ビジネスローンは審査がIT化されているので、スピーディーな回答や融資実行が可能になっています。
企業の資金調達手段の一つにビジネスローンがあります。
ところで、ビジネスローンの審査はIT化が進んでいることをご存知ですか?
今回は、ビジネスローンの基本事項から、現在のビジネスローンがどのようにIT化されているか?についてまで、銀行員が解説します。
資金調達を検討している人など、ぜひ参考にしてください。

ビジネスローンのIT審査を通過するために〜1.ビジネスローンの基本事項

まずはビジネスローンそのものについて理解を深めるところから始めたいと思います。

ビジネスローンとは?

ビジネスローンとしてイメージされるのは、「簡単でスピーディーに利用できる事業資金融資で、金利が高い」といったところではないでしょうか?
ビジネスローンにも銀行など金融機関が扱うビジネスローンと、消費者金融や貸金業者のビジネスローンでは少し内容が違ってきます。
そこで、まず両者に共通するビジネスローンの基本事項から説明し、そのあとで銀行や信用金庫など「銀行系」と消費者金融など「ノンバンク系」ビジネスローンをそれぞれ解説します。
なお、ここからの説明では筆者調べによる内容、融資条件を紹介していますので、具体的に検討したい人は、必ずご自身で確認するようにしてください。

まずビジネスローンとは、事業者(法人、個人事業主)向けの事業資金融資です。
その他、ビジネスローンの特徴を以下にまとめました。

 <ビジネスローンの基本事項>
事業資金融資の名称であり、金融機関やノンバンクで取り扱っている
審査が早く、数時間〜即日で結果がわかる物が多い
融資実行もスピーディーで、即日融資OKのケースも(申込みした時間や審査によっては時間がかかる場合もある)
資金使途は事業資金に限定(一部で使いみち自由というものもある)
原則として保証人不要(法人では代表者が保証人になる場合も)
原則として担保不要(担保が必要なケースもある)
金利は一般的な事業資金融資より高め
融資形式はカードローンや証書貸付など
専用カード発行でATMでの借入・返済が可能
パソコンやスマホで取引可能な商品もある

これらがビジネスローンの特徴で、銀行系、ノンバンク系の両方に共通するものです。
では、次から銀行系・ノンバンク系それぞれの特徴を解説します。

銀行系ビジネスローン

銀行や信用金庫では様々な融資商品を扱っていて、名称だけでとらえると、実は証書貸付など一般的な事業資金でも「〇〇銀行ビジネスローン」と銘打っている場合もあり、区別が難しいものもあります。
ここでは銀行の事業資金の中で「IT審査などで、審査から融資実行までスピーディーな無担保・無保証人の事業資金融資」をビジネスローンとして説明していきます。

銀行系ビジネスローンの特徴

銀行系ビジネスローンの特徴は主に以下のとおりです。

 <銀行系ビジネスローンの特徴>
【審査・融資実行】
審査スピードが早く審査結果の回答が即日の場合もある
融資実行も即日可能な商品も

【融資利用方法】
カードローンや当座貸越が主流だが、証書貸付形式もある

【融資利率】
融資利率は事業資金融資よりは高めの設定
金利レンジは幅が広く年1.0%〜年14%台のあいだ(筆者調べ)
金利は審査結果と業績や取引などから、銀行側が決める

【融資限度】
借入可能額(融資限度)は最大1,000万円までが主流

【返済形式・返済方法】
返済形式は、証書貸付の場合は最長10年程度の分割返済
カードローンの場合は一般的なカードローンと同じ「残高スライド方式」(*)
融資の毎回返済は指定口座からの自動引落やATMのほか、店頭で返済も可能

【申込・契約】
支店で取り扱っているが、ビジネスローン専門部署で申込みから実行まで一括して対処する銀行もある
来店して申込むこともできるが、ネット経由の申込み・ネット経由または郵送での契約と、銀行員と対面せずに契約が可能で、この非対面が主流

(*残高スライド方式:借入残高に応じて次回の返済金額が変動する返済方法。借入残高が大きければ返済も大きく、残高が減れば返済も減る形式。残高スライドに加えて元金と利息の組み合わせを変えていくつかの返済方式があり、たとえば「借入後残高スライド元利定額リボルビング返済方式」などがある)

ノンバンク系のビジネスローン

消費者金融や貸金業者(*)が取り扱うビジネスローンは、銀行などで融資がむずかしい場合でも独自の基準で審査して融資可能になる場合もありえるなど、借入の敷居は若干低くなっています。
ただしネット記事などであるような「誰でも借りられるビジネスローン◯選」「審査無しで借りられるビジネスローンはどこ?」といったようなビジネスローンはまずありません。
独自の基準と入っても、返済が不可能(「デフォルト」と言います)になるリスクを見極め融資するか?を判断しているので、ノンバンク系でも審査落ちになることはあります。
ちなみに「借りられる」は日本語表記では「借りることができる」「借入が可能」が妥当ですので、こうした表記から記事の内容を考えるヒントになると思います。

(*貸金業者:お金を貸すことを業務にする会社の総称で、財務局や都道府県に登録されている正規の事業者。消費者金融も貸金業者であり、他にもいわゆる「街金」など中小の金融業者やクレジットカード会社も貸金業者に含まれる)

ノンバンク系ビジネスローンの特徴

ノンバンク系ビジネスローンの特徴を、こちらも銀行系と同じ形でまとめてみました。

 <ノンバンク系ビジネスローンの特徴>
【審査・融資実行】
審査スピードは最短で数時間から即日という会社が多い
融資実行も多くの会社が即日可能をアピールしている

【融資利用方法】
ほとんどがカードローン形式

【融資利率】
融資利率は銀行系より高め
金利レンジは幅が広く年2%台から年18%台(筆者調べ)
ただし銀行系ビジネスローンより低金利になることは想定しにくい

【融資限度】
借入可能額(融資限度)は10万円単位から1,000万円までと幅広い

【返済形式・返済方法】
銀行系・カードローン方式と同じく「残高スライド方式」
融資の毎回返済は指定口座からの自動引落やATMのほか、店頭で返済も可能

【申込・契約】
パソコンやスマホなどインターネットで融資実行まで完結するのが主流
無人契約機などでも取り扱いが可能なところもある

ビジネスローンのIT審査を通過するために〜2.IT審査について

まずビジネスローンにおけるIT審査について解説します。

ビジネスローンのIT審査とは?

ビジネスローンは銀行系でもノンバンク系でも多くが、融資の審査を体系化された専用の審査システムなど機械に代行させる、つまり融資審査を人に変わりITが担うことが「IT審査(AI審査とも)」です。

ビジネスローンのIT審査が導入された背景

事業資金の融資は決算書などの資料と契約書類を揃え、銀行員が申込み企業と面談して審査を進めるといった「資料ありき、人ありき」の悪く言えば旧態依然の形式です。
ところが時代の変化とともに融資対応にもスピードを求められるようになりました。
とはいえ融資の審査自体をないがしろにはできないので、人が行ってきた分析や予想をコンピュータなどの機械に代行させる、というのがIT審査が導入された背景です。

ビジネスローンIT審査の「審査必須項目」

ビジネスローンのIT審査も基本的な部分は、一般的な事業資金融資などの審査と大差はありません。
そこで、審査に必須となる項目の中から、いくつかピックアップして説明します。

決算内容

人間の融資審査でも同じですが、やはりもっとも重視されるのは決算内容です。
IT審査の場合は蓄積された膨大なビッグデータから業種、企業規模などに応じたモデルケースと照らし合わせて点数化して審査が進みます。
そのため人間がおこなうような「思い込みやブレ」といったものは発生する余地がないとされていますので、ある意味公平ともいえます。
たとえば赤字だから一律審査落ち、といったドラスティックなものではなく、赤字でも他の項目などを総合的に判断するように設計されています。
とはいえ赤字であることは審査でマイナス要素になるのは一般的な融資審査と変わらない部分です。

財務内容

財務内容(会社の資産や負債はどうなっているか?利益の蓄積はあるか)はもっとも数値化された情報(定量情報といいます)なので、IT審査では点数化されやすい部分であり、また審査で重視されるポイントでも有るのです。
たとえば会社に不動産や内部留保などプラスの資産があれば審査にもプラス影響しますし、逆に繰越損失や債務超過などはマイナスになってしまいます。

信用情報

ここまで説明した決算内容や財務内容は、もちろん採点されて審査に影響はしますが、点数によっては合格不合格もあるといったニュアンスです。
一方信用情報(手形の不渡りなど事故があった、代表者が借金でいわゆるブラックリストに載っているなど)ではネガティブな事象は「致命傷」になりかねません。
信用情報で事故歴(異動情報などとも)があれば即審査落ちの可能性が大きくなると考えられます。

ビジネスローンIT審査の「意外なチェックポイント」

上記では一般的な審査でも同様にチェックする「必須項目」でしたが、IT審査ではその他に意外なチェックポイントもあります。
ただし、意外なポイントといっても、それらがどれだけの影響力を持つかは不明です。
そもそも審査の内容は極秘事項で公開されていませんので、あくまで参考として受け取ってください。

業歴

事業をどのくらい長く経営しているか、という観点は会社が破綻せずに存続してきた期間が長い→だからデフォルトする危険性は低いといった指標に影響します。
もちろん長いからベター、短いから全くダメというレベルではありません。
こちらについては、たとえば社名変更や合併などで業歴がリセットされた場合などに不利ですが、IT審査で人為的な操作ができるところなら一概にマイナスとはならないかも知れません。

銀行サービスの利用履歴(銀行系の場合)

こちらはIT審査の一種で、銀行取引やクレジットなどのサービス利用履歴から、その会社のお金に関する動向、トレンドを推し量るもので「信用スコア」などとも呼ばれます。
一概に融資審査に適用されているとも言えないのですが、IT審査において採点に影響する部分ではあります。

ビジネスローンのIT審査を通過するために〜まとめ

今回はビジネスローンにおいてIT審査を理解し、審査通過に近づけるための知識を解説してきました。
もちろんビジネスローンも融資であることに変わりはなく、審査がありその結果次第で融資を受けられるかが決まるわけです。
ただ、ビジネスローンでIT審査が導入されていることや、その概要を知るだけでも資金調達の参考になると思います。
この記事がその参考になれば幸いです。