法人がお金を借りるにあたって、さまざまな借り入れ方法が考えられます。
融資を受ける際には、金利も考えないといけません。
利率がどうかで今後返済時に支払う利息額も変わってくるからです。
ここでは法人融資の金利の相場や、利息の計算方法についてみていきます。
また借入金や利息支払いをどう会計処理すればよいかについても紹介しますので、参考にしてください。
目次
商品別の金利相場について紹介
法人が借入する場合、いくつかの商品や借入先が考えられます。
主なものとして、以下のような選択肢が考えられるでしょう。
1. 日本政策金融公庫からの融資
2. 銀行融資
3. ビジネスローン
どれで資金調達するかで、金利が変わっていきます。
金利もしっかり見たうえで、融資先をどうするか検討しましょう。
日本政策金融公庫からの融資
日本政策金融公庫という政府系の金融機関でも、法人向けの融資を行っています。
日本政策金融公庫は中小企業やスタートアップなど、業歴や実績のあまりないところにも積極的に融資しているのです。
日本政策金融公庫の金利は、公式ホームページで確認してください。
なお2023年2月時点の利率をみると、担保なしの場合2.03~3.15%、担保ありの場合1.08~2.80%が基準利率です。
ただし利率はその時々の情勢によって変化します。
しかしほとんどの場合、1~3%の範囲内に収まる傾向が見られるのです。
また日本政策金融公庫では、特別利率と呼ばれる金利があります。
「特利」とも呼ばれており、融資契約をするにあたって一定の条件を満たすと適用される利率です。
特利の場合、通常よりも利率が低めに設定されています。
つまり利息の支払い負担が軽減されるわけです。
特利が適用される条件には数多くあります。
担保の有無・代表者が連帯保証人になるか、法人代表者の年齢や経歴、事業内容などさまざまな条件が設定されています。
2023年2月現在、特別利率はA~Uまで設定されているのです。
適用されるものはないか、日本政策金融公庫に問い合わせてみるとよいかもしれません。
銀行融資
法人の借り入れ方法として、銀行融資を連想する人も多いでしょう。
銀行融資は各金融機関でそれぞれ利率を決定しています。
銀行融資の場合、おおよそ1%台の後半から3.5%程度で設定される傾向が見られます。
企業の規模やこれまでの実績、信用力をベースにして各自金利が設定される形です。
また同じ金融機関でも借入期間で利率が変わっていきます。
一般的に借入期間が長くなると、金利も高めになりがちです。
利息支払いをできるだけ少なくしたければ、返済期間をできるだけ短くすることが大事です。
ビジネスローン
ビジネスローンも事業性資金の融資を行っているサービスです。
銀行融資や日本政策金融公庫と比較すると、審査期間が短くなっています。
中には即日融資に対応しているところもあって、緊急性の高い借入時に重宝します。
ビジネスローンはほかの融資方法と比較して、金利は高めなのが特徴です。
ビジネスローンはさまざまなところが提供しているサービスで、金融機関のほかにも消費者金融などのメガバンクなどで提供しています。
メガバンクのビジネスローンの金利相場は、おおよそ1%台から14%といったところです。
地銀や信用金庫などの場合には、3~15%が相場といわれています。
ノンバンクは5~18%が相場です。
通常初めて融資の申し込みをした場合、まだ返済実績がありません。
そこで上限金利の適用されることが多いのです。
14~18%といった高い利率で利息を支払わないといけません。
金利に幅がある理由
法人融資の商品概要を見てみると、金利が「○%~○%」といったように、利率へ一定の幅を持たせています。
その金融商品の融資を受けた場合、金利の範囲内で利率が設定される形です。
上限金利と下限金利とでは、10%以上の差の設定されていることもあります。
10%も差があると、利息の支払い額もかなり大きな差が生じるのです。
また金融商品によっても金利に違いが見られます。
ところでなぜ金利に幅を設けているのでしょうか。
幅をもたせているのには理由があるので、主な項目についてここで紹介します。
債権回収のリスクが理由
金利に幅をもたせているのは、債権回収のリスクに応じているからです。
債権回収できない可能性が高いと、金利も高めに設定されます。
もし債権回収できなければ、融資した金融機関は損失をこうむります。
債権回収不可能のリスクの高いところには高めの金利に設定して、利息を多くとるのです。
こうすることでたとえ債権回収できなくなっても、不良債権の額を少なくするわけです。
一般的に初めて融資の申し込みをする際には、上限金利かそれに近い利率に設定されます。
返済の実績がないので、信用力が未知数のためです。
審査難易度と金利の関係
一般的な傾向として、審査難易度の高い商品は低金利になりやすいといえます。
法人融資の場合、日本政策金融公庫や銀行融資は低金利です。
一方ビジネスローンは金利が高めに設定されます。
日本政策金融公庫や銀行融資の場合、審査に1か月前後かかります。
それだけ丹念に申し込んだ法人のことについてチェックするからです。
丁寧に審査するので融資可能なところは、ある程度の信用力があると判断されます。
低金利で貸し出しても大丈夫なわけです。
一方ビジネスローンはどれほどかかっても、1週間や10日後には融資実行されます。
早い貸金業者だと即日融資を行っているところもあるほどです。
審査期間が短いので、そこまで法人を詳しく精査はできません。
つまり返済不履行になるリスクはどうしても高くなります。
リスクマネジメントするために、金利を高めに設定する必要があるわけです。
利息の計算方法について解説
融資を受けた場合、元金の返済と利息の支払いを今後行っていく必要があります。
利息は自分で計算も可能です。
ここでは利息の計算方法と返済方法について解説します。
利息の基本的な計算方法
上記にて各商品の金利の相場について紹介しました。
ホームページや商品案内のパンフレットに記載されている利率は、基本年利です。
つまり融資を受けて1年後に返済した場合の利率です。
よって利息の計算方法は、以下ので算出できます。
借入額×利率÷365日×借入日数
なおローン商品を見てみると金利欄で「実質年率」という記載を、しばしば見かけるでしょう。
実質年率とは利息のほかにも、手数料をはじめとした諸費用込みの利率という意味です。
法人融資の主要な返済方法について
法人で借入する際には、返済方法についてもチェックしておきましょう。
返済方法によって、利息の支払い額や総返済額が違ってくるからです。
返済方法は大きく分けて元金均等返済と、元利均等返済の2種類があります。
元金均等返済とは、月々一定の元金を返済していく方式です。
返済回数で借入額を頭割にして、月々同じ額の元金を返済します。
そのうえにその時々の利息が上乗せされる形です。
元金均等返済の場合、最初のうちは返済額が大きくなります。
まだ元金が多いので利息もおのずと高くなるからです。
返済を繰り返していると元金も減って、利息の支払い額も少なくなるので、次第に返済額も減っていきます。
一方元利均等返済の場合、月々の返済額が一定です。
毎月決まった額を支払っていく形なので、資金繰りはやりやすいでしょう。
元利均等返済の場合、月々の決まった額の中で元金返済と利息の支払いが含まれています。
つまり最初のうちは利息の支払い額が大きいので、利息のウエイトが大きくなります。
よって元金返済はあまり多くありません。
もし同じ額・同じ利率で借り入れた場合、元金均等返済よりも元利均等返済の方が返済期間は長くなります。
このように返済方法で利息の支払い額も変わってくるため、その点も十分留意して判断しましょう。
融資を受けた場合の仕訳方法とは?
融資を受けてお金が入ってきた、返済時に融資先にお金を支払った場合、会計処理しなければなりません。
この場合どのような形で仕訳すればよいか困る人も多いでしょう。
借入金に関する仕訳は、以下のタイミングで処理する必要が出ていきます。
1. 融資を受けた場合
2. 返済した場合
3. 長期の借入の返済期限が1年以内になった場合
それぞれどのように処理すればよいかについて以下で解説しますので、融資を受けた際の参考にしてください。
融資を受けた場合
融資を受けて借入金が自分たちの口座に振り込まれた場合、会計処理する必要があります。
この場合まず借方は「預金」にしましょう。
複数の口座を法人でもっている場合には、金融機関の指定もしておきましょう。
一方貸方には「短期借入金」という名目で処理するのが一般的です。
返済した場合
もし借入金を返済した場合借方はふたつに分けます。
まずは「短期借入金」という勘定科目には、元金の返済額を記載します。
その下に「支払利息」という名目で、利息の支払い額を記載してください。
一方貸方の方には「預金」と金融機関も指定している場合には、引き落とされた口座の銀行名も記載します。
そして元金返済と利息の支払い額を合わせた金額を記載してください。
長期の借入の返済期限が1年以内になった場合
長期借入金の場合、融資を受けた時にはまず借方に「借入金」という勘定科目を設定します。
そして負債を増やすという形で処理しましょう。
一方貸方には「預金」として、融資を受けた金額を入れます。
これが返済するときには逆にして処理しましょう。
つまり借方には「借入金」として返済した額を記載します。
一方貸方には「預金」にして返済した額を記入する形です。
短期借入金と長期借入金について
融資を受けた際に返済期間はそれぞれです。
返済期間が1年間を超えるかどうかで、処理の方法が違っていきますので注意しましょう。
「ワン・イヤー・ルール」とも呼ばれ、企業会計基準の原則なので覚えておいてください。
決算の翌日から支払い期限が1年以内の融資であれば、短期借入金として処理します。
もし返済期間が1年を超えるような融資の場合、長期借入金扱いとなるのです。
短期か長期かで負債の区別も変わっていきます。
短期の場合、流動負債扱いになるのです。
一方長期の場合、固定負債になってしまいます。
法人融資の返済は経費扱いにできるか?
会計処理するにあたって、支出の中で経費になるかどうかは重要なポイントです。
経費として計上できれば、その分節税効果が期待できるからです。
もし融資を受けて返済した場合、経費扱いできるのでしょうか。
返済時の支出ですが、一部経費として計上できるものもあります。
元金返済は経費で計上できない
元金返済については、経費として計上できないので注意してください。
融資を受けた段階で、その金額は負債として計上されているはずです。
融資を受けた後、毎月決まった期日に決まった額を返済します。
その結果負債は減少していきます。
融資を受けたお金はいずれ返済しなければなりません。
法人の損益とは一切関係ないので、経費として認められないわけです。
利息支払いは経費として計上できる
融資を受けて返済する際には、元金の返済のほかに利息の支払いもしているでしょう。
この利息については、経費扱いにできます。
融資を受けた場合、元金の返済と利息の支払いを行います。
そのため法人が融資を受ければ、それを超える額を支出しなければなりません。
利息分で法人の財産が減少するので、この部分については経費として計上できるわけです。
利息のことも意識して融資を受ける方法のまとめ
法人が融資を受ける場合、元金の返済のほかに利息支払いもあります。
利息額の多少は金利の利率によって決まります。
借入できるかどうかも重要ですが、融資を受けた後の返済についても念頭に入れないといけません。
利息の支払い負担を軽減するためにも、低金利の商品に優先的に申し込むのがおすすめです。
また金利を比較する際、最初の融資時には上限金利かそれに近い利率が適用されます。
利率を比較する際には下限金利ではなく、上限金利の利率をチェックすることも忘れないでください。