日本における会社形態は4つ。
その中でも代表的な会社形態といえば株式会社です。
ほかには、合名会社や合資会社という会社形態もありますが、最近はある会社形態が若い起業家を中心に人気を集めています。
それが合同会社です。
実際に、2019年に設立された118,532社のうち、約4分の1にあたる30,566社が合同会社でした。
4年前の2015年は22,223社でしたので、設立にあたって合同会社を選択する起業家や組織変更する企業が年々増加傾向にあることがわかります。
合同会社は、2006年に施行された会社法で設けられた比較的新しい会社形態であるため、その名称は知っていても、どのような特徴があるのかご存知ない方もたくさんおられることでしょう。
また、あまり聞きなれない会社形態のため、一部の小規模のベンチャー企業などが採用しているものとも思われがちですが、実はアップルやグーグル、アマゾンといった世界的な巨大企業の日本法人も合同会社なのです。
では、合同会社とは具体的にどのような会社形態なのでしょうか。設立にあたって生じるメリットやデメリットも交えながら解説していきます。
目次
合同会社とは?
合同会社は、アメリカのLLC(Limited Liability Company)をモデルにして2006年の会社法施行によって設けられた会社形態であり、合名会社や合資会社と同じ持分会社のひとつです。
持分とは、端的に言ってしまうと出資にともなう「会社の所有権」ということになります。
株式会社と持分会社では、この所有権の扱いに大きな違いがあります。
①会社の所有権は経営者自身にある
株式会社の場合でいえば、実際に事業の指揮をとるのは取締役であることが一般的ですが、会社が発行した株式の所有権は出資者である株主です。
つまり、会社の重要決定事項に意見を出して決定できるなどの「会社の所有権」は株主にあるといえます。
対して持分会社である合同会社は、株式の発行は行えませんから当然ながら株主は存在しません。
したがって、出資者が事業を指揮すると同時に、経営に関する権限も持つことになります。出資者全員が「会社の所有権」を有した経営者になるというわけです。
②出資者は有限責任社員
会社が大きな負債を抱えた場合、他の持分会社である合名会社や合資会社は、出資者全員が連帯ですべての負債を返済する義務を負う無限責任となります。
一方、合同会社では株式会社と同じように、出資者は全員が出資額以上の支払い義務が生じない有限責任となります。
合同会社設立のメリット
上記で紹介した2つの特徴自体が合同会社の大きなメリットだといえますが、その他にもいくつかあります。
①設立費用が安い
設立費用の違いに関しては、株式会社と比較するとよくわかります。
株式会社も合同会社も、登記の際には「登録免許税」の支払いが求められますが、登記1件につき最低課税額が15万円となる株式会社に対し、合同会社では6万円と、半分以下の出費に抑えられます。
また、株式会社は定款の認証が必須ですので、それにともなう定款認証手数料の5万円と印紙代(電子定款の場合は不要)4万円の支払いも必要です。
一方、合同会社は定款認証の必要はありません。
②利益配分の設定は自由
株式会社では、出資比率と利益の配当比率を同等にしなければなりませんが、合同会社では、出資比率に関係なく自由に利益の配当率を決めることができます(定款で定めた場合)。
したがって、たとえ出資者となった社員の出資比率が低い場合でも、業績に応じて配当率を上げたり、出資者全員に対して均等に利益を配当するといったことも可能となります。
③決算公表の義務はない
合名会社は決算を公表する義務がありません。
株式会社の場合は、毎年行われる株主総会後に決算を公表する「決算公告」が義務付けられており、これを怠ったり不正の公告をした場合には100万円以下の過料を徴収されることになります。
また、決算公告の際には、資本金5億円未満・負債額200億円未満の会社の場合であれば、決算公告の掲載費用として6万円ほどの費用を支払う必要がありますが、合名会社は決算を公表する義務がないため、過料徴収の心配も掲載費用の出費も不要となります。
合同会社設立のデメリット
経営にあたっての高い自由度や設立費用の削減につながるなどのメリットがありますが、もちろんデメリットもあります。
①不安定な信用度
冒頭でも触れたように合同会社の設立数が増加傾向にあるのは確かですが、株式会社に比べるとまだまだ認知度は低く、信用度が安定しないのが現状といえます。
そのような現状から、古くから株式会社を営む経営者の中には「合同会社は取引先として認めない」という見解を示す方も少なからず存在するのが事実です。
②社内対立のリスクが高い
合同会社では、出資比率に関係なく出資した社員全員が業務執行権や意思決定を行う議決権を持つことになりますので(定款で特別に定めない場合)、意見の対立によって経営や業務に混乱が生じるリスクは高いといえます。
まとめ
合同会社は、株主が経営に介入する株式会社と比べると、経営の自由度が高く、設立にかかる費用を抑えられるなどの特徴やメリットがあるため、若い起業家に人気の高い会社形態であることにもうなずけます。
ただし、まだまだ認知度は高いとはいえないことから、取引の際に不利にはたらくケースや社内で対立が勃発する可能性が高いといったデメリットもあるので、会社設立や組織変更を検討する際にはそれらのデメリットも考慮に入れておく必要があるでしょう。