中小企業や個人事業主にとって、永遠の課題といってもいいのが資金繰りです。
資金が手元になくなり、運転資金が底をつけば経営が立ち行かなくなってしまう恐れが出てくるからです。

中小企業の資金調達方法として、古くから知られているのが商工ローンです。
ただ経営者の中には商工ローンと聞いて、あまりいいイメージを持っていない人もいるかもしれません。
そこでここでは商工ローンの特徴や金利がどうなっているのか、安全に利用するにはどうすればいいかについて紹介します。

商工ローンとはそもそも何?

商工ローンという言葉はきいたことがあるけれども、具体的にどのような商品かよくわからないという方もいるでしょう。
そこでここでは、商工ローンとはそもそもどのようなものかについて解説します。

事業者向けのローンのこと

商工ローンとは、事業者向けのローンの一種を指します。
特徴としては2点あります。
銀行以外の貸金業者のノンバンクが提供している、主に中小零細企業向けの融資であるのが特徴です。

ビジネスローンとの違い

ノンバンクが融資する事業者向けのローンといわれると「ビジネスローンと何が異なるのか?」と思う人もいるでしょう。
両者には異なる点がいくつかあります。

まずはどこが提供しているサービスかの違いです。
商工ローンはそもそもノンバンクの開発した金融商品です。
ですから主にノンバンクが提供している商品です。

一方ビジネスローンは、銀行が開発した商品です。
銀行が独自の審査で融資するプロパー融資では経営基盤の脆弱な中小企業が審査クリアするのは難しいです。
そんな中小企業を顧客として囲い込むために、金利を高くして審査を緩めにしたものがビジネスローンです。
ですからビジネスローンはノンバンク以外にも銀行でも提供している場合があります。

また保証人の有無についても両者には違いがあります。
商工ローンの場合、原則保証人や連帯保証人をつけることで融資を行う商品です。
一方ビジネスローンの場合、無担保・無保証人でも融資が可能なところが相違点といえます。

商工中金との違い

言葉の響きが似ていることから、商工中金と商工ローンは一緒と思っている人も多いかもしれません。
しかし両者は全く異なります。

商工ローンはノンバンクの提供している商品に対し、商工中金は政府系金融機関です。
商工中金から融資を受けたとしても、それは商工ローンではないので注意してください。

別項で詳しく見ていきますが、ノンバンクの商工ローンは利息制限法で決められた上限金利ぎりぎりに利率設定していることが多いです。
一方政府系金融機関の商工中金の融資では、1%台と低金利で資金の貸し出しを行っています。

また商工ローンは原則法人であれば、だれでも借り入れの申し込みは可能です。
しかし商工中金の場合、「商工中金株主団体」と呼ばれる業界団体に入会しなければ申し込みできません。
広く募集している商工ローンとはこの部分も大きく異なります。

商工ローンの金利について紹介

融資を受けるにあたって、やはり気になるのは金利がどのくらいかではありませんか?
結論から言うと、商工ローンの金利は決して低くありません。
場合によっては利息制限法で定められている上限金利ぎりぎりで提供しているものもあります。

商工ローンの金利相場

いろいろなノンバンクが提供している商品なので、商工ローンの金利はピンキリです。
しかし相場といわれているのは、だいたい8~20%です。

商工ローンの金利は高め?

これはほかの法人が利用できる融資制度と比較すると、結構な高金利です。
ビジネスローンを見てみると、ノンバンクは5~18%が相場といわれているのであまり大きな差はありません。
しかしメガバンクが1~14%、地方銀行は2~15%が相場ですから商工ローンの方が高いです。

銀行融資の場合、2~9%が相場といわれています。
銀行融資と比較すると、商工ローンは結構金利が高いという印象を持ちませんか?

商工ローンの安全性について

商工ローンと聞くと「怖い」「あまりいいイメージがない」という人もいるでしょう。
なぜ商工ローンにネガティブなイメージがあるのか、金利の高さによる問題が一つ絡んでいます。

グレーゾーン金利で取り立てていた

商工ローンが問題視されたのは、いわゆるグレーゾーン金利で利息の支払いを求めていたことが挙げられます。
グレーゾーン金利は利息制限法以上出資法未満の金利のことを指しました。

利息制限法は借入額によって上限金利が異なりますが、最高で20%が上限金利です。
一方出資法は29.2%が上限金利でした。

実は利息制限法には刑事罰がなく、出資法には罰則がありました。
つまり利息制限法以上出資法以下は違法行為ではあるものの、罰則がありませんでした。
それでグレーゾーン金利と呼ばれ、このような違法な利息払いがまかり通っていました。

金利が実質上積みに

利息制限法を超える金利設定していた段階で、商工ローンは違法といえます。
しかしさらにそこにプラスして、保証料や調査料といった名目で利用者から費用を取っていました。

保証料や調査料まで加えると、実質的に金利は年利換算で30~40%にもなるといわれていました。
ですから商工ローンは異常な高金利で借入出来ても借金が雪だるま式に膨らんで、後々返済が厳しくなるというイメージがありました。

グレーゾーン金利は撤廃に

商工ローンは、以前はグレーゾーン金利で利息を徴収していましたが、今ではそのようなことは行っていません。
グレーゾーン金利が社会問題になって、国も改革に手を付けたからです。

2006年に貸金業法が改正されました。
プラス2010年には改正貸金業法が完全施行されたことにより、グレーゾーン金利による利息の徴収ができなくなりました。

改正貸金業法で、まず出資法の上限金利が29.2%から20%に引き下げられました。
これで利息制限法とのギャップがなくなりました。
さらに利息制限法の上限金利を超える貸付を行った場合、その貸付自体が無効になり、なおかつ該当する貸金業者は行政処分の対象になりました。

現在提供されている商工ローンは、利息制限法のルールに則って営業しています。
ですから異常な高金利で貸し付けられ、借金が雪だるま式に膨らんでいくような心配はなくなりました。
実際先ほど紹介したように商工ローンの利息は8~20%と、利息制限法を反映した利率設定になっています。

取り立て行為の社会問題化

商工ローンが問題視されたのは異常な高金利だけではありませんでした。
執拗な取り立て行為で、債務者を精神的に追い詰める手法を取ったノンバンクもかつてありました。

1998年ごろから問題が顕在化していきました。
ニュースやワイドショーなどで「借金返せないなら腎臓売れ!」「目玉1個売れ!」のような異常な取り立ての録音テープなどが紹介されました。
その結果、商工ローンを提供していた貸金業者の社員が逮捕される事態になりました。

しかし今ではこのような無茶な取り立て行為ができなくなっています。
かつての商工ローン問題を踏まえ、取り立て規制が強化されたからです。

夜間などの一般的に考えて非常識な時間帯に取り立てをするのは禁止です。
また保険契約を交わらせ、経営者が自殺することで支払われる保険金を使って返済するよう強要することも禁止になりました。
このように無理な取り立てを行うと、逆に貸し手側が犯罪に問われる恐れが出てきます。

ですからきちんとした商工ローンであれば、追い込みをかけられるようなことはありません。

商工ローンを利用するメリット

商工ローンの現状を踏まえて、借入を行うメリットについてみていきます。
主なメリットとして、以下のようなポイントが考えられます。

1.審査は緩め
2.融資までがスピーディ
3.総量規制の対象外

それぞれどのようなところがメリットになるのか、以下にまとめました。

審査は緩め

商工ローンはそもそも、銀行融資の審査通過が厳しいようなところ向けの商品です。
ですから銀行融資と比較して、審査基準が甘めな傾向が見られます。

通常の銀行融資の場合、資料などを人が見て融資の可否を判断します。
しかし商工ローンではスコアリング制を取っているところが多いです。
法人や経営者の属性をベースに点数をつけて、商工ローンの基準を超えれば融資するシステムです。
機械でスコアリングを行っているので、そこまで厳格に審査していません。

銀行融資では否決でも商工ローンではお金が借りられたという法人も少なくありません。

融資までがスピーディ

審査を機械で行っているので、手続きがスピーディなところもメリットといえます。
銀行融資であれば、少なくても半月程度、場合によっては1カ月以上かかることもあり得ます。

しかし商工ローンの場合、どんなにかかっても申し込みから1週間で融資実行されることがほとんどです。
早いところであれば、最短即日融資に対応しているところもあります。
今すぐに現金が必要という場合には、商工ローンで借入するのも選択肢の一つです。

総量規制の対象外

商工ローンはノンバンクが提供している事業者向けのローンです。
ノンバンクだと総量規制がかかってしまうのではないか、と心配する人もいるでしょう。
しかし商工ローンは総量規制の対象外です。

総量規制は貸金業法で定められているもので、その人の年収の1/3を超える貸付を行ってはならないというものです。
しかし法人用ローンなので、総量規制は適用されません。
すなわち経営者の年収の1/3を超える借入も審査次第ですが可能になります。

ただし多額の借入を行えば、のちの返済が大変になります。
必要最低限の金額を借りるように心がけてください。

商工ローンを利用するにあたっての注意点

商工ローンは借りやすい、すぐに融資してもらえるなどのメリットは確かにあります。
しかし注意すべきポイントもあります。
初めて商工ローンでお金を借りる前に、以下のポイントには注意したほうがいいでしょう。

1.金利は高め
2.融資金額は限定的
3.保証人を立てる必要性

以上どのようなことに気をつければいいか、詳しく見ていきます。

金利は高め

グレーゾーンが撤廃され、利息制限法で定められた上限金利の順守の徹底がなされ、商工ローンも今では暴利で融資することはできなくなりました。
しかしそれでもほかの法人向け商品と比較して、金利は高めに設定されています。

ですからもし商工ローンを利用したのであれば、お金が入ってきたら優先的に返済資金に回しましょう。
返済期間が短ければ、それだけ余計に支払う利息を抑制できるからです。

融資金額は限定的

商工ローンでは、融資可能額は限定的です。
たいていは数百万円単位の融資がメインの商品と思ってください。
せいぜい借入出来ても1,000万円と考えましょう。

設備投資の場合、1,000万円ではきかない場合も出てくるはずです。
その時には数千万や1億円以上の融資も可能な銀行融資の利用を検討してみてください。

保証人を立てる必要性

商工ローンの場合、原則連帯保証人をつける必要があります。
しかし会社の経営者ではなく、第三者の保証人をつけるように求められる場合もあります。

連帯保証人の場合、債務者とほぼ同じ程度の返済義務を背負わないといけません。
後々トラブルにならないためにも、あらかじめ十分説明をして納得してもらったうえで連帯保証人を立てるようにしましょう。

まとめ:商工ローンの金利は法律の範囲内、でも高めなので注意

商工ローンはかつてのようにグレーゾーン金利で利息を徴収できなくなりました。
利息制限法に則った金利設定になっているので、暴利でどんどん債務が急増するような事態は考えられません。

しかしそれでも銀行融資や銀行系のビジネスローンと比較すれば、金利は高めに設定されています。
ただし他と比較して審査が甘めで融資もスピーディなので、使い方に注意すれば時に重宝する可能性もあります。
限定された金額を借り入れて、借りたらできるだけ早めにどんどん返済していくように心がけましょう。