事業をおこなっていると、予定外の高額な資金が必要となる場面があります。ビッグチャンスが舞い込んだことによって急な設備投資が必要になったり、事業拡大のために不動産を購入したりということがあるからです。
高額融資を受けるには、金融機関に対して、その融資を返済する能力があることを示さなければなりません。企業の返済能力は、決算書から読み取ることができます。この記事では、高額融資を受けられる金融機関や決算書のポイント、担保について解説します。
目次
高額融資を受けることが可能な条件
個人であれば総量規制という上限の規定があるため、無制限に高額融資を受けられるわけではありません。総量規制とは、借り入れできる上限金額を年収の3分の1までと定めたものです。
しかし法人や個人事業主の場合には、総量規制が適応されません。事業資金の調達は高額になることが多いためです。そのため、たとえ個人事業主であっても、ビジネスローンであれば年収の3分の1を超えた高額融資が認められています。
高額融資を受けるには
高額融資を受ける際には、どのような機関へ相談したら良いでしょうか。具体的には次の通りです。
日本政策金融公庫に相談する
日本政策金融公庫には以下の事業向け融資制度があります。
個人企業や小規模企業向けの融資
中小企業向けの融資
農林水産物を扱う業者向けの融資
個人企業や小規模企業であっても、平均900万円ほどの融資をおこなっています。中小企業であれば、平均1.3億円の高額融資をされています。あくまで平均額ですので、資金の必要性や審査結果により、さらなる高額融資が期待できます。
銀行等に相談する
普段から取引のある銀行では、高額融資に応じてもらえる可能性があります。とくに地方銀行の場合は地元企業を大切にしています。過去の取引実績や経営状況を把握していることで、高額融資に有利に働く場合もあります。また、不動産等を担保にすることで、高額融資を受けられる可能性はさらに高まります。
消費者金融などのノンバンクに相談する
ノンバンクからの融資を検討している場合には、ビジネスローンを利用することで、個人向けローンよりも高額な融資を受けられます。さらなる高額融資が必要な場合には、不動産担保ローンを検討すると良いでしょう。
高額融資を受けるためには決算書が重要
どこから融資を受けるとしても、高額融資を受けるためには審査を受けなければいけません。融資の審査は金額が大きくなるほど厳しくなります。とくに決算書は、融資の審査に大きな影響を与えます。審査の際にどのような点を見られるのか、何に気を付けるべきかを見ていきましょう。
事業において利益は出ているか
銀行等は融資をおこなう際、その企業に返済能力があるかを確認しています。高額融資を受けるには、それを返済できるという説得力がなければなりません。そのため、どれだけの利益を出しているかは大きな評価ポイントになります。
事業の収益から費用を差し引いた経常利益を見ることで、その企業が通常どの程度の利益を出しているのかがわかります。経常利益が赤字の場合は、高額融資は難しくなります。
たとえ直近1年が黒字であっても、過去に赤字が続いていた場合には注意が必要です。この黒字が偶然なのか今後も継続できるのかが焦点となるからです。事業計画や今後の展望を説明できるようにしておくと良いでしょう。
逆に黒字経営だったものが赤字に転落した場合も、その理由や今後の展望により評価が変わります。赤字が一時的なものであるならば、それを説明する資料や赤字解消が確実であることの資料を作成してください。しっかり説明し、納得してもらえることで、高額融資を受けられる可能性が出てきます。
経常利益が3年以上連続で黒字である場合には評価が高くなり、高額融資を受けられる可能性も高まります。
債務超過はないか
債務超過とは、企業が持っている資産よりも抱えている負債の方が多くなり、純資産がマイナスになっている状況のことです。資産をすべて売却しても負債を返しきれない状態とも言えるため、融資自体が困難になります。
純資産は、創業当時から現在までの経営結果が反映されています。設備投資などで一時的に負債が増えることもありますが、純資産がマイナスであることはこれまでの経営状況が良くなかったことを意味し、返済能力が乏しいと判断されるのです。
役員への貸し付けはないか
中小企業の場合、社長個人など役員へ会社の資金を貸し付けていることがあります。しかし社長への貸し付けは、資金の私的流用や使途不明金としての疑いを持たれやすく、資産から差し引いて評価される可能性があります。社長への貸し付けがあると高額融資を受けにくいため、決算書に社長への貸し付けが記載されないよう、期末までに返済しておくと良いでしょう。
不自然な売掛金や在庫がないか
利益が多く経営が上手くいっているほど、高額融資を受けられる可能性が高くなります。そのため銀行などは、粉飾決済をおこなっていないかどうか厳しく確認します。利益を水増しする手口として、売掛金や在庫の架空計上が考えられます。不自然な売掛金の残高がないか、売り上げに対して在庫が多すぎないかがチェックポイントです。正当な理由があって在庫が多くなっている場合には、説明できるようにしておきましょう。
高額融資を受けるには、銀行からの印象も大事
高額融資を受けられるかどうかは、問題なく返済できると判断されるかどうかです。業績が良く、決算書の内容にも問題がなければ高額融資の可能性は高まるでしょう。しかし、過去に受けた融資の返済に問題があった場合や、業績が良くない場合には、高額融資が難しくなります。
さらに、たとえ決算書の内容に問題がなくても、初めての融資でいきなり高額融資を受けることは困難です。まずは少額の融資で返済実績を作り、銀行との関係を作ることも大切です。
高額融資を受けられる例
では、具体的にどのような方法で高額融資を受けられるでしょうか。代表的な方法を紹介します。
不動産担保融資
高額融資を受けるには、万が一の時にも金融機関が損をしないように担保を利用します。不動産を担保にした場合、不動産の価値や企業の信用情報にもよりますが、億単位の融資を受けられる可能性があります。
融資上限は不動産の価値によっても変わります。金融機関ごとに融資上限額を不動産評価額に対して何割までと決めているため、高額融資を望む場合には複数の金融機関等へ相談してみると良いでしょう。
また、融資の審査内容において、銀行よりもノンバンクの方が不動産に対する評価を重要視します。経営状況などに自信がない場合は、ノンバンクの不動産担保ローンを検討してください。
売掛債権担保融資
企業として不動産を所有していなくても、製造業者などは高価な機械設備を所有していることがあります。それらの機械設備や商品在庫、売掛金などの売掛債権を担保にすることで、高額融資を受けられる可能性があります。
流動資産担保融資保証制度
中小企業庁が実施している流動資産担保融資保証制度では、中小企業者の利用に限りますが、2億円までの保証を受けられる可能性があります。この制度を利用することで、最高2億5,000万円までの高額融資を受けることが可能です。ただしこの制度は銀行等がおこなっている売掛債権担保融資とは違い、機械設備などは担保にできません。
ビジネスローン
ビジネスローンであれば総量規制の適応外であるため、高額融資を期待できます。ただし融資上限額は金融機関ごとに大きな差がありますので注意してください。
高額融資を受ける方法のまとめ
高額融資を受けるためには、それ相応の準備が必要です。事業が安定しており、将来性が見込める場合には、高額融資を受けられる可能性が高くなります。不動産や売掛債権などの担保価値が高い場合にも、高額融資を受ける時に有利になります。決算書の状況や保有している資産に応じて、最適な融資を選んでください。