事業を行うにあたり、さまざまな支出が発生する法人にとって、最も重要視しなければならないものが税金です。

税金は、利益に応じて金額が変動するため、事業が好調であればあるほどその翌年に重くのしかかってくるものです。そのため、利益の増加に喜んだのも束の間、支払うべき税額を知って顔が青ざめたという経験をお持ちの経営者の方々も数多くいるのではないでしょうか。

利益の減少によって現金を捻出することが難しくなり、「少しくらい滞納しても問題ないだろう」などと納税を甘くみて、支払いを先延ばしにするようなことがあれば、想定以上のペナルティを受けるケースもあります。

今回は、税金を滞納することによってどのような問題が発生するのか。また、止むを得ず滞納を希望する場合の対応方法などについて解説していきます。

納付期限は絶対厳守

納付期限は絶対厳守法人税や消費税、源泉徴収税など、法人が支払う必要のある税金はいくつかありますが、これらにはすべて納付期限が定められています。

言わずもがな、この納付期限を1日でも過ぎるようなことがあれば、即刻「滞納」扱いとなり、ここから段階的に様々なペナルティを受けることになります。

ペナルティを受ければ、経営や事業にとっていくつもの問題が生じることになり、最終的には資産の差し押さえに至ります。ですので、経営や事業、そして経営者自身の生活に負荷をかけないためにも、各種税金の納付期限は絶対に厳守しなければならないのです。

税金滞納によって受けるペナルティの流れ

税金滞納によって受けるペナルティの流れでは、税金を滞納することで具体的にどのようなペナルティを受けることになるのでしょうか。

①延滞税の発生

まずは延滞税の発生です。

延滞税は、延滞期間に応じて税率が上昇していく税金であるため、滞納が長引くほど大きな負担となります。

たまに、延滞税は「滞納から1ヶ月後から発生する」などの誤った認識をお持ちの経営者の方がいますが、これは納付期限の翌日から発生するものです。

したがって、万が一、延滞税が発生してしまった場合は、それ以上の税負担を抑えるためにも、なるべく早めの支払いを心がけなければなりません。

②督促状の送付

延滞税が発生する納付期限の翌日から1ヶ月程度、原則として50日以内を目安に支払いがなければ、管轄の税務署から督促状が届きます。

督促状が届いたからといって、即差し押さえの準備が始まるわけではありませんが、事前通知だと重く受け止めてすぐに対応するのが得策であるといえます。

③電話や書面などによる催促

督促状を放置していると、今度は税務署より電話や書面による催促が行われます。滞納額や滞納期間にもよりますが、場合によっては担当者が直接訪問し、催促するケースもあります。

④経営者や財産の調査を開始

催促にも応じることがなければ、経営者自身の情報や所有する財産についての調査が開始されます。この段階にくると、いよいよ本格的に差し押さえの準備が始まっているといえるため、早急の対応が必要です。

⑤差し押さえの実施

度重なる催促に応じない場合が続くと、生活に最低限必要となる食料や衣類といった「差押禁止財産」を除く財産の差し押さえが実行されることになります。

なお、差し押さえられた財産は公売を通して換金し、滞納分に充当されます。

滞納から差し押さえの実行までの期間は、様々な事情が考慮された上で決定されますが、実は督促状の送付から10日を経過すればいつでも実行できるものであると法律上で決められています。

実際に10日を経過して即差し押さえとなる可能性は限りなくゼロに近いものですが、督促状の到着が実質的な差し押さえの事前通知だと捉えなければなりません。

税金滞納によって発生する問題

税金滞納によって発生する問題税金の滞納で生じる問題は、延滞税の支払いや財産の差し押さえだけではありません。

①税務署からの監視が強化される。

税金の滞納を行なった法人に対しては、当然ながら税務署からの監視が強まります。これによって、税務調査の対象となる可能性が高まり、場合によっては追加徴税を課されることもあります。

②信用度の低下

税金の滞納は、法人としての社会的信用度の低下を招きかねません。その結果、金融機関からの融資だけでなく、各自治体などが実施する補助金や助成金の支給を受けられなくなるといった問題が生じ、事業資金の調達が困難に陥るケースに至ることもあります。

③資金繰りの悪化

ただでさえ支払いが難しい本税に加えて、滞納税が追加されるわけですから、資金繰りは一気に悪化し、倒産のリスクが高まる危険性が生まれます。

したがって、「事業資金の確保」のために税金を滞納するなどという考えは、本末転倒の何者でもないといえるでしょう。

税金を滞納した時の対応

税金を滞納した時の対応そこまでのリスクを承知の上であっても、経営状況によっては止むをえず滞納しなければならないケースも存在します。

そのような場合は、一刻を争う緊急事態だと自覚し、速やかに適切な対応をとることが求められます。

①各種税金の管轄機関へ申告

税金の滞納が決定したら、まずは各種税金の管轄機関にその旨を申し出るようにしましょう。

もちろん、滞納の申告を行なったからといって免税や減税といった措置がとられることはありませんが、支払いが困難な状況の説明と納税の意思をしっかりと示すことで、ある程度の猶予期間は認められます。

また、一括での支払いが難しいと判断されれば分割払いや小切手等による支払いといった救済措置が適用されることもありますので、必ず相談を行うようにしましょう。

②専門家への相談

各種税金の管轄機関への相談とともに、税理士をはじめとする税金関係の専門家への相談も忘れずに行わなければなりません。

税金の滞納は、現状における財務状況の悪化がもたらした結果ともいえるわけですから、専門家の力を借りて資金繰り見直しや改善を図るなど、現金の捻出だけでなく、将来を見据えた財務状況の立て直しに努める必要があるといえます。

まとめ

まとめ利益の安定など約束されていない法人は、いくら高い利益を上げていたとしても、税金滞納の可能性が常に潜んでいることを忘れてはいけません。

どのような理由があるにせよ、税金の滞納は決して認められるものではありませんが、適切な対応をとることができれば、最悪のリスクを抑えることは十分に可能です。

もしも、税金滞納に至ってしまうようなことがあれば、慌てることなくまずは管轄機関や専門家への相談を行うなど、冷静な行動をとることを心がけておきましょう。