3年ぶりに行動制限を伴わなかった今年の夏。

久しぶりに、帰省やレジャーを気兼ねなく楽しんだという方も多いのではないでしょうか。

政府は、これまで徹底してきたマスク着用の推奨を見直し、必要のない場面での無理な着用を求めず、また感染者数の全数把握に関しても、指定医療機関からの定期的な報告を求める定点把握に変更することが検討されるなど、新型コロナに対する意識や施策は大きな転換期を迎えているといえます。

また、社会全体の懸念点はもっぱら物価高や円安へと移り、新型コロナの「第7波」が続く現状においても、関心が薄れていると同時に感染に対する危機感は、以前に比べて格段に低下しているのは確かでしょう。

その一方で、新型コロナの影響を受け続けている企業や業種はまだまだ多く、物価高や円安が複合的に重なることで、業績をコロナ禍以前の水準にまで戻せない苦しい経営を強いられるケースもみられます。

そんな中、中小企業の多くが活用したであろうコロナ関連融資の据え置き期間が終了し、返済時期を迎えた企業も多いことかと思います。

業績の回復を見込めない状況下で始まる融資返済。新型コロナの収束も未だ見通せない現状。そして迎える倒産危機。

いくら社会全体の関心や危機感が薄れようとも、企業活動に対する新型コロナの影響は未だ根強く、これからも引き続くことは容易に想像できます。

倒産件数は19ヶ月連続で100件超え

倒産件数は19ヶ月連続で100件超え

東京商工リサーチが発表した調査結果によると、8月19日時点における同月の新型コロナ関連の倒産件数(負債1,000万円以上)は103件。

これは、19ヶ月連続での100件越えだということです。

また、業種別にみると最も多いのは飲食業。次いで、建設、アパレル、食品卸、宿泊と続いています。

この調査結果だけをみると、新型コロナが企業活動に与える影響は衰えておらず、感染拡大が顕著になった2020年から変わらず、同じ業種が苦しみ続けているのが分かります。

それどころか、東京商工リサーチは、今後も飲食業を中心に経営体力が限界へと到達し、新型コロナ関連の倒産に至る企業が増加するとも予想しています。

キャッシュフローの改善と安定化は急務

キャッシュフローの改善と安定化は急務

新型コロナで疲弊した経営を立て直す施策として第一に考えたいのは、やはりキャッシュフローの改善と安定化でしょう。

とは言っても、単に資金を調達して運転資金を補填するような施策だけでは、一時的な安定につながったとしても、おそらくすぐに自転車操業へ陥ることが予想され、結局は倒産までの道のりを直進する一方なのではないでしょうか。

現在は、物価高と円安に新型コロナの影響を受けていない企業であっても、経営体力の維持に努める日々が続いています。

ただでさえ支出が嵩む現状の中で、新型コロナの影響が重なるようなダブルパンチに見舞われれば、経営体力の低下が加速するのは明らか。

まずは、現在の財務状況を徹底的に分析しするとともに正しく把握し、その上で、ギリギリまで支出を削減する。

以前、「新型コロナ禍だからこそ、積極的に事業へ投資する攻めの戦略が求められる」との記事を見かけたことがありますが、さすがに3年もの間、体力が消耗し続けている企業にとって、その戦略はあまりにもリスクが大きすぎるものです。

真っ先に進めたい経費の削減

真っ先に進めたい経費の削減

支出をギリギリまで削減するといっても、どの支出をどこまで削ればいいかを決断するのは、難しくもあり勇気のいる行為。

手っ取り早く着手可能な支出の削減を挙げるのあれば、備品やリース代金などの細かな経費でしょう。

これらはひとつひとつの金額がそれほど高いものでない場合が多いこともあり、気づかぬうちに支払う項目が増え大きな出費につながっている可能性があります。

そこで必要か不要かの仕分けを入念に行い、その上で不要だと判断できたものは躊躇なく切り捨てる。

また必要なものであっても、現状の業績に見合った価格なのかを見極め、より安価なものに切り替えが可能であれば、直ちに変更する。

このような最も身近な経費の削減により、支出は減らせるものですが、その一方で、つい大きな出費にばかり意識が向けられ、気づくのが遅れるといったケースも生じやすいものです。

キャッシュフローの見直しを図る際には、真っ先に経費の削減に目を向けるべきでしょう。

また、融資を受けている場合には事業計画を練り直し、金融機関に対してリスケジュールを申し出る必要もあるかと思います。

もちろん、スムーズに受け入れられるものではありませんが、信用度の高い事業計画の再構築ができれば、決して不可能ではないはずです。

まとめ

まとめ

世の中の新型コロナに対する意識の薄れが明確になりつつある昨今ですが、企業にとっては今も変わらず脅威であり、その影響に経営に支障を受ける企業が数多く存在します。

実際に、新型コロナ関連の倒産件数は19ヶ月連続で100件を超えることを示す調査結果が公表されるとともに、今後も倒産件数は増加することが予想されています。

経営体力の消耗が続く企業が今やらければならないのは、安易に攻めに出る施策の実行よりもキャッシュフローの見直しを中心に支出を可能な限り削減する守りの戦略といえるかもしれません。