ビジネスローンを増額したい
事業資金調達でビジネスローンを利用している人の多くが感じる気持ちだと思います。
ビジネスローンはスピード審査、スピード入金が特徴の事業資金調達手段です。
そこで今回は、ビジネスローンの増額について、融資審査をする銀行員が解説します。
ビジネスローンで資金調達を考えている人はぜひ参考にしてください。
目次
ビジネスローンの増額は可能か?
ビジネスローンの増額は可能か?まずこの素朴な疑問から考えてみましょう。
ビジネスローンは増額より「追加融資」
増額とは、現在利用中の融資に金額を付け加えて増やすなどの方法です。
一般にビジネスローンは「追加融資」が基本です。
つまり、今あるローンはそのままで、全く別の新規融資をする方法。
したがって、利用中のビジネスローンは、こちらから言わない限りはノータッチ、というのが原則です。
ではなぜ増額ではなく「追加融資」になるのか?こちらの理由を解説します。
ビジネスローン増額が「追加融資」になる理由
ビジネスローンは素早い対応がウリ、つまり「スピード命!」なので、スピード対応を実現するために合理化が進んでいます。
たとえば、利用中のビジネスローンをいくらか増額して借り換えるとしたら、新規の審査や事務手続きに加えて、返済などの事務負担が増えてしまいます。
ビジネスローンを扱うのは主に消費者金融ですが、消費者金融でも金融機関でも融資を実行して顧客口座に入金したり、逆に増額書き換えや返済をする事務手続きは結構な負担で、そのため「事務手数料」などと別途に手数料をもらっているくらいです。
少し話がそれましたが、スピード重視で面倒なことはしたくないので、ビジネスローンで増額を頼まれたときは、追加融資にすれば追加のことだけ考えれば済むというわけです。
ただし、すべてのビジネスローンがこういった対応になるわけではなく、取り扱う金融業者や個別のケースで事情は変わりますので、追加融資ではなく増額となるケースもあります。
ビジネスローン増額を断られたらどうする?
ここまでは、ビジネスローンの取り扱い的な部分の説明でしたが、追加融資でも増額でも、とにかくもっと事業資金が必要だと増額申し込みしても断られることはあります。
そこで、断られる理由を考え、その対処法についても考察してみましょう。
ビジネスローン増額を断られる理由1.限度を超えてしまう
ビジネスローンには商品ごとの利用限度額が決められています。
増額を断られるのは、この利用限度を超えてしまうから、という理由が一つ考えられます。
もちろん基本的な限度額なので、限度を超過して借り入れることができる可能性もゼロではないと思いますが、もともと商品設計として決められている限度は、そう簡単に超えることは難しいと考えられます。
ところが資金調達で忙しい顧客側では限度額など頭にない人も結構いて「どうして貸してくれないの?」と感じて、限度額を超えていることを初めて知る人も多いのです。
ビジネスローン増額を断られる理由2.その人(その会社)の限度を超えてしまう
こちらは商品の限度ではなく、ビジネスローンを利用する人(あるいは会社)一人(一社)あたりの限度を超えてしまう場合も断られる原因になります。
たとえば「個人事業主の場合、売上が1億円までの人は融資上限は5千万円、売上が3億円までなら上限が1億円」「黒字なら◯◯万円、赤字ならもっと少ない▲▲万円まで」といったように、金融業者それぞれに独自の基準で融資の限度を設定している場合があり、この限度を俗に「融資枠(ワク)」などと呼んでいます。
もちろんこれは部外秘で、また一律の基準以外に個別判断で融資の上限が決まるのが一般的です。
したがって、たとえばビジネスローンの取扱い上の限度枠はまだ余裕があるのに、増額で申し込んだら断られた場合、その人自体の限度を超えてしまった可能性も考えられます。
もっとも部外秘と書いた通りで「あなたの融資枠はいっぱいだからもう貸せません」とは言わず「総合的に判断して、お断りさせていただきます」といった返事にはなると思われます。
ビジネスローン増額を断られる理由3.追加融資を受けられない理由に該当している
こちらは、これまで利用してきたビジネスローンなどの返済が滞納していた場合は、増額の融資を受けられなくなる可能性が高くなります。
借りたお金を返さない人に、増額融資しないのは当然といえば当然だと言えます。
ただし滞納についても金融業者によって対応は異なりますので、滞納した事がある人などで心配な場合は、申し込む前に相談してもいいでしょう。
ビジネスローン増額を断られた場合の対処法
では、ビジネスローン増額を断られた場合にどうしたらいいでしょうか?いくつかの対処法を考えてみましょう。
対処法1.他に当たってみる
増額を断られたのが、商品の限度額や利用限度の問題(そうかも知れないと考えた場合)なら、原則としてあくまでその金融業者だけの話なので、他に申し込めば増額できる可能性はあります。
ただし、ここで注意が必要なのは同じ系列・提携などの関係があると、融資のワクは一律で考えられてしまい、断られてしまうこともあるという点です。
こういった考え方を「合算管理」「合算与信(融資の別名で、信用して融資を供与するという意味)」などと呼び、銀行でも用いられています。
たとえば参考に、消費者金融大手は銀行系列(銀行を含んだホールディングス(HD)グループの傘下)もあります。
例)
● 「アコム」は三菱UFJ銀行系列(MUFG)
● 「プロミス」と「モビット」は三井住友銀行系列(SMBC)
● 「レイク」はSBI新生銀行系列(新生フィナンシャル)
(*系列が同じだからといって、必ず合算されるわけではありません)
また、業績不振や滞納、あるいは場合によっては「異動(長期の滞納や自己破産などのいわゆる「金融事故」のこと、俗に言う「ブラックリストに載る」状態)」があっても増額が実現できる場合もあります。
受け止め方や審査基準は各社で異なるので、他社に申し込むことも選択肢にはできるのですが、それが確実とは言えず、申し込んでみなければわからない部分でもあります。
かといって複数社に同時に申し込むと、その申し込み記録も同時に個人信用情報に登録され、「カネに困っているのではないか?」と見られてしまういわゆる「申し込みブラック」となる可能性もあるので注意が必要です。
いっぽう、貸金業者の登録がない金融会社(いわゆる「街金」「ヤミ金」)では、利息や返済条件も「法外」な恐れがありますので利用はおすすめできません。
対処法2.「借りないで済ます方法」を考えることも必要
増額を断られたらどうしたら?という問いに答えていないように感じられるかも知れませんが、増額を断られたなら、今は借り入れするときではないとも考えられないでしょうか?
そこで、たとえば親兄弟や親族から資金援助や一時的に貸してもらうことや(贈与などには注意が必要)、返済中の金融機関事業資金融資があれば返済を一時的に減額してもらう「リスケ(リスケジュールの略で、融資の返済条件を緩和してもらう対応)」を相談してみるなど、お金を借りないで済ませる方法も選択肢に入れることをおすすめします。
ビジネスローンの増額は可能か?のまとめ
今回はビジネスローンの増額についての説明と、増額を断られた場合の対処法を考えてみました。
あえて「考えてみました」と表現したのは、増額融資が無理なときに、なんとかできる裏技やマル秘テクニックのようなものはないからです。
ですからビジネスローン増額が断られたなら、慎重に考えられるようおすすめします。
この記事が参考になれば幸いです。