「ある日突然、取引先が倒産してしまったら・・・」。

経営者の方であれば、一度や二度くらいそのような心配に苛まれた経験があることかと思います。

「売掛金や受取手形が回収できなくなるかもしれない」

「売上の減少は確実」

「連鎖倒産するのでないか」

連鎖倒産心配

取引先が順調な経営を続けているようにみえても、実際には資金繰りに窮していた、などということはよく聞く話であり、もしも取引先が倒産に陥れば、少なからず自社にも影響を与えることが予測できます。

そのようなケースに備えて、ぜひ加入を検討してみてほしい共済制度があります。

それが「経営セーフティ共済」です。

経営セーフティ共済は、取引先の倒産を受けた際に無担保・無保証での借り入れが可能になるなど、多くのメリットが得られる制度です。

今回は、そんな経営セーフティ共済の内容やメリットなどについて解説していきたいと思います。

 

経営セーフティ共済とは?

経営セーフティ共済は、正式名称を「中小企業倒産防止共済制度」といい、独立行政法人である中小企業基盤整備機構が運営する共済制度です。

取引先の事業者が倒産した際に想定される、中小企業の経営難や連鎖倒産を防ぐ目的を持ち、中小企業倒産防止共済法に基づいて実施されています。

共済内容条件

経営セーフティ共済の支援内容と加入条件

次に、経営セーフティ共済の支援内容と加入条件についてみていきましょう。

  • 支援内容

端的にいってしまえば、経営セーフティ共済の支援内容は無担保・無保証の貸付。共済への加入から6ヶ月以降に取引先事業者が倒産した場合に貸付を受けられるようになります。

借入額は、積み立てた掛金の10倍の額か回収不能となった売掛金や受取手形の額、いずれか少ない方の額となり、最大限度額は8,000万円となります。

返済期間は、借入額が5,000万円未満の場合は5年、5,000万円以上6,500万円未満は6年、6,500万円以上8,000万円以下は7年であり、いずれも6ヶ月の据え置き期間が含まれます。

なお、貸付を受けられるのは、取引先事業者が以下のような理由で倒産した場合に限られます。

  • 法的整理
  • 私的整理
  • 取引停止処分
  • でんさいネットの取引停止処分
  • 災害による不渡りまたはでんさいの支払い不能
  • 特定非常災害による支払不能

経営セーフティ共済の貸付は、取引先の倒産と売掛金や受取手形の確認が出来次第、すぐに利用できるだけでなく、取引先が倒産しなくても一定の条件下で貸付を受けられるという特徴があります。

  • 加入条件

経営セーフティ共済に加入できるのは、事業開始から1年以上が経過した中小企業である上に、以下のような要件を満たす必要があります。

【業種】  【資本金額または出資総額】 【常時使用する従業員数】
製造業、建設業、運輸業その他の業種 3億円以下

300人以下

卸売業 1億円以下 100人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
小売業 5,000万円以下 50人以下
ゴム製品製造業(自動車または航空機用タイヤおよびチューブ製造業ならびに工業用ベルト製造業を除く。)  

3億円以下

 

900人以下

 

ソフトウェア業または情報処理サービス業 3億円以下 300人以下
旅館業 5,000万円以下 200人以下

 

参照:中小機構

https://www.smrj.go.jp/kyosai/tkyosai/entry/eligibility/index.html

また、経営セーフティ共済の加入にあたっては掛金を求められることになりますが、こちらは月額5,000円以上20万円までの範囲で設定でき、800万円までの積み立てが可能です。さらに加入後は五千円きざみでの増額や減額も可能になります。

共済のメリットデメリット

経営セーフティ共済加入のメリットとデメリット

では、経営セーフティ共済に加入するとどのようなメリットやデメリットがあると考えられるのでしょうか。

共済メリット

  • メリット

  1. 掛金の損金または必要経費算入で節税効果あり

経営セーフティ共済の掛金は、損金や必要経費に算入することができます。これにより所得を減少させられるため、経営セーフティ共済に加入するだけで、節税効果にも期待できます。

  1. 取引先が倒産しなくても貸付を受けられる

経営セーフティ共済の貸付は、取引先が倒産しなくても受けることが可能です。ただし借り入れ可能額は、解約手当金の範囲内に限られることを覚えておきましょう。

  1. 加入期間40ヶ月以上で掛金の全額が返ってくる

加入から40ヶ月以上、つまり40ヶ月以上にわたって掛金を納付すると、解約時に掛金の全額を回収することができます。わずか3年以上の納期間で掛金の全額回収が保証されるのは大きなメリットのひとつです。

共済デメリット

  • デメリット

  1. 掛金の回収は12ヶ月経過後から

メリットの項にて、40ヶ月が経過すれば掛金が全額返還されると記載しましたが、その一方で加入から12ヶ月未満のうちに解約すると掛け捨てになってしまいます。なお、12ヶ月以上であれば掛金の8割以上が返還されます。

  1. 解約手当金は課税対象

経営セーフティ共済への加入は節税効果をもたらしますが、解約時に得られる解約手当金は、全額が課税対象となる点には留意しておかなければなりません。

まとめ

まとめ

今回は、経営セーフティ共済について解説しました。

経営セーフティ共済の支援内容は、取引先の倒産時に特別な貸付を利用できるというものですが、それだけにとどまらず、節税効果に期待できるほか、解約手当金の範囲内であれば取引先が倒産せずとも貸付を受けられるなどのメリットもあります。

取引先の倒産という万が一の事態に備えて、加入を検討してみてはいかがでしょうか。