法人代表者にとって、審査がスピーディで審査基準も甘いといわれるビジネスローンは資金繰りに重宝する商品です。

ビジネスローンは金融機関からノンバンクまで、いろいろなところが提供しています。
ビジネスローンを利用するにあたって特定の一つだけ融資を受ける方法もあれば、複数から借り入れる方法もあります。

複数のビジネスローンを利用するのはどうかについてここでは見ていきます。

中にはすでに借り入れている銀行融資やビジネスローンの返済が厳しくて、ほかのところから借り入れようと思っている人もいるでしょう。

しかし、返済のための借り入れはおすすめできません。
返済が難しくなっている場合の対処法についても紹介するので、参考にしてください。

複数のビジネスローンを利用すること

法人代表者の中には、複数のビジネスローンから借り入れているケースも少なくありません。

複数から借り入れるのには理由があります。
なぜ、複数のビジネスローンを利用するのか、利用するにあたっての注意点についてみていきます。

シンプルに借入枠が増える

複数で借り入れる理由ですが、単純により多くの融資が受けられるからです。

より多くの融資が受けられれば、手持ち資金が増え資金繰りが改善する可能性があります。

また、特定のビジネスローンに申し込んだところ、審査は通過したものの希望通りの金額を借り入れられなかったというケースもあり得ます。

希望の借入額からの不足分を別のローン会社に申し込んで、必要な資金を確保するために複数に申し込む事例も少なくありません。

総量規制の対象外

複数で借り入れることができれば、利用限度枠が増えるので資金繰りがしやすくなります。

しかし、ローンについて詳しい人なら「総量規制に引っかかってしまうのでは?」と思うでしょう。
総量規制は貸金業法の中で規定されている項目です。
年収の1/3を超えて貸し付けてはならないというルールです。

多重債務になって返済できなくなる事態を回避するための利用者保護のために規定されました。

しかし、ビジネスローンのような事業性資金は、総量規制の対象外です。
個人利用と比較して、事業資金はまとまった額を調達する必要があります。

設備投資をする際には何千万、場合によっては数億円単位のお金を動かさないといけません。
高額な資金を確保する必要が生じるのは、ビジネスの世界では決して珍しいことではありません。

そんな融資も融通が利くように、ビジネスローンは総量規制の対象外です。
もちろん審査はあるものの、年収の1/3を超えた融資に対応しているので複数のビジネスローンに申し込んでも借り入れられる可能性があるわけです。

金利の高さには注意が必要

審査が早く、審査も甘めなので銀行融資で審査落ちした法人の代表者でも借り入れられるのはビジネスローンのメリットです。

しかし、リスクヘッジのため金利は銀行融資などと比較して高めに設定されている点には留意しなければなりません。
利息制限法では100万円超の貸し出し時の上限金利は15%です。
この15%ぎりぎりを金利上限としているビジネスローンも少なくありません。

複数で借り入れれば、それぞれに対して元本返済と利息の支払いをしなければなりません。
利息を余計に支払わないといけないので、返済負担は大きくなります。

返済計画を慎重に立てて、複数で借り入れる必要があります。

スケジュール管理も必要

ビジネスローンは、月々決まった日に決まった額を返済しなければならない商品がほとんどです。
複数で借り入れていると、月に何度も返済期限がくる形になります。

ですから、スケジュール管理していないとうっかり返済し忘れることもあり得ます。
そんなことにならないように、それぞれのローン会社の返済期日を管理しておきましょう。

一つから借り入れている場合、月に1回返済すれば問題ありません。
複数借入先がある場合、月に2回も3回も返済期日がやってきます。
ということは、あるところで返済して次の返済が1カ月先よりも前にきてしまいます。
返済期日が短いサイクルでやってくるので、返済資金を確保する猶予が少ないです。

短期間で資金調達しなければならず、自分で自分の首を絞める結果になりかねないので注意しましょう。

おまとめローンで一本化するのがおすすめ

もし、複数のビジネスローンで借入して返済ペースが厳しくなっているのであれば、おまとめローンを利用するといいでしょう。

おまとめローンで返済資金を借りて、現在借りているビジネスローンを一括で返済します。
そして、今後はおまとめローンの借入先だけに返済していく形式です。

おまとめローンで借入先を一本化できるので、返済スケジュールに余裕が出てきます。
これまで月に何度もあった返済期日を月1回のペースに変更できます。

1回返済すれば1カ月先まで返済にゆとりができます。
もし資金的に余裕があれば、随時返済で返済期間を短縮化することも可能です。

そうすれば利息の支払い額も節約でき、返済総額を圧縮できます。

もし複数で借り入れていて、返済が難しくなっているのであればおまとめローンで借り換えるのも一つの方法です。

おまとめローンを希望する場合、全額融資が受けられるのか、現在借り入れているローンと比較して金利は低いかなどチェックしてから申し込んでください。

複数のビジネスローンで借り入れるにあたっての注意点

複数のビジネスローンに申し込むにあたって、注意しなければならないポイントがあります。

申し込み方法を誤ると、自分で借り入れのチャンスをつぶすことになりかねないからです。
複数のビジネスローンにはどのように申し込めばいいか、以下で紹介するので参考にしてください。

同時申し込みはNG

複数のローンに申し込む際にやってはいけないのが、同時並行で申し込まないことです。

同時に申し込むと、本来審査通過するはずだったのに自ら審査に通らないようにしてしまうからです。
ビジネスローンの審査では、信用情報機関への紹介が行われます。

信用情報機関には、個人のこれまでのローンやクレジットカードの契約状況、返済履歴などが記録されています。
さらにローンへの申し込み情報に関する記録も含まれます。
つまり、同時に複数のところに申し込むと、その旨を信用情報に登録されるわけです。

もし短期間で複数のところに申し込んでいる人を見つけたら、審査担当している人はどう感じるでしょう?
「よほど資金繰りに窮しているのではないか?」このように思われても無理はないでしょう。

すると「融資しても返済の見込みが立たないのではないか?」と懸念して、融資を見送られてしまうわけです。
特に、今すぐに現金が必要のような切迫した状況だと、「複数に申し込んでより確実に資金調達したい」と思うかもしれません。

すると、同時にいろいろなローンに申し込みたいと思ってしまうのも無理ありませんが、同時申し込みは避けるように気を付けてください。

審査結果が出てから申し込むこと

同時に申し込むとローン会社の心証が悪くなって、自ら審査通過のチャンスをつぶすことになります。

ですから、同時ではなく、まず特定のローン会社1社だけに申し込んでください。
そして、審査結果が出たところで別のローン会社に申し込みましょう。

もし1社のビジネスローンの審査に通れば、次に申し込んだローン会社はその結果を信用情報で確認できます。

審査通過しているという情報があれば、「信用力の高い法人だな」と考えるので融資に前向きに検討してくれるはずです。

3社以上申し込む場合も同様です。
1社ずつ申し込むべきですが、あまりに申し込み先が多いとやはり資金繰りに困っていると判断されかねないのであまりたくさん申し込まないことです。

まずは大手から

ビジネスローンに複数申し込む際には、大手のローン会社から申し込みましょう。

具体的には、金融機関もしくはノンバンクでも日本全国に展開していて、コマーシャルなどで積極的に宣伝している有名企業などです。

逆に、中小から大手の順番で申し込むと、大手のビジネスローンの審査でマイナスに作用する恐れがあるからです。

もし、中小のビジネスローンに申し込んでから大手の順番で手続きすると、審査担当者は「なぜ中小のビジネスローンに申し込んだのか?」と不審に思います。
基本的に審査難易度は大手から中小の順番で低くなるからです。

いきなり中小のローン会社に申し込んだのは、大手では審査通過できるかどうか自信がなかったのではと思われるわけです。

大手は審査落ちしてしまうリスクのある企業には融資しても債権回収できないかもしれないと判断され、審査落ちになる恐れが出てきます。

まずは大手のところから申し込んで、次に中小のビジネスローンで借り入れたほうが審査にも通過しやすくなります。

返済できなければリスケの検討を

複数のビジネスローンに申し込む法人代表者の中には、現在借入している債務の返済ができないからという方もいるでしょう。

しかし、借金返済のために別のビジネスローンで借り入れるのは、結局最終的に行き詰まる恐れがあります。
ビジネスローンでお金を借りてその場はしのげても、結局そのお金もいずれ返済しなければなりません。
しかも、利息も支払わないといけないので、資金繰りが厳しくなるのは目に見えています。

もし、現在の返済が難しくなって別のビジネスローンを借りようと思っているのであれば、リスケを行うといいでしょう。

リスケとは何かについて、以下で詳しく見ていきます。

リスケとは?

リスケとは「リスケジュール」の略称を指します。
リスケとは、いったん返済を待ってもらうことです。
元本返済を免除して、月々利息額だけを支払うのが一般的です。

利息の支払いだけであれば、何とかやりくりできる法人も多いでしょう。
リスケ期間中に金銭面の立て直しをして、返済できる環境を整えます。

返済先延ばしの期間は?

リスケをお願いした場合、相手が受け入れてくれるかどうか不安でしょう。

結論から言うと、100%絶対とは言い切れませんが、かなりの確率で認めてもらえます。
債権者側としても不良債権化するくらいであれば、リスケを受け入れたほうがましだからです。

では、リスケでどのくらい元本返済が免除されるかですが、これはローン会社によってまちまちです。

しかし一般的には、半年から1年が多いです。
一般的な傾向として、金融機関よりもノンバンクの方が融通もききやすいといわれています。
ノンバンクの方が金利手数料を高めに設定しているからです。

リスケの期間を長くすれば、それだけ多くの利息収入が得られるからです。

キャッシュフローの改善を検討する

リスケが認められて、当面利息の支払いだけになれば月々の支払いをかなり抑制できます。

元本返済が一時的にゼロになるので、キャッシュフローはかなり改善されるはずです。
そして、このリスケの期間中にキャッシュフローのさらなる改善を目指しましょう。

キャッシュフローの改善は大きく2つに分けられます。
売上を伸ばして収益を増やすこと、支出を見直してコストカットを目指すことの2つです。

売上を伸ばすのは、今すぐにできることではないでしょう。
そうなると、コストカットを進めることがキャッシュフロー改善のために必要なことです。
特に見直したいのは、固定費です。
固定費のコスト圧縮ができれば、かなりの資金を浮かすことができます。

無駄遣いになっている部分はないか、リスケの際に今一度見直してみることです。

追加の借入ができない

リスケが求められると利息の支払いだけで、元本返済が免除されます。

しかしリスケにはデメリットもあります。
それは新規の借り入れができない点です。
リスケを行っている法人は、月々決められた元本の返済が出来ていない状態です。
そのようなところに融資したところで、債権回収できない恐れが高いでしょう。

リスケ期間中は、いわゆるブラックリストに載った状態とほぼ一緒と思ったほうがいいです。
金融機関はもちろんのこと、ノンバンクでも追加の借り入れはまずできないと思ったほうがいいです。

リスケの相談方法について解説

もし、現状債務の返済が厳しくてリスケをお願いしたい場合、ローン会社によって多少の違いがありますが、一般的には以下のような手順で進めていきます。

まずはビジネスローンの借入先に連絡しましょう。
連絡するタイミングですが、「できるだけ速やかに」がおすすめです。

期日までに返済資金を用意できないと分かった段階で、早めにローン会社にコンタクトをとることです。

返済が難しくなり滞納する直前にリスケの相談をしても、ローン会社も対応しにくくなるからです。

ローン会社にコンタクトを取ると、ローン会社の方で面談のセッティングがなされます。
コロナ禍以降、オンラインによる交渉を提案される場合もあるかもしれません。
面談の時に、現在の債務状況や今後の返済計画について説明します。

その根拠になる収支計画書や事業計画書、財務諸表などの関連書類も提示したほうが説得力も増します。
この時、資金繰りや業績改善するための具体的な提案のできたほうがリスケも認められやすいです。
説明や必要書類を提出すると、リスケが可能かどうかの審査が実施されます。

審査期間は、ローン会社によって多少の違いがありますが、数日程度の場合が多いです。
かかったとしても数週間程度で、1カ月以上待たされるようなことはまずありません。

審査結果が出ると、先方からリスケが可能か、可能だった場合の条件が提示されます。
もし、提示された条件に納得できれば借入金変更契約書が提示されますので、署名・捺印してください。
これでリスケは初めて実行されます。

ビジネスローンで借入できなかった場合の資金調達方法

中には追加融資を受けるために複数のビジネスローンに申し込んだけれども、審査落ちしてしまったというケースもあるでしょう。

ビジネスローンの審査は銀行融資などと比較すると甘めですが、絶対に借り入れできる保証はありません。

もし、複数のビジネスローンに申し込んでも融資が受けられなかった場合、あきらめるべきでしょうか?
答えは「ノー」です。
別の方法で資金繰りの問題を克服できる可能性があります。

1.ファクタリング
2.ABL
3.債務整理
それぞれどのような方法なのか以下で解説しますので、活用できるものはないかチェックしてみてください。

ファクタリング

経営状態が悪化してしまうと、ビジネスローンでも融資を受けるのが難しくなる場合もあります。
その場合、もし売掛金を抱えているのであればファクタリングを利用するのも一つの手です。
ファクタリングとは、売掛債権の買取サービスのことです。

売掛金は通常、実際に支払いが行われるまでに1~2カ月程度かかってしまうことも珍しくありません。
その間に原材料の支払いなどの期日がやってくるので、資金繰りの悪化する要因になりかねません。
そこでファクタリング会社に売掛金を買い取ってもらうのです。

売掛金の回収期日よりも前倒しで現金化できるので、キャッシュフローの改善が期待できます。

ファクタリングでも、ビジネスローン同様に審査が実施されます。
ビジネスローンの場合、申込者やその法人を審査します。
一方、ファクタリングの場合、売掛債権の審査が重視されます。

つまり、ビジネスローンの審査に落ちてしまった法人でも、売掛先が信用力のある財務基盤のしっかりした企業であれば買い取ってもらえる可能性が出てきます。
しかも、自分の抱えている売掛債権を現金化サービスであって、融資とは別物です。

よって、ビジネスローンのように後日返済する義務はありません。

ただし、ファクタリングの場合、売掛債権全額現金化できるわけではない点に注意してください。
100%現金化できれば、ファクタリング会社は全く利益を確保できないからです。
手数料として、いくらか差し引かれた状態での買取になります。

中には悪徳業者もあるようで、法外な手数料を取られる恐れもあります。
ファクタリングには2社間と3社間があって、手数料の相場は異なります。

2社間ファクタリングは、利用者とファクタリング会社間の直接契約です。
売掛先に知られることなく、売掛債権を現金化できます。
2社間ファクタリングの手数料の相場は、10~30%と考えてください。

3社間ファクタリングの場合、利用者とファクタリング会社、売掛先の3社間取引になります。
つまり、売掛債権をファクタリング会社に譲渡することを売掛先に通知しなければなりません。
売掛先から直接ファクタリング会社に売掛金が支払われるので、回収リスクを低減できます。
このため、手数料も2社間よりも低く設定されていて、1~9%が相場です。

ABL

ABLとは、日本語に訳すと「流動資産担保融資」と呼ばれます。
文字通り、流動資産を担保にして融資を受ける手法です。
流動資産とは、具体的には売掛金や在庫などが該当します。

ビジネスローンは、原則無担保・無保証人で貸し出す金融商品です。
ですから、法人の信用力をベースに融資の可否を判断します。

一方ABLの場合、売掛金や在庫を担保にしますので債権回収ができなくなるリスクが軽減します。
ですから、貸し出す側も貸し出しやすくなるわけです。
銀行融資の場合、通常融資するにあたって担保を出すように求められます。

担保とは、一般的には不動産です。
しかし、中小企業や零細を中心として、不動産などの資産を何も持っていない法人は融資が受けられません。

一方ABLの場合、売掛金や在庫など企業の規模関係なくどこでも保有しているものを担保にして融資を受けられます。
よって、銀行融資と比較して借入のハードルがかなり低くなるのはメリットといえます。

債務整理

いろいろな方法を講じても、負債がかさむと返済するのはいずれの場合でも難しくなるでしょう。
その場合には、債務整理することも視野に入れて行うといいでしょう。

債務整理にはいろいろな手法があるのですが、簡単に言えば借金を圧縮してもらって、返済可能な計画を立て直す方法です。
債務整理にはいくつか方法がありますが、整理して会社をどうしたいかによってとるべきアプローチは変わってきます。

もし会社を残したければ、私的整理や民事再生の中から選択しましょう。
そのほかにも特別清算や会社更生などがありますが、いずれも会社をつぶさないといけなかったり会社は残っても経営から引かないといけなかったりします。
どの債務整理がおすすめか、会社の状況や希望によって異なります。

債務整理をしなければならない、でもどの方法が自分たちにとってベストかわからなければ、借金問題に詳しい弁護士に相談しましょう。
弁護士に自分たちの状況を説明すれば、何が最良の選択肢か専門家の観点からいろいろとアドバイスしてくれます。

まとめ:複数のビジネスローン借り入れは可能!でも申し込みに注意

信用力が十分あれば、複数のビジネスローンから借り入れることは可能です。
複数から借り入れられれば、借入可能枠が大きくなり資金繰りが円滑になる半面、利息を余計に支払わないといけないなどデメリットもあります。

また、複数のビジネスローンを利用する際には、申し込み方法にも注意しなければなりません。
同時に申し込むと審査に不利に働きます。
複数のローン会社に申し込む際には、一つのところにまず申し込んで審査結果の出たところで別のローン会社に申し込みましょう。

複数のところで借り入れたいけれども審査落ちしてしまったというケースもあるでしょう。

その場合でも、ファクタリングなどほかの方法で資金調達できる方法もありますので、こちらの利用も検討してください。