ビジネスローンの審査基準とは?
ビジネスローンも銀行事業資金融資も、融資の審査は銀行やノンバンクでも極秘事項です。なぜなら、ビジネスローンの審査基準が知られてしまえば、悪用されるおそれがありますし、公平・普遍的な審査ができなくなってしまう可能性もあるからです。
しかしながら、ノンバンクや銀行などにおけるビジネスローンの審査で重視している点は、事業経営を進めていくための注意点・ポイントにも重なるものです。
そこで今回は、実際に融資を審査する銀行員の視点からビジネスローンの審査基準について解説していきます。これらはビジネスローン審査を通過するための「裏技」や「マル秘テクニック」ではありませんが、銀行員の解説なので参考にしてください。

ビジネスローンの審査基準を知る〜ビジネスローンの基本事項を整理

ビジネスローンの審査基準を考える前に、ビジネスローンの基本事項を整理しておきましょう。

ビジネスローンの基本

ビジネスローンは、法人・個人事業主向けの事業資金融資の一種類で、金融機関やノンバンクで取り扱っています。
一般にビジネスローンとは、審査が早く(数時間〜当日中に結果通知がある)融資利用までの時間もスピーディー(申し込んだ即日に利用可能な場合も)なところが最大の特徴と言えます。また銀行など金融機関とノンバンクでビジネスローンでは特徴が異なるので、次項で説明します。

金融機関のビジネスローン

金融機関ビジネスローンには、主に以下の特徴があります。

 <金融機関のビジネスローン>
1. スピード
審査回答は即日〜1週間程度
2. 借入種類
カードローンと証書貸付
3. 金利
年1%台〜年14%台
4. 利用限度額
10万円〜1千万円程度
5. 返済方法
分割返済(最長10年)または、カードローンと同じ残高スライド方式など
6. 契約手続き
来店またはネット契約

ノンバンクのビジネスローン

消費者金融大手などノンバンクビジネスローンには、主に以下の特徴があります。

 <金融機関のビジネスローン>
1. スピード
審査回答は即日〜数日
2. 借入種類
カードローンと証書貸付
3. 金利
年10%台〜年18%台
4. 利用限度額
1万円〜500万円程度
5. 返済方法
分割返済(最長7年)または、カードローンと同じ残高スライド方式など
6. 契約手続き
ネット契約が主流、郵送手続きも

ビジネスローンの審査基準を知る〜スコアリング・AI審査

現在、ビジネスローンの審査ではスコアリング審査・AI審査が主流になりつつあります。ビジネスローンの審査基準にも影響する点なので、少し解説します。

ビジネスローンのスコアリング・AI審査

融資審査を専用システムで行なうのがスコアリング審査(AI審査)です。必要な情報を入力することで、蓄積された膨大なデータ(いわゆる「ビッグデータ」)によって返済の可能性などをチェックした採点結果と融資可否の回答が出てくるところから採点という意味で「スコアリング審査」と呼ばれます。また、このように審査をAI化しているので「AI審査」とも呼ばれるのです。

ビジネスローン審査でスコアリング・AI審査が増えている理由

これまで、ビジネスローンや事業資金融資の審査では、決算書などの資料を銀行員やノンバンクの担当者が分析しながら審査を進めるのが一般的でした。しかし融資にもスピードが求められるようになり、審査をコンピュータに代行させるようになったのです。
スコアリング・AI審査では、蓄積された膨大なビッグデータから、申込者の業種・企業の規模を採点して審査結果が出ますので、「思い込み」や「ブレ」といった人的要素を廃した、公平かつ迅速な審査ができるというわけです。

ビジネスローンの審査基準を知る〜ビジネスローンの審査基準

ではここから、ビジネスローンの審査基準について、銀行員として考えるポイントに分けて解説していきます。

ビジネスローンの審査基準1.業種・事業内容

業種や事業内容が審査の重要ポイントです。
それは、業種によって事業資金が必要な時期、金額の規模や融資の利用方法が変わってくるからです。
たとえばモノを販売する商店などでは、仕入資金が必要になるので事業資金としてビジネスローンが必要になるかもしれません。そして売上は物が売れるたびに少しずつ積みあてがっていくので、返済は少しずつ分割返済などが適しています。
いっぽう建築業などのように、まとまった金額の工事を請け負って、施工完了までは材料費や人件費が先行するのでビジネスローンの利用が考えられます。そして工事代金などは一括で入金される場合が多いので、カードローン形式で返済まで利息だけ払っておいて、売上金でまとめて完済するといった利用方法があっていると思われます。
このように、業種や事業内容によって必要な資金とその融資利用期間、そして返済方法(一括でまとめて・分割でゆっくり)も変わってくるというわけです。そのため、ビジネスローンの審査では、申し込みの内容で業種・事業内容と融資利用の金額や返済方法などつじつまが合っているか?などをチェックします。

ビジネスローンの審査基準2.信用情報

ビジネスローン融資審査の優先順位では、実は信用情報が一番先です。信用情報に問題がある申込者は、たとえ現在の決算状況がまずまずであっても審査落ちになってしまう可能性が高いと言えます。信用情報は法人と個人でそれぞれチェックします。
まず申込者がいわゆる「反社会的勢力」に該当しないか、あるいは犯罪歴などをデータベースでチェックします。個人の場合は氏名や生年月日、法人なら会社名と代表者の個人名など(他にもチェック項目はありますが極秘なのでお話しできません)からチェックします。ここで該当すると、本格的な審査を進める前にこの時点で「即審査落ち」となります。
次に、個人でも法人でも「不渡り」(手形や小切手の支払期日になっても残高不足などで資金化できないこと。原則として不渡りを発生した会社は破綻=倒産となる)の履歴などをチェックするデータベース(こちらも詳細は部外秘)で確認します。不渡りを出してしまった会社に融資するのは不可能ですので、こうしたチェックをするわけです。ちなみにチェックでは該当しなかった場合でも「社名は違うが会社所在地は一緒で代表者も同一人物」などのケースでは、社名を変えただけではないか?などとチェックされることもあります。

ビジネスローンの審査基準3.業況・財務内容

業況・財務内容は融資審査で当然チェックを受ける部分です。これをあえて説明したかったのは「赤字でも大丈夫!」「絶対借りれる」「審査なしのビジネスローン」などといった宣伝文句を前面に押し出している業者は、その内容をしっかり確認するべき、という点です。
まず融資とは、必ず借りたお金を返済しなければなりません。これも当たり前の理屈ですが、返済するためのお金は事業経営で生み出された利益や余剰金というのも基本のことです。したがって「赤字」であるということは、厳密に言えば利益がないので手元にもお金がない、だから返済するお金(融資の審査では「返済原資」と呼びます)もない、という理屈になるのです。このため赤字の会社はビジネスローンでも審査に通らない可能性が高いと言えます。
また財務内容も一緒で、会社の「資産」(預金や不動産など・プラスの「財産」)よりも「負債」(ビジネスローンなど事業資金融資の残額や未払金など・マイナスの「借金・未払」)が多いことを「債務超過」(債務が負債を超過している状態)と呼びますが、債務超過の会社ではビジネスローンの審査に通らない可能性が高くなります。

もちろん、ビジネスローンは銀行の事業資金融資などに比べて審査に柔軟なので「赤字だからダメ!」と一概にはいい切れませんが、甘い誘い文句で釣るようなサイトは、いわゆる闇金・街金など違法な事業者の可能性もありますので、十分注意が必要です。

ビジネスローンの審査基準4.資金使途

「業種・事業内容」の項でも説明しましたが、業種や事業内容によって必要なお金の使い道が決まってきます。この、お金の使い道を「資金使途」と呼びますが、ビジネスローンの審査では資金使途もチェックされます。そのため、業種とつじつまが合わない資金使途では、審査で問い合わせを受ける可能性もあります。
たとえば賞味期限がある生鮮食料品販売や飲食業などで、販売用の商品や材料費を売上にして2年分など大量に仕入れるなど不自然(食料品なら腐ってしまう)な申込内容だと、資金使途を疑われてしまう可能性もあるのです。
またこれと同様に、建設業で3ヶ月後にまとめて工事代金を受け取るはずなのに、10年の分割返済で申し込むなどといったケースもチェックを受けるおそれがあります。
とはいえビジネスローンの場合は、こうした資金使途については「事業資金」と幅広い定義で柔軟にとらえてくれる場合が多いので、資金使途について心配がいらないケースもあり、ここがビジネスローンのメリットとも言える部分になっています。

しかしながら、資金使途で注意しなければいけないこともあります。それは、ビジネスローンを事業資金以外に使ってはいけないという点です。
ビジネスローンの説明書(商品概要)などには資金使途、つまり「お金の使いみち」として事業資金と限定されている場合がほとんどです。上記したようにビジネスローンでは資金使途をきびしくチェックしないのがメリットでもあるのですが、だからといってビジネスローンで借りたお金を他のつかいみち(ギャンブルで浪費、宝飾品や趣味に使うなど)に回してしまうと、これは「流用」あるいは「資金使途違反」となります。実際に、ビジネスローンは資金使途の報告義務はないに等しいのですが、それはあくまで返済が問題なくできている場合です。万一、業績不振など返済が不可能になった場合には、融資で利用したお金のつかいみちをさかのぼって調査される場合もあるので、事業資金以外に使うことは絶対にしないように、注意が必要です。

   

ビジネスローンの審査基準を知る〜まとめ

今回は、ビジネスローンの審査基準について解説してきました。繰り返しになりますが「審査のないビジネスローン」や「絶対借りれるビジネスローン」などはありませんので、ビジネスローンの審査基準をおさえて、自社の有効な資金調達に役立ててください。
この記事が参考になれば幸いです。