事業者の資金調達手段として知られるファクタリング。
借り入れではなく、売掛債権の売却によって資金を得られる手段であることから「借りない資金調達手段」などと呼ばれ、キャッシュフローの安定化や緊急を要する運転資金の確保が必要なケースなどで有用だといわれています。
そんなファクタリングですが、提供する事業者によって3つの名称に分類されることをご存知でしょうか?
ひとつは「独立系ファクタリング」。
これは、ファクタリングを独立的かつ専門的に取り扱う事業者によって提供されるサービスであり、提供する事業者は「独立系ファクタリング会社」と呼ばれます。
最近では、非常に多くのファクタリング事業者が存在するようになりましたが、ファクタリング市場における9割以上を、この「独立系ファクタリング」が占めているといわれています。
もうひとつは「ノンバンク系ファクタリング」です。
こちらは、預金業務を実施していない金融事業者、いわゆる「ノンバンク」が提供するファクタリングです。
ファクタリングを専門的に取り扱う「独立系ファクタリング」と比べても、利用手数料や審査基準などに大差はほとんどないため、両者の違いは単に提供する事業者が異なるという認識で問題ないかと思います。
そして、三つめが「銀行系ファクタリング」です。
「銀行系ファクタリング」は、銀行または銀行のグループ会社が提供するファクタリングです。
たとえば、三井住友系列の「SMBCファイナンス」や三菱UFJ系列の「三菱UFJファクター」といったメガバンクのグループ会社が提供するサービスのほか、北洋銀行や百十四銀行といった地方銀行が提供するものもあります。
さて、ここまでお読みいただいた方の多くは、もしもファクタリングを利用するのであれば、迷わず「銀行系ファクタリング」を選択しようと考えられるのではないでしょうか。
独立系やノンバンクに比べれば、銀行やそのグループ会社の提供するサービスの方が無条件に信頼性は高いと断定できることもあり、その選択は当然だといえます。
しかし、信頼性が高いとはいえ「銀行系ファクタリング」にも一長一短があり、場合によっては、独立系やノンバンクのファクタリングを選択した方が多くのメリットを得られることがあるのも確かです。
銀行系ファクタリングのサービス内容
「銀行系ファクタリング」だからといっても、他の2種類のファクタリングと仕組みが異なるわけではありません。
発生済みの売掛債権(請求書)をファクタリング事業者に売却し、売却額から利用手数料を差し引いた現金を得られる。
このような基本的なファクタリングの仕組みは3者とも共通しており、たとえば「銀行系ファクタリング」だから、利用者に有利な流れやサービスが加えられるということはありません。
では、「銀行系ファクタリング」と他のファクタリングにはどのような特徴の違いがあるのでしょうか。「銀行系ファクタリング」におけるメリットとデメリットを交えながら解説していきたいと思います。
取り扱うサービスは3社間ファクタリングのみ
売掛債権をファクタリング事業者に売却して現金化するファクタリングのことを「買取型ファクタリング」と呼ぶのですが、この「買取型ファクタリング」には「3社間ファクタリング」と「2社間ファクタリング」の2種類が存在します。
このうち、独立系や一部のノンバンクは両者を提供しているのに対し、「銀行系ファクタリング」で利用できるサービスは「3社間ファクタリング」のみとなります。
「3社間ファクタリング」のみということは、利用に際して売掛先への売掛債権譲渡通知が必須となるため、「2社間ファクタリング」のように秘密裏にファクタリングを利用できないということを意味するわけです。
即日の現金化は不可能
「3社間ファクタリング」のみの利用に限られるということは、売掛先にファクタリング利用の事実を知られるだけでなく、債権譲渡の承諾にかかる時間も要する場合があるために、それだけ入金までの期間が長くなるということにもなります。
ですので、緊急の資金調達が必要な場合など、迅速性を重視したいのであれば、銀行系ファクタリングよりも、「2社間ファクタリング」の選択も可能な独立系や一部のノンバンクのファクタリングを利用するべきだといえるのです。
融資審査に影響を与える可能性もあり
銀行やそのグループ会社が提供するファクタリングですから、利用すれば、その事実は銀行全体で共有されることになります。
ファクタリングで調達した資金は負債ではないため、当然のことながら賃借対照表においても負債として数えられることはありません。
つまり、独立系やノンバンクのファクタリングで資金を調達しても銀行の融資審査において大きな影響を与えることはないわけです。
ところが、「銀行系ファクタリング」を利用すると、たとえ負債にはならずとも、売掛債権の売却が必要なほどの資金難であることが銀行側に知られますので、将来的な融資審査に影響を与える可能性が生じてしまう場合があるといえるのです。
利用手数料は割安の傾向
「銀行系ファクタリング」の最大のメリットは、独立系やノンバンクよりもはるかに信頼性が高いという点ですが、もうひとつ挙げるとすれば利用手数料が両者よりも割安であるという点です。
もともと「3社間ファクタリング」は「2社間ファクタリング」よりも利用手数料が低いという特徴がありますが、「銀行系ファクタリング」では預金をはじめとする大規模な他人資本も基にしたサービスの提供が可能であるために、独立系やノンバンクよりも割安な利用手数料を設定できるということがいえます。
銀行系ファクタリングとは?のまとめ
以上が「銀行系ファクタリング」の主な特徴となります。
独立系やノンバンクのファクタリングが、迅速性や秘匿性に優れている一方で、「銀行系ファクタリング」は高い信頼性と割安な手数料が最大の魅力であるということがお分かりいただけたかと思います。
ファクタリングの利用を検討される際には、どのような点を重視するのか十分に考慮した上で、最適な事業者やサービスを選択してみてはいかがでしょうか。