「税金をたくさん払いたくない!」
法人・個人事業主を問わず、多くの事業者の方が一度はこのように感じたことがあるのではないでしょうか。

実際、利益が出ている時ほど税負担は大きくなり、決算期や確定申告の時期が近づくにつれて「思った以上に税金がかかる」「もっと経費を使っておけばよかった」と焦るケースは非常に多いです。特に売上が予想以上に伸びている場合、その分だけ納税額も増えるため、できる限り適切な節税対策を行いたいと考えるのは自然なことといえます。

しかし、節税を意識するあまり、何でも経費にしようとするのは大きなリスクを伴います。経費として認められるのは、あくまで事業を進める上で必要な支出に限られ、領収書があるからといって全額が自動的に認められるわけではありません。勘定科目の選び方や処理方法を誤ると、後から税務調査で問題になる可能性もあります。そのため、「何が」「どの条件なら」「どのように処理すべきか」を正しく知ることが重要です。

そうした中で、比較的多くの事業者が検討しやすく、かつ高額な経費計上につながりやすい方法としておすすめされるのが、社用車(車両)の導入です。車両は事業活動で使うケースが多く、取得費用だけでなく、維持管理にかかるさまざまな費用を経費化できる特徴があります。

例えば、社用車を所有した場合、購入代金は一括で経費にできるわけではありませんが、減価償却費として毎年一定額を経費計上できます。また、ガソリン代や駐車場代、車検料、修理費、任意保険料、自動車重量税といった法定費用も、事業で使う割合に応じて経費処理が可能です。これらは現金で支払うケースも多く、日々の記録や管理が重要になります。

ただし、社用車を経費として活用するためには、いくつかチェックすべきポイントがあります。まず重要なのが名義です。法人の場合は法人名義、個人事業主の場合は原則として事業用としての位置付けが明確である必要があります。プライベート利用が多い車両を無理に社用車化すると、全額経費として認められないリスクが高まります。

また、使用状況の記録も非常に重要です。業務で使った日や走行距離をきちんと管理しておくことで、税務上の説明がしやすくなり、不要なトラブルを回避できます。こうした管理を怠ると、経費計上自体を否認されるケースもあるため注意が必要です。

さらに、購入とリース、どちらが適切かを比べて検討することも欠かせません。契約内容や料率、所有権の有無によって、勘定科目や処理方法は大きく変わります。事業の規模やキャッシュフロー、将来的な変更予定などを踏まえ、自社に合った方法を選ぶことが負担軽減につながります。

このように、社用車の導入は節税対策として非常に活用しやすい一方で、正しい知識がなければ思わぬリスクを抱えることにもなります。そのため、導入を検討するなら、税理士などの専門家に相談しながら進めるのが安心です。税務上の条件や適切な処理方法を事前に確認することで、節税効果を最大化しつつ、不要なトラブルを防ぐことができます。

以下では、社用車を経費として活用する具体的なケースや注意点について、さらに詳しく紹介していきます。社用車という選択肢を正しく理解し、賢く節税に役立てていきましょう。

「車の購入費」が経費と認められる根拠

「車の購入費」が経費と認められる根拠独立したての事業主様のなかには、「車を頻繁に使用する運送業や建設業などならまだしも、移動もそう多くない自身の事業で車の購入が経費として認められるのか?」などと疑問に思う方もいるかと思います。

しかし、どのような事業を進める上でも「移動」がまったく必要ないことはあまり考えられません。

たとえば他社への営業訪問や打ち合わせをする際。

もちろんオフィスへの出社も「事業に関連する正真正銘の移動」です。

先にも述べた通り、「経費」とは事業に必要なモノやサービスに対する支出です。

言い換えれば、どのようなモノやサービスでも、事業に必要だと認められる支出であれば経費として計上することは十分に可能なわけです。

つまり、頻繁に使用するかどうかは関係なく、車は移動手段として多くの事業で必要性が認められていると同時に、「社用車の購入費」も経費に計上することはまったく問題のない行為なのです。

社用車の「維持費」も経費計上が可能

社用車の「維持費」も経費計上が可能社用車を購入すると、「購入費」だけではなく「維持費」も発生するようになります。

たとえば、自動車税や自賠責保険、車検費用、駐車場代、高速料金、ガソリン代、さらには修理費や消耗品など。

ローンで購入した場合には利息もあります。

車を維持するためには、様々な維持費の支出が必要になるものですが、こうした維持費も購入費と同じように「事業に関連する支出」として経費計上することが可能となります。

したがって、コピー機のリース代金やインターネット通信費などのような「定期的な経費」の支出にもつなげることができます。

ただし、資産価値を向上させるような過度の改造や修繕を目的とするような支出は経費として認められない場合もあります。

社用車を購入する際の注意点

社用車を購入する際の注意点「購入費」だけでなく「維持費」も経費として計上できることから、社用車の購入と所持は効果的な節税対策といえるのですが、購入にあたってはいくつかの注意点もあります。

・30万円以上の購入費は一発計上不可

事業者が購入した車は「減価償却資産」となり、その購入費用は「減価償却」とよばれる計算方法を用いて計上されることになります。

詳しい計算方法はここでは割愛しますが、償却する資産には国税庁によって耐用年数のそれに応じた償却率が定められており、その年数をかけて計上していくことになります。

車の場合、普通自動車の新車の場合は6年、軽自動車の新車は4年。

中古車の場合は登録からの経過によって定められる耐用年数が変動し、普通自動車なら登録からの経過によって3年〜2年、軽自動車は5年〜2年です。

したがって、事業者が社用車として車を購入した費用は原則として一発計上することはできません。

ただし、車の価格が30万円未満である場合は「少額減価償却資産の特例」が適用され、一発計上も可能になります(価額の合計は年間300万円まで)

・利益を圧迫する購入費は税務調査の対象にも

車の購入と所持は多くの事業で必要性が認められていることから、それらの費用は経費として計上が可能ですが、その最終的な判断を下すのは税務署です。

基準は、その支出額が収益に見合った金額であるかどうか。

ですので、たとえば年間の収益が1,000万円であるのに対して、800万円ほどの車を購入するなど、明らかに収益に見合わない支出だと判断された場合には、税務調査の対象となり、経費として認められなくなるといったことにもなりかねませんので注意が必要です。

まとめまとめ

事業者にとって車は移動手段のひとつとして事業利用が認められるため、その取得費用や維持にかかるコストは、一定の条件を満たせば事業に必要な支出として経費計上が可能です。社用車として適切に位置付けられていれば、節税の観点からも大きな効果が期待できます。しかし一方で、車に関する経費は金額が高くなりやすく、税務署からもチェックされやすい項目であるため、基本を押さえたうえで慎重に対応することが求められます。

まず前提として、車にかかる支出はすべて無条件で経費算入できるわけではありません。法人か個人事業主かといった事業形態によっても扱いは異なりますし、使用頻度や目的によっては、全額ではなく一部のみが経費として認められるケースも一般的です。たとえば、通勤や私用でも使っている場合には、事業で使った分を明確に分ける「按分」が必要となります。この按分割合を決めるためには、走行距離や使用日数などの記録をしっかり残し、経理処理や申告時に説明できる状態にしておくことが重要です。

車両の取得に関しては、一括購入だけでなく、分割払いや定額料金で利用できるリース契約など、さまざまな選択肢があります。どの方法を選ぶかによって、毎月の支払い額や経費処理の内容、損金算入の方法が変わる点には注意が必要です。たとえば、購入した場合は減価償却によって毎年一定額、もしくは定率で費用化しますが、リースなら毎月の料金をそのまま経費として計上できるケースもあります。それぞれの特徴を比較し、自社の資金繰りやコスト効率に適した選び方を行うことが大切です。

維持費についても確認すべき項目は多く存在します。燃料費、車検費用、メンテナンス代、駐車場代、場代として扱われる地代家賃、自動車保険への加入費用、さらに自動車重量税などの租税公課も、社用として使っている分は経費に該当します。これらは旅費交通費や車両費、保険料、雑費など、内容に応じた勘定科目で仕訳を行う必要があります。勘定科目の選択を誤ると、後に否認されるリスクもあるため、経理処理は徹底して行いましょう。

特に中小企業や個人事業主の場合、車にかかる費用が事業全体の中で占める割合が大きくなりがちです。そのため、収益規模に対して不釣り合いに高い車を取得すると、「本当に事業に必要なのか」という点を税務署から求められる可能性が高くなります。見栄や個人的な好みを優先した選択は避け、事業内容や使用目的に適した機能や価格帯の車を選ぶことが、リスク回避につながります。

また、社用車として認められるためには、「社用であること」を客観的に証明できることも重要です。業務日報や走行記録、経費の一覧を作成し、いつ・どのような用件で使ったのかを明確にしておくことで、申告時や税務調査の際にも安心です。これらの情報をしっかり管理することは、経理業務の効率化にもつながります。

税や法人税の扱いは毎年変更されることもあり、一般的な情報だけで判断するのは危険です。実際に社用車の導入や経費計上を行う前には、税理士などの専門家に相談し、自社にとって最適な方法かどうかを確認するのがよいでしょう。専門家の助言を受けることで、不要なコストを抑えつつ、適切に節税効果を得ることが可能になります。

このように、車は事業において非常に使い勝手の良い備品であり、正しく活用すれば大きな節税効果を生み出します。ただし、取得前の検討から日々の使い方、経費処理、申告までを一貫して意識しなければ、思わぬ否認や負担増につながる恐れもあります。基本を押さえ、内容を確認しながら、自社に適した社用車の活用を進めていきましょう。