事業者ローンとは?~事業者ローンの種類と特徴を銀行員が解説
「事業者ローンを利用したいけど、種類がたくさんあって選べない!」
「事業者ローンってなに?」
事業資金融資には種類がいくつもあり、情報も多い反面、わかりにくくなっています。
この記事にたどり着いた人の中にも、事業者ローンのことを検索したかもしれません。
そこで今回は「事業者ローンとは?」という疑問に対し、利用できる融資を例にしながら解説します。
私は勤続30年以上の銀行員ですが、読者の役に立つ情報を提供したくライターをしています。
実際に現場で融資を審査する銀行員の解説なので、事業資金調達を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
目次
事業者ローンとは?
はじめに事業者ローンの意味と特徴を説明します。
「事業者ローン」といっても統一された呼び名ではありません。
ビジネスローン、事業ローン、事業性ローンなど呼び名も様々ですが、その内容は共通点が多くなっています。
一般に「ビジネスローン」の方が知られていますが、この記事では引き続き事業者ローンとします。
事業者ローンの定義
事業者ローンとは「比較的小口の事業資金融資の総称で、銀行や消費者金融、ノンバンクなどが取り扱っている、申し込みから審査、契約までシステム化された融資商品」といった意味です。
続いて、事業者ローンの特徴を解説していきます。
事業者ローンの特徴
事業者ローンの特徴、つまり基本スペックをいくつか解説します。
<事業者ローンの特徴>
1.早い~スピード審査、スピード融資
2.カンタン~担保不要、保証人不要
3.お手軽~融資額はコンパクト
特徴1.早い~スピード審査、スピード融資
事業者ローンは「スピードが売り」の融資です。
審査結果は最短で数時間から長くても数日までというところがほとんどです。
事業者ローンでスピードが早いのは「AI審査」で融資もシステム化されているからです。
【用語解説】AI審査
AI審査とは融資審査をコンピュータがおこなうもので、短時間で融資の可否を判定します。
最終的には人間が融資判断をするのですが、基本的にはAI審査でOKならそのまま審査通過となります。
必要な情報(資本金や売上高、履歴から申込者の年齢、家族構成など多岐にわたります)を蓄積された膨大な情報(ビッグデータ)と照らし合わせて融資をしてもいいか?をランク付けして判断するシステムです。
結果が点数化されるところからAI審査は「スコアリング審査」とも呼ばれます。
特徴2.カンタン~担保不要、保証人不要
原則として担保は不要、保証人も不要です。
これは申込者の負担を少なくすることで顧客のすそ野を広げ新規獲得したいという、融資する側の意向もあるからです。
ただし、会社の場合には代表者が保証人になるケースもありますし、担保が必要になる場合もあります。
特徴3.お手軽~融資額はコンパクト
融資額は5百万円までが多数派で、最高でも1,000万円までの小口な金額です。
ここで言う「小口」とは銀行の尺度で、金融機関では百万円単位の融資や預金は小口と表現します。
もちろん数百万円も大金なのですが、このように小口と区分けされているので審査もシステム化されていますし、担保・保証人不要にもなっているのです。
事業者ローン・種類別の解説
事業者ローンにもいくつか種類があります。
<事業者ローンの種類>
・銀行系の事業者ローン
・消費者金融系(ノンバンクも含む)の事業者ローン
銀行系事業者ローンの特徴
原則としてAI審査(前述)なので、他の事業資金融資に比べれば審査のスピードは速い傾向があります。
ただ、あくまで「最短即日回答」であって、本審査・契約から融資の実行までには数日かかってしまいます。
とはいえ銀行の一般的な事業資金融資は数週間から数か月時間がかかるものなので、やはり早いと言えます。
また来店不要、ネット完結の銀行もあり、事業資金融資の入り口として適しています。
消費者金融系事業者ローンの特徴
消費者金融系ではスピードを売りにしています。
最短で申し込んだ当日に融資利用も可能ですが、それには申し込みを午前中など早い時間に終わらせるなど注意点もあり、すべてが当日借り入れできるわけではありませんので、注意が必要です。
「事業者ローンの審査はゆるい」のか?
事業者ローンに関する一部の記事では「審査がゆるい」「必ず借りれる(正しくは「借りられる・借り入れできる」)といった記載を見受けます。
とはいえ、融資に審査がゆるいものは無いと、銀行員は考えています。
また銀行だから審査が厳しい、消費者金融系だから審査が甘いということもありません。
とはいえ決算状況などを見て、審査の許容度は消費者金融系の方が柔軟なのは確かです。
もちろんその反面として、返済不可能(デフォルトと呼ぶ)になる、つまり「貸したお金を取りはぐれる」リスクは高くなるので、その対価として金利は銀行系より高くなっているのです。
事業者ローン・申込みから借入までのプロセス
次に、事業者ローンの申込みから融資が実行され借入利用できるまで、以下のプロセスに沿って説明します。
<申込みから借入までのプロセス>
1.申込み
2.審査
3.契約
プロセス1.申込み
事業者ローンはネット申込み・ネットで契約完結が主流です。
(一部の銀行では来店して契約する場合もあります)
申込みに必要な書類は主に以下のとおりです。
<申込みに必要な書類>
・決算書(個人事業主なら確定申告書)1期~3期分
・個人事業主本人(会社は代表者)の免許証やパスポートなどの写真入り本人確認資料
・納税証明、所得証明などの公的証明書
スムーズな手続きを望むなら、契約(後述)に必要な書類も一度に揃えておいた方がいいでしょう。
必要書類については銀行、消費者金融のサイトから各商品の「商品説明、商品概要」といった箇所で確認できます。
プロセス2.審査
審査はAIによるシステマティックなもので、回答は早いのが特徴です。
ただし「Yes」だけでなく「No」の回答も早いのが特徴で、AIには「ほどほど」「これくらいならいい」といった概念がありませんので、注意が必要です。
また問い合わせや照会事項があると、メールや電話がかかってくることがあります。
ここで答えない、あるいは連絡が来ても無視していると、最悪で審査落ちになります。
それはなぜかというと、融資を検討して審査している相手の連絡先が怪しくないか?も同時にチェックしているからです。
ですからメールに気づかなかったなら、そのことを強く伝える必要があります。
プロセス3.本審査(契約~借入まで)
事業者ローンの審査には「仮審査」「本審査」の2段階があります。
仮審査とは上記したAIによる一時的な審査のことで「だいたいOK」と判断されると本審査に進みます。
そして仮審査に通ると、納税証明や印鑑証明を求め、本審査をします。
この場合、印鑑証明は実在の確認(会社なら法人登記されていることの証明、個人ならそこに居住していることの証明になるので)に必要となります。
また納税証明は、事業活動がある(税金を納めている=事業を行っている)ことの証明になるからです。(先に提出している場合は省略)
本審査の前に印鑑証明や、契約書類を記入して提出し、本審査が通ると同時に契約となる形式が主流です。
そして、本審査から契約を経て、指定口座への振り込みや、インターネットバンキング、あるいは専用カードを郵送で受け取るなどの方法で融資利用が可能になります。
事業者ローンの注意点
ここまで事業者ローンの基本事項と借入までのプロセスを説明してきましたが、今度は主に「借りてからのこと」の注意点を説明します。
注意点1.返済方法、返済金額を理解しておく
事業者ローンに限らず、事業性融資や消費者金融系のカードローンでは返済方法がいくつもあります(例・元利均等返済方式、定率リボルビング方式)ので、自分が利用している事業者ローンの返済方法や毎回の返済日、返済金額を把握しておく必要があります。
自分の返済がわかっていないと、返済日や金額を勘違いして(あるいは忘れて)返済が遅れてしまう恐れがあります。
このような「ついうっかり」は事業者ローンでは要注意で、次項で詳しく説明します。
注意点2.返せなくなったときどうなるか?を知っておく
ビジネスローンは小口で簡易的な審査による融資なので、原則として借りた人が返せなくなるリスクを考慮した商品設定(例・金利は事業資金融資より高め)になっています。
言い換えれば「返せなくなることも盛り込み済み」なので、返済に困った場合には、一般的な事業資金融資のような「リスケ」(返済が困難内場合に、期間延長などで毎回返済額を減らす救済措置)はしてもらえない可能性があります。
詳しい取り扱いは金融機関、消費者金融など各社で異なりますので、確認しておいたほうが良いでしょう。
事業者ローンとは?のまとめ
今回は事業者ローンの基本事項から種類、違いと特徴や注意点まで説明しました。
この記事で大事なポイントを掴んでもらい、事業経営のヒントになれば幸いです。