東日本(東北6県)で、事業資金調達にビジネスローンを検討するには、まず東日本の経済が置かれている現在の状況を知り、そこから利用できるビジネスローンの内容を見極め検討する必要があります。そこでこの記事は、ビジネスローンの商品内容の説明に加え、現在の東日本経済が置かれている状況まで銀行員が解説していきます。現場で事業資金融資を審査する銀行員視点の解説なので、東日本のビジネスローンを検討している人は、ぜひ参考にしてください。

ビジネスローンを東日本で利用するには?〜まず東日本経済の現況を知る

まず、現在の東日本経済がどうなっているか?を考えるところから始めましょう。
なお「東日本」という定義はいくつもあり、北海道から東北までの日本北部を指す場合や、関東より北、北海道を除く部分とされるなど解釈も様々ですが、この記事ではいわゆる「東北地方・東北6県」として青森県・岩手県・宮城県・秋田県・山形県・福島県を東日本とします。以降、特に注釈のない限り「東日本・東北6県」と統一して記載していきます。

東日本経済の現況

東日本経済の状況を、公的統計資料などを参考にまとめました。

 <東日本経済の現況>
●東日本・東北6県は青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島の6県で構成
位置的には東日本(ここから東北6県が被害の中心だった2011年3月11日の大地震を「東日本大震災」と表現する)だが、気象や地理的には北海道とともに「北日本」に分類される

●東日本・東北6県の面積は6県合計で全国の約3割を占める
面積と全国におけるランキングは
 ①岩手・約1千500万k㎡・全国2位
 ②福島・約1千300万k㎡・全国3位
 ③秋田・約1千100万k㎡・全国6位
 ④青森・約960万k㎡・全国8位
 ⑤山形・約930万k㎡・全国9位
 ⑥宮城・約720万k㎡・全国16位
 【参考】1位:北海道・約7千800万k㎡、最下位:香川・約180万k㎡

●東北6県の人口合計は約830万人
 ①宮城・約226万人(全国14位)
 ②福島・約176万人(全国21位)
 ③青森・約118万人(全国31位)
 ④岩手・約116万人(全国32位)
 ⑤山形・約102万人(全国36位)
 ⑥秋田・約91万人(全国39位)
 【参考】1位:東京都・約1千410万人、最下位:鳥取・53万人

●1k㎡あたりの人口密度・東北6県の平均値で約140人
【参考】1位:東京都・約6千400人、最下位:北海道・約65人

●県庁所在地は人口の多い順に
 ①宮城県仙台市・109万人
 ②秋田県秋田市・30万人 
 ③岩手県盛岡市・28万人 
 ④福島県福島市・27万人
 ⑤青森県青森市・26万人
 ⑥山形県山形市・24万人
●県民総生産の6県合計は約33兆円
●日本全国に占める割合としては、
●域内総生産:8.8%(全国を100として 以下同じ)
●製造品出荷額:7.6%
●卸売販売額:5.7%
●小売販売額:9.4%
面積では日本の上位を占める広さを持つ反面、人口や人口密度は下位にあり過疎が進むことがうかがえます。そのため日本の大きな部分を占める地域でありながら、経済規模では残念ながら全国の1割に満たないのが東日本・東北6県経済の現況と言えます。
(各種数値は統計資料などによる筆者調べ)

ビジネスローンを東日本で利用するには?〜東日本のビジネスローンを、金融事業者・融資商品別に解説

次に、東日本のビジネスローンを金融機関やノンバンクといった金融事業者や、融資商品ごとに説明していきます。

東日本の金融機関、消費者金融はいくつある

東日本・東北6県にある金融機関と消費者金融は以下の通りです。(*全国規模のメガバンク、消費者金融大手を除いた地方金融機関や中小消費者金融)
【地方金融機関】
●地方銀行(第1地銀)10:青森2、岩手2、宮城1、秋田2、山形2、福島1
●地方銀行(第2地銀)5:山形1、岩手1、宮城1、福島2(青森と秋田には無し)
●信用金庫10:青森2、岩手6、宮城5、秋田2、山形4、福島8
(*特定の事業者専用のものもあるため信用組合は除く)

また貸金業者(登録を受けた正規業者で日本貸金業協会の会員)として東北6県にある地方消費者金融は以下のとおりです
【地方消費者金融】
東日本・東北6県の地方消費者金融48:青森5、岩手8、宮城14、秋田8、山形5、福島8
(*貸金業者の登録があるすべての業者が融資を扱っているわけではありません)

東日本のビジネスローン【消費者金融大手、ノンバンク】

東日本でもビジネスローンを扱っている、全国規模の消費者金融大手、ノンバンクのビジネスローンは以下の内容となっています。

<東日本・ノンバンクビジネスローンの例>
●利用者:個人事業主、法人
●借入金額:最大1千万円まで
●金利:最大年18%台
●返済年数(回数):60回(5年)まで
●融資利用までの時間:審査回答は最短即日 融資利用も即日可能な場合もあり
●担保・連帯保証人:原則不要

東日本のビジネスローン【地方消費者金融】

東日本の地方消費者金融・ビジネスローンの内容は以下の通りです。

<中小・地元金融業者ビジネスローンの例>
●利用者:個人事業主、法人
●借入金額:最大1千万円まで
●金利:最大年18%台
●返済年数(回数):60回(5年)まで
●融資利用までの時間:審査回答は最短即日 融資利用も即日可能な場合もあり
●担保・連帯保証人:原則不要

消費者金融の中では、大手も中小も条件はほぼ同じなようです。ただし中小の消費者金融はホームページを持たなかったり、情報も少なかったりする場合もあるので、利用上必ずご自身で確認するようにしてください。

東日本のビジネスローン【銀行】

続いて銀行系ビジネスローンの内容は次のようになっています。

<銀行ビジネスローン・A>
●利用者:個人事業主、法人
●借入金額:最大300万円まで
●金利:年5%〜14%台の4段階(変動金利)で審査により決定される
●返済年数(回数):84回(7年)まで
●担保・連帯保証人:原則不要

<銀行ビジネスローン・B>
●利用者:個人事業主、法人
●借入金額:最大2千万円まで
●金利:銀行所定の金利(変動金利)で審査により決定される
●返済年数(回数):84回(7年)まで
●担保・連帯保証人:原則不要

東日本のビジネスローン【制度融資】

国や県、市町村などが主体となる低利・長期返済可能などの柔軟な融資が制度融資です。県によりさまざまな制度融資がありますので、ここでは3つほどご紹介します。

<青森県制度融資・「選ばれる青森」への挑戦資金>
●利用者:青森県内で事業を営む個人事業主、法人
(県の施策に対処しているなどの条件あり)
●借入金額:最大1億円まで
●金利:年1.1%(固定金利)特例で利率が優遇される場合も
●返済年数(回数):運転資金120回(10年・据置2年以内)、設備資金180回(15年・据置2年以内)
●担保・連帯保証人:原則不要 *信用保証協会の保証が必須

<宮城県制度融資・がんばる中小企業応援資金>
●利用者:宮城県内で事業を営む個人事業主、法人
(県の施策に対処しているなどの条件あり)
●借入金額:最大3千万円まで
●金利:銀行所定の金利(変動金利)で審査により決定される
●返済年数(回数):運転資金84回(7年・据置2年以内)、設備資金84回(7年・据置2年以内)
●担保・連帯保証人:原則不要 *信用保証協会の保証が必須

<福島県制度融資・ふくしま産業育成資金融資保証制度>
●利用者:青森県内で事業を営む個人事業主、法人
(県の施策に対処しているなどの条件あり)
●借入金額:運転資金最大5千万円、設備資金最大5千万円(併用も上限5千万円)まで
●金利:年1.3%または年1.5%(固定金利)申請内容により決定
●返済年数(回数):運転・設備とも120回(10年・据置1年以内)
●担保・連帯保証人:原則不要 *信用保証協会の保証が必須

ビジネスローンを東日本で利用するには?〜まとめ

東日本は、2011年の大震災、そして近年のコロナ禍というように、未曾有の災害、大変動からようやく脱却し、景気回復の兆しも見えてきています。しかしながら、いまだ他の地域と同水準の推移とまでは言い切れない状況です。今後も経済の動向に注意が必要な地域であり、そこで事業を営む人もこうした現状をしっかりと理解したうえで資金調達を考えていく必要があると、銀行員の私は考えています。
この記事が参考になれば幸いです。