手持ちの資金が足りず、支払いができなくなる資金ショート。資金ショートを起こしてしまうと会社の信用にも関わり、最悪の場合、倒産につながる可能性もあります。資金ショートを起こしそうな場合には、まずどのような対応をするべきでしょうか。また、資金調達として融資を受ける際にも、資金ショートの状況によって最適な融資は変わります。どのような融資が適しているのか確認していきましょう。

経理上は黒字であっても資金ショートする可能性がある

資金ショートとは手持ちの資金が足りなくなり、必要な支払いができなくなる状況です。

たとえ売り上げがあっても、売掛金が支払われるまでに時間がかかったり、支払われた売掛金が手形の場合には現金として使用できるまでにさらに時間がかかったりします。
売掛金を現金として使用できるサイクルが安定し、毎月手持ちの資金が足りているならば問題はありません。ですがサイクルが乱れると、一時的に手持ちの資金が足りなくなることがあります。売り上げや利益があるにも関わらず、資金繰りが上手くいかずに必要経費を支払えない状況です。
この場合、経理上は黒字であっても資金ショートを起こしてしまうのです。

資金ショートを起こし、手形の不渡りを起こしてしまうと黒字倒産となる恐れもあります。資金ショートを起こしそうな時には早急に対応しましょう。

資金ショートを起こしそうな時にまずやるべきこと

資金ショートを起こしそうな時には、財務状況の確認と対策が必要です。
資金ショートにおちいった原因を把握し、それを改善して経営を安定させなければなりません。しかし、それが完了するまでに倒産してしまっては元も子もありません。まずは手持ちの資金を増やし、必要な支払いを済ますことを目標にします。

1.入出金の予定を把握する

まずは手持ちの資金を確認しましょう。
実際に使用できる資金ですので、手形や不動産、売掛金など現金として使用できないものは除外します。現金と預金が今実際に使用できる手持ち資金です。

次に入ってくる資金を確認します。当月に現金として受け取る売掛金や、支払い期日になった手形などです。
さらに当月の支払い予定も確認します。各種買掛金や手形、融資の返済、給与や税金などです。

資金ショートを起こしていると、手持ち資金に入ってくる資金を合わせても、すべての支払いをまかなえません。いくら足りないのかを正確に把握し、それに応じて対応していく必要があります。

また、資金ショートの期間がどれくらい続くのか予測することも大切です。
一時的な入出金サイクルの乱れが資金ショートの原因であれば、サイクルが戻るまでの対策で済みます。しかし資金ショートの原因が業績の悪化であれば、業務の改善が必要となり、資金ショートの期間も未知数になってしまいます。その場合には資金調達をしてその場を繋ぎながら、根本的な問題の解決を目指しましょう。

2.優先順位を考える

資金ショートを起こしている場合、無い袖は振れませんから、支払いは優先順位をつけて考えなければなりません。

確実に支払わなければならないのは手形や小切手です。手形や小切手は半年間に2度の不渡りを起こしてしまうと、銀行取引が停止されて事実上の倒産となります。そのため、手形や小切手はどのような手段を使ってでも確実に支払いましょう。

3.入金を早めてもらう

手持ちの資金を増やすため、まずは取引先に売掛金の入金を早めてもらえないか相談してみることも可能です。取引先との関係にもよりますが、応じてくれる可能性があります。

4.支払いを延期させてもらう

延期できそうな支払いは延期し、支払いの負担を減らすことも必要です。
しかし支払いの延期は信用問題につながるため、優先順位をつけて悪影響の少なそうな支払いから延期交渉をしましょう。交渉先として考えられるものは次の通りです。

・従業員の給与・役員報酬
・取引先の買掛金
・銀行融資の返済

社外の信用を落としたくない場合には、社内の支払いから延期を考えます。ただし給与の未払いは、従業員の士気を下げる可能性や転職のきっかけになることもあります。まずは役員報酬など、経営者自ら対応することが好ましいでしょう。

また取引先に相談の上、買掛金の支払いを延期してもらうことも考えます。今後の取引にも影響を及ぼしかねないので慎重におこないましょう。支払いを手形にし、先延ばしする方法もあります。
融資の返済をしている場合には、銀行に返済計画の変更を依頼することも考えてください。

5.資金調達する

支払いの調整をしても資金ショートの状況が改善されない場合には、外部から資金を調達する必要があります。資金ショートが一時的で短期間のものだとわかっている場合には、それに適した融資を受けると良いでしょう。経営の悪化が資金ショートの原因であるならば、経営を改善し利益を伸ばしていくことも大切です。

資金ショートを起こしている時に使える融資

融資はよく利用される資金調達方法ですが、資金ショートの状況によって使いにくいこともあります。状況ごとに利用しやすい融資を見ていきましょう。

入出金のサイクルが乱れ、資金ショートにおちいる可能性がある時

売り上げや利益はあるものの、入出金のサイクルが乱れて今後資金ショートにおちいる可能性が見えてきた時には、計画的に銀行などから融資を受けると良いでしょう。

銀行の融資は金利が比較的低いことがメリットです。ただし銀行の融資には審査があり、入金されるまでに時間もかかります。実際に資金ショートを起こしてから銀行の融資を受けようと思っても間に合いません。予測できる資金ショートの場合は、早めに融資の計画を立ててください。

また、経営状況が悪化している場合には融資の審査に通らない可能性があります。逆に、経営に問題がなく、一時的な手持ち資金不足なだけであれば、融資を受けられる可能性が高くなります。
融資の審査には今後の事業計画や資金繰りについても問われることもあります。資金ショートの期間、足りない金額を正確に説明することで、さらに融資に有利になります。

経営悪化により資金ショートにおちいる可能性がある時

経営状況が悪く資金ショートにおちいりそうな場合には、事業再建のための融資を受けると良いでしょう。具体的には次のような融資があります。

・マル経融資(小規模事業者経営改善資金)
・セーフティネット貸付
・信用保証協会の保証を利用した融資

商工会議所などで経営指導を受けている事業者であれば、無担保・無保証のマル経融資を利用できる可能性があります。経営指導を6か月以上受けている必要があるため、条件を満たしている場合には商工会に融資の相談をしてみてください。ただし審査にも時間がかかるため、急ぎの融資には向きません。

突発的な要因によって一時的に経営難におちいっている場合には、セーフティネット貸付の利用も考えられます。融資の審査に3週間程度かかるため、余裕を持って計画・申請してください。

その他、信用保証協会の保証を利用した融資を受けられる可能性があります。信用保証協会に保証してもらうことで、銀行や信用金庫などから融資が受けやすくなります。
さらに地方自治体が利子や保証料の支援をする制度融資という仕組みもあります。制度融資は都道府県・市区町村ごとに定められているので、企業の所在地に合わせて利用できる制度を探しましょう。
制度融資は普通の融資よりも融資実行までの工程が多く時間がかかるため、資金ショートにおちいるまでに時間がある場合に利用してください。

すでに資金ショートを起こしていて早急に現金が欲しい時

すでに資金ショートを起こしている、または資金ショートにおちいるまで時間がないという場合には、通常の融資では間に合いません。そのような場合には、銀行以外からの融資を検討しましょう。

ノンバンクのビジネスローンを利用すると、最短で即日融資を受けられる可能性があります。ノンバンクであれば銀行などの融資の審査に落ちた場合でも融資を受けられる可能性があるため、相談してみると良いでしょう。ノンバンクのビジネスローンは無担保・無保証であることが多く、困った時の強い味方です。
金利は銀行などの融資よりも高くなることが多いですが、資金ショートした期間のつなぎ融資として重宝します。

資金ショート時に使える融資以外の資金調達方法

資金ショート時に使用できる資金調達方法は、融資だけではありません。現金以外の所有資産を現金化する方法もあります。

ファクタリング

ファクタリングは所有している売掛債権を現金化する手段です。手数料がかかるため額面未満の金額になってしまいますが、売掛金を支払期日前に現金として受け取れるため、資金ショートを起こしそうな時には非常に有効です。

不動産の売却

不要な不動産を持っている場合には売却してしまうことも手段のひとつです。大きな金額が必要な場合には選択肢のひとつになります。

資金ショートを起こしそうな時に使える融資など対処法のまとめ

資金ショートを起こしてしまうと、最悪の場合、黒字であっても倒産する恐れがあります。資金ショートを起こしそうな時には入出金の予定を把握し、優先順位をつけて対応してください。
資金ショートを起こすまでに時間がある場合には、銀行などから計画的に融資を受けると良いでしょう。時間の余裕がない場合には、ノンバンクがおこなっているビジネスローンがおすすめです。ビジネスローンであれば無担保・無保証で即日に融資を受けられる可能性があります。状況に応じて最適な方法を選んでください。