「最近、疲れた表情をしている」
家族や経営者仲間、あるいは身近な社員や取引先の人から、そのような心配の声をかけられている経営者の方も少なくないかもしれません。特に日々会社を率いる社長という立場にあると、自分では気づかないうちに疲労やストレスが表情や態度に表れてしまうこともあるでしょう。
少子高齢化に伴う慢性的な人材不足、働き方改革への対応、さらにはウクライナ危機や急激な円安の影響による原油価格や仕入れ価格の高騰など、最近ではビジネスを取り巻く環境が急速に変化を続けており、経営者の方々は迅速かつ正確な判断を求められるケースが増加しているといえます。こうした変化に対応するためには、経営判断だけでなく、採用や人材育成、資金繰り、将来戦略まで幅広い視点が必要になります。
経営の維持と安定のために頭と体をフル稼働させる日々。売上や利益の確保だけでなく、社員一人ひとりの生活や将来を背負っているという責任感も重なり、悩みや不安が尽きないのが現実です。そのような疲弊と悩みの重なる日々を過ごしているわけですから、疲れた表情をみせてしまうのも無理のないことでしょう。
中でも、大企業に比べると圧倒的に経営資源が限られる中小企業の経営者の方は、悩みの種の数も多いはずです。人手不足による採用難、相談できる相手の少なさ、支援制度や補助金といった情報不足など、個人で抱え込んでしまいがちな課題も少なくありません。最近では、こうした課題に対応するための無料セミナーや専門家による支援制度も増えていますが、忙しさのあまり活用しきれていない社長も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、中小企業の経営者の方が特に抱えがちな悩みを2つ一覧として整理し、それぞれについて具体的な解決策や考え方を紹介していきます。悩みを一人で抱え込まず、外部の情報や支援を上手に活用するヒントとして、ぜひ参考にしてみてください。
1.キャッシュフローの悪化

まずはキャッシュフローの悪化についてです。
言うまでもなく、健全な経営を目指す上では、現金の流れを示すキャッシュフローを安定させ、維持していくことが大切であり、企業規模の大小を問わず最優先で管理すべき指標のひとつだといえるでしょう。
しかし、昨今のウクライナ危機や円安の影響によって仕入れ価格が高騰し、建設業や製造業、さらには運送業など、原材料や燃料などの仕入が重要な業界では、どれだけ売上を維持できていたとしても支出が膨らみ、結果としてキャッシュフローが悪化の一途をたどっているケースが増加しています。特に資金繰りに余裕を持ちにくい中小企業においては、こうした外部要因の影響をダイレクトに受けやすいのが実情です。
内部留保に不安を抱える中小企業では、特にその傾向が顕著であるとともに、対策を模索する上でも悩みが大きいことでしょう。さらに、取引先の業績悪化など自社ではコントロールしづらい要因により、売掛金の回収に遅れが生じることによってキャッシュフローが乱れている中小企業も多々みられるようです。このような状態が長期化すれば、日々の支払いだけでなく、将来に向けた投資判断にも大きな影響を及ぼしかねません。
原油や材料の高騰といった問題は、残念ながら自助努力だけではどうすることもできない要因であるため、情勢が落ち着くのを待つ必要があります。その一方で、キャッシュフローの改善を図るためには、経営者自身が主体となり、最大限の自助努力を尽くすことが不可欠です。その中でも、比較的早い段階で着手しやすい対応策として挙げられるのが、固定費の削減です。
事務所の賃貸費や人件費、各種機器のリース代金など、固定費の内訳は企業ごとに異なりますが、なるべく多くの仕入れ費を確保するためにも、これらの支出はできる限り抑制したいところでしょう。たとえば、IT導入補助金を活用して関連ソフトやサービスを導入すれば、経理や事務の作業をオートメーション化でき、人員整理と人件費削減につながる可能性があります。業務効率が向上すれば、間接的にミスや残業の削減にも寄与し、長期的なコスト圧縮も期待できます。
また、必ずしも事務所常駐が求められない業種であれば、事務所の縮小や在宅勤務、リモートワークを積極的に導入すれば、賃貸費を抑えることが可能です。固定費を変動費化する意識を持つことは、経営の柔軟性を高めるうえでも有効でしょう。
さらに、売掛金の支払遅延など、他社の財務状況が影響したキャッシュフローの悪化に対しては、利用手数料こそかかるものの、支払い期日よりも前に回収可能なファクタリングの利用も効果的です。短期的な資金繰りを安定させる選択肢として、状況に応じて柔軟に検討することが重要だといえるでしょう。
2.人材不足や育成面での悩み

ふたつめは人材面に関する悩みです。
少子高齢化に伴う労働人口の減少は今に始まった事象ではなく、すでに長年にわたり社会全体の課題として指摘されてきました。その影響を特に強く受けているのが中小企業であり、多くの企業が慢性的な人材不足や育成面での悩みを抱え続けています。新卒・中途を問わず人材募集を行っても応募が集まりにくく、採用活動そのものが大きな負担となっている企業も少なくありません。
人材募集をかけて、ようやく獲得できた若い人材であっても最近の高い独立志向や転職願望などから、数年で退職してしまうことはざらであり、それによって人材育成も思うように進まず、結果的に企業力が伸び悩むといったこともよく見られるケースです。せっかく時間とコストをかけて育成しても、その成果が十分に発揮される前に離職されてしまえば、企業側の徒労感が増すのも無理はないでしょう。
また、長く在籍すればするほど賃金面でも保障面でも多くの見返りが期待できる大企業に比べて、中小企業ではそれらが限定的であることがほとんどであるため、魅力度に欠けてしまうのも事実。福利厚生やキャリアパスの面で差が生じやすく、求職者から選ばれにくい状況に陥ってしまうケースも見受けられます。
こうした悩みの解決策として提案したいのは、必ずしも正規雇用の従業員にこだわらないという考え方を持つことです。従来の雇用形態に固執せず、業務内容や必要なスキルに応じて柔軟な人材活用を検討することで、課題解決の糸口が見えてくることもあります。
アルバイトやパートなどの非正規雇用はもちろん、人材派遣やクラウドソーシングを活用するなど、適材適所での人材獲得に務めれば、定着率に対する悩みは軽減できるほか、人件費の抑制にもつながるものです。短期間で専門的なスキルを持つ人材を確保できれば、業務効率の向上や社内負担の軽減にも寄与するでしょう。
その中で、優秀だと判断できた人材や、長く在籍する意思を示す人材が現れれば、改めて正規雇用を打診してみてもいいのではないでしょうか。段階的な関係構築を行うことで、企業側・労働者側の双方が納得した形で雇用に進める可能性も高まります。
思い切りのいい割り切り方ではありますが、労働者側からしても自由度の高い選択が可能となる、ある意味“現代的”な雇用だといえます。時代の変化に合わせた柔軟な人材戦略を取り入れることこそが、これからの中小企業経営において重要な視点となるでしょう。
まとめ

中小企業の経営者の方が抱えがちな悩みは、大別すると資金面と人材面の2つではないでしょうか。これは現在の経営環境において多くの社が共通して直面している課題であり、良いコラムや専門家の資料などでも繰り返し言及されているテーマです。
それぞれの企業によって状況は異なるものの、細かく見ていけば、この2つの大きな悩みを起点として、資金繰り、投資判断、採用情報の発信方法、マネジメント体制の構築、事業承継の準備など、さらにいくつもの課題が浮き彫りになってくるはずです。個人経営であっても法人であっても、経営者という立場にある以上、事業の成長と生活の安定を両立させるための戦略を持つことが求められます。
混迷する世界情勢と急速な変化が引き起こし続けるビジネスへの打撃が鎮まる気配は今のところ感じられず、今後さらなる悪影響を及ぼす可能性も十分に考えられます。特に2025年以降を見据えると、原材料費やエネルギーコストの上昇、保険料や退職金制度の見直し、年収水準への影響など、経営判断に直結する問題は万単位、億単位の金額差を生むこともあるでしょう。
また、国内の社会情勢や経済情勢も目まぐるしい勢いで変化を続けており、中小企業の経営者の方々の悩みはますます増加していくことになるかもしれません。働く価値観の変化により、人材のシェアや流動性が高まる一方で、採用が難しくなり、運営や方針の見直しを迫られるケースも増えています。大学との連携や協会への参加、中小企業診断士など外部専門家の活用は、こうした時代において有効な選択肢となり得ます。
だからこそ、それぞれの企業が組織としての最大限の自助努力を尽くし、自社の規模や業種に合ったマネジメントを行いながら、これからの時代を見据えた継続的な成長を目指す必要があるのでしょう。福岡や北九州中小企業経営者協会のような地域団体の情報やサイトを参考にするのも一つの方法です。
経営者としての悩みを少しでも解消するためにも、まずは以下でご紹介する解決策や考え方を参考にし、自社に合った形で実践してみてはいかがでしょうか。topとして全体像を把握し、小さな改善を積み上げていくことが、将来的に大きな成果へとつながっていくはずです。





