当ブログをご覧の事業主の皆さまの中には、仮想通貨にご興味がある、またはすでに個人で運用されているという方もおられるのではないでしょうか。

紙幣や硬貨は存在せず、インターネット上で暗号技術を使用した電子データのみで資産取引を行う仮想通貨は、その性質上「暗号資産」とも呼ばれ、2009年の誕生以降、年々価値を高めています。

2017年には、仮想通貨の代表格ともいえるビットコインが前年比20倍の時価総額にまで高騰するなど、その激しい値動きに魅了された世界中の多くの投資家が投資対象として選び、現在も盛んに取引を行っています。

また、仮想通貨には、取引にあたって公的金融機関を介す必要がないため、送金時や決済時にかかる手数料が安価であり、海外との取引時であってもそれにかかる時間を短縮できるというメリットも大きな魅力だといえます。

このように高い価値と利便性を兼ね備えた仮想通貨ですが、最近では個人投資家のみならず法人が運用するケースが上昇していることをご存知でしょうか。

実際に、アメリカでは新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、仮想通貨を用いた資産運用を開始する企業が増加傾向にあります。

これは、政府が新型コロナの感染対策として実施した大規模な金融緩和にともなうインフレへの危機感や法定通貨に対する信用が低下する要因とされており、2020年の年末にはビットコインの価格が一時およそ300万円まで値上がりしたことが話題となりました。

また、日本においても法人が仮想通貨の運用によって生じるメリットがいくつかあることから、積極的に運用を開始するケースが顕著にみられるようになっています。

では、法人が仮想通貨を運用することによって、どのようなメリットやデメリットが生まれるのでしょうか。

法人が仮想通貨を運用するメリットとデメリット

法人が仮想通貨を運用するメリットとデメリット

メリット

①税金対策に効果的

仮想通貨の売買にあたっては、個人であれ法人であれ、利益に応じて税金の支払いが生じます。

個人の場合であれば、仮想通貨で得られる利益が年間で20万円を超えると確定申告において雑所得として計上する必要があり、他の所得と合算した金額に応じた税金を支払う必要があります。

日本では、個人の税金に対しては「累進課税制度」を採用しているため、所得が大きいほど多額の所得税を支払うことになります。それに加えて10%の住民税が課税されることになり、仮想通貨で大きな利益を得ることによって税率は最大で55%までに膨れ上がる可能性があります。

それに対し、法人の場合は法人税、法人住民税、法人事業税という3つの税金があるものの、税率は最大でも35%です。

したがって、仮想通貨の売買によってより多くの利益を得られた場合、徴収される税金は法人のほうが抑えられることがあるというわけです。

さらに、法人は個人や個人事業主と比べても経費計上できる範囲が広いことから、仮想通貨によって得られた利益の全額を役員報酬やオフィス賃料として計上することもできるため、大きな節税につなげることが可能といえるのです。

②損益通算が可能

もしも、仮想通貨を購入して利益を得られたものの、事業で欠損金が出てしまった場合、法人であれば仮想通貨の利益を欠損金の補填に回すことができます。

もちろんそれとは逆に、事業の利益が高く仮想通貨で大きな損失が生じた場合であっても、事業の利益で仮想通貨の損失を埋め合わせすることが可能です。

法人は、10年もの期間にわたって損失を繰り越せますから、仮想通貨の運用が経営の損失を低減させるリスクマネジメントのひとつにもなりえるのです。

③海外への送金や決済手数料が安価

先にも述べた通り、仮想の通貨取引は公的金融機関を介さないため、送金や決済手数料が安価になります。

特に海外企業との取引が必要な場合、それらの出費額は大きく、1度の取引で1万円ほどの手数料が発生する場合もあります。

仮想通貨の運用は、利益の拡大・安定や税金対策といったメリットだけでなく、細かな経費の節減にもつながるというわけです。

デメリット

①利益によっては、税金が高額になる恐れも

メリットの項で、税金対策に効果的であることを説明しましたが、法人税の最低税率は20%ほどであるため、得られる利益が少額であればあるほど個人の税金よりも高騰になる場合があります。

②データ流出など、セキュリティの不安

仮想通貨を狙ったセキュリティ侵害の問題は、これまでにも度々起こっていることからも分かる通り、ネットワーク上での取引という性質上、いくら強固な暗号技術が開発されても社内の機密情報や資産の流出といったリスクがはらんでいることを覚えておかなければなりません。

③税務調査の対象になる可能性が高まる

日本でも徐々に仮想通貨を運用する法人が増加しているとはいえ、まだまだ主流の資産運用になるまでには至っていません。また、税制面における取り扱いが整備しきれていないという点もあります。

そのため、仮想通貨の運用を行う企業は、税務署からしても目立つ存在であることは確かであり、税務調査の対象になる可能性も高まるかもしれません。また、仮想通貨の取り扱いに慣れない会計担当者や税理士が、利益を適切に計上できなかったことから指摘を受けるケースもあることでしょう。

まとめ

まとめ

今回は、法人が仮想通貨を運用するメリットやデメリットを紹介しました。

利便性が高く値動きも大きい仮想通貨の運用は、利益拡大はもちろん、税金対策や利益補填、経費の節減にも効果的であるといえます。

その反面、いくつかのデメリットがあり、場合によっては経営を揺るがしかねないほどのリスクが生じる可能性もゼロではありません。

法人の仮想通貨運用に興味のある事業主の方は、リスクも考慮に入れた上で慎重な検討を重ねて開始するべきであるといえるでしょう。