法人の代表者にとって頭が痛いのは、資金繰りの問題でしょう。
せっかく事業が順調でも手元にお金がなければ、経営は立ちいかなくなります。

もし手持ちの資金がない、しかも支払期限があるのなら借り入れも検討しなければなりません。
法人の融資先には、いくつか選択肢があります。
それぞれに異なる特徴をもっているので、特性を理解したうえでどこに借りるのが、今の自分たちにとってベストかを考えてください。

パッと思いつく銀行融資

法人が融資を受ける場合、多くの経営者が連想するのは銀行融資ではないでしょうか。
銀行では最大数億円規模といった大型融資にも対応しています。
また金利も低く抑えられているので、返済負担も軽減できます。
しかし一方で審査が厳しいともいわれているので、注意しましょう。

必要書類を準備しよう

銀行融資を申し込む際には、多種多様な書類を提出しなければなりません。
銀行融資を検討する際には、早めに必要書類を用意しましょう。
具体的な書類については、申し込む金融機関に問い合わせてください。
しかし一般的には以下のような書類が必要になります。

 登記簿謄本
 決算書
 資金繰り表
 試算表
 借入状況一覧
 事業計画書
 確定申告書
 納税証明書
 印鑑証明書

そのほかにもたとえば建設業の場合には、手持工事明細表を提出するように求められるかもしれません。
さらに設備投資のための資金を融資してもらう際には、導入する設備の見積書を提出することもあるでしょう。

借りるコツ

銀行融資を受けるにあたって、まず普段から付き合いのある金融機関に相談してもらうのがおすすめです。
そして普段からお世話になっている担当者から、融資の担当者を紹介してもらうと話はスムーズにいくでしょう。
また自社の経営に関することを、お付き合いのある銀行の担当者に話すのもおすすめです。
経営方針や経営哲学、経営情報を公開してビジネスの進捗状況をマメに報告します。
担当者も法人のことを深く理解していれば、融資担当にも紹介しやすくなるからです。

またお付き合い先は、メガバンクよりも地銀や信用金庫を利用するのもおすすめとなります。
メガバンクも中小企業向けの商品を提供しているものの、どうしても大企業が主な取引先になりがちです。
しかし地銀や信用金庫の場合、地域密着型の営業をしているところが多くなっています。
また利益も大事なものの、地元企業を応援するのも金融機関の使命です。
そのため中小企業でも有望なら、積極的に融資してくれるところが多くあります。

創業支援が充実している日本政策金融公庫

日本政策金融公庫も法人向けの融資を行っています。
日本政策金融公庫は、2008年に設立された政府系の金融機関です。
民間の金融機関では賄いきれない機能をフォローすることが目的で設立されました。
そのため銀行融資に申し込んで断られてしまった法人でも、貸付を行ってくれる可能性があります。

充実した商品ラインナップ

民間の銀行の場合、法人向け融資の商品は基本1~2種類程度のものです。
そのためこちらの細かな要望になかなか対応してもらえない側面もあります。
しかし日本政策金融公庫の場合、実に50種類以上の商品がラインナップされています。
このためその時々の経営状況や業種にマッチした借り入れ方法が見つかりやすいのです。

日本政策金融公庫では50種類以上の商品を提供しています。
この50種類の商品は3系統によって割り振れます。
小規模事業者を対象にした小口資金の国民生活事業、中小企業用の中小企業事業、農林漁業者向けの農林水産事業の3つです。
それぞれの系統の中に15~20種類の融資制度がラインナップされている形です。

あまりに数があると、何に申し込めばよいかわからなくなるでしょう。
迷った場合には一般貸付がおすすめです。
一般貸付はほとんどの業種の中小企業が、融資の対象になっているからです。
運転資金や設備資金であれば4,800万円、特定設備資金は7,200万円借りられます。
なお特定設備資金は需要によって大幅に商品生産する必要がある、もしくは業種変更するための設備投資のための資金です。

創業者向けの融資も

銀行融資の場合、直近2~3期分の決算書を提出するように求められます。
つまりすでに起業して、それなりに業歴のあるところに融資するのが前提です。
そうなるとこれから起業して、ビジネスを始めようと思っている事業者は借りるのが難しくなります。

しかし日本政策金融公庫の場合、このようなこれから事業を始めようと思っている人にも、積極的に融資しています。
創業者向けの融資として、主に3つの融資制度がラインナップされているのです。

事業開始から2期以内の人を対象にした3,000万円上限の新創業融資制度、事業開始から7年以内が対象の新規開業資金。
そして女性もしくは35歳未満か55歳以上で起業する人を対象にした女性、若者/シニア起業家支援資金です。
新規開業資金と女性、若者/シニア起業家支援資金は7,200万円までの融資に対応しています。
起業したいけれども創業資金が足りない際には、日本政策金融公庫の利用を検討しましょう。

地方自治体の融資制度を活用

地方自治体で中小企業の資金繰りをサポートするための、融資制度を採用しているところもあります。
具体的には自治体が民間の金融機関や、信用保証協会と連携した融資制度のことです。
中小企業の応援が主な目的なので、借りやすい条件となっています。
自治体によって異なるものの、大体のところが金利は3%以内、借入期間も5年以上と長めに設定されています。
ただしすべての自治体で融資制度があるとは限りません。
事業所を管轄している自治体のホームページなどで情報を確認しましょう。

自治体が一部を負担する

自治体の融資制度の特徴として、自治体が融資資金の一部を負担している点があります。
そのため長期の借入期間に設定することも可能なわけです。
借入期間が長期だと、1回当たりの返済金額も少なくできます。
つまり資金繰りにそれほど大きな負担になることもありません。

たとえば東京都では中小企業向けの制度融資を行っています。
令和4年度の概要を見てみると、億単位の融資に対応していることがわかるでしょう。
働き方改革支援やテレワーク東京ルールを実践している企業、DX支援では最大2億8,000万円までの融資に対応しています。
しかも最長15年の融資期間に対応しているので、多額の融資でも無理なく返済できるところが魅力です。

公的機関から借りる際の注意点

日本政策金融公庫や自治体のような公的機関の融資の場合、借りるまでに時間を要することは注意が必要です。
申し込んで面談を受けて、その内容を吟味したうえで融資の可否を判断する形になります。
このため少なくとも、申し込みから融資が実行されるまでに1か月程度の時間を要するでしょう。

もし資金が緊急で必要、今すぐお金を借りる必要がある場合には別の借入先を考えないといけません。
融資条件はよいものの、スピーディな借り入れはできないと思っておきましょう。

融資までスピーディなビジネスローン

法人経営をしていると「今すぐに資金が必要」という事態もあるでしょう。
売掛回収が当初の予定通りにいかず支払期限が迫っている、急な出費が発生したなどです。
そういった時にはビジネスローンで借り入れるのがおすすめです。
先に紹介した3つの方法と比較して、圧倒的に借りるまでの期間を短縮できます。

審査がスピーディ

ビジネスローンの魅力として無視できないのは、審査がスピーディな点です。
日本政策金融公庫などの公的融資や銀行融資の場合、早くても1か月前後かかってしまいます。
しかしビジネスローンの場合、銀行でも3~5営業日もあれば融資実行してもらえるでしょう。

ビジネスローンはノンバンクも取り扱っているところが多いものです。
ノンバンクの中には、最短即日融資してくれるところもあります。
今すぐに現金が必要になった際には、ビジネスローンの利用も検討するとよいでしょう。

また審査がスピーディなので、当座の現金を確保するために利用する法人も少なくありません。
たとえばメインは銀行融資から借りるものの、融資実行されるまで当座をしのぐために、つなぎ融資としてビジネスローンを活用する形です。

審査基準は甘め

銀行融資などと比較すると審査は甘めに設定されています。
銀行融資は断られても、ビジネスローンでは借りられたという話もしばしばあります。
ビジネスローンはそもそも、銀行で融資を受けられなかった中小企業を対象にした商品だからです。

ただし審査が甘めになっている分、金利は高めに設定されているので注意が必要です。
銀行融資や公的融資の場合、上限金利でも3~4%程度のものが多くなっています。
しかしビジネスローンだと銀行でも14~15%です。
ノンバンクに至っては利息制限法ぎりぎりの、18%を上限金利としているところが多いのです。
借入期間が長くなると利息の負担も次第に大きくなるので、借りたら早めに返済していったほうがよいでしょう。

借りる以外の方法で資金調達する

資金が足りない、そうなったら借りるしかないと考える法人の代表者の方も、多いかもしれません。
しかし資金調達する方法は、何も借りる方法に限った話ではありません。
今回紹介するファクタリングは、売掛債権を現金化することで必要な資金を確保する手段です。

ファクタリングとは?

商売をするにあたって、納品したときに報酬を受け取るというのがレアケースでしょう。
いったん売掛金として債権をもって、後日回収するパターンが多いはずです。
しかし通常売掛金は1~2か月くらい先になりがちです。

入ってくるべき売上は数か月先になっても、支払期日は待ってくれません。
そこで活用してほしいのが、ファクタリングです。
ファクタリングは手持ちの売掛債権を取引先から回収するのではなく、ファクタリング会社に買い取らせる手法です。
そのため早めに売掛金を現金化でき、資金繰りも円滑になります。

借金ではない

ファクタリングはあくまでも抱えている売掛債権を現金化する手法です。
よってお金を借りるわけではありません。

もちろん現金化したお金を後日返済する必要はないのです。
また信用情報にファクタリングを利用したことは記録されません。
会計上も負債扱いにはならないので、銀行融資の審査でマイナスの影響を及ぼすこともないのです。

即日現金化も可能

ファクタリング会社の中には、手続きのスピーディさを売りにしているところも少なくありません。
中には申し込んだ当日に現金化してくれるようなところもあります。

スピーディに必要な現金を確保できるので、緊急で支出が発生したときなどは重宝するでしょう。
また銀行融資やビジネスローンの審査に落ちたとしても、ファクタリングは利用できるかもしれません。

銀行融資やビジネスローンは会社やその代表者の信用力を見て、融資の可否を判断します。
一方ファクタリングの場合、皆さんが抱えている売掛債権を見て審査するのが大きな違いといえるでしょう。
売掛債権はきちんと回収できるか、売掛先の企業の信用力は十分あるかで判断されます。
銀行の審査に落ちても、ファクタリングなら現金化できる可能性があるわけです。

もしかすると売掛先の企業が倒産して、債権回収できなくなることもあるかもしれません。
しかしそういった時でもファクタリングの利用者が、代わりに返済する義務はないのでご安心ください。

ファクタリングは結局損する

ファクタリングで売掛債権を現金化する際に、全額受け取れるわけではありません。
それではファクタリング会社のもうけがなく、経営ができないからです。
手数料を負担しなければならない点は理解しておきましょう。

手数料はファクタリング会社によってまちまちです。
少なくても2%程度、場合によっては20%・30%を手数料としてもっていかれる可能性もあります。
そのあたりも理解したうえで、利用を検討しましょう。

融資は麻薬?お金を借りる際の注意点

資金繰りに行き詰った場合、ここで紹介した融資サービスを活用するのは選択肢のひとつです。
ただし「お金に困ったら借りればいい」と思ってしまうのは危険です。
よく「融資は麻薬である」といわれていて、リスクもはらんでいることは理解しておきましょう。

次第に依存する経営者も

「融資は麻薬」といわれるのは、お金を借りることに依存してしまう経営者が多いからです。
一度お金を借りられたら、また金銭的に困窮したときにお金を借りる、その繰り返しになってしまいます。
最初は本当にお金が借りられるか、借りることはできてもお金を返せるのかと、不安なところもあります。
緊張感をもって申し込んだ人もいるでしょう。

しかし何度も繰り返すと、この緊張感が失われます。
少し資金繰りが厳しくなっているので借りる、もう少し借りても大丈夫と思う経営者も出てきます。
そして次第に借金が膨らんでしまって、気が付いたときには残高がかなりの高額になっていたなんてことも起こりえるでしょう。

貸し出す側の事情も考えよう

次第に借入額が増えるといわれても、ピンとこない人もいるかもしれません。
「銀行の担当者がストップをかけるのでは」と思うからです。
しかし銀行はその会社の適正額で、貸し付けをストップするとは限りません。

というのも銀行も貸付を行うことで、利益を上げられるからです。
銀行などは「その法人にとって適正な必要額」ではなく「銀行が融資できる額」を、ベースに貸し出しを行います。
プラス銀行マンなどには、融資額のノルマを課せられている場合もあるものです。

そのようなこともあって、その会社の返済能力を超える額の貸し出しを行う場合もあります。
相手に言われるがままにお金を借りるのではなく、本当に必要なお金とはという点を意識して、借り入れることが大事です。

融資サービスを利用して借りるときについてのまとめ

事業を営んでいると、資金繰りが厳しくなることもあるかもしれません。
そういった時に、法人向けの融資サービスは数多くとあるので活用しましょう。

融資方法はここで紹介したように、さまざまな選択肢があります。
融資額や金利、融資期間など条件もさまざまです。
借りる目的やいつまでに支払わないといけないのかなどを考えて、自分たちにベストの融資先を見つけましょう。

ただしお金を借りられても、借りすぎには注意が必要です。
返済する際には利息の支払いも加味されるので、本当に事業を続けるために必要なお金だけを借りるように心がけましょう。