法人名義で自宅を購入すると、会社と代表者共にさまざまなメリットを受けられる可能性があります。しかし、法人名義で住宅ローンを組むことはできないため、住宅ローン以外の方法で融資を受けなければなりません。法人名義で不動産を購入するメリットと共に、住宅ローンに代わる融資やその審査基準について解説します。

法人代表者の自宅を法人名義で取得する

「法人名義で住宅を取得すると節税になる」という話を聞いたことはないでしょうか。企業の代表者などが法人名義で住宅を購入すると、会社としても代表者個人としてもメリットになる可能性があります。

企業が法人名義の住宅を購入するメリット

法人名義で不動産を購入した場合、その費用は会社の経費として計上できます。法人名義の住宅を取得するための費用はもちろん、毎年かかってくる固定資産税や不動産所得税、管理費なども経費です。さらに、経年劣化による減価償却費も経費として計上できます。そのため、利益を出している企業にとっては、法人名義で不動産を購入することで大きな節税効果を生み出せます。

代表者が法人名義の住宅に住むメリット

法人の代表者は、比較的安い家賃で法人名義の住宅に住むことができます。

会社から法人名義の住宅を無償で提供されてしまうと、給与の現物支給とみなされ、代表者個人の所得税が上がってしまいます。それを防ぐためには、代表者であっても会社に対し家賃を支払いましょう。この時、固定資産税の課税標準額を基にした家賃設定にすることで、一般的な賃貸物件よりも安い家賃で住むことが可能です。

また、法人代表者が社宅として法人名義の住宅に住むことにより、代表者自ら住宅ローンを組む必要がなくなります。

法人の代表者は住宅ローンの審査が厳しくなる

住宅ローンの契約年数は30年以上になることも多く、長期間の安定した収入の見込みがなければ審査は通りません。そのため、法人の代表者や個人事業主は一般の給与所得者よりも住宅ローンの審査が厳しくなると言われています。審査基準は金融機関ごとに異なりますが、審査に必要な書類も経営者の方が多くなります。たとえば、会社の決算書や納税証明書なども審査に必要となることがあります。

会社に借り入れがある場合には、代表者がその借り入れの連帯保証人となっていることもあります。その際にも、住宅ローンの審査でマイナスになることがあります。このような手間を考えると、個人で住宅ローンを組むよりも、会社にも利益となるように法人名義での購入を検討した方が良い場合もあるでしょう。

法人名義で不動産を購入するデメリット

法人名義で住宅を取得することには、デメリットもあります。まず、法人名義では住宅ローンを組めません。そのため、金利の低い住宅ローンを利用できません。さらに、個人が住宅ローンを組むことで受けられる住宅ローン減税も受けられません。

法人名義で住宅ローンは組めない

住宅ローンは、契約者が居住する住宅を購入する時に使用できるローンです。そのため、法人名義ではその条件に当てはまらず、住宅ローンを使用できません。たとえ法人の代表者が住むとしても、それは法人名義の社宅を代表者に貸している形になるため、契約者が居住するとは言えません。したがって、法人名義で住宅を購入するには、住宅ローン以外のローンや融資を受ける必要があります。

法人名義で住宅ローンの代わりに利用できるローンや融資

法人名義で住宅ローンの代わりにまとまった金額を用意するには、ビジネスローンや事業用の融資を受ける必要があります。ビジネスローンや事業用の融資は、さまざまな優遇制度がある住宅ローンと比べ、借り入れできる期間が短かったり金利が高かったりといったデメリットもあります。

法人名義で住宅ローンに代わる融資を受ける際の審査基準について

法人名義で住宅ローンに代わる融資などを受ける際、どのような審査基準で判断されているのでしょうか。

法人名義の融資では法人としての信用を審査される

法人名義で融資を受ける時には、法人としての信用が一番重要な審査基準になります。具体的には、現在の経営状況や、過去に借り入れていた融資などの返済状況、事業の健全性などを審査します。そして、融資金額を返済できるかどうか総合的に判断するのです。

たとえば、会社の売り上げに対して月々の返済金額が多くなりすぎると、審査を通過できない可能性が出てきます。赤字が続いている企業も、返済能力が不足していると捉えられ、審査に通らない可能性が高くなります。現在の経営が上手くいっていたとしても、過去に返済を滞らせた経験がある場合には、審査に不利となる場合があります。会社の規模や借り入れる金額によっても審査は厳しくなります。

不動産の担保価値も審査される

法人名義で不動産を取得する場合は、その不動産の担保価値も審査します。担保価値は不動産の評価によって決まります。公示地価や路線価、固定資産税評価額は将来的に現時点よりも下がる可能性があるため、不動産の時価は低めに設定されることが多く、担保価値も低く審査されることがあります。

法人名義の融資であっても代表者個人の信用を審査される

代表者の信用も、法人名義の融資では大事な審査基準となります。会社の審査基準をクリアしていても、個人の審査基準をクリアできなければ融資を受けられません。

たとえば税金や光熱費、家賃などの未納や滞納があったり、複数の金融機関から借り入れがあったりすると、審査が通りにくくなります。また、代表者が過去に破産手続きをおこなっていたり、債務整理を実施したりしていても、審査に悪影響となります。

法人名義の審査が通らない場合には

法人名義の融資における審査基準は、金融機関ごとに異なります。審査に落ちてしまった場合には、別の金融機関へ相談してみても良いでしょう。

法人名義の融資を受け付けている金融機関と審査基準

住宅ローンに代わって法人名義で融資を受ける場合、どのような金融機関を利用でき、それぞれどのような審査基準があるでしょうか。一般的にはメガバンクであるほど審査が厳しく、信用金庫は審査が甘いとされています。

政府系金融機関

政府系金融機関は、中小企業への融資や経営のサポートなどの活動支援をおこなっている金融機関です。中小企業を支えるため融資に強く、金利も低い特徴があります。法人名義で住宅ローンの代わりとなるような融資を受ける際にも相談してみると良いでしょう。

審査基準としては、その特徴から民間の金融機関とはまた違った審査基準を設けて審査をおこなっています。返済能力がなく、事業の将来性も無い場合には審査を通過できません。

巨大な資本を持つメガバンク

巨大な資本を持ち、全国的にも有名なメガバンクも事業用の融資をおこなっています。メガバンクでの融資は金利が低く長期間の融資にも応じてもらえるため、非情に魅力的です。しかし、メガバンクの審査は非常に厳しいと言われています。審査のために必要な書類も多く、赤字経営であれば審査に通ることは難しいと言えます。

逆に言うと、メガバンクで住宅ローンの代わりとなる法人名義の融資を受けようとし、審査に落ちてしまった場合には、他の金融機関であれば審査に通る可能性があるということです。地方銀行や信用金庫など、審査の基準が緩やかな金融機関を選ぶと良いでしょう。

地域に根差した地方銀行

地域密着型であり、地元の会社を大事にしてくれるのが地方銀行です。信用金庫よりも安い金利であったり、融資限度額が高額であったりします。そのため、審査基準は信用金庫よりも厳しくなります。地方銀行で審査が通らなかった場合には、信用金庫に相談することで、審査を通過する可能性があります。

比較的審査が甘いとされる信用金庫

これまでのどの金融機関においても、住宅ローンの代わりとなる法人名義の融資審査に通らなかった場合、信用金庫に相談してみましょう。信用金庫はどこよりも地方に密着し、地域の中小零細企業へ積極的に融資をしています。

比較的審査が甘いとされていますが、それでも返済能力を示せなければ審査には落ちてしまいます。信用金庫が法人名義の融資の際に審査している項目は、会社や代表者の信用情報と借り入れ状況、自己資金がどの程度あるかです。現在借り入れがある場合でも、問題なく返済ができており、新しく受けた融資に対しても問題なく返済できると判断されれば、審査に通りやすくなります。

どのような金融機関においても、審査には会社と代表者の信用や事業内容の妥当性など、融資を受けられるだけの説得力がなければなりません。

法人名義の住宅購入で住宅ローンに代わる融資を受けるための審査についてのまとめ

法人名義で住宅を購入する場合、会社は住宅ローンを組めません。そのため、住宅ローンに代わる融資を受ける必要があります。住宅ローンに代わる融資はさまざまな金融機関で受けられますが、それぞれ審査基準に差があります。万が一ひとつの金融機関で審査に落ちてしまっても、別の金融機関であれば審査に通る可能性があります。複数の金融機関へ相談してみてください。