資金調達には融資のほかに出資という方法があります。どちらも広い意味では投資に該当する資金調達方法ですが、資金提供の目的や会計上の扱いなどは全く異なり、それを知らずに行うと後で後悔する恐れがあります。今回は似て非なる融資と出資の違いを、メリット・デメリットも交えて解説していきましょう。

融資と出資はそもそもどういうものか

最初に出資と融資、いずれも企業が資金調達をする方法ですが、どう違うのでしょうか?参考までに似た言葉である投資も含めた3点についてどういったものか簡単に解説します。

融資とは

融資は、資金調達をする側からは負債(借入)となり、金融機関など資金を提供する側は資金を提供し、利息をつけて返済することで、利息分の利益を得ることができます。

出資とは

出資は、資金調達をする側からは資本(純資産)が増えます。投資家が企業の将来的な利益を期待して、株式を購入するなどして資金を出資し、企業が期待通り成長すれば、購入していた株式の価値が大幅に上がり、その差益分で利益を得ます。

投資とは(参考)

投資とは、本来は出資と同じようなニュアンスで使われていましたが、現在は将来的な利益を期待して第三者に資金を提供するという広い意味合いがあります。そして融資も出資も投資のひとつとして考えられています。

融資と出資の違いとは

融資と出資は同じ投資ですが、両者はどう違うのでしょうか?大まかに5つの視点で違いが比較できます。

1.資金提供者の違い
2.資金提供目的の違い
3.資金提供者の判断基準
4.返済義務の有無
5.貸借対照表の扱い

以上、5点について違いを確認していきましょう。

1.資金提供者の違い

融資の資金提供者は銀行に代表される金融機関が主な提供者になります。それに対して出資の提供者は投資家であり、ベンチャーキャピタルや個人投資家などが該当します。

2.資金提供目的の違い

資金提供という視点で見ると、融資の場合は提供した資金に利息をつけて返済してもらうことで、利息を利益として獲得します。出資の場合は、資金を提供して株式を取得することで提供した企業の業績によって配当金を得たり、株主として企業から勇退を受ける、場合によっては経営に参加するという目的があります。

3.資金提供者の判断基準

資金を提供する側の判断についても、融資と出資とでは大きく異なります。融資の場合は提供したお金が利息をつけて返済を確実にしてくれるかどうかを資金提供の判断基準にするのに対して、出資の場合は、企業の事業がどこまで成長するかという視点を判断基準にする点が大きく異なります。

4.返済義務の有無

融資の場合は原則として返済の義務が発生します。それに対して出資の場合は逆に返済の義務はありません。

5.貸借対照表の扱い

企業の財政状態を分析するのに用いる貸借対照表(バランスシート)での扱いは、融資の場合は借入金のため企業の負債が増加する扱いになります。出資の場合は企業に資産を提供するという扱いになり、純資産が増加する扱いとなります。

出資のメリット

出資という形で資金を調達する場合には様々なメリットがあります。

1.返済の必要がない
2.利息が発生しない
3.担保や保証人が不要
4.融資よりも多額の資金を調達できる可能性
5.投資家つながりで人脈などの援助がある可能性

上記、5点について詳しくみていきましょう。

1.返済の必要がない

出資の場合は原則として得た資金の返済の必要がありません。あくまで企業が将来成長することを見越して拠出している資金のため、資金は企業の資産となり成長のために活用されます。そのため出資したお金を返済する必要はありません。調達を受ける企業にとっては大きなメリットです。

2.利息が発生しない

出資で得た資金そのものには利息は発生しません。資金をもとに企業が成長することによって企業の利益から配当金を出資者に還元します。

3.担保や保証人が不要

融資のように資金調達をするのに担保や保証人は不要です。調達した資金を返済する必要がないからです。

4.融資よりも多額の資金を調達できる可能性

企業の成長性が高いと判断されれば、融資よりもはるかに出資の資金が集まる可能性があります。

5.投資家つながりで人脈などの援助がある可能性

出資を受けると投資家とのつながりが深くなります。企業にとっては新たな人脈を獲得する機会が増え、そのことで新たな資金面を含めた援助が得られる可能性があります。

出資のデメリット

メリットが多い出資ですが、残念ながらデメリットも当然あります。

1.経営権を部分的に譲渡することになる
2.事業に際立った部分がなければ投資家の目に留まりにくい

上記、2点について詳しく解説しましょう。

1.経営権を部分的に譲渡することになる

出資は企業の成長を期待して行なわれる資金調達です。企業の成長を目標としているため、現在の経営陣の方向性では成長が見込めないと考えれば意見を言うことが可能です。場合によっては投資家のほうでより経営能力がある人を企業に送り込むなど経営権が譲渡させられる場合があります。

2.事業に際立った部分がなければ投資家の目に留まりにくい

出資は企業の成長のために行われるため、企業成長で利益が出るような事業で際立った部分が無いと判断されると投資家からの出資が困難な場合が多いです。

融資のメリット

出資に対して融資にはどのようなメリットがあるのでしょうか?

1.経営の自由度が保てる
2.経営権を渡す必要がない
3.低金利で融資
4.多額の資金調達も可能

以上、4点について詳しくみていきましょう。

1.経営の自由度が保てる

融資はあくまで調達した資金に利息をつけて返済するだけなので、経営権に口出しされることなく自由に企業経営が行なえます。

2.経営権を渡す必要がない

1.同様に、融資の場合は経営そのものにはタッチすることがないので、経営権を手渡す必要はありません。

3.低金利で融資

企業の条件にもよりますが、不動産担保などを提供した場合は、低金利での融資が受けられる可能性があります。

4.多額の資金調達も可能

企業の業績が良く、確実に資金が回収できると見越した状況で、さらなる企業成長を目的とした設備投資などの場合は多額の資金調達が受けられる可能性があります。

融資のデメリット

融資にも当然デメリットがあり、主に4点ほどがあげられます。

1.利息を上乗せして返済
2.創業期は融資審査落ちやすい
3.個人保証や担保の必要がある
4.資金の使い道が限定

以下、詳しく内容をみていきましょう。

1.利息を上乗せして返済

出資と違い融資の場合は調達した資金に利息分を上乗せして返済しなければいけません。利息分が余計な費用となってしまいます。

2.創業期は融資審査落ちやすい

創業間もない企業の場合は、企業の信頼性が低く、本当に資金に利息をつけて回収できるかがわからないため、融資を申し込んでも審査落ちしやすいです。

3.個人保証や担保の必要がある

融資の場合、低い金利で借りようとするとどうしても個人の保証人や不動産などの担保が必要です。

4.資金の使い道が限定

カードローンなどの一部を除いてビジネスローンの場合はあらかじめ資金の使い道が決められる場合があります。出資のように企業成長という目的が達せられるのなら細かい資金の使い道を問わないのと、大きな違いです。

出資を受ける方法

資金を調達するためにどういう立場の人に出資を受けることができるのでしょうか?

1.個人投資家
2.クラウドファンディング
3.ベンチャーキャピタル(VC)
4.エンジェル投資家
5.現物出資

主に上記の方法で出資が受けられます。詳しくみていきましょう。

1.個人投資家

一個人が企業に対して投資を行う場合です。特に成長性があるものの、資金面が厳しい創業間も無い企業に対して出資することで資金面をサポートし株式を得ます。また成長するための経営支援を行う投資家もいます。

2.クラウドファンディング

最近増えた出資方法です。インターネットでプロジェクトを提示し、不特定多数の人が出資するスタイルです。資金と引き換えに株式ではなく、出資者が楽しめる事でリターンします。クラウドファンディングには、投資型、寄付型、購入型と言った種類があります。

3.ベンチャーキャピタル(VC)

著しく成長する可能性の高いベンチャー企業に対して資金を提供する投資専門会社です。未上場の株式を低価格で購入し、企業が成長して株式の店頭公開や上場した時に株価が上昇します。その時に売却して差額から利益を得る事業のため、企業への出資に加えて成長の手助けや支援を積極的に行います。

4.エンジェル投資家

エンジェル投資家は起業した直後の企業に出資をする投資家の呼び方です。出資を受けた企業が成長すると、株式などで対価を受け取り利益を得ます。ベンチャーキャピタルに似ていますが、エンジェル投資家は個人として投資します。

5.現物出資

現金以外のものを出資する場合現物出資と言います。土地建物などの不動産や車を現金の代わりに出資して起業を手助けします。

融資を受ける方法

企業が出資ではなく融資を受けるにはどうすればよいでしょうか?

1.政府系金融機関
2.銀行
3.ノンバンクのビジネスローン
4.ファクタリング(融資とは違う資金調達法)

以下、4点について詳しくみていきましょう。

1.政府系金融機関

政府系金融機関は低利息で融資を行っている金融機関です。創業時などに事業計画書とともに融資審査を受けて資金調達を行います。

2.銀行

銀行はある程度実績のある企業に対してさらなる成長を手助けするために融資を行います。確実に利息を含めて提供した資金が戻ってくるかどうかを慎重に審査を行って資金提供するかどうかを決めます。

3.ノンバンクのビジネスローン

銀行以外の金融機関であるノンバンクのビジネスローンは、銀行などよりも審査が緩い分利息が高いです。銀行の審査に通らないような企業にとってはとても利用しやすい資金調達方法です。

4.ファクタリング(融資とは違う資金調達法)

融資とは違いますが、企業の売掛債権をすぐに現金化する方法としてファクタリングがあります。融資と違い、借入金では無いので負債は増えません。

融資・出資の違いのまとめ

融資は提供した資金に利息をつけて回収するのに対して、出資は企業の成長のために資金を提供するという大きな違いがあります。前者は利息分の返済義務などのデメリットがありますが、後者は返済義務がない代わりに投資家によって経営権が制限されるデメリットがあります。