等変動計算書
・製造原価報告書
・販売費及び一般管理費明細書
・個別注記表

また、決算報告書や総勘定元帳などのいくつかの書類は、会社法上では10年、法人税法では原則7年最大10年、領収書や契約書、請求書などの書類も同じく法人税法で原則7年最大10年の保存が義務付けられています。

■決算書作成前に進める準備

では、決算書の作成に入る前にはどのような準備を進めておけばよいのでしょうか。

準備において最も重要な作業といえるのが、決算整理です。

決算整理とは、当期中の取引のうち、未確定勘定の修正や未認識となっている処理を行って試算表を作成する作業のことであり、期末に実施します。

試算表は総勘定元帳に記載される各勘定科目の残高をもとに作成するものであり、作成した試算表から以下のようなものを確認します。

・現金と預金の残高照合

自社が保有する現金と預金の残高に間違いがないかを確認します。また、預金残高の証明書も必要となるため、取引先の金融機関に残高証明書の発行依頼を行わなければなりません。

・債権・債務の残高照合

売掛金や未収入金となっている債権のほか、買掛金や未払金、借入金などの債務の残高も併せて行います。こちらも関係各所へ対して証明書の発行を依頼する必要があります。

・売上高・売上原価の算定

売上高は漏れなく計上されているか、また期末時点での自社製品や未使用の消耗品などの在庫数を確認し、売上原価を適正に算出します。

・減価償却費の計上

備品や建物といった固定資産勘定においては、それらの価値の減少に応じた減価償却費を計上します。

・見越し・繰延べ処理

未収や未払い、前受や前払いの取引が期をまたぐようであれば、それぞれの金額を算出して今期分と時期分に分け、今期分のみを計上します。

以上が、決算報告書作成前に行う決算整理の作業内容です。

決算に必要となる書類の中でも最も作成に時間を要するであろうものが決算報告書です。その前準備としての確認作業となるのが決算整理というわけです。

また、決算整理にあたっては試算表を作成したうえで行うと解説しましたが、この試算表は総勘定元帳をもとに作成されます。

つまり、いかにスムーズに総勘定元帳を作成できるかが、決算書報告書の作成、ひいては効率的に決算を完了させられるかのポイントとなります。

■日頃の取引の記録や整理をていねいに行う

では、スムーズな総勘定元帳の作成にあたってはどのような心がけをするべきなのでしょうか。

総勘定元帳は、日付欄、摘要欄、元丁欄、借方金額欄、貸方金額欄の各欄からなる仕訳帳からすべての取引が転記された書類です。

したがって、日々発生する取引をいかに定期的かつ正確に仕訳帳へと記録できているかが、総勘定元帳をスムーズに作成するための重要なポイントとなるわけです。

また、正確な月次決算を積み重ねていくことにより、年次決算での確認作業も大幅に軽減することができます。

これらの経理業務は、通常の業務に追われる事業主にとっては煩わしい作業だといえますが、最近では帳簿付けを簡易的に行えるクラウド型の会計システムが主流となっており、経理業務も一昔前に比べれば煩雑な作業ではなくなっています。

効率的に決算を完了させるためにも、日常の経理業務を後回しにすることなく、ていねいに進めておくように心がけましょう。