「ビジネスローンは審査も簡単だから、申し込む時に事業計画なんていらないだろう」
ビジネスローンで資金調達を検討するとき、事業計画について考えたことがありますか?
そもそもビジネスローンの申し込みに、事業計画は必要になるのでしょうか?
そして、必要ならどのように作ったら良いのでしょうか?
今回は、こうした疑問をテーマに、銀行員の私がビジネスローンと事業計画について解説していきます。
実際に現場で融資審査をする銀行員の視点なので、ビジネスローンと事業計画について知りたい人は、参考にしてください。
目次
ビジネスローンに事業計画は必要?〜1.ビジネスローンと事業資金の関係
まず、事業計画の基本事項とビジネスローンとの関係を解説するところから始めます。
事業計画とは?
事業計画とは、企業が経営の目指す目標を定め、その目標を実現するための方法や施策を決めるもので、概ね5年間程度の機関で策定します。
また、この事業計画を書類として落とし込んだのが「事業計画書」と呼ばれ、企業の経営方針や目標としている理想像を掴むうえで重要になり、融資の審査でも重視されるものです。
そのため日本政策金融公庫や金融機関の事業資金申し込みで審査を通過する事業計画の作成を代行する専門の事業者(税理士、会計士などの専門家や、融資コンサルタント会社など)も多く、企業の中にはこうした事業計画作成の代行を利用するところもあります。
ビジネスローンの申し込みに「事業計画は必須ではない」
まず、ビジネスローンの申し込みでは、必ずしも事業計画が必要ではありません。
たとえば、ビジネスローンの申し込みで必要な書類は以下の通りです。
(ビジネスローン取扱いの金融機関、消費者金融大手の公式サイトを参考、筆者調べ)
<ビジネスローン申込時の必要書類>
本人確認書類
個人及び法人の代表者:運転免許・パスポートなど、写真入りの確認書類
決算書類
法人:決算書(1期〜3期程度)
個人:確定申告書(1年〜3年程度)
*「納税証明書」「所得証明書」など、所得額の公的証明書が必要な場合も
【契約時にも必要な書類として】
法人:商業登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
個人:印鑑証明書、住民票
その他必要な書類
申し込み時の必要書類は、そのまま審査に必要な書類となりますが、上記したようにビジネスローンでは「事業計画書」は必須になっていないところが主流です。
ただし、その他必要な書類として事業計画書の提出を求められる場合もあるので、まったく不要とも言い切れません。
(申し込みの説明例)
「審査に必要と当社が判断した場合、事業計画書の提出をお願いする場合があります」
ビジネスローンで事業計画書を作成するメリット
ビジネスローンの申し込みで事業計画は必須ではありませんが、審査状況によっては事業計画書の提出が必要になる場合もあります。
ところで、金融機関から見ると、中小企業との融資取引においては「経営・財務管理能力が不十分」「実態が公開されていないので不透明な部分がある」といった課題意識を持っています。
しかし、こういった点も事業計画があれば、今後の事業活動を明確化し、自社の信用力を金融機関にアピールすることも可能です。
事業計画は、自社の経営の指針とも言えるもので、自社のために作成することは無駄な作業ではないと銀行員の私は考えています。
ですから、仮にビジネスローン申し込みで必要とされなくても、作成してあれば急に提出を求められても対応できますし、申込時に自発的に提出すれば審査の参考資料になりますし、(計画の内容にもよりますが)少なくとも「この会社は計画性がある」とプラスに作用するはずです。
ビジネスローンに事業計画は必要?〜2.ビジネスローンで役立つ事業計画のポイント
では、ここからビジネスローン申し込みで必要になった場合(任意で提出する場合も)に備え、事業計画で必要なポイントをいくつかピックアップして説明していきます。
ビジネスローン・事業計画のポイント1.経営理念・ビジョン
「経営理念」「ビジョン」といったものが盛り込まれていないと、事業計画書としては不十分です。
たとえば、「社会の発展に寄与したい」「我が社の事業は世の中を便利にします」といった内容が理想的です。
これはなにも大企業がコマーシャルやホームページにうたうだけではなく、中小企業でもビジョンを持っていい、いえビジョンや理念がない会社はそれだけで審査にマイナス作用することすらあります。
常日頃、イメージしていることでも良いので、これをいい機会と捉え、経営理念などが決まっていないなら1つ考えてみてはいかがでしょうか?
ビジネスローン・事業計画のポイント2.自社だけの「強み」
事業計画では、取扱商品やサービス、あるいは販売戦略など「他にはない自社だけの強み」をアピールすることが必要です。
ただし「わが社の製品はすごい」という表現よりも、「業界の他社と比べ、わが社はここが優れている」といった比較的な表現が良いでしょう。
「我が社はすごい」→絶対的、よりも「我が社はほかよりもここがすごい」→相対的な表現を使うのが、事業計画では求められます。
ビジネスローン・事業計画のポイント3.経営者の経験、経歴
事業計画では経営者の資質も重要な位置を占めます。
業界での経験や人脈などといった点がアピールポイントになるのです。
もちろん経験が浅い、あるいは未経験で起業する人もいるでしょうが、そういった人は経験が不足する部分を知識やアイディアなどで補完しているはずですから、そういった内容も事業計画で説明すると良いでしょう。
ビジネスローン・事業計画のポイント4.市場や競合の分析
ビジネスは競争の上に成り立つので、自社が属する業界について、あるいは勝負しているマーケットについて、競合する他社との差などを分析することは、常に事業の中でやっていることではありますが、この部分も事業計画で「見える化」することで融資審査などではプラスに作用します。
ビジネスローン・事業計画のポイント5.実現可能な計画か?
そしてここが大事なところですが、事業計画が実現可能なものである必要があります。
審査で良く見られたいから、などバラ色の予想で、売上が右肩上がりの計画を作っても、それが実現できなければまさに「絵に描いた餅」になってしまいます。
なにをもって実現可能か?バラ色すぎるのか?という判断はなかなか難しいのですが、それこそ経営者として掴んでいる感触で考えれば、自ずとムリな計画にはならないはずです。
ビジネスローンに事業計画は必要?必要ならどう作る?〜まとめ
今回は、ビジネスローンに事業計画は必要か?という疑問から始めて、ビジネスローンと事業計画について解説してきました。
ビジネスローンに事業計画は必須ではありませんが、事業経営には必要不可欠なものです。
この記事が参考になれば幸いです。