運送業は近年多忙になっているといわれています。
コロナ禍で不要不急の外出が控えられるようになり、ネットショッピングの利用者が増えたためです。
一方でコストも増大しているといわれています。
このため中には運転資金が足りなくなって、資金調達を検討している運送業者もあるかもしれません。
運送業者が利用できる資金調達方法について、ここでは紹介します。
特にビジネスローンは使い勝手のいい資金調達方法なので、ここで詳しく見ていきましょう。
目次
運送業と資金繰りの関係
運送業は一般的に資金繰りの悪化リスクの高い世界といわれています。
資金繰りが悪化しやすいのにはいくつか理由がありますので、ここで紹介します。
売上が安定しないから
運送業は売上が安定しにくい業界といわれています。
というのも景気の良し悪しで物流の需要も上下するからです。
景気が好調の時はいいのですが、景気が停滞してしまうと売上もダウンしてしまいます。
景気が悪くなると、人々の消費行動が低下するからです。
売上がなかなか出ない状況がしばらく続くこともあり得ます。
すると資金繰りに窮してしまう運送業者も出てくるわけです。
想定外の出費を強いられる可能性
運送業はトラックでモノを運ぶ仕事なので、交通事故リスクはどうしても付きまといます。
どんなに安全運転を啓もうしても、交通事故リスクをゼロにはできません。
交通事故を起こした場合、相手への賠償も必要ですし、トラックの修理費用も発生します。
また事故とまではいかなくても運転中荷物を落とせば、荷物が破損しその賠償金が発生するかもしれません。
売上金の回収に時間がかかる
運送業界で資金繰りに悩む業者が出てくる背景に、業界のシステムも挙げられます。
通常売掛金を回収するのは1カ月後というところが多いでしょう。
しかし運送業界の場合、2~3カ月と長めに設定されているところも結構多いです。
運送業の場合、手形取引をしているところが多いです。
このため、どうしても売掛債権を回収するまでに時間がかかります。
よって運送業界では売り上げは交渉でも売掛金の回収が先なために、その間の資金繰りに窮するところも出てくるわけです。
売上と経費は比例する
運送業界では売り上げアップするのは、単純に喜ばしいことではない側面もあります。
売上が上がるということは、それだけドライバーを確保しなければなりません。
ドライバーを多く雇うことになれば、おのずと人件費もアップしてしまいます。
また運送業界にとって無視できないコストとして、燃料費があります。
燃料費ですが、その時々の世界情勢で大きく上下します。
もしガソリン代が高騰しているときに仕事量が増えると、ガソリン代だけでもかなりの出費になりかねません。
その結果、運転資金に一時的に困窮するところも出てくるでしょう。
運送業界の利用できる資金調達方法
運送業界は資金繰りが一時的に悪化することも十分考えられます。
そんな時には資金調達方法をうまく活用して、ピンチを脱するといいでしょう。
運送業者の利用できる資金調達方法として、主に以下のようなものがあります。
1.日本政策金融公庫からの借入
2.銀行融資
3.助成金制度
4.ビジネスローン
5.ファクタリング
6.事業用クレジットカード
それぞれに異なる特徴がありますので、以下で詳しく見ていきます。
日本政策金融公庫からの借入
日本政策金融公庫は政府系の金融機関です。
創業資金や運転資金、設備資金の融資など広く手掛けています。
運送業者の利用できる一般貸付では、最高4,800万円までの融資に対応しています。
返済期間は5~7年と長めに設定されているので、無理のない返済計画を立てられます。
一部据置期間も設定可能で、一定期間は利息の支払いだけでよいので資金繰りもしやすいでしょう。
銀行融資
銀行融資は多くの事業者が資金調達する方法として連想するメジャーな方法でしょう。
銀行融資の場合、かなりのまとまった資金を融通してくれる場合もあります。
数千万円単位の貸付は珍しくありませんし、実績のある運送業者であれば億単位の融資にも対応してもらえます。
メガバンクなどは審査が厳しいです。
しかし信用組合や信用金庫は地元の経済活性化という指名もあるので、割合柔軟に対応しているところも少なくありません。
助成金制度
国や自治体の方で、運送業者を対象にした助成金や補助金制度を実施している場合があります。
助成金や補助金は融資ではないので、後々返済する必要はありません。
例えば2023年5月現在、東京都では「原油価格高騰等対策支援事業」と呼ばれる助成金事業を行っています。
原油価格は世界情勢の影響を受けて、急騰しています。
ガソリン代が運送業者の大きな負担になっている可能性は高いです。
こちらは東京都内の中小企業で、直近決算期の売上高が前期もしくは前々期と比較して減少している、もしくは直近決算期で損失を計上していれば助成の対象です。
省エネ機器やコスト削減を目的にしたシステム導入時の経費の1/2以内、100万円を限度額にしています。
このように運送業向けの助成金が出ていないか、最新情報をチェックしてみてください。
ビジネスローン
ビジネスローンは、事業者向けのローンで金融機関のほかに消費者金融や信販会社、クレジットカード会社などが提供しています。
ビジネスローンは審査がスピーディで、最短即日融資を行っているところもあります。
「急な出費が必要になって、ねん出できるだけの手持ち資金がない」といった場合でも、フレキシブルに対応してもらえます。
ビジネスローンは審査が甘めといわれています。
銀行融資などと比較すると、審査基準を緩めにしているので銀行融資は断られてもビジネスローンなら借り入れできたという話もしばしば聞かれます。
ファクタリング
ファクタリングも運送業者向けの資金調達方法といえます。
ファクタリングとは売掛債権の現金化サービスのことです。
売掛債権を有しているのであれば、ファクタリング会社の方で買い取ってもらえます。
現金化のサービスなので、借入ではありません。
よって後々返済する必要もありません。
運送業界はほかと比較して、売掛金の回収に時間がかかりがちです。
売掛債権を有していて資金繰りに困っているのであれば、ファクタリングサービスの積極的な活用も選択肢の一つです。
事業用クレジットカード
運送業者の中には法人カードや事業用クレジットカードを有しているところもあるでしょう。
もしまだ作っていなければ、法人カードを作っておくといいでしょう。
個人で利用するクレジットカード同様、買い物するときにカード払いができます。
カードでショッピングした場合、代金の支払いは1~2カ月後になります。
手持ち資金がない、でも必要経費が発生した場合とりあえずカードで支払いましょう。
そうすれば、実際に代金を支払えるのは1~2カ月先延ばしにできるわけです。
運送業者がビジネスローンを利用するメリット・デメリット
運送業者の資金調達手段の中の一つに、ビジネスローンがあります。
ビジネスローンを利用するのはメリットがある半面、デメリットもあります。
ビジネスローンのメリットとして、主に以下のようなことが考えられます。
1.資金調達がフレキシブル
2.手軽に利用できる
一方でビジネスローンのデメリットとして、以下のような事柄が挙げられます。
1.金利が高めになる
2.銀行融資の審査で悪影響の出る可能性
それぞれどのようなところがメリット・デメリットなのかについて、詳しく見ていきます。
ビジネスローンのメリット
ビジネスローンはほかの事業者向けの金融商品と比較して、フレキシブルな対応が可能な点が挙げられます。
まず審査がスピーディです。
銀行融資や日本政策金融公庫の場合、審査に1カ月前後かかることも珍しくありません。
しかしビジネスローンの場合、かかっても1週間程度で融資実行されます。
またノンバンク系のビジネスローンだと、最短即日融資に対応しているところもあります。
通常赤字決算の場合、その法人が融資を受けるのは難しいです。
お金を貸し出しても回収できないリスクが高いからです。
しかしビジネスローンの場合、たとえ直近赤字決算でも将来性のある事業を行っていると評価されれば、融資を受けられる可能性があります。
また手軽に利用できるのもメリットです。
ビジネスローンの中には、Web申し込みできる商品も増えてきています。
ホームページの申し込みフォームから手続きをして、必要書類は画像データなどのアップロードで提出します。
そして審査通過すれば、指定の口座に振り込みという形で融資実行されます。
運送業者の中には、会社の代表が多忙で営業時間内にビジネスローンの借り入れ申し込みのために店舗に出向けないというケースもあるでしょう。
Web完結タイプのビジネスローンであれば、来店せずに借入できるので重宝します。
ビジネスローンのデメリット
ビジネスローンにはメリットがいくつかある半面、デメリットもあります。
デメリットも認識したうえで、必要に応じてうまく活用しましょう。
ビジネスローンの金利ですが、1~18%といったところが相場です。
下限金利は何度も利用していて十分な信用力がなければ、まず適用されません。
初めて利用する際には上限金利かそれに近い金利が適用されると思ってください。
他の融資方法をみると、銀行融資や日本政策金融公庫の貸付も2~4%です。
ですからビジネスローンを利用した場合、返済負担が大きくなる恐れがあります。
もしビジネスローンを利用するなら、お金が入ってきたらなるべく返済に優先的に回しましょう。
そうして返済期間を短くして、できるだけ利息の支払いを少なくすることが大事です。
もう一つ注意しなければならないのは、銀行融資の審査でマイナスに評価される恐れのある点です。
ビジネスローンの借り入れをした場合、そのお金の流れも決算書に記載しなければなりません。
銀行融資の審査ではもちろん、決算書の内容も精査されます。
もしビジネスローンの借入のあることが判明すると、思うように銀行から借入できなくなる恐れもあります。
ビジネスローンの借入があると、それだけ資金繰りに困っていると判断されかねないからです。
必要以上にビジネスローンを利用しないために
ビジネスローンは運送業者にとって、資金繰りに困っているときに重宝するサービスです。
しかし繰り返し何度も利用するとなれば、利息の支払いもそれだけ増え、長期的にみれば資金繰りにマイナスになりかねません。
もし何度もビジネスローンを利用せざるを得なくなっているのであれば、別のアプローチで経営改善を目指したほうがいいです。
固定費の圧縮
まず考えるべきこととして、毎月発生する固定費の見直しです。
固定費を圧縮することで、収支のバランスを考え直しましょう。
例えば事務所の賃料が圧迫しているのであれば、もう少し安いところに引っ越すのも一考です。
運送業の場合、トラックをリースしているところもあるでしょう。
このリース代を削減できないか交渉してみるのも一考です。
営業に力を入れる
お金がより入ってくるように、営業に力を入れることも経営改革の方法の一種です。
特にねらい目なのが、小口の営業です。
大口は大きな売り上げが期待できる半面、手形取引がメインなので売掛金の回収が何カ月も先になりかねません。
一方小口の場合、現金収入も少なくありません。
しかもすぐに入ってくるお金なので、キャッシュフローの改善のきっかけになりえます。
運送業のビジネスローンの利用のまとめ
そのビジネスモデルから、運送業は資金繰りに窮するケースも珍しくありません。
運送業者が資金調達する方法はいろいろとあります。
その中でも急な出費などで今すぐ現金が必要な時には、ビジネスローンを利用するのは一考です。
最短即日融資にも対応していますし、銀行融資などと比較して審査も甘めといわれているからです。
しかしその反面、ビジネスローンは金利が高めなどのデメリットもあります。
出費を抑制して売上を増やす経営改善を進めながら、必要な時にビジネスローンを利用してうまく資金を回していきましょう。