株を担保にお金を借りると聞けば意外かもしれません。有価証券を使って融資をしてくれる証券担保ローンと呼ばれる金融商品で、株などの有価証券を売却して現金を得るのではなく、株を担保にお金を借りる方法です。証券担保ローンにはメリットが多い半面、デメリットもあります。事業などの目的ではなく使途自由なため次の投資資金に用いることも可能です。今回は証券担保ローンについて詳しく解説しましょう。

資金調達に株式を担保にして融資をする証券担保ローン

資金調達を行なうために株式などの有価証券を担保に融資を受ける証券担保ローンと呼ばれる金融商品があります。

証券担保ローンとは?

有価証券を担保に融資ができる金融商品です。有価証券には株をはじめ国債や社債、手形、小切手などがあります。株式などの有価証券を売却せずに資金調達ができる方法として、富裕層を中心に行われている資金調達方法です。住宅ローンのような目的別のローンでは無いので証券担保ローンで得た資金をもとに他の有価証券を購入したり不動産を購入したりできます。

証券担保ローンの金利は

証券担保ローンの金利はとても低いです。条件にもより変わりますが、低い物なら1%を割るほどの低い金利から高くても3%台程度の金利で融資が受けられます。

証券担保の評価額とは

証券担保の評価額によってどこまで融資が受けられるのかが決まります。一般的には担保となる有価証券の評価額が設定されます。評価額を100%としておおむね50%から70%程度の金額が融資の上限となります。例えば1000万円の評価額がついている株式を所有し、評価額の70%までの融資が可能であれば、1000×0.7の700万円を上限とした融資が受けられます。

証券担保ローンのメリットは

証券担保ローンには様々なメリットがあります。

1.株式の価値が高いと大口の融資が受けられる
2.レバレッジをかけた資産運用ができる
3.低金利で借り入れできる
4.よほどのことがない限り審査に落ちない
5.安定した資金調達が迅速にできる
6.株を保有したままなので配当や株主優待はそのまま

以上、6つのメリットについてひとつずつ詳しくみていきましょう。

1.株式の価値が高いと大口の融資が受けられる

通常の金融商品であれば、融資の上限限度額がある場合が多く、貸金業法では年収の3分の1以下など、受けられる融資額が決まっている場合が多いです。しかし、証券担保ローンの場合は有価証券に高い評価額が得られれば、その評価額に応じた融資が受けられるため、非常に大口の融資が受けられる可能性があります。

2.レバレッジをかけた資産運用ができる

金融商品によっては目的別ローンなどがあり、マイホームやビジネス用途以外では利用できないものが多くあります。しかし証券担保ローンの場合は自由に資金が使えるため、別の投資や運用に充てることも可能です。レバレッジ(てこの原理)をかけた資産運用ができる事が大きなメリットです。

3.低金利で借り入れできる

証券担保ローンは、金利が低いこともメリットです。金融機関によって違いはありますが、金利が高いところでも3%台である場合が多いので、金利の高さに苦しむ可能性が低いです。

4.よほどのことがない限り審査に落ちない

一般的な融資の場合、銀行などは審査が厳しい場合が多く、審査落ちも良くありますが、証券担保ローンで審査落ちをすることはめったにありません。理由は申込者個人の状況を審査するのではなくて、担保として拠出した有価証券の評価額によって決まるからです。

5.安定した資金調達が迅速にできる

証券担保ローンは、申し込みの手続きが簡単で、審査も比較的早い場合が多いので、安定した資金調達が迅速に行えるというメリットがあります。

6.株を保有したままなので配当や株主優待はそのまま

株などの有価証券を売却して資金を得るよりも担保にして融資を利用しても所有権は持ったままなので、その株で配当が出れば配当がもらえます。配当の額によってはそのまま返済の金利に充てることもできます。また株主優待などもそのまま受けられるメリットがあります。

証券担保ローンのデメリットは

証券担保ローンにも残念ながらデメリットがいくつかあります。

1.借入可能額や担保の種類に制約がある
2.有価証券の価値変動のリスクがある
3.担保割れまで価値が下落すれば株式売却の可能性がある
4.担保にした株式会社が倒産した場合に大きなリスクを背負う
5.主に富裕層向けの金融商品である
6.延滞すると高い年率がかかる

以上6項目のデメリットについて詳しくみていきましょう。

1.借入可能額や担保の種類に制約がある

有価証券の種類によって予め借りられる割合が決められていますし、1銘柄だけの担保に対して消極的な証券会社があるなど、条件は証券会社によって異なります。利用する際には「思っていたことと違っていた」とならないように、最初に証券担保ローンの条件などを証券会社ごとに確認するようにしましょう。

2.有価証券の価値変動のリスクがある

有価証券の中でも株券などは価格変動が激しいため、株価が上がれば問題ありませんが、株価が下がってしまい、担保としての価値が下がるため追加で担保提供をしなければなりません。

3.担保割れまで価値が下落すれば株式売却の可能性がある

株価が大幅に下落した場合、ある一定以下に下落すると証券会社の判断で株式が売却されます。特に自社株の場合は会社が他人に取られることを示唆しているので、いつでも追加の担保になる有価証券を用意しなければなりません。

4.担保にした株式会社が倒産した場合に大きなリスクを背負う

もし、担保としている会社そのものが倒産すると、株価の価値は0となり担保としての役目がなくなります。その場合は同等の担保になる有価証券を用意しなければなりません。

5.主に富裕層向けの金融商品である

証券担保ローンは、どちらかと言えばある程度の資産を持っている富裕層向けの金融商品です。その為一般の個人事業主やフリーランスが証券担保ローンで資金調達するようなものではありません。利用できる対象者が限られているのも証券担保ローンのデメリットです。

6.延滞すると高い年率がかかる

証券担保ローンの年利は安いのですが、延滞した場合は延滞用の年率が適用され、14%程度の高い金利がかかる恐れがあります。

証券担保ローンの活用術・利用シーン

証券担保ローンの実際の活用術や利用シーンにはどのようなものがあるのでしょうか?目的が自由で担保の価値によってはとても高い融資が受けられる証券担保ローンには以下のような活用術があります。

1.投資拡大と多様化につながる
2.リスクヘッジ手法のひとつ
3.ポートフォリオのバランス調整ができる
4.不動産投資に活用する
5.スタートアップ企業への投資

以上、5項目について詳しくみていきましょう。

1.投資拡大と多様化につながる

証券担保ローンの資金の利用制限がなく巨額の資金が得られることは次の投資につなげることができます。新興市場に投資をするなど新たなるリターンを狙いながらもリスクとのバランスを考えて行けば投資が拡大しますし、同時に投資の対象をこれまで増やすことでリスクへの対策にもつながります。

2.リスクヘッジ手法のひとつ

証券担保ローンはリスクヘッジの手法としても活用できます。有価証券を担保に差し入れることは潜在的なリスクから保護する事もできます。保有資産だけの値動きだけでなく、全く異なる値動きの資産を得た資金から投資すれば、仮にどちらか一方が大幅に下落したとしても資産が全滅せずにもう片方が残ります。成長する資産に投資すればインフレへのリスクの懸念も避けられます。

3.ポートフォリオのバランス調整ができる

所有しているポートフォリオ(金融商品の投資銘柄の配分)が株式に偏りすぎていた場合、株価下落のリスクをもろに受けることになることから、比較的変動幅の低い債券に投資しようとしたときに、証券担保ローンを活用することができます。ポートフォリオのバランスを調整することで、リスクが分散できますし、リターンが最大化できる可能性が高まります。

4.不動産投資に活用する

証券担保ローンで得た資金を別の有価証券に充てるとは限りません。例えば不動産投資に活用することもできます。有価証券は最悪の場合紙切れになりますが、土地などの不動産は消滅しないので、リスクの分散につながります。

5.スタートアップ企業への投資

思い切って、新しい分野に投資するのも証券担保ローンの面白いところです。将来成長が見込めそうなベンチャー系のスタートアップ企業に投資することで、大きなリターンが戻ってくる可能性があります。

株を担保にお金を借りる証券担保ローンのまとめ

株などの有価証券を担保にお金を借りられる証券担保ローンは、価値のある有価証券であれば思わぬ大金の融資が受けられ、自由に資金が運用できるので新たな投資に資金への投下が可能です。その一方で担保となる株価の価値が下落した場合に追加の担保が必要になったり、さらに下落すると売却の対象になったりするデメリットがあります。