「スタートアップ」という言葉は聞いたことがあるけれど、それが一体どのような企業を意味するのか。

また、なんとなく若い企業であることは想像できるけど、ベンチャー企業との間に違いがあるのか分からないという方が多くいるのではないでしょうか。

そこで今回は、スタートアップ企業の定義や特徴について、ベンチャー企業との違いも踏まえながら解説していきます。

スタートアップ企業の明確な定義はない?

スタートアップ企業の明確な定義はない?

さっそく、スタートアップ企業の定義を解説していきたいところですが、実はスタートアップ企業を明確に示す定義はありません。

もちろんベンチャー企業に関しても同様のことがいえます。

これは、スタートップ企業にもベンチャー企業にも「中小企業基本法」や「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」のような、基準や条件を定義する法律が存在しないためです。

したがって、スタートアップ企業もベンチャー企業も、基本的には「ビジネス界隈に拡がる曖昧な定義」の基に立つ企業といえるのです。

ただし「曖昧な定義」とはいえ、両者の名称が異なることからも分かる通り、それぞれは違う特徴をもっており、その特徴によって定義を区分することができます。

スタートアップ企業とは?
スタートアップ企業とは?

そもそも「スタートアップ」という言葉は、アメリカのシリコンバレーにて発生したビジネス用語であり、「起こす」や「行動を開始する」といった意味が含まれています。

これだけを聞くと、「立ちあげたばかりの若い企業」というふうに解釈できますよね。

確かに、スタートアップと呼ばれる企業の多くは、創業後1〜3年ほどの設立期間の浅い企業です。

しかし、スタートアップ企業の「スタートアップ」は、単純に設立年数の浅さだけを意味するものではなく、もうひとつ重要な意味が隠されています。

それが、「開拓の開始」です。

これは、既存のビジネスモデルに捉われることなく、斬新で革新的なビジネスモデルの構築によって新たな市場の開拓をはじめるということ。そして、その開拓によって社会に大きなインパクトを与えようとすることです。

つまり、スタートアップ企業とは、「イノベーションを起こそうとする設立間もない企業であり、イノベーションによって社会と人々の生活をより良いものにしようとする企業」ということがいえます。

さらに、スタートアップ企業にはもうひとつ大きな特徴があります。

それは、短期間での急成長と巨額の収益を目指すというものです。

スタートアップ企業は、あくまで社会と人々の生活をより良くするイノベーションを起こそうとして設立される企業であり、従業員数や資本金を増やして企業規模の拡大を目的にはしていないのがほとんどです。

それよりも、短期間での成長と収益の増加を目指し、それが達成されればM&Aの活用などによって企業を手放すというケースがよくみられます。

中には、楽天やサイバーエージェント、最近ではメルカリのように、もともとはスタートアップとして出発しながらも、のちに上場を果たすほどの大企業へと成長を遂げるケースもありますが、必ずしもすべてのスタートアップ企業が企業規模の拡大を目指しているわけではないという特徴があります。

SNベンチャー企業との違い
SNベンチャー企業との違い

では、ベンチャー企業との違いはどこにあるのでしょうか。

一般的に、ベンチャー企業と聞けば「設立間もない新しい企業」というイメージを持たれるかと思います。

このイメージがスタートアップ企業に対するイメージと同様であることから、両者は混同されがちになるのです。

確かにベンチャー企業も、スタートアップ企業と同じように設立期間の浅い企業という解釈に間違いはありません。

ただし、スタートアップ企業と区別される大きなポイントが2つあります。

ひとつは「経営方針の違い」です。

スタートアップ企業の経営方針は、例外こそあるものの、基本的にはイノベーションを起こして短期的な成長と収益の増加を目指し、それが達成されれば企業そのものや事業を手放すというものです。

対してベンチャー企業は、中長期的に成長と収益の増加を目指し、その目標に向かう中で、必要があれば企業規模の拡大も進めていくというものになります。

もうひとつは「ビジネスモデル」の違いです。

スタートアップ企業は、まだ市場で受け入れられていない事業に着手することによって、新たなビジネスモデルを構築し、市場を切り拓こうとします。

一方のベンチャー企業は、新たなビジネスモデルの構築を目指すよりも、市場においてある程度の成長や成功を遂げている事業に着手することによって、安定した事業展開を目指そうとするのです。

まとめ

まとめ

以上が、スタートアップ企業の定義とベンチャー企業との違いです。

経営方針やビジネスモデルに違いがあることをお分かりいただけたかと思いますが、冒頭でもお伝えした通り、両者を明確に定義する法律などは存在しません。

したがって、スタートアップ企業もベンチャー企業も、あくまで「ビジネス界隈に拡がる曖昧な定義」の基に立つ企業であるということを憶えておきましょう。