建設業での資金調達手段としてファクタリングが注目されています。
工事着工も支払いは完成後という場合が多いため、工期中の人件費や資材費は立て替えとなってしまい、中小事業者や個人事業主の方々にとっては、この費用捻出に大変苦労されているかと思います。

ファクタリングは最近広まった資金調達方法なので、その仕組みを知らないという方や、ネガティブイメージを持っているという方も少なくないでしょう。

この記事を読んでいただくことで、建設業でファクタリングがよく利用されている理由や、ファクタリング会社選択時のポイント、注意点などを理解し、資金繰りを気にせず仕事を進められる様にお手伝いができれば大変光栄です。

建設業の資金繰り問題点

建設業は他の業種と比べて、資金調達が大変厳しい業種の一つであり、注文を受けてから完成入金までの期間にいくつもの問題に直面することがあります。
支払サイトが長いため、人件費・材料費の立て替えが必要となったり、期間中のトラブル対応や急な資金も立て替えとなります。
したがって、長期プロジェクトではさらに資金繰りが悪化するかもしれません。このような状況でキャッシュフローが安定しないことから、銀行の融資は通りにくいともいわれています。

建設業における資金調達での課題

建設業の資金繰り問題点にどのような課題があり、どう解決すればよいのかを見ていきましょう。ここでは、問題点が抱えている課題を整理し、その内容を確認していきます。

材料や外注費は立て替え

建設業の仕事は多くが請負契約であり、完成検収後の入金となります。長期にわたるプロジェクトでは、工期中に一部支払いが受けられるような契約をする場合もありますが、契約形態としては原則、完成検収後の支払いとなります。

特に、建設業の仕事は期間として数か月から数年に及ぶものも多く、契約形態が請負であれば、原則として、完成後の検収を受けてからの支払いとなる為、この期間に発生する立て替え額の負担は無視できません。

また、長期間のプロジェクトにおいて期間中の資材価格高騰などにより、想定以上の立て替えが生じてしまう恐れもあります。建設業における立て替え資金調達課題は、事業継続上とても大事なのです。

入金は完成後で期間が長い

建設業の仕事は請負が主流であり、かつ工期が数か月から数年と長い為に、入金までの期間が長く、キャッシュフローの厳しい状況が続きます。手持ち資金が潤沢であればよいのですが、中小企業や個人事業主の方はそこまで余裕がないのが実情です。

また、受注した仕事の工期中に資材価格が急騰したり、設計変更に伴う工期延長などが生じた場合は、さらに立て替えが生じキャッシュフローが悪化、資金繰りの厳しい状況が続くことになります。

このような状況では、銀行等の金融機関で融資を申請しても、なかなか審査が通りにくいということがよくあります。

キャッシュフローを改善し、安定した事業活動を行うためには、入金までの期間長期化に対応できる資金調達方法の検討が必要です。

建設業でファクタリングが利用されている理由

これらの課題を解決するために、有効な方法としてファクタリングが注目されています。ここでは、その理由を見ていきましょう。

スピーディーな資金調達ができる

スピーディーな資金調達はファクタリングのメリットの一つです。金融機関から融資を受ける場合は、1週間から2,3か月かかる場合もありますが、急ぎの資金調達を必要としている個人事業主の方や中小企業にとって、このスピード感では事業継続が困難になってしまう場合もあります。ファクタリング会社利用のスピード感は、最短即日という会社も多く、数日以内に入金できるファクタリング会社が一般的です。

さらに急ぎであれば、24時間・オンラインで審査手続きを受け付けている会社もあり、調達の緊急度に応じて検討してください。

審査が通りやすい

金融機関からの融資では、融資を受ける企業の経営状況にて判断されます。建設業では請求金額が入金される時期が作業完了後となる事が多く、キャッシュフローの観点で厳しくみられてしまうといった不利な点があります。

一方、ファクタリングは自社の経営状況ではなく、売掛先の経営状況で判断されるため、自社のキャッシュフローが不安定で経営状況がよくなくても審査に通りやすいです。

元請会社の倒産時も返金不要

完成検収後の入金のため、期間中に元請会社が倒産してしまうと売掛金の回収が困難になってしまう場合があります。ただし、ファクタリングを利用していれば、仮に元請け会社が倒産となってもファクタリング会社への返金等は不要です。ファクタリングは償還請求権がないノンリコース契約です。仮に、売掛先が倒産となっても自社が補填する必要がなく、結果として倒産リスクに対するリスクヘッジとしても有効です。

建設業でのファクタリング利用における注意点

ファクタリングは建設業で大変注目されている資金調達方法ですが、利用にあたって注意すべきポイントがいくつかあります。資産調達のために、以下にあげたポイントをチェックして、ファクタリングの賢い活用方法を解説していきます。

手数料を抑えるために確認すること

ファクタリングは契約形態に応じて、手数料も増えてしまいます。 ファクタリングには下記の2社間ファクタリングと3社間ファクタリングという契約形態があります。

2社間ファクタリングの場合は、自社とファクタリング会社の間で直接取引をすることになるので、売掛先にファクタリング利用を知られずにすみますが、その分、手数料は高めに設定されています。

一方、3社間ファクタリングでは、自社とファクタリング会社と売掛先の3社間で取引することになります。
したがって、ファクタリングを利用することを売掛先にも了解を得る必要があり、結果としてファクタリング利用を売掛先に知られてしまいますが、その分、手数料は低く抑えられます。

アイフルビジネスファイナンスおよび、ロボットペイメントでの調査報告によると、2社間ファクタリングの手数料が10~20%なのに対して、3社間ファクタリングの手数料は1~5%程度というのが一般的な相場です。
売掛先との関係が良好で、ファクタリング利用も承認してもらえる環境であれば、3社間ファクタリングを使って手数料を抑えることができます。

売掛先事情で資金調達ができない可能性がある

ファクタリング会社での審査対象は、自社の経営状況ではなく、売掛先の経営状況であると前章で説明しましたが、売掛先の経営状況が思わしくない場合は、審査にて資金調達ができない場合があります。

ファクタリングを利用するにあたって、なるべく経営状況が安定している売掛先との取引を審査対象にするなどといった工夫が必要です。

悪徳業者は一定割合で存在する

一部の心無い会社では、高い手数料の請求、ファクタリングを装って貸付を行うといった行為が横行しています。このような業者に騙されない為にも、ホームページの内容や電話等の連絡先、各ファクタリング協会への加盟有無といった会社情報の事前確認が必要です。

ファクタリング業は、最近普及し始めたばかりの新しい資金調達手法です。法律の整備が現状に追い付いておらず、ファクタリング業そのものを規制する許認可制度や、公的機関への登録制度等が現時点で存在しない点も注意が必要です。

ファクタリング会社選定時チェックポイント

どのファクタリング会社と契約すればよいか、その選定に当たって確認しておくべきポイントを説明します。

手数料、 手数料上限の妥当性確認

手数料に関して、多くのファクタリング会社では一定の幅を設けています。「手数料は2%から10%」などと、うたっているかと思います。

建設業は業種特性として、キャッシュフローの点でリスクが高いとみなされやすい傾向にある為、手数料も上限値で設定されてしまうことが多くあります。

手数料の上限が、どの程度のファクタリング会社なのかを事前に確認しておくべきです。さらに、手数料に関して明確に示されず不明であったり、いざ見積りをしたときに、あまりにも高い手数料等の場合は十分注意してください。

現金化はスピーディーに対応可能なのか

金融機関からの融資より、早く資金調達ができるファクタリング会社であっても、会社毎に入金時期には差があり、思ったほどのスピード感ではなかったという事態も起こりかねません。

ファクタリング会社の中には、即時融資をうたった会社や審査手続きをオンラインで完結できる会社等、スピーディーな現金化に向けたサービスを展開する会社も多くありますので、ご自身の資金調達緊急度に合わせて検討してください。

注文書ファクタリングへの対応可否

現金の受け取りを可能な限り早くしたい方には、注文書ファクタリングがおすすめです。通常は、検収完了後に請求書が発行され、そこで売掛金が確定します。この請求書をもってファクタリング審査となるのですが、注文書ファクタリングでは発注段階で現金化ができます。

売掛先から注文を受けた段階で資金調達ができるので、より早く現金を手に入れて、材料費や人件費の支払いに充てることができるため、資金繰りが大幅に改善されます。

支払サイトの長い売掛金への対応可否

支払サイトとは、工事が完了し、その代金を支払うまでの期間(日数)のことです。
この支払いサイトの一般的な長さとしては、30日、60日を上限とするところが多く、一部業種や契約条件では、手形での代金支払いが可能な場合もあります。この限りにおいては、代金を支払うまでの期間を、90日~120日と設定しているところもあるようです。

このように、支払いサイトが長い売掛金では、審査基準がより厳しくなる傾向にあります。支払いサイトが長い売掛金を対象としたい場合は、ファクタリング会社選定時において、支払サイトの長い売掛金でも対応できるのか確認しておきましょう。

建設業におけるファクタリングのまとめ

いかがだったでしょうか。建設業の資金調達において、ファクタリングが注目を集めている理由、そのファクタリングとはどのようなものなのか、どうやって利用すればよいのかを解説してきました。まだ、なじみのない方も多いファクタリングですが、建設業のような業種では大変有効な資金調達方法であり、ぜひ活用して安定した事業の資金計画の確立を実現できることを期待しています。