資金繰りの改善策としてファクタリングの導入を検討する際、懸念されるのが手数料の水準ではないでしょうか。

「どの程度のコストが発生するのか」
「他社と比較して高すぎないか」
「相場を知らずに不利な条件で契約してしまわないか」

上記の不安を抱える経営者・財務担当者の方も多いはずです。

本記事では、法人・個人事業主問わず、ファクタリングを導入する際に押さえておくべき手数料の相場・手数料を左右する主な要因・手数料を安く抑える具体策を詳しく解説します。

納得のいく資金調達を実現するための参考として、ぜひご活用ください。

ファクタリング手数料の相場とは

ファクタリング手数料の相場は、2社間ファクタリング・3社間ファクタリングのどちらを選ぶかによって異なります。

以下で、それぞれの手数料の目安を詳しく解説します。

2者間ファクタリングは8%~18%

2社間ファクタリングの手数料の相場は、売掛債権の額面に対して8%〜18%です。

利用者とファクタリング会社の2者間で契約するため、売掛先に知られずに資金を調達できる反面、ファクタリング会社には以下のリスクがあります。
売掛債権の実在確認ができない
債権の二重譲渡の可能性がある
利用者を介するため売掛金回収の確実性が下がる

例えば、売掛先から入金された売掛金を、利用者が他の支払いに使う可能性も否定できません。

また、架空の債権や、すでに別の会社に譲渡された債権が持ち込まれる可能性もあります。

上記のように、ファクタリング会社のリスクが相対的に大きくなるため、手数料が3社間ファクタリングよりも高くなる傾向にあります。

3者間ファクタリングは2%~9%

3社間ファクタリングの手数料の相場は、売掛債権の額面に対して2%〜9%です。

売掛先がファクタリングの利用に同意し、ファクタリング会社へ直接売掛金を支払うため、ファクタリング会社は売掛債権の存在確認が可能です。

また、利用者を介さずに資金が回収される仕組みであるため、貸し倒れや資金の流用などのリスクも大幅に下がります。

上記のように、売掛金回収の確実性が担保されるため、手数料を低く設定しても採算が取れるのです。

ファクタリング手数料に関係する5つの要因

ファクタリング手数料は、一律に決まっているわけではありません。
いくつかの要因が合わさり、最終的な手数料率が決定されます。

以下では、ファクタリング手数料に関係する5つの要因を解説します。

ファクタリングの申込方法

ファクタリングの申込方法の一つに、担当者と直接会って手続きを進める対面形式があります。

対面で手続きの際、利用者がファクタリング会社のオフィスへ訪問する場合には、交通費は自己負担となるのが一般的です。

遠方のファクタリング会社を利用する際は、交通費が高額になる可能性も考慮しなくてはなりません。

一方で、ファクタリング会社の担当者に自社まで出張してもらう場合、会社によっては出張費用を請求されるケースもあります。

これらの費用はファクタリング手数料とは別に発生する可能性があるため、事前に確認しておきましょう。

売買する売掛金の金額

ファクタリングは、売掛金の金額が大きいほど手数料率は低くなる傾向があります。
一度の取引で扱う金額が大きいと、ファクタリング会社の事務コストの割合が相対的に下がり、利益を確保しやすいためです。

例えば、数百万円以上の売掛金であれば、手数料率が優遇される場合があります。
一方で、数十万円程度の売掛金の場合、審査や契約手続きにかかる手間は高額な債権と大きく変わらないため、手数料率が割高になるケースがあります。

したがって、可能な範囲で複数の売掛金をまとめて申し込み、取引金額を大きくすると手数料率を抑えられる可能性があるのです。

売掛金の支払い期日までの期間

支払い期日までの期間が長い売掛金は、ファクタリング会社にとって資金化されるまでの期間が長くなります。

期間が長ければ長いほど、売掛先の経営状況が悪化したり、倒産したりするリスクが高まります。

ファクタリング会社は、上記の未回収リスクを考慮して手数料を設定するため、支払いサイトが長い債権ほど手数料が高くなりやすいです。

一方で、支払い期日までの期間が短い売掛金であれば、比較的早期に資金回収が見込めるため、リスクが低いと判断され手数料が安くなる傾向にあります。

取引先の信用力の高さ

ファクタリング会社は、売掛金が期日どおりに支払われるかの回収リスクを審査します。

取引先の経営状態が安定しており、支払い能力が高いと判断されれば、貸し倒れのリスクは低いと考えられます。

例えば、上場企業や公共機関、あるいは長年の取引実績があり財務状況が良好な企業の売掛金は、信用力が高いと評価されやすいです。

信用力の高い売掛先の債権は、ファクタリング会社にとって回収の確実性が増すため、手数料は低く設定される傾向にあります。

一方で、設立から日が浅い企業や、財務状況に不安がある取引先の売掛金は、回収リスクが高いと見なされ、手数料が割高になる場合があります。

債権譲渡登記の有無

債権譲渡登記とは、売掛債権が譲渡された事実を第三者に対して証明する方法です。
債権譲渡登記は、二重譲渡のリスクを防止するためにおこなわれます。

債権譲渡登記をおこなう場合、契約書への印紙貼付が求められます。
印紙代は売掛債権の金額によって変動します。

例えば、契約金額が1万円未満の場合は非課税ですが、1万円以上になると200円の印紙が必要です。
さらに債権譲渡登記をおこなう場合には、別途費用が発生します。

登録免許税としておよそ7,500円かかり、司法書士へ手続きを依頼する場合には、さらに5万円~10万円程度の報酬が必要です。

ファクタリング手数料の計算方法

ファクタリング手数料の計算式は「売掛債権の額面×手数料率=手数料額」です。

例えば、100万円の売掛債権をファクタリングし、手数料率が10%の場合、手数料額の計算は以下のとおりです。

100万円(売掛債権)×10%(手数料率)=10万円(手数料額)

ファクタリング会社から入金される金額は「売掛債権の額面-手数料額=入金額」であるため、計算は以下のとおりです。

100万円(売掛債権)-10万円(手数料額)=90万円(入金額)

したがって、この場合の入金額は90万円が目安です。

ファクタリングの手数料計算はシンプルですが、受取金額や総コストを正確に知るためには、手数料率だけでなく、その他の諸費用まで確認しましょう。

ファクタリング手数料を安く抑える方法

ファクタリングの手数料は、安く抑えられる可能性があります。
以下で紹介する方法を実践し、ファクタリング利用時のコスト削減につなげましょう。

オンライン契約対応のファクタリング会社を利用する

対面による手続きでは、担当者の訪問や出張、書類の郵送などの手間が発生します。そのため、ファクタリング会社側にとって人件費や交通費がかかり、手数料に上乗せされる場合があるのです。

オンラインでの手続きであれば書類のやり取りや契約締結が迅速に進むため、利用者にとって時間的なコストを抑えられます。
移動の必要がないため、対面での契約と違い交通費などもかかりません。

上記の理由から、オンライン契約は手数料や諸経費を抑えたい場合に有効です。
迅速に資金調達したい・総コストを少しでも低くしたい場合には、オンライン契約が可能なファクタリング会社の利用を検討してみましょう。

債権譲渡登記が不要なファクタリング会社を利用する

債権譲渡登記が必要なファクタリング会社を利用する場合、登記にかかる費用を調達資金から差し引かれます。

登記が不要な契約や、登記留保で対応してくれる会社を選べば、登記関連費用を支払う必要がありません。

特に2社間ファクタリングを利用する際、取引先に知られず資金調達を進めたい場合には、登記を省略したいと考える方も少なくありません。

ただし、ファクタリング会社によっては、登記を留保する場合、登記をおこなう場合よりも手数料率がわずかに高くなるケースもあります。
そのため、総コストで比較検討しなくてはなりません。

ファクタリング手数料に関するよくある質問

本項では、手数料に関する質問を分かりやすく解説します。
ファクタリング手数料への理解を深め、サービスを有効に活用するための参考にしてください。

ファクタリング手数料に消費税はかかりますか?

ファクタリングを利用する際の手数料には、原則として消費税はかかりません。
ファクタリングは、売掛債権という金銭債権の譲渡にあたる取引です。
日本の消費税法では、金銭債権の譲渡は非課税取引と定められているため、ファクタリング手数料も、消費税がかからないのが一般的です。

ただし、ファクタリング契約に付随してコンサルティングや、書類作成の代行を依頼した場合など、契約内容によっては別途消費税がかかる可能性もあります。
そのため、ファクタリング契約の際は見積書や契約書の内訳をよく確認しましょう。

ファクタリング手数料が高い違法会社の特徴は何ですか?

ファクタリング会社を選ぶ際、手数料の上限や明確な料金体系を公開していない場合は、注意しましょう。

手数料の上限を公開しない会社の中には、非常に高い手数料率を提示してくる場合や、契約書の中に利用者に不利な条項が紛れている可能性が考えられます。

手数料の上限が不明瞭な場合、必ずしも直ちに違法な業者とは断定できませんが、利用者が不利な条件で契約を結んでしまう一因となるかもしれません。

結果として手数料が法外に高ければ、それは問題のある取引といえるでしょう。

必ず複数の会社から見積もりを取り、契約内容を十分に確認してください。

ファクタリング手数料は経費として計上できますか?

ファクタリングを利用した際に支払う手数料は、事業の経費として計上可能です。
ファクタリング手数料は、売掛債権を早期に資金化するための費用であり、事業運営に必要な支出とみなされます。

そのため、法人であれば法人税法上の損金として処理し、個人事業主であれば所得税法上の必要経費として処理するのが一般的です。

会計処理をおこなう際の勘定科目は、「支払手数料」や「売上債権売却損」などを用いるケースがみられます。

ただし、具体的な会計処理や税務上の判断については、税理士などの専門家へ相談することをおすすめします。

即日対応のファクタリング会社の手数料は高いですか?

即日対応のファクタリング会社の手数料は、通常のファクタリングに比べてやや高めに設定されている場合が多いです。

資金調達のスピードを最優先する即日対応のファクタリングでは、ファクタリング会社は審査や契約手続きを迅速に進める必要があります。

迅速な対応には相応の事務コストや、限られた時間で審査をおこなうリスク判断の難しさなどが伴います。

一般的な2社間ファクタリングの手数料相場の上限に近いか、それ以上の手数料率になるケースも考えられます。

利息制限法とは何ですか?

利息制限法とは、融資における利息の上限を定めた法律です。
ファクタリングは、企業が保有する売掛債権をファクタリング会社へ売却して資金を得る取引であるため、法律上は金銭の貸し借りである融資とは区別されます。

そのため、ファクタリング会社へ支払う手数料は、利息には該当しないと解釈されています。

しかし、ファクタリング契約を装いながら高金利の貸し付けをおこなう悪質業者には注意が必要です。

契約内容が実質的に金銭の貸し付けであり、手数料が利息とみなされる場合には、利息制限法に違反する可能性があります。

契約の際は、償還請求権がないノンリコース契約となっているか、確認しましょう。

ファクタリング手数料の理解を深めて損しない選択をしよう

手数料の比較検討をおこなう際は、手数料以外の諸費用・契約期間や、その他の条件・ファクタリング会社の信頼性などを総合的に見極めましょう。

複数の会社から見積もりを取り、契約内容について不明な点があれば、遠慮なく質問する姿勢が求められます。

ファクタリングは迅速な資金調達に役立つ有効な手段ですが、手数料に関する知識が不足していると思わぬ不利益を被る場合もあります。

本記事で得た情報を活用し、慎重な比較検討と適切な判断をおこない、事業の成長にお役立てください。