事業資金貸付が返せなくなるとどうなる?何が起きるの?
誰もが考えたくないことですが、事業資金貸付を利用するなら知っておきたいことでもあります。そこで今回は、事業資金貸付が返済できなくなった場合について、融資の現場でいろいろな現実を見てきた銀行員が解説します。事業資金貸付を利用している人も、これから事業資金貸付を検討する人も、考えたくないかも知れませんが、そうしたバッドエンドをも変えないように、選考にしてください。

事業資金貸付の仕組み〜バッドエンド説明の前に

これから事業資金貸付のバッドエンドについて解説していきますが、その前にまず事業資金貸付の仕組みやお金の流れはどうなっているのか?などの流れを整理したいと思います。バッドエンドの説明を進めていく中で、どうしても用語がいくつか登場してくるのと、事業資金融資の基本知識をブラッシュアップしたほうが、より吸収しやすくなると考えるからです。そこで、箇条書きでわかりやすく解説します。

 <事業資金貸付の仕組み>
事業資金貸付は「契約」
事業資金貸付は融資を利用する「債務者」と事業資金貸付を融資する金融機関やノンバンクなど「債権者」との間で結ばれる契約 「貸してもらう」「借りてやる」といったようにどちらかが優位なのではなく、原則として平等な契約なので、双方が決まり、約束を守る必要がある

事業資金貸付は「ギブアンドテイク」
平等な契約なので利用する債務者は、契約で定めたいろいろな約束ごと(「条件」「約定(やくじょう)」)を守る義務が発生する
いっぽう事業資金貸付を融資する債権者は、約束を守ってもらうことにより事業資金貸付という金銭の提供をする

債務者:事業資金貸付を利用する側の「守らなくてはいけない約束ごと」
事業資金貸付を融資する金融機関やノンバンクなどの債権者から、融資したお金の安全性を高める(「保全(ほぜん)」)ために担保や保証人を求められることもある
また約束した毎月の約定返済日(やくじょうへんさいび)に返済をするが、そのときには融資を受けた対価として、利息を返済元金に上乗せして支払わなくてはいけない
またこのように、返済は約定(約束した)に基づく契約事項なので、返済に遅れることを税金の支払いが遅れる場合と同じ「滞納」「延滞」といったきびしい表現を使っている

債権者:事業資金貸付を提供する側の「守らなくてはいけない約束ごと」
利息や保全を得たことで、融資したお金を一定期間、たとえば短期の事業資金貸付なら1年以内、長期の事業資金貸付なら1年から数十年という長期間にわたり、じっくりと返済できる時間的な余裕を提供する。この事業金貸付返済の時間的な猶予を「期限の利益」と呼ぶ
事業資金貸付は審査の基準を満たし、利息支払いや担保・保証人など契約事項も承諾してもらえる利用者には融資を提供する義務があり、金融機関のいっぽう的な都合で融資を断わってはいけない これが「貸し渋り(かししぶり)」
また事業資金貸付の契約をした以上は、金融機関自体が業績不振となっても約束した期限よりも前に、事業資金貸付を無理やり返済させることはできない これが「貸し剥がし(かしはがし)」

ここまでカンタンにまとめましたが、どれも当たり前といえば当たり前です。しかし交通ルールや法律も当たり前のことルールとして定めているもので、事業資金貸付も当たり前のことをルールとして利用する人:債務者と融資をする金融機関やノンバンク:債権者の双方で守っていくというわけです。
ちなみに融資にこういった事業資金融資に関する約束ごとや契約事項は、事業資金融資の基本契約書類である「銀行取引約定書(ぎんこうとりひきやくじょうしょ)」や融資の契約書類(例・「借用金証書」正式には「金銭消費貸借契約証書」など)に記載されています。また銀行やノンバンクの公式HPで「商品概要」「融資規定」などでも内容は確認できます。

では、ここから具体的にバッドエンドも見ていきましょう。ここからも引き続き、用語が登場するときにはわかりやすく注釈などを加えていきますが、ここの説明に戻って読み返してもいいと思います。

事業資金貸付の「バッドエンド」1.期限利益の喪失

「そもそも」の説明が続きますが、事業資金貸付を長期融資なら何年という時間をかけて返済できることを「期限の利益」と説明しました。しかし、この期限の利益を失ってしまい、すぐにでも返済しなければいけなくなる場合があり、それを「期限利益の喪失」と呼びます。
例えば毎月の決められた返済(約定返済)が遅れて(滞納、延滞)、回数が重なり時間も経過すると融資を全額返済しなければなくなりますが、これも「期限利益の喪失」のひとつであり、さらに「期限利益の請求喪失」という事態に該当します。(用語が連続しましたが、ここからひとつずつ解説していきます。)

「期限利益の喪失」とは?

期限の利益は「期限利益の当然喪失」と「期限利益の請求喪失」の2種類に分かれます。どちらも大変なことなのですが、請求喪失より当然喪失のほうがさらに重く、また一括返済までの時間的猶予、つまり「タイムリミット」までの時間もほとんどありません。

<2つの「期限利益の喪失」>
期限利益の当然喪失
原則として例外無しで当然に期限の利益を喪失すること

期限利益の請求喪失
債務者からの請求と時間的な段階を経て、最終的に期限の利益を喪失すること
各段階で期限利益の喪失を回避できる可能性も残されているところが、当然喪失との違い

期限利益の当然喪失

まず期限利益の当然喪失ですが、以下のような事態になると当然喪失に該当することになります。ここからは、実際に銀行などで契約に使われる「銀行取引約定書」「金銭消費貸借解約証書」に記載されているように説明します。なお実際の事業資金貸付の契約時には、契約書に記載されたこれらの条項を読み、理解し納得して契約する流れです。したがって、あとになって「そんなの聞いてない」とか「説明を受けなかったからそれはできません」などとは植えないことになりますので、注意してください。

<期限利益が当然喪失になる事態>
以下のような事態になると、利用者は事業資金貸付の期限利益を即時に失い、全額を一括返済しなくてはいけません。

自己破産の手続開始や、民事再生、債務整理などの申立があった場合
自己破産や民事再生などは債務の免除を求めるもので、つまり「私は借金を返さない」という意味にもなるので、自己破産などは当然喪失の理由となります。

手形交換所または電子債権記録機関の取引停止処分を受けたとき
手形や小切手の支払い期日に資金化できないと不渡り、取引停止処分となります
この「取引」とは金融機関とのすべての取引になるので、預金取引もできなくなるので実質的に会社は破綻、つまり倒産の状態になります。したがって取引停止処分になったら事業資金貸付の期限の利益も当然喪失されるのですが、まずそこに至る前段階から資金繰りに行き詰まっているわけで、返済自体ができていないとも考えられます。

利用者本人の預金など銀行に対する債権が差し押さえられた場合
融資は返済しなければいけない債権ですが、預金など銀行に預けている口座の残高は、利用者の銀行に対する債権(預ければ低金利とは言え利息がつくので、銀行が預金者からお金を借りているようなものという意味で「預金債権」などと呼ぶ)になります。税金の滞納があると、この預金を税金支払いに当てようと国、県や市町村から預金口座が差押えられる場合があります。他にも民間業者などとの取引でも差し押さえを受けることがあり、いずれにしても預金が差し押さえられると融資の返済も含めて預けてある預金はつかえなくなってしまうからです。

実際に上記したような事態が発生すると、事実関係が判明した瞬間に事業資金貸付は期限の利益を失うことになります。そのとき預金残高があれば強制的に返済に回されてしまい、また預金口座はすべて凍結状態となります。ただし、期限の利益が当然喪失されるような事態に陥る場合、大多数のケースで資金繰りに行き詰まるなど預金口座にお金は殆ど無いことも多いのが実態です。また銀行やノンバンクなど債権者から連絡をするわけですが、往々にして連絡がつかなかったり、所在不明になっていたりするケースもよくあります。もちろん連絡がつかないからといっても、あるいは預金残高がなくても事業資金貸付の返済義務は依然として残っているので、後半で解説するようにいろいろな手段で銀行やノンバンクは事業資金貸付で融資したお金を回収する手段を取ります。

期限利益の請求喪失

こちらは一言で「債務者から請求があったら、段階的に期限の利益が喪失していく」といった意味合いになります。とはいえ期限利益の請求喪失は単にステップを踏んで期限の利益喪失、つまりバッドエンドに向かっていくというだけであり、大事な点は当然喪失とかわりません。
具体的な手順では、債務者がこれから説明するような事態に陥ると、文書で通知をします。「催告書」「通知書」といった文書で、期日を定めて「◯月◯日までに〜をしてください。そうしないと期限の利益を喪失することになり、融資金は即日全額返済をしてもらいますよ」といった意味合いの文書になります。

<期限利益が請求喪失になる事態>
以下のような事態になると、利用者は債権者から定められた期日までに、依頼されたことをしないと(「履行」と呼ぶ)いけません。それができなければ、事業資金貸付の期限利益を失い、全額を一括返済しなければならなくなるのは当然喪失と同じです。

その銀行で利用している融資の返済が滞納した場合
この場合は事業資金貸付だけでなく、関係するすべての融資が対象になります。たとえば個人事業主の人が事業資金貸付の他に50万円まで利用できるカードローンを利用して、そのカードローンが長期滞納した場合などがその対象です。事業資金貸付に限定されず、その銀行におけるすべての借金が対象になる点に注意が必要です。

担保になっている不動産が差し押さえられたり、競売が決まったと判明したとき
事業資金貸付の担保になっている不動産が税務署などから差押を受けたり、その結果として強制的に売買されたりする「競売」となることが判明した場合も、事業資金貸付の担保が他者に「横取りされる」わけですから、融資契約自体が成り立たなくなるからです。(ただし権利の優先順位もあるので、一概に「横取り」とは言えない場合もあります)なお競売については後半で詳しく説明します。

融資申込みや取引の中で虚偽が発覚した場合
融資の申込みで嘘をついたり、申し込みに必要な書類を偽造したりしたことが発覚した場合には、すでに融資が行われて取引を続けている場合でも期限の利益を喪失することになります。これも、そもそも嘘の内容で融資を受けた、つまり金融機関やノンバンクをダマしたことになるので当然とも言えます。また事業資金貸付の取引が継続している場合に、毎年の確定申告や決算書を銀行やノンバンクに提出する決まりになっていますが、この決算で嘘をついていた(俗に言う「粉飾決算」)ことが判明した場合も同様の事態となります。

このように「返せなくなったからダメになる」のではなく、「返せなくなったから(滞納が重なったから)期限の利益を喪失してしまい、全額返済しなければならなくなった」という意味になります。意味合いとして違いがわかりにくいかも知れませんが、期限の利益を喪失すると、次にどうなるのか?を見ていくことで理解できます。

事業資金貸付の「バッドエンド」2.代位弁済

「期限の利益を喪失してしまう事態になると、事業資金貸付を全額返済しなければならなくなる」わけですが、その事業資金貸付が保証付きの場合は、返せなくなったなら代位弁済というステップを踏むことになります。

代位弁済とは?

代位弁済とは、融資保証をする専門の事業者が、事業資金貸付の保証をする、つまり会社が保証人になってくれるので、個人事業主や中小企業など信用度が不足する人でも融資が受けやすくなる仕組みです。保証付き融資で代表的なのは公的機関である信用保証協会の融資保証がついた事業資金貸付で、通称「マル保融資」などと呼ばれます。また融資保証をする保証会社(保証会社は銀行の系列子会社が多く、それ以外にも信販会社や消費者金融大手が融資保証をすることもある)の融資保証付きの事業資金貸付もあります。こちらは事業資金用のカードローンやビジネスローンに保証会社の保証が付くケースが主流です。
保証会社といっても融資の保証人という立場なので、事業資金貸付を借りた人が融資返済不可能になった場合などには、その融資残金を一括して立て替え払いします。この一括立て替え払いを「代位弁済」(代位=本人の代わりに・弁済=返済すること)です。
事業資金貸付返済の長期滞納以外にも、ここまで説明してきた「期限利益の喪失」となると代位弁済になる条件を満たすので金融機関などでは「代弁適状(だいべんてきじょう)」などと表現します。代弁は代位弁済の略で「代位弁済に適した状態になる」といった意味になります。

事業資金貸付の「バッドエンド」3.債権回収

代位弁済と対照的に、信用保証協会や保証会社の保証が付かない、いわゆるプロパー融資の場合には、返済が不可能になった場合にいくつかの方法で融資した事業資金貸付を少しでも回収しようとします。これらを「債権回収」などと呼びます。

債権回収とは?

債権回収とは、プロパー融資の回収を図る方法の総称であり、個別のプロセスではありません。プロパー融資では代位弁済という文字通りの「保証」がないので、債務者本人と連t内保証人に事業資金貸付で融資した資金を請求することになりますが、それが無理な場合に以下のような方法で貸し付けたお金の回収を図るわけで、保証がないところからプロパー融資を「直接融資」などとも呼びます。

<プロパー事業資金貸付・債権回収の方法>
強制執行
強制執行は、事業資金貸付ができなくなった人や、督促しても無視をした人、あるいは所在不明になってしまったなどの理由で、このまま待っても融資金が回収できないと債権者である銀行やノンバンクが判断をした場合に、債務者が財産を勝手に処分できないよう、差押や処分について裁判所に依頼(「申し立て」と表現)することです。
差押の対象になるのは不動産や預金以外にも、給料を差し押さえする場合もあります。ただし、生活を営むうえで最低限必要な財産まで差し押えすることはできないので、たとえば自宅(生活に必要とみなされるので差押できないことが多い)不動産くらいしか財産がない場合にはあまり効力がない方法でもあります。とはいえ裁判所への申立が受理されると、差押した財産を売却して融資金の返済に充てるという流れです。
ここまでの差押→強制執行という流れも、要は「借金を返せなくなったので、そのカタに財産を取り上げられた」ということになり、対外的な評判も考えて、銀行やノンバンクではあまり積極的に強制執行を行いません。

債権譲渡
最感情とはその文字通り、事業資金貸付の融資金(債権)をまるごと、他者に譲り渡すことです。譲渡とは、要は売却のことですが、売却して代金を受け取るだけでなく、担保にしている不動産も当然一緒にして譲るなど、一般的な売却とは違うので「譲渡」という表現を使います。
金融機関やノンバンクが事業資金貸付の債権を譲渡する相手は債権回収を専門に行っている会社で「サービサー」と呼ばれます。サービサーは法務省の認可を受け債権回収を専門に行っている民間業者です。資本金の条件など基準が定められていて、これらの条件を満たして認可されている、正規の回収会社になります。
事業資金貸付が返済不能などになって場合は、このようにサービサーなど第三者に債権譲渡される可能性があることは、銀行取引約定書や金銭消費貸借証書にも木指されているので、債務者は拒否することはできませんし、所在不明等の場合も強制的に債権譲渡は行われます。
債権譲渡されたあとは、事業資金貸付の融資を買い取ったサービサーなどに返済をする義務も継承されるので、当たり前ですが借金が消えてなくなるわけではありません。 サービサーは債権回収専門の会社なので、これまで金融機関やノンバンクで返済していたものと同じような返済を続けていけることはなく、原則として一括での返済をもとめられますので、要は借金の取り立てを他者にまるごと明け渡されたと言うことになるわけです。

バルクセール
こういった債権譲渡は、金融機関やノンバンク側の手続も煩雑になるので、個別に対応する以外に、日時を決め返済不可能な事業資金貸付をまとめてサービサーなどに債権譲渡する場合もあり、このように複数の債権譲渡を一度に行うことを「バルクセール」と呼んでいます。バルク(bulk)とは「棚卸(たなおろし)」の意味で、つまりは不良債権化した事業資金貸付を担保とセットにして「バーゲンセール」をするというわけです。この場合セールと入っても一般人が買い取るようなことはなく、実務的にサービサーから債権譲渡代金を金融機関が受け取れば、事業資金貸付の融資契約書類(借入申込書から金銭消費貸借証書まで)と担保契約書類が譲渡され、担保になっている不動産もサービサーのものとなります。

ここで説明した以外に、債権回収の方法として競売もありますので、次項で詳しく説明します。

事業資金貸付の「バッドエンド」4.競売

事業資金貸付における債権回収の手段に「競売(ケイバイ)」があります。

競売とは?

「競売(ケイバイ・法律用語や金融機関の実務ではキョウバイではなくケイバイと読む)」
とは担保になっている不動産を、強制的に処分する方法で、競争入札の形で購入希望者を募集し、高値を提示した相手に売却することです。
これによく似たものに「任意売却」があります。任意売却、あるいは略して「任売(ニンバイ)」とは、一般的な売買と同じように、不動産所有者が売主になり、希望する相手に売却することです。ただし一般的な売買と違って、事業資金貸付の担保になっている場合には、売却するためには事業資金貸付が全額完済できる金額で売る必要があり、事前に金融機関やノンバンクに連絡して承諾をもらわなくてはいけません。それはなぜかというと、不動産が事業資金貸付の担保になっているなら、 その担保を解除してもらわないと売却はできないからです。登記の手続き上は、担保にしている金融機関の承諾なしでも売却は可能で、その場合は担保がついたまま名義が変わることになりますが、他人の借金で担保になっている不動産を買う人はまずいないでしょう。

競売に話を戻すと、任意売却と違い金融機関やノンバンクなどの債権者が主体になって売却手続きを、裁判所に申し立てしたうえで、下記のように手続きを進めていきます。

<競売のフロー>
差押の申立
競売したい不動産を、所有者が勝手に処分したり、第三者に居座られたり(不法占拠)されないように、その不動産を差押します。(差押の意義は前述)

差押の行使(手続きすること)
差押の申立が裁判所に受理されると競売に進めすのですが、それまでに一定の時間と準備が必要なので、競売までのあいだ差し押さえた不動産には「管理物件◯◯銀行」といった看板や張り紙が明示されることになります。(民間業者が差し押さえた場合は、鎖や有刺鉄線などで厳重に立ち入りを禁止することもあります)

競売の公告(不動産競売期間入札)
競売の申立が裁判所に受理されると、ここからは裁判所が手続きを進めます。競売を「不動産競売期間入札のお知らせ」などという形で、入札期間を決めて購入希望者を募集します。こうした競売物件の情報は新聞や裁判所のホームページなどでも確認できます。原則として一般人でも入札に参加することは可能ですが、そもそも競売物件など曰く付きの不動産を専門に取り扱う不動産業者など「その道のプロ」がひしめき合う現場なので、素人が立ち入らないほうがいいと銀行員の私は考えます。

競売の実施
入札募集期間のあいだ、購入希望者が物件を現地調査したり、その後の売却作を探したりなどの事前準備と価格の値踏みをしたうえで、購入希望価格を入札します。そして、裁判所では最高値を提示した相手に売却を決定します。こうして競売で購入希望者への売却が決まることを「競落(ケイラク)」といい、市場で鮮魚や野菜を「競り落とす(せりおとす)」のと同じ意味です。
逆に購入希望者が現れなかったり、売買が成立しなかったりした場合は「不落(ふらく)」と呼ばれ競売は終わりとなります。その後も繰り返し競売を申し立てることはできますが、当然ながら売れ残り物件なので、売却価格はどんどん値下がりしていくことになります。

代金支払い、名義変更
競売で物件を競り落とすことができた不動産業者などは、裁判所に代金を支払います。実際には担保不動産を差し押さえた金融機関の所有物なのですが、競売の手続きの間は裁判所に委ねているのでこうした流れになります。そのため売却代金は「購入代金の納付」といったように、税金の納付のように表現されます。納付された購入代金は裁判所の手続き後に金融機関に入金され、担保不動産の差押は解除され、購入者に名義変更、競売の手続きが完了となります。

なお業者の中には競落することを見越し、その物件の購入希望者を予め探して売買契約を結んでおいて、競落できたなら売却するといった
契約をする所もあります。
この時に注意しなければいけないのは、通常なら業者か購入したので所有権は業者に移転される(いったん業者の所有不動産になる)訳ですが、中には所有権の移転をしないで、そのまま次の購入希望者に売り、購入代金と引替えにして最後の買主に名義変更するといった契約をする場合があります。
このように、通常なら業者に所有権を移転する登記を省略することを「中間省略」または「三為(さんため)取引」などと呼びます。中間省略自体は違法な取引では無いのですが、一部の悪徳業者が代金だけ受け取って逃げてしまうと言った事件やトラブルが起こる時があります。
競売自体も正当な手段なのですが、こうした事件やトラブルに巻き込まれるリスクもあるので、繰り返しになりますが不動産購入や不動産投資を考えている場合、銀行員として競売物件は避けた方が、あるいは慎重に慎重を重ねて検討することをおすすめします。

また不動産を担保にしていた場合で、競売の流れの中では差押になった後には物件をあけ渡すのが流れになります。したがって事務所や工場ならそれまでに不要物の撤去や、必要に応じた撤去や取り壊しなどの処置をして、出ていくことになります。これは自宅も同じで、急いで引っ越しをする事態になります。
これが任意売却や、あるいは一般の売却なら自分のペースで片付けや清掃をしてからゆっくりと物件を手放すことができるのですが、競売では時間的な猶予をほとんどなく、決められたタイムリミットまでに退去するので、文字通り追いやられるような流れとなってしまいますが、これも一つの決まり事なので仕方ない部分ではあります。

事業資金貸付が返せなくなるとどうなるのか?~まとめ

今回は事業資金貸付が返せなくなったら?と言う「if 、もしも」の話ではありますが、これは架空の物語ではなく、事業資金貸付が返せなければおそらく起こるであろうことばかりです。ただ、あくまでも参考にしていただき、このようなバッドエンドを迎えないことが一番大事なことでしょう。
実際、私は長い銀行員生活の中でさまざまなバッドエンドを見てきました。特に銀行員として融資渉外担当の仕事が長いので、ハッピーエンドよりバッドエンドの方がはるかに多く経験してきたのです。そうした経験の中には、思い出すだけで胸が締め付けられるような重い結末もありましたし、また記事ではとても書けないような出来事もあります。そうした経験から皆さんにお伝えしたいのは、やはり「ご利用は計画的に」という言葉は真実だということです。これは個人のカードローンやキャッシングに限ったことではなく、事業資金貸付にも共通する真実です。いざという時に備えることが大事で、いざという時はその時になって初めて事の重大さを痛感することもあるのです。やや教訓めいたまとめになってしまいましたが、自分が多くのバッドエンドも着てきたからこそ、この記事が参考にならば幸いです。