国内で最初の新型コロナウイルス感染症が確認されてから、およそ1年と8ヶ月が経過しました。

これまで、日本政府や各自治体を中心に様々な感染症対策の促進や経済対策の実施が進められてきたものの、依然として新規感染者の確認は続き、国内GDPが回復する兆候もみられていません。

それどころか、7月の中旬ごろから全国的に新規感染者数が爆増。東京や大阪といった都市部での1日の新規感染者数が数千人となることが当たり前となり、全国の総数が2万人を超える日も珍しくなくなりました。

明らかに7月以前とは異なる新規感染者数の伸び方だといえますが、この元凶と呼べるのが新型コロナの変異種であるデルタ株です。

インドで発生したとされるデルタ株は、中国武漢市を発生源とする従来のウイルスよりも感染力が強く、重症化しやすいといわれます。

かつてない強い感染力を持つデルタ株は、1人の感染者が平均して何人に感染させるかを示す基本再生数が平均5〜9.5人。

この数値が示す通り、世界各国へ急速に拡大しており、現在では124カ国で感染が確認されています。

日本も例外ではなく、国内の新規感染者の9割以上がこのデルタ株に感染しているとされ、すでに従来のウイルスに置き換わった存在だということができます。

新たな脅威として国内外で猛威を振るうデルタ株。

では、デルタ株は日本経済にどれほどの影響を与えると予測されるのでしょうか。

■回復傾向がみられる業種があるも限定的な可能性

回復傾向がみられる業種があるも限定的な可能性現在、全国に広がる新型コロナウイルスの「第5波」の影響により、東京や大阪などの21都道府県に緊急事態宣言、まん延防止等重点措置は12県に発令されています。

国内では4度目の発令となる緊急事態宣言。

発令された都道府県では、飲食店の酒類提供停止や時短営業が実施されるなど、これまでと同様の措置が取られていますが、回数を重ねるごとに人々の緊急事態宣言に対する反応は冷ややかなものになっており、いわゆる「コロナ慣れ」「緊急事態宣言慣れ」の様相を呈しています。

そんな中、日本経済も第1回目の緊急事態宣言が発令された昨年4月頃の危機的状況に比べると、一部の業種を除けば大きな停滞がみられることもないようです。

外出自粛要請が続く中でも出張や旅行に出かける人が相次いでいることにより、宿泊業や観光業では徐々に回復の兆しもみられ、製造業においては一部では部品調達に支障が生じたことによる一時的な創業停止などのケースがみられるものの、工場の稼働が全面的にストップするような事態は減少しているようです。

その一方で、感染拡大の初期から変わらず苦戦を強いられているのが飲食店や小売業。

さらにそれらの業種の倒産や休業の影響を受ける形で、建設業や工事業も厳しい状況が続いています。

帝国データバンクの発表からも、やはり圧倒的に飲食店の倒産件数が増加傾向にあり、建設業や工事業が続いていることがわかります。

コロナ以前までには戻っているとはいえないものの、緩やかな回復傾向にある業種もあれば、まだまだ回復の兆しがみえない業種も目立つ現状。

ただし、感染力の強いデルタ株の急速な流行が止まる気配のない現状を鑑みれば、緊急事態宣言の延長は既定路線。

たとえ「慣れ」が生じているといわれながらも、このままデルタ株の流行と緊急事態宣言が長期化すれば、特定の業種の回復傾向も限定的になることも予想され、以前よりも落ち着きがみられる日本経済は再び感染拡大初期のような大きな危機に瀕する可能性があるのではないでしょうか。

■コロナ以前までの回復が絶望的となった国内GDP

コロナ以前までの回復が絶望的となった国内GDP続いて国内総生産(GDP)の変動についてみていきたいと思います。

第一生命経済研究所の発表によれば、これまでの緊急事態宣言に伴う外出自粛要請によって特に影響を受けた需要項目が個人消費だということです。

第1回目の緊急事態宣言下では大きく下振れした消費も、第2回、第3回目と回数を重ねるごとに、「慣れ」の影響もあり下振れは落ち着きをみせました。

この流れから推測すれば、4回目の緊急事態宣言下においても、大きな消費の落ち込みを抑制できるようにも思われますが、今回の対象地域は2回目、3回目に比べて増加。

さらにデルタ株の感染力と現状の拡大傾向を考慮に入れれば、先にも述べた通り宣言の延長は不可避ともいえ、消費押し下げ圧力も拡大することが予測されます。

このことからも、政府が年内にもGDPをコロナ以前の水準まで引き戻すとした目標の実現は困難になったといえるでしょう。

ワクチンの接種が進む一方で、デルタ株の猛威によって感染者数が増加の一途をたどる現状。

そして終わりの確証が持てない緊急事態宣言。

たとえワクチンが効果を発揮して重症者数の低下につながったとしても、流行の歯止めと医療体制の拡充や治療薬の承認が進まない限り、日本経済の真の復活は遠いと言わざるをえないのかもしれません。